「ふぅ。まぁ、取りあえずこれでいいだろ」
ホワイトベースにある俺の部屋で気絶しているガルマを眺めつつ、呟く。
ガルマはもし意識が戻っても暴れられないように手足を縛り、その上で猿轡までされている。
ホワイトベースに向かってガウが突っ込んでいる中で、強引に気絶させたガルマを連れてガウの各所が爆発しているのに紛れて脱出。
そのままホワイトベースによって更に攻撃をされている中で空中から飛び降りると、ガウの破片に紛れてホワイトベースに侵入。……いや、この場合は帰還と表現した方がいいのか? 誰にも見つからないように、影のゲートを使ってだったが。
ホワイトベースが空中に浮かんでいない状況だったので、影のゲートが使えたのは助かった。
ともあれ、そんな状況で自分の部屋に戻り、ベッドの上に身動き出来なくしたガルマを置いておいたのだ。
……もし永久石化光線を使った後でも自由に石化から解除出来るのなら、それが最善なんだが。
ただ、近衛がかなり回復魔法の腕が上がってきているので、もう数年修行をすればどうにか出来るかもしれないとか何とか、エヴァから聞いた覚えがある。
とはいえ、それも確実という訳ではないし、それまでガルマを石化させておくという訳にもいかないので、結局考えるだけ無駄なのだろうが。
ともあれ、これでガルマの意識が戻っても騒いだりといった事は出来ないので、問題はないだろう。
勿論、あまり長い間放っておく訳にもいかないので、ここでの戦いが片付いたらどうにかする必要もあるんだろうが。
そんな訳で、ガルマをその場に放っておくと再び影のゲートを使ってホワイトベースから脱出し、少し離れた場所で空間倉庫からピクシーを取り出し、乗り込む。
……もっとも、ピクシーを操縦してホワイトベースの方に向かった時には、既に多くのザクが撃破されており、シャアを含めて何機かのザクもこの場から脱出した後だったが。
「悪いな、ちょっと遅くなってしまった」
『遅くなってしまったじゃないですよ! 一体、戦闘中に急にどこに行ってたんですか!』
不満です! と思い切り態度に表した様子のアムロ。
こっちもその気持ちは分かるし、勝手な行動を取ったという思いはあるので、特に言い返すような事はしないのだが。
「悪かったな。ちょっと意思疎通に齟齬があったのは間違いない。次からは、出来るだけ気をつけるよ」
そう告げると、アムロも若干納得したような様子を見せる。
最初にセイラと会った時からそれなりに時間が経つが、アムロは俺に対抗心のようなものを抱いていた。
だが、その対抗心も大気圏突入時に俺に助けられた事で、ある程度は解消された。
……まぁ、完全にという訳ではないが。
それでも、以前より大分マシになったのは間違いない。
そんな訳でロングビーチでの戦闘は終了し、俺達は出来るだけ早くここから脱出する事になる。
北米軍が実行していたロス奪還作戦については、正直どうなったのかは分からない。
ただ、ホワイトベースとしては、北米軍に命じられた指示は立派に果たしたんだから、後は北米軍の行動次第だろう。
もっとも、ガルマがいなくなってしまったのだから、比較的簡単にロスを奪回する事は可能かもしれないが。
まぁ、ガルマがいなくなったと気が付くのにどれだけ時間が掛かるのかは分からない。
あるいは、ガルマがいないと気が付いた時には、既に混乱は収束していて攻撃する機会を逃したという事になってもおかしくはない。
それ程、一軍のトップがいきなりいなくなるという事は珍しいのだ。
ガルマが手柄を欲して前線に出て来るというのは、シャア関係の情報を知っている俺だからこそ、察する事が出来たのだが。
……今更だが、あれだけの事をして実はガルマがガウに乗ってませんでしたとかなったら、色々ともの凄い事になっていたような気がする。
ともあれ、ガウに乗っていたジオン軍の人間は全員が既に戦死しているので、当然のようにジオン軍ではガルマも戦死していると判断されているのだろう。
問題なのは、ガルマをどうするかだな。
ここで死なれると色々と不味いので、半ば衝動的に助けはした。
だが、ホワイトベースにいるところをブライトに……いや、他の誰にであっても見つけられる事になってしまえば、非常に不味い。
ガルマを捕虜にしたという事で、隠していた件については多少注意されるかもしれないが、後々の事を思えば連邦軍に引き渡すのもちょっと不味い。
……あるいは、連邦軍がガルマを入手すれば、それを条件にして停戦という可能性もないではないが、そうなると連邦軍の1人勝ちとなる。
いや、ジオン軍と連邦軍のどちらに勝って欲しいのかと言えば、当然のように後者だ。
だが、連邦軍にはゴップやレビルといった話の分かる相手がいるのと同時に、タカ派のような連中もいるんだよな。
ルナツーの一件でタカ派の勢力はかなり少なくなったが、だからといって他の場所にタカ派がいないとも限らない。
そういう意味では、ジオン軍と連邦軍の双方に戦力を消耗して貰う必要があるのも事実だ。
ジオンの独立戦争が終わった結果、続いて月に攻撃を仕掛けてくる……なんて事になったら困るし。
そうならないように、やはりガルマはどこかに隠しておく必要がある。
可能性としては……これから向かうハワイか?
ルナ・ジオンの領土である以上、ガルマを匿っておくのには最善の場所だろう。
うん、取りあえずその辺はゲラート辺りに任せておくか。
『アクセルさん? どうしたんですか? ホワイトベースに戻りましょう』
「ん? ああ。そうだな。……ザクの部品とかは、拾わなくてもいいのか?」
連邦系とジオン系の違いはあっても、連邦軍のMSはザクを研究して出来た代物だ。
そうである以上、ザクの部品であっても連邦軍のMSに流用出来る物はある筈だった。
『時間があればそれもいいんでしょうけど……』
なるほど。ガルマを倒したとはブライト達は知らないが、それでもジオン軍を倒した事は間違いない。
そうである以上、早急にここにいる連邦軍の戦力を排除すべきだと、そんな風に考えてジオン軍が追加の戦力を送ってこないとも限らないって事か。
……ガルマがいない以上、実際には安全なんだろうが。
あ、いや。逆にカリスマ性のあるガルマを殺したという事で、復讐をしようと考える者が出て来るという可能性もあるのか。
ともあれ、いつまでもここにいるのが不味いというのは、事実らしい。
「そうだな。出来るだけ早くここから離れた方がいいか」
そうアムロに通信を返し、ホワイトベースに向かう。
それにザクの部品を収納するという事は、パイロットの死体も引き取るという事になるし、面倒な事が起きる可能性は十分にある。
であれば、やはりここはザクの部品は諦めた方がいいか。
それに、いつガルマが気が付くか分からないし。
その辺の事情を考えれば、やはりここは放っておく方がいい。
ホワイトベースの格納庫に戻り、ピクシーを規定の場所に移動する。
カイのガンキャノンと、ガンタンク隊も既に格納庫に収納されており、見ている限りでは損傷を受けている様子はない。
今回は基本的に待ち伏せだった以上、それも当然の話か。
「じゃあ、整備を頼む。それと、90mmサブマシンガンの方の弾倉の補給もな」
「分かりました」
メカニックにそう告げ、格納庫から出る。
向かう先は、当然のように俺の部屋だ。
ブライト辺りには戦闘の報告書を出せとか言われそうではあるが、その辺は後回しでいい。
というか、傭兵的な存在なんだからその辺はやらなくてもいいのではないか? と思わなくもなかったが。
ともあれ、部屋に戻ってきたが……幸いな事に、まだガルマは気絶したままだった。
さて、取りあえず問題は……ガルマがここにいる限り、俺はベッドで眠ることが出来ないということでもあるし、ミナトや綾子との熱い夜もお預けになるという事か。
そうなると、出来るだけ早くハワイに連れて行った方がいいんだけどな。
いっそ、ホワイトベースが停泊している時とかに、影のゲートを使って先にハワイまで連れて行くか?
そんな風に考えていると、不意にガルマの眼が開く。
「……っ!?」
猿轡をされている為だろう。ガルマは目を覚まして俺を見た瞬間に何かを叫びそうになったが、それが言葉になるような事はなかった。
「静かにしろ」
そう声を掛けるも、再度ガルマは猿轡をした状況で何かを叫ぼうとし……
ふぅ、と溜息を吐くと共に、軽く床を……正確には、そこにある俺の影を踏む。
すると、即座に影から刈り取る者が姿を現す。
「っ!?」
その死を予感させる姿を見たガルマは、息を呑んで何も言えなくなる。
今のガルマにとっては、それこそ生きるか死ぬかといったところであると、そう認識させられてしまったのだろう。
そんなガルマを見てから、俺は刈り取る者を影に戻す。
こういうので呼び出されても、刈り取る者は不満を抱かないから助かるよな。
まぁ、不満を抱かないというのであれば、それこそグリとかもそうなんだろうけど……まさか、こんな場所でグリを召喚する訳にもいかないし。
そんな風に思いながら、俺はベッドの上で固まっているガルマを一瞥してから、机とセットになっている椅子に座る。
「さて、どうやら騒ぐのを止めたみたいだし、改めて状況を説明するぞ。ここはホワイトベースの中だ」
「?」
俺の言葉に、意味が分からないといった様子のガルマ。
そんなガルマの様子にふと疑問を抱き……もしかしてホワイトベースの名前はジオン軍でも知られてないのか? と思い直す。
「ホワイトベースというのは、連邦軍の新造艦だ。シャアに追われて北米に落下した軍艦と言えば分かるか?」
「っ!?」
その説明で十分だったのか、ガルマは俺に意志の強そうな視線を向けてくる。
へぇ。刈り取る者を見た直後にも関わらず、怯えるんじゃなくて、俺を睨んでくるのか。
度胸に関しては、合格点を与えてもいい。
とはいえ、今の様子を見るととてもではないが現状を理解しているとは言えないな。
そもそもの話、自分が捕らえられて連邦軍の艦内にいるという時点で、明確にピンチだとは思うんだが。
「ちなみに、自己紹介がまだだったな。俺はアクセル。アクセル・アルマー。そう言えば分かるか? 勿論、月のだ」
UC世界においては、当然のようにアクセル・アルマーという名前を持っている者がいないとも限らない。
だからこそ、敢えて月のと付け加えたのだが、その効果は十分だったらしい。
ガルマは、眼を大きく見開き、こちらに視線を向けてくる。
「そう、お前が想像している通り、シャドウミラーのアクセルだ。今の刈り取る者のような存在を召喚出来るのは、俺がアクセルであるという、何よりの証拠だろう?」
そう告げるが、それを聞いたガルマは猿轡を嵌めたままで、うーうーと呻く。
何を言っているのかは分からないが、何を言いたいのかという事は分かる。
「俺が、お前の知ってるアクセル・アルマーの外見と違うと、そう言いたいんだろう?」
その言葉に、ガルマは必死に頷く。
ルナ・ジオンの建国宣言の時に俺の姿を見たのであれば、今の姿を見てそのように思ってもおかしくはない。
とはいえ、月から何らかの理由で俺が外見を変えられるという情報が流れていても、そうおかしくはないのだが。
ともあれ、まずはガルマに俺がアクセルであるというのを納得させる為に、軽く指を鳴らして外見を10代半ばから20代の、それこそ建国宣言の時に出ていたような姿へと変える。
「さて、これでどうだ? これなら、お前も知ってるアクセル・アルマーだと思うんだが」
その言葉に、ガルマは大きく目を見開き、マジマジといった様子でこっちを見てくる。
UC世界で生きてきたガルマにしてみれば、魔法で外見を変えるというのはちょっと信じられないのだろう。
年齢詐称薬の存在を知ったら、一体どうなる事やら。
そんな風に思いつつ、ガルマが事態を理解して落ち着くのを待つ。
事態を理解出来ないとして暴れても、それはそれで特に問題はなかったりするんだが。
縛られて身動きが出来ない状況である以上、ベッドの上で暴れても……ああ、でも隣がアムロの部屋だというのを考えると、うるさいと言って俺の部屋に来る可能性も……ない訳じゃない、のか?
ともあれ、MSパイロット同士ということで、ブライトも俺とアムロの部屋を隣同士にしたのだろう。
そもそも、ホワイトベースでは個室を貰えるという時点で恵まれているのだから、まさかアムロの部屋と離してくれなんて言える筈もないし。
そうである以上、取りあえず今はガルマがアムロに見つからないようにする必要がある。
……ニュータイプ能力とかでガルマの存在を感知したりしないよな?
というか、食料はともかく風呂とかトイレとかをどうしたものやら。
そんな風に思いながら、俺はガルマに視線を向けるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:425
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1469