ウルトラブライルーブ!サンシャイン!!   作:焼き鮭

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アイゼンTrapper(A)

 

『むぅん……!』

「ウオオオオオ―――――ン!」

 

 ――豪烈暴獣ホロボロスをけしかけ、ロッソとブルを倒させたサルモーネは、オーブリングNEOを取り返すとウルトラマンオーブダークに変身し、魔剣オーブダークカリバーを構えて自らが呼び出したホロボロスと対峙していた。

 

「くっそぉ……!」

 

 ホロボロスに打ちのめされ、満身創痍の克海と功海は、梨子たちに支えられながらこれを悔しげに見上げている。

 

「ウオオオオオ―――――ン!」

 

 やがてホロボロスは、陣取っている山の上から跳び、町中に降り立つと四つ足でオーブダークへと突進していく。

 

『むんッ!』

 

 対するオーブダークはその場にオーブダークカリバーを突き刺すと、胸を張って堂々と待ち構えた。

 

『来ぉいッ!』

「ウオオオオオ―――――ン!」

 

 ホロボロスはまっすぐにオーブダークに体当たりし、オーブダークはその首根っこに腕を回して突進を受け止めた。そのまま押し合いとなる。

 

『でゅわぁッ!』

「ウオオオオオ―――――ン!」

 

 首を捕らえたまま、ホロボロスの顎に膝を入れるオーブダーク。一瞬ひるんだホロボロスだが、再びオーブダークに飛び掛かる。

 

『でゅわぁッ!』

 

 オーブダークは一瞬背後をチラリと見やると、ホロボロスの飛び掛かりを受け流して投げ飛ばす。ホロボロスの落下の衝撃で、側のマッサージ店の店舗がひび割れてガラガラと崩れていく。

 

「お、おじさんの店が!!」

「あいつ……今わざとあそこに投げたっ!!」

 

 絶叫する曜。オーブダークの事前の行動から、果南は怒号を発した。

 

『でゅわッ!』

 

 わざと店を破壊したことを何も意に介さず、オーブダークは構えを取り直して再度ホロボロスを待ち構える。

 

「ウオオオオオ―――――ン!」

 

 一気に駆け出して突進を繰り返すホロボロス。身を翻してかわすオーブダークだが、立ち位置を変えると、三度目の突撃をまともに食らった。

 

『でゅわぁぁぁッ!』

 

 はね飛ばされたオーブダークが、背中から家屋の上に倒れ込んで、家を押し潰した。

 

「ま、町が壊れてくずらっ!」

「何て真似を……!」

 

 オーブダークが戦う毎に建物が次々に破壊されていくことに、花丸も鞠莉も顔を真っ青にした。

 これまでのロッソたちの戦いの中でも、余波で周囲に被害が出ることはあったが……真実を知る彼女たちの目には見える。オーブダークは、それを故意にやっているのだ。

 

『でゅわああ!』

 

 そんなことは大したことではないとばかりに、素知らぬ顔でホロボロスと取っ組み合い続けるオーブダーク。そこに飛行船が飛んでくると、チョイチョイと手の平で仰いで角度を調整させる。

 微調整した飛行船がカメラを回し、オーブダークとホロボロスの格闘する様子をアップで全国のテレビに流し始めた。

 

『でゅわあぁぁッ!』

「ウオオオオオ―――――ン!」

 

 その瞬間にホロボロスを蹴り飛ばしたオーブダークが、カメラに向けて手でハートマークを作ってアピールする。

 

「お……おぉ!」

「新しいウルトラマンが、怪獣と戦ってる!」

 

 テレビ映像を目にした人々は次々と沸き立つが――聖良と理亞は、青ざめた顔を大きく振っていた。

 

「違う……! これは八百長なの……!!」

 

 

 

『アイゼンTrapper』

 

 

 

「ウオオオオオ―――――ン!」

 

 オーブダークに蹴られ、家屋に突っ込んで転倒したホロボロスだったが、すぐに瓦礫を振り払って起き上がると、またもオーブダークに飛び掛かっていく。

 

『でぇぇぇぇぇあぁッ!』

 

 オーブダークは地面に刺した剣を抜いて頭上から振り下ろすが、ホロボロスは前足を上げて刃をかわした。オーブダークが振るう剣を転がってよけ続けるホロボロス。

 彼らの足元の道路や家が巻き込まれて砕かれていく。

 

「このままじゃ町が……!」

「あの野郎……!」

 

 被害がどんどん拡大していく内浦の惨状に、克海たちの胸に痛みと怒りが広がる。

 オーブダークが後ろから斬りかかろうとした時、ホロボロスが放った後ろ蹴りを浴びて仰向けに倒された。

 

『であぁぁぁぁぁッ!!』

 

 またもオーブダークの巻き込みによって、建物が一軒倒壊した。

 功海たちはルーブジャイロを振り回して起動させようとする。

 

「動けッ! 今行かないといけねぇんだよッ!」

「や、やめて下さい! 無茶ですよぉっ!」

 

 反応しないジャイロを強引に引っ張って動かそうとする功海を、ルビィたちが必死に押しとどめた。

 

「そんな身体じゃ危険すぎます!」

「くそぉッ! 俺たちじゃどうすることも出来ないのかッ!」

 

 梨子の諫める声も聞こえないほど、克海は取り乱していた。

 

『であぁ……!』

「ウオオオオオ―――――ン!」

 

 そうしている間にオーブダークとホロボロスは再びにらみ合い、オーブダークが距離を詰めていく。

 

『であぁぁぁッ!』

 

 水平斬りを繰り出したが、バク宙したホロボロスの足によって剣を弾き飛ばされた。

 

『うわぁぁッ!』

「ウオオオオオ―――――ン!」

 

 勢いで倒れ込んだオーブダークの上にホロボロスが跨って押さえつけると、首筋を狙って噛みついてくる。これをすんでのところで、首を振ってかわすオーブダーク。

 

「ウオオオオオ―――――ン!」

 

 ホロボロスの首を抑えて抵抗し、窮地に陥ったように見せるオーブダーク。これにまんまと乗せられる千歌が叫ぶ。

 

「危ない! がんばって、ウルトラマンさーん!」

 

 それを皮切りとして、町中からオーブダークに声援が送られ始めた。

 

「がんばれ! がんばれーウルトラマーン!」

「負けないでー!」

「立ち上がってくれー!」

 

 これらの声を耳にしたオーブダークがつぶやく。

 

『そろそろ頃合いか……!』

 

 ホロボロスの首をじりじり押し返していくと、空いたボディに左手の平を押し当てる。

 

『であぁッ!』

 

 そこから停止信号が打ち込まれ、ホロボロスは一気に動きを鈍らせて活動を止めた。

 

「ウオオオオオ……!」

『ピンチになったヒーローは、必ず最後に返り咲く!』

 

 その下から抜け出たオーブダークは、リングをAZジャイロにセットしてエネルギーチャージする。

 

『ダークオリジウム光線ッッ!』

 

 オーブダークが十字に組んだ腕から生じたハートマークより暗黒光線が発せられ、動かなくなったホロボロスに直撃。そのまま爆破、消滅させた。

 

「やった! 勝った!」

「ありがとう、ウルトラマーン!」

 

 歓喜の声で沸き上がったビーチに、克海たちが走ってくる。梨子たちはその後から、目を覚ましつつあるダイヤと善子を支えながら歩いてきた。

 

「……!!」

 

 オーブダークは彼らに、見せつけるようにゆっくりと首肯すると、一足飛びで空の彼方に飛び去っていった。

 

『でゅわぁッ!!』

「……」

 

 声も出せない克海と功海の元に、千歌が駆け寄ってきた。

 

「お兄ちゃんたち、どこ行ってたの!? 心配してたんだよ! 怪我はない?」

 

 二人や梨子たちを心配する千歌は、彼らの表情が沈んでいることに戸惑いを見せた。

 

「……何か、あったの?」

 

 克海たちが沈黙を貫いていると――このビーチに、サルモーネが大きく手を振りながら、満面の笑顔で走ってきた。

 

「おーい!」

「あっ、愛染さん無事だったんだ! どこ行ってたんですか?」

「いやぁ~! あの怖い怪獣見てぇ、すっかり気絶しちゃったんだよ~! いや~お恥ずかしいッ!」

 

 非常にわざとらしく言い訳するサルモーネ。

 

「もう、しょうがないですね~」

 

 苦笑する千歌だが、サルモーネの態度に我慢がならなくなった克海は彼女をどかして胸ぐらに掴みかかった。

 

「サルモーネぇッ! お前は良心がないのか……! 町の人々を危険に晒してるんだぞッ……!」

 

 非難をぶつけられても、サルモーネは平然としている。

 

「でも見てみなよ。闇に光を与えたヒーローに、みんな大喜びだ」

「騙してるだけだろうが……! お前のやってることのどこがヒーローだッ……!」

 

 克海の弾劾に鼻を白けさせたサルモーネは、彼の手を振り払って襟元を正した。

 

「ならば、ここではっきりさせとこうか」

 

 そう言うが否や、ビーチにいる人たちの前に躍り出ていった。

 

「愛染さん!」

「愛染さんだ!」

 

 人々の敬慕の声に手を振って応じながら、一段高いところに上って注目を集めるサルモーネ。

 

「親愛なる内浦の皆さん! 愛染正義ですッ!」

「あいつ……!」

「何するつもりなの……!?」

 

 サルモーネの行動を、功海や果南たちがキッとにらんだ。

 それに構わず、サルモーネが弁舌を振るい出した。

 

「先に、脅威に倒れた二人のウルトラマンがおりました! まずは、その健闘を称えましょう!」

 

 サルモーネに合わせて拍手を鳴らす市民たち。――サルモーネの拍手に、果南らがわなわなと震える。

 

「しかぁーしッ! 我々は今、真のウルトラマンを迎えました! これからは彼とともに、脅威に立ち向かっていかなければいけませーんッ!」

「そうだッ!」

「そうだぁッ!」

 

 サルモーネの熱弁に乗せられて、同意の声がちらほらと起こる。

 

「もちろん! 我がアイゼンテックは全面的にバックアップ致します! そして皆さまのお力を、お借りしまぁーすッ!」

「おぉーッ!」

「あ団結ッ! あ団結ッ! はいご一緒に!」

「あ団結! あ団結!」

 

 サルモーネの音頭で、内浦の若者衆を中心としてコールが巻き起こる。――この光景を見せられて、梨子たちは顔面蒼白となった。

 功海と克海はとうとう我慢ならなくなり、若者衆の輪の中に割って入っていく。

 

「やめろ! やめろぉーッ!」

「あいつの言ってることはデタラメだッ!」

「い、功兄ぃ、克兄ぃ……!」

 

 無謀に飛び込んでいった二人に息を呑む曜。

 

「怪獣の襲来も、さっきまでの戦いも! 全部あいつが仕組んだことなんだッ! あいつは大嘘吐きなんだッ!!」

「本当なんだよみんな! 信じてくれぇッ!!」

 

 必死に訴えかける克海と功海だったが――逆上した青年団に取り囲まれる羽目になってしまう。

 

「高海のとこの! 何失礼なこと言ってんだ!」

「愛染さんに謝れッ!」

「本当なんだよぉー!」

「騙されるなみんなぁー!」

「このヤロぉー!!」

「克兄ぃ、功兄ぃ! やめてっ!」

 

 青年団にもみくちゃにされる克海たちを見ていられず、果南と曜が助けに行って引っ張り出した。若者たちはその後もサルモーネとコールし続ける。

 

「あ団結! あ団結! あ団結!」

「……くぅっ……!」

 

 果南たちは悔しさを噛み締めることしか出来ず、無念そうに立ち去る他なかった。最後に見せられたのは、サルモーネの勝ち誇った嘲笑であった。

 

 

 

 民衆の歓声を一身に浴びながら、サルモーネは颯爽と立ち去っていく。戦いの影響でボロボロになった無人の区域に立ち入ると、崩れた町並みを見回しながら誇らしげに胸を張る。

 

「素晴らしい! これこそがウルトラマンだッ! 戦いが激しいほどに、ウルトラマンという光もまた人の心に強く刻み込まれる! 全人類がウルトラマンの威光を崇め奉り、そこに跪く日も遠くはないッ!!」

 

 満足そうに言い放つサルモーネの元に飛んできたウッチェリーナが報告する。

 

[申し訳ありません社長ぉ]

「ん? どうしたんだい?」

[ホロボロスのクリスタル、回収できませんでした。どこを探しても見つからなくって……]

 

 これを聞いたサルモーネが、ふむ、と顎に指を掛ける。

 

「誰かに持ち去られてしまったか。だがまぁジャイロがないと意味がないものだからな。あのアホ兄弟にも身の程を教えてやったし、ほっといても大丈夫だろう」

[はぁ]

 

 さして重く受け止めることもなく、サルモーネは上機嫌でアイゼンテックへと帰っていった。

 

 

 

 怪獣の出現によってビーチが閉鎖され、克海たち一同はやむなく『四つ角』に戻ってきた。

 

「……いえ、こっちは大丈夫です。はい、私たちで何とかしますので。ありがとうございます」

 

 彼らの身を案じて『四つ角』に電話を掛けてきた聖良に、兄弟に代わって梨子が応対していた。受話器を置いて居間に向かうと、そこで千歌が克海と功海に問いをぶつけている。

 

「克海お兄ちゃん、功海お兄ちゃん……何で、チカに何も話してくれないの?」

 

 憮然としてうなだれている二人に、反応がなくとも語りかける千歌。

 

「いくら何でも、お兄ちゃんたちに何かあったってことぐらい分かるよ。そんなに悩むことがあるなら、私とも話をしてよ。私たち、家族なんだよ?」

 

 懸命な想いを込めて訴えかける千歌。梨子たちは、その様子を遠巻きに、不安げに見守るしかない。

 だが、克海たちは千歌の気持ちには応えなかった。

 

「これは、俺たちの問題なんだ」

「……」

 

 どうしようもないと悟り、うつむいて背を向ける千歌。居間から離れる寸前に、小さい声でつぶやく。

 

「……バカ」

 

 千歌が自分の部屋へと上がっていくと、入れ替わるように意識がはっきりしたダイヤと善子が克海たちの前に腰を下ろす。

 

「話は伺いました。面目ありませんわ……」

「ヨハネたちがもっとしっかりしてれば、こんなことには……」

 

 落胆して謝る二人に、克海は首を振った。

 

「二人のせいじゃないよ。結局、俺たちが未熟だったからだ」

「……」

 

 重い空気に覆われる居間の中で、果南がいら立ちを抑え切れずに吐き捨てる。

 

「こんなのってある!? 克兄ぃたちが必死に頑張ったのに、みんなあのペテン師を持ち上げてばかりで……! あいつこそが元凶なのにっ!」

 

 憤懣やるせない果南に、鞠莉が努めて冷静に告げる。

 

「無理もないわ……。傍から見たら、結果として怪獣をやっつけたのはオーブダークなんだから。何も知らない彼らは責められない」

「だけど……!」

「残酷だけどね……世の中は、結果が全てだという風に出来てるの。……想いだけじゃ何も変えられないのは、私たちがよく知ってるでしょ?」

 

 そう言われてしまっては、果南もそれ以上は何も言えなかった。

 沈黙が流れるこの場で、功海がポツリとつぶやく。

 

「強さって何だろうな……」

「強さか……」

 

 それに応じる克海。

 

「……結局、弱いヒーローにいる意味なんてない。どんなにあいつのやることを批判したところで、町を守ることが出来なければ、誰も振り返ってはくれない……。苦労も、努力も、全て無駄になる……」

「ヒーローって辛いな……。いっそのこと、あいつの言うように海外に行っちまえば全部楽になるんだろうけどなぁ」

 

 ため息交じりの功海。曜たちは二人のやり取りを、じっと黙って聞いている。

 

「……だけど、俺たちのこの町を護れるのは……いや! あいつを倒せるのは! 俺たちだけしかいないんだッ!」

「だよな……! もう何も壊されたくねぇ! あいつの好き勝手にされんのはたくさんだッ!」

 

 克海と功海が気力を取り戻していくことに、梨子たちも顔を明るくしていった。

 

「ああ。たとえ罵られようとも構うもんか! 俺たちは、俺たちの信じるもののために戦う!」

「苦労も努力も上等じゃんか! 全部背負っていこうぜ!」

「二人だけじゃありません! 私たちだって手伝います!」

「みんなで目指そうよ! 打倒オーブダーク!」

 

 梨子も、曜も、ダイヤも善子も、果南、鞠莉、花丸、ルビィも。全員が険しい道を進んでいく覚悟を、既に持っていた。

 

「よしッ! 早速作戦会議だ!」

「おぉー!」

 

 克海と功海は、互いのみならず皆と拳を重ね合い、虚構のウルトラマン伝説を食い止める目的のために動き始めた。

 

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