転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2337話

 ロス……ロサンゼルスからそう遠く離れていない場所に、ロングビーチという都市がある。

 現在、ホワイトベースはそこにいた。

 ……とはいえ、本来なら既に作戦が開始されている筈が、まだ北米軍の動きはない。

 

「なぁ、これって……もしかして俺達をジオン軍に賄賂として差し出したとか、そういう事じゃないよな?」

 

 パイロットの控え室で、カイが嫌そうな様子でそう言う。

 とはいえ、その可能性が皆無とは言えない、か。

 このロングビーチという都市は、ジオン軍が北米に攻撃を仕掛けた時にかなり激しい戦闘があったらしく、人も殆ど残っておらず、半ば廃墟状態だ。

 そんな場所にホワイトベースという連邦軍にとっての機密の塊がいるのだから、もし本当にカイの言う通りであれば。ジオン軍にしてみれば攻撃しようと思えば待ち伏せのし放題って事にはなる。

 

「けど、ロングビーチで陽動を行うって選んだのは、俺達だぞ? 幾ら何でも、そんな事にならないと思うが……」

 

 リュウが紙コップに入ったコーヒーを飲みながら、そう告げる。

 俺は紅茶派なので飲んだ事はないが、ああいうのを泥水のようなコーヒーと言うのだろう。

 

「北米軍が何かを企んでも、取りあえず問題がないのは間違いないけどな。ピクシーが使える以上、大抵の相手はどうにかなるし」

「いや、アクセルの実力ならそうかもしれないけどよ。でも、ピクシーだって永遠に動き続けられる訳じゃないんだぜ? 推進剤とかがなくなれば、補給をする必要があるし……」

『総員、戦闘配備。作戦が開始されました。総員、戦闘配備について下さい』

 

 と、不意にフラウの声で通信が流れる。

 どうやら、カイの心配は杞憂だったらしい。

 

「良かったな、カイ。俺達が生贄にならないで」

「あー、そうだね」

 

 微妙に不満そうな様子なのは、自分の意見が間違っていたからか。

 とはいえ、もしカイの意見が正解であった場合、この後の戦いがかなり大変な事になっていたという事でもあるのだが。

 そんな風に思いつつ、その場にいた全員がそれぞれ自分のMSに向かう。

 当然のように、俺が向かうのはピクシーだ。

 宇宙での戦闘を切り捨て、地上戦に特化したその機体は、そのおかげで俺が知っているUC世界におけるMSの中でもトップクラスの性能を持つ。

 ……機動性と運動性に特化した影響で、射撃武器は90mmサブマシンガンと、牽制に使うにはいいのだが、一撃の威力が低いのが難点だったりする。

 ガンキャノンの持つビームライフルは大きいのでピクシーには合わないが、ガンダムのビームライフルなら……いや、それでもピクシーの機動力を殺すか。

 いっそ、ビームライフルではなくビームガンとかビームピストルのような小さい武器なら、ピクシーの特徴を殺すような事もないのだろうけど。

 とはいえ、当然のようにそこまで小型になれば、ビームの威力も低くなる。

 ……ただ、今のガンダムのビームライフルでさえ、軍艦の放つメガ粒子砲並の威力を持っていると考えれば、ビームガンとかの小さなビーム兵器でも、MSを撃破するだけの威力があれば十分という考え方も出来る。

 勿論そのような武器を装備した場合は、ムサイ級のような軍艦を撃破するのは難しくなり、あくまでも対MS用としての戦闘しか出来なくなるが。

 

「ピクシーの発進準備完了。後は、ブリッジからの命令があればすぐに出撃出来るぞ」

 

 そうブリッジに通信を入れると、映像モニタに表示されたブライトが少し困った様子で口を開く。

 

『出撃は少し待って欲しい。現在、ホワイトベースが隠れられる場所を発見して、そこに移動中だ』

「……いいのか? もう戦闘は始まってるんだろ?」

『まだ序盤だ』

「分かった。取りあえず頑張ってくれ」

 

 ブライトのその判断に少しだけ感心する。

 まだ序盤。

 それは事実なのだろうが、同時に既に戦闘が行われているという事でもある。

 にも関わらずそのように言うという事は、現在戦っている北米軍を見捨てる……とまではいかないが、自分達の安全を重要視するという事を意味していたのだから。

 もっとも、ホワイトベースの現状を考えれば、ブライトがそう判断する気持ちも分からなくはない。

 同時に、生真面目なブライトであっても、自分達の都合だけを押しつけてくる北米軍に対して思うところがあったのだろう。

 にしても、北米のジオン軍か。

 大気圏を突破してすぐの時に襲ってきた敵の中にはガルマの姿があった。

 そう考えると、今回の戦いでもガルマが前線に出て来るという可能性は十分にある、か。

 何だか、ガルマは妙に手柄を焦っているように思える。

 ザビ家の人間として、そこまで手柄を焦る必要があるとはちょっと思えないんだが。

 とはいえ、手柄を求めて戦場に出て来る以上はホワイトベースは手加減出来ないし、する必要もないと考えるだろう。

 ルナ・ジオンに協力する身としては、ガルマの存在は結構大きいのは間違いないんだが。

 ジオン公国において、ガルマの人気は非常に高い。

 総帥のギレン、諜報・謀略を司るキシリア、軍人のドズル、マスコットキャラのガルマといったところか。

 いや、マスコットキャラというのは少し悪意的な表現だから、カリスマ的存在とでも言うか?

 ともあれ、そんな人物だけに可能なら確保したい。

 もしここでガルマを殺してしまうと、ジオン公国の態度がより一層好戦的になってしまうだろうし。

 ましてや、ガルマを殺した中に俺が……シャドウミラーの人間がいると知られれば、月の方でも不味い事になる可能性があった。

 月には、ザビ家が嫌で移住してきた者もいるが、そんな中でもガルマに対しては好意を持っている者も決して少なくない。

 そんな中でルナ・ジオンの後ろ盾たるシャドウミラーの俺達がガルマの戦死に関わっていたと知られると、色々と面倒な事になるのは確実だ。

 逆に、殺すのではなく捕虜にしてしまえば使い道は多いんだろうが……そうだな、取りあえずガルマが出撃してきたら、可能な限り捕虜にするように努力する、という事にしておくか。

 ブライトとの通信を終えて待っていると、やがてホワイトベースの動きが止まる。

 どうやら、無事に隠れる事に成功したのだろう。

 現在ホワイトベースの操舵をしているのがミナトだという事を考えれば、一発で隠れる事に成功するのは当然なのだが。

 そんな風に考えていると、激しい振動が伝わってくる。

 

「ブリッジ、何が起きた?」

 

 その言葉に、ブライトに変わって映像モニタに映し出されたのはフラウだった。

 

『えっと、その……現在ガウ? っていう機体がこの辺り一帯に爆弾を落としています』

「絨毯爆撃か」

『あ、はい』

 

 この地区を狙って絨毯爆撃を仕掛けてきたという事は、この辺りにホワイトベースがいるというのは向こうに既に知られていると考えた方がいい。

 ただ、この辺りにいるのは分かっているが、正確な場所は分からないから、絨毯爆撃でこちらを見つけようとしている、と。

 このロングビーチが廃墟になっているからこそ、出来た方法なのは間違いない。

 もしまだ人が住んでいる場所であれば、ジオン軍もそこまで無茶な真似はしなかっただろうし。

 ああ、でもジオン軍はコロニー落としを行ったという実績がある以上、それこそやるべき時は人のいる場所であっても絨毯爆撃くらいはやると、そう思われてもおかしくはないか?

 ガルマはその人気の高さを活かし、北米に融和政策を行っているというのは、有名な話だ。

 一般人にしてみれば、自分達で攻めて来た癖に……と、そういう思いを抱いている者も少なくなく、レジスタンスも相応にいるらしい。

 だが、以前から北米である程度の地位や権力を持っていた者にしてみれば、ガルマに逆らうなどといった真似は出来ず、協力姿勢を打ち出している者も決して少なくないらしい。

 

「対抗策は?」

『取りあえず、まだもう少し様子を見るとのことです』

「……だろうな」

 

 相手がこっちをいぶり出そうとして絨毯爆撃を行っているのであれば、こっちがわざわざそれに乗る必要はない。

 寧ろ絨毯爆撃が終わるまで隠れており、その後で反撃を仕掛ける……といった方が有効なのは間違いない。

 とはいえ、向こうにしてみればそれも最初から計算済みの行動なのかもしれないが。

 それでも、ブライト達が北米軍に命じられた陽動という任務を果たせるのは間違いない。

 そういう意味では、ブライトが絨毯爆撃をされている間は大人しくしていろというのは分からないでもない。ないのだが……

 現在ホワイトベースが隠れている、このドームはかなりの大きさを持つ。

 それこそ、絨毯爆撃をするガウにしてみれば、かなり攻撃しやすいような、そんな目標のような気がするんだが。

 そして半ば壊れているこのドームは、当然のように絨毯爆撃をされたりすれば、持ち堪えるような事は出来ないだろう。

 下手にこの建物が攻撃されるような事にでもなれば、ホワイトベースは生き埋めになるんじゃないか?

 

『ザク6機降下! 10時の方向です!』

 

 繋がったままの通信から、そんな声が聞こえてくる。

 にしても、ザクか。

 ガルマのお膝元なんだし、出て来るとすればグフとかドムとか、そっち系だと思ったんだけどな。

 いや、でも考えてみればそこまで不思議でもないか?

 ドムのホバー移動は、何もない場所でならその高い機動力を存分に発揮出来るが、森や市街地のような場所となると、途端に移動の難易度が上がってしまう。

 グフの方はそういう問題はないが、基本的に射撃武器がフィンガーバルカン程度しか存在せず、その射程距離はかなり低い。

 結局のところ、一番汎用性が高いMSとなるとザクが選ばれてしまうのだろう。

 そういう意味では、ガルマはしっかりとその辺を考えてMSを運用しているという事になる。

 曲がりなりにも士官学校を主席で卒業しただけの事はある、か。

 まぁ、ぶっちゃけガルマじゃなくてザビ家からガルマに付けられた参謀とかが口を出している可能性も、皆無ではないのだが。

 

『アクセルとアムロの機体は、敵をホワイトベースの正面に誘き寄せろ。ガンキャノンとガンタンクはホワイトベースの周囲に展開して、一斉攻撃に備えろ』

 

 ブライトの指示は、適切なものだろう。

 運動性に優れたピクシーとガンダムの2機でザクを誘き寄せ、待ち伏せしていたホワイトベース、ガンタンク、ガンキャノンで集中砲火。

 これは、ジオン軍にとっては致命的と言ってもいいダメージを受けるのは間違いない。

 ホワイトベースの状況が完全ではない以上、最良の選択と言ってもいい。

 素早くこういう作戦を立てられる辺り、ブライトも艦長として成長している証か。

 まぁ、ミナト経由でミライから聞いた話によると、暇な時間があれば戦術の勉強とかしているらしいから、その成果が出たのだろう。

 ブライトにしてみれば、士官学校を卒業しないままいきなり中尉でホワイトベースの艦長なのだから、かなり苦労しているのは間違いない。

 

「分かった。ただ、撃墜出来る時は撃墜してもいいのか?」

『いや、撃墜されれば、向こうは警戒する。どうしても撃墜しなければならない時ならともかく、撃墜しなくてもいいのなら、可能な限り撃墜は避けてくれ』

「了解」

『分かりました』

 

 俺が頷くと、アムロもまた頷く。

 そうして、カタパルトデッキから射出されるピクシーとガンダム。

 射出された状況で最初に向かったのは、やはりホワイトベースの位置を隠す為に近くの廃墟。

 とはいえ、今の動きから恐らくこちらの行動が見つかった可能性は高く……

 

『アクセルさん、シャアがいる!』

 

 と、周囲の様子を探索していると、不意にアムロからの通信が入る。

 けど、シャアだと?

 俺が知ってる限り、大気圏突入時にシャアが乗っていたMSは高機動型のR-1A型。

 それは、宇宙専用機として開発されたMSだ。

 つまり、地上では使えない……訳ではないだろうが、それでも性能的にはかなり下がる筈だ。

 

「シャアが乗っている機体は何だ? 宇宙で見たのと同じ機体か?」

 

 瓦礫と化している中を、かろうじて敵に見つかるといった姿で逃げながら、アムロに尋ねる。

 囮として出撃した以上、こちらとしては完全に姿を消すといった真似は出来ない。

 

『分かりません。一瞬だったので……』

「そうか、分かった。なら、取りあえずシャアとは遭遇しないように頑張れ」

 

 一瞥しただけでシャアの機体だと分かったという事は、その機体はシャアのパーソナルカラーの赤で塗られていたのだろう。

 であれば、その機体は……S型か?

 シャアが乗る機体として、今更F型を用意するとは思えない。

 あるいは地上での戦いということで、J型という可能性もある。

 ともあれ、分かっているのは大気圏突入の時の戦いが終わった後で、シャアも地球に降下したという事だ。

 それも、この流れから考えるとガルマと一緒に行動している可能性が高い。

 そうなると、厄介なのは……ガルマの身か。

 さて、どうするべきか。

 そう考えながらピクシーを操作し、少し離れた場所にいたF型からのザクマシンガンを回避するのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:425
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1469

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