次の番外編はお気に入りが5000人突破したらでしょうか。
と思ったら、もうお気に入りが4300人を超えているので、次の番外編は何気に近そうですね。
その際は、また活動報告の方でリクエストを募集しますので、よろしくお願いします。
随分とまた、早くこの時が来たな。
それが、映像モニタに表示されている光景を見た、俺の正直な気持ちだ。
現在、東京ではブリタニア軍と黒の騎士団の全面対決が行われていた。
藤堂を助け出してから、1ヶ月程。
俺の記憶が確かであれば、それこそ黒の騎士団がブリタニア軍と全面対決するには、まだ色々な出来事があった筈だった。
そういう意味では、俺が知っている歴史をかなり前倒ししているという感じだ。
マオの件を含め、かなりの出来事が飛ばされていた。
……とはいえ、当然か。
ブリタニア皇族の中でも屈指の武闘派であるコーネリアは、黒の騎士団の捕虜となっている。
また、ブリタニア軍の中でも屈指の性能を持つランスロットは鹵獲されて黒の騎士団の戦力となっており、紅蓮弐式と共に双璧と言われるようになっていた。
本来のランスロットのパイロットたるスザクは、京都に引き渡され、現在どうなっているのかは分からない。
ランスロットの予備パーツとかで作ったランスロット・クラブも撃破されており、現在のエリア11のブリタニア軍はもうボロボロな状況だと言っても間違いではなかった。
ダールトンやギルフォード、グラストンナイツといった面々の姿は、戦場そのものにない。
恐らくは、黒の騎士団の戦力がここに集中している間にコーネリアを助けようとしているのだろうが……見つけるのは、まず不可能だろう。
そもそも、コーネリアの部下達は正面から戦うという意味での戦力では優れているが、隠密行動とかそういうのに向いているのかと言われれば正直微妙なところなのだから。
『アクセル、そろそろ私達も行くわよ!』
「藤堂からの命令が来たのか?」
模擬戦では俺が藤堂と四聖剣に勝ったが、だからといって黒の騎士団の軍事を司るなんて役職に就くのは正直なところごめんだった。
だからこそ、俺は勝者の特権としてゼロに藤堂を軍事の総責任者にするように要求した。
ゼロとしても、俺のような得体の知れない相手よりも藤堂の方がまだ信用出来ると判断したのか、それはすんなりと受け入れられた。
俺が藤堂を推薦した事によって千葉と朝比奈からの視線が柔らかくなったのは、ある意味で運が良かったのだろう。
『ええ。ブリタニア軍も数は多いから、私達で敵の突破口を切り開けって事らしいわ』
なるほど。
ブリタニアとしては、出来れば今回の戦いでは日本中から戦力を集めたかったのだろうが、ゼロが色々と裏で動いた結果として、現在日本中でレジスタンスが活発に動いており、そちらにも戦力を回す必要があった。
結果として、東京を守る為に用意された戦力はコーネリア軍がいないという事もあってか、かなり減っている。減っているのだが……それでもこちらの倍近い戦力なのは、腐ってもブリタニアといったところか。
とはいえ、ブリタニア軍も使えるKMFは片っ端から持ち出した影響で、サザーランド以外にグラスゴーの姿もあったりする。
黒の騎士団の主力が無頼である以上、数で見ればこっちが不利なのは間違いないんだよな。
それでも、質では間違いなくこっちが上だという確信があった。
「カレン、続け!」
ヴァリスを撃ちながら、ランスロットを前進させる。
グロースターとグラスゴーを十数機纏めて撃破し、戦力が少なくなったところにランスロットと紅蓮弐式が突っ込んでいく。
俺とカレンで開けた突破口に、四聖剣の面々がそれぞれ部隊を率いて入ってくる。
純血派の機体が立ち塞がったが、ランスロットと紅蓮弐式を相手にすればどうする事も出来ず……結果として、こちらを東京に入れまいとしていたブリタニア軍の狙いはあっさりと崩れていく。
黒の騎士団の拠点に幾らか残っていた戦力が、現在東京で暴れているというのも大きいのだろうが。
わざわざ、黒の騎士団が東京の外にいるのは、それもまた狙いだった。
現在のブリタニア軍にはろくな指揮官もおらず……いや、純血派がいるのを見れば、小隊、中隊辺りを纏める事が出来る者達はいても、軍全体を纏めるだけの実力がある者はいない。
ここでも、コーネリアの部隊がいないのが大きく足を引っ張っていた。
ダールトン辺りなら、全軍の指揮を執るのに十分な実力はあっただろうに。
MVSでサザーランドを斬り捨てながら、そんな風に思う。
あ、純血派に朝比奈と千葉が突っ込んでる。
いやまぁ、現在のブリタニア軍では警戒すべき相手だから、それも当然なのだが。
それにしても、元ブリタニア軍――正確にはブリタニア軍に雇われた傭兵――の身としては、こうしてブリタニア軍のKMFを次々に撃墜していくのはあまり嬉しくない。
間違いなく、この中には俺の顔見知りがいる。
だからこそ、KMFは破壊しても飛んでいくコックピットには攻撃しないのだが。
こういう時、脱出を最優先にしたKMFという機体は便利だよな。
おかげで、顔見知りを殺すような真似をしなくてもすむ。
勿論、それで絶対に安全だという訳ではない。
それこそ、戦いの中ではコックピットの脱出装置が作動するよりも前に殺されるという事もあるんだろうし。
『アクセル、G1ベースが動き出した! 押さえてくれ!』
藤堂からの命令に、了解と短く返事をしてから敵陣後方のG1ベース……ブリタニア軍の旗艦に向かって進む。
当然のように戦場で目立っていたランスロットが向かってくるとなると、G1ベースの方でも気が付いたのか、近くにいたKMF部隊に迎撃命令を出したらしく、こちらに向かって何機ものKMFがやってくる。
その攻撃を回避し、すれ違い様にMVSで手足を切断していく。
そうしてG1ベースまで近づくと……ヴァリスの銃口を艦橋に向けて突きつける。
「降伏しろ。コーネリアがいない状況で、お前達がどうあがこうと、勝ち目はない」
その言葉に、G1ベースは沈黙する。
恐らく、G1ベース側……ブリタニア側でも、自分達に勝ち目がないというのは知ってるのだろう。
最初は数の差で押し切れると思ったのかもしれないが、質の差では黒の騎士団が上だった。
……もっとも、実際には黒の騎士団側のKMF部隊も、一部が突出した実力を持っているだけで、全体を平均的に見ればブリタニア軍の方が上なのだが。
だが、俺を含めてその突出した戦力が真っ先に敵に突っ込んだ事で、ブリタニア軍は大きく動揺した。
そして動揺を立て直すだけの実力を持った指揮官がおらず、結果としてこのような状況になっている訳だ。
こうして、日本を占拠していたブリタニア軍は降伏し……このギアス世界の歴史上、初めてエリアを奪還する事に成功したのだった。
「ん……」
甘く響く声が聞こえ、目を覚ます。
ここは、日本となった場所で俺が住んでいる家……の、寝室。
ホワイトスターにある程の大きさではないが、それでも巨大と評するに相応しいベッドの上で、俺は目覚めた。
そして若干寝ぼけた頭で周囲を見回せば、そこには白い肌や褐色の肌を持つ女達が何人も疲れて眠っている。
数年前に日本が独立した時に比べると、随分と俺の周囲も変わった。
まず最初にカレンと付き合う事になり、その後ラクシャータとも同様に付き合う事になり、アッシュフォード学園が日本から撤退するという話をしにいった時に会ったミレイも、今では俺の家に転がり込んできて同棲している。
また、当然の話だが日本を取り戻した俺達をブリタニアがそのままにしておく筈もなく……再度日本に侵攻してきた戦いにおいて、ナイトオブラウンズのナイトオブフォーたるドロテアと戦う事になったのだが、俺が捕虜とし、何だかんだとしている間にドロテアまでもが俺の家に転がり込み、肉体関係を持つにいたった。
こうして、俺の知っているギアス世界とは違うパラレルワールドにて、最終的には4人の恋人と同棲する事になってしまった。
……正直なところ、この世界のコーネリアともそういう関係になりそうになったのだが、最終的には色々とあってこの世界のコーネリアとは個人的な――国同士はまだ関係がかなり悪いので――友好関係を築いている。
ただ、ちょっと困った事に、コーネリアは俺を取り込もうとして俺と皇族との結婚を企んでいるらしい。
その相手は、コーネリアの姉であるギネヴィア。
いやまぁ、美人なのは間違いないんだが……ブリタニア至上主義ともいうべき性格を考えると、ちょっと無理じゃないかと思う。
俺に抱きつき、その柔らかな身体を押しつけて寝ているミレイの髪を撫でながら、ブリタニアとのこれからについて考える。
ちなみに、現在のブリタニアの皇帝は、99代目の皇帝としてオデュッセウスだったりする。
うん。まぁ、俺がルルーシュにギアスに対しての情報を色々と話し、世界中にあるギアスの遺跡を破壊したり、魔法を使ってCの世界を破壊したりとか、色々とあったんだよな。
その結果として、シャルルとマリアンヌは死んだ。
C.C.とはその後で改めて話をしたが、マリアンヌの一件に何か思うところがあったのか、俺が言った願いを叶える……死を与えるという事はひとまず遠慮したらしい。
「んん……」
ミレイを撫でていると、ベッドの上で寝ていたドロテアが薄らと目を開け、こちらに近づいてくる。
普段はかなり厳しい性格をしているドロテアなのだが、俺と……そして他の恋人達と一緒の時は、かなり甘えてきたりするんだよな。
「アクセル、私も……」
身体を擦りつけ、その褐色で……元ナイトオブラウンズとは思えない程に柔らかで、それでいて滑らかな身体で抱きついてくるドロテアの頭を撫でる。
目が覚めて色々と考え事をしていたが、そうしている間に俺もまた眠くなってくる。
昨日……今日は朝方まで愛し合っていたからな。
「全く」
そう言いながらも、ドロテアの黒く絹のような触感の髪を撫でつつ、俺は睡魔に抵抗すらせず……それどころか、敢えて迎え入れるような真似をするのだった。
「きゃーっ! ちょっ、ちょっと、大変、大変、大変! 遅刻しちゃう!」
慌ただしく叫びながら、ミレイが家を出て行く。
現在のミレイは、日本にあるTV局にて気象予報士をしながら、アイドルとしてバラエティ番組に出たり、グラビアアイドルとして写真集を出したり、女優としてドラマや映画に出たりといった感じで働いていた。
ドロテアもそうだが、現在の日本にはそれなりにブリタニア人が住んでいる。
それは、現在日本を実質的に支配しているゼロが人種によって差別しないといった事を公言しているからであり、ブリタニアの皇帝がオデュッセウスになったのも関係しているのだろう。
……勿論、ブリタニアに占領されていたという過去がある以上、決してブリタニア人を許す事が出来ないといった者もいるのだが、そんな中でもミレイは実力で今の地位を勝ち取ってみせた。
「全く、昨夜はあれだけ鳴き声を上げていたのに、よくもまぁ、元気ね。……ドロテアは大丈夫? 今日は私達が開発した新型KMFのテストでしょ?」
慌てて出て行ったミレイを見送り、残った者達は朝食の時間となる。
……何気にこの家で一番料理が上手いのはミレイなのだが、カレンもそこそこ料理が出来るし、俺と同棲するようになってからドロテアも時間を見ては料理の勉強をしている事もあり、料理の腕は平均以上となっている。
そういう意味では、享楽的な性格をしているラクシャータは全く料理をする様子も見せず、今でも食べる専門だ。
ちなみに日本が独立した後で、インド軍区もしっかりと独立している。
これは、ラクシャータを日本に派遣したインド軍区の思惑がきっちりと嵌まった形だろう。
にも関わらず、ラクシャータがインドには帰らないで日本で俺と同棲しているのは……まぁ、そういう事なのだろう。
もっとも、ラクシャータにしてみれば俺という、色々な意味で興味深い存在がいるというのもあるし、同時にカレンやドロテアといったように非常に高い能力を持つKMFのパイロットがいるから、というのもある。
魔法が興味深いというのもあるんだろうが。
「分かってるけど、この前みたいなのはごめんよ」
嫌そうに、本当に嫌そうに告げるドロテア。
ランスロット・アルビオン級、紅蓮聖天八極式級の……いや、それを超える性能を持つKMFの試作機が出来たのはいいものの、暴れ馬と呼ぶ以外にない状態だったらしい。
ドロテアやカレンですら、すぐには乗りこなせないKMF。
分類的には、第10世代KMFになるとか何とか。
ちなみに、ランスロット・アルビオンや紅蓮聖天八極式が第9世代という扱いなので――この世界ではランスロット・アルビオンはともかく、紅蓮聖天八極式は開発されていないが――それらの次の世代という事になる。
そんなKMFだけに、当然のように乗る人物はかなり選ばれる。
それこそ、カレンやドロテアであっても何とか乗りこなせるかどうか、といった風に。
「なら、俺が乗ってみるか?」
「アクセルが乗ると、完全に乗りこなせるとは思うけど、普通のパイロットのデータを取るにはちょっとねぇ」
ラクシャータがそう呟き、カレンとドロテアが同意するように頷く。
こうして俺はギアス世界での生活を楽しむのだった。