「……ガルマ・ザビ、ね。アクセル、あんた一体何を考えてるのよ」
若干……いや、若干よりもかなり大きな呆れと共に、綾子が俺に視線を向けてくる。
まぁ、それもしょうがないか。
俺の部屋に呼び出されて来てみれば、そこにはとてもではないが連邦軍の軍人には見えない相手。
綾子もこのUC世界で暮らした時間がそれなりに長く、ガルマはジオンの中でも人気が高く、当然のようにメディアへの露出度は高い。
そうなると、当然のように綾子もガルマの姿を何度かは見た事があり……つまり、俺の部屋にいたのがガルマであると、すぐに理解出来たのだろう。
そのガルマは、何故俺がここで綾子を呼んだのか理解出来ず、戸惑ったような視線を俺と綾子に向けている。
綾子の外見は間違いなく美女と呼べるものだから、それを考えれば何故このような人物が? と疑問に思ってもおかしくはない。
これでガルマが相手の実力を感じ取れるような能力の持ち主であれば、俺が綾子を呼んだ理由も分かるのかもしれないが、残念ながらガルマは士官学校を首席で卒業しても、そのような能力は存在しない。
いや、このUC世界においてそのような能力を持っているのはニュータイプ能力の持ち主を含めてほんの少数だろうから、それはおかしな話ではないのだろうが。
「ほら、さっきの戦闘で少し行方不明になっただろ。その時にちょっとな」
「……何かやってると思ったけど。それで、こんなお偉いさんを連れて来てどうするのよ? ここに匿ってるって事は、連邦軍に渡すつもりはないんだろう?」
「ああ。取りあえずハワイで軟禁でもしておく事にする」
ガルマの目の前で堂々と軟禁すると口にしているが、言われた方は特に気にした様子がない。
この短時間で色々と諦めたのか……いや、違うな。イセリナとかいう相手に対し、自分の手紙を早く渡してきて貰いたいと、そう思っているのだろう。
こっちとしては、騒がないでくれるのは便利だからいいんだが。
「そうね。それがいいか。それで、私を呼んだのは?」
「俺が今からガルマの恋人……じゃなくて婚約者に、ガルマが生きているという手紙を渡してくるから、その間にガルマが妙な行動をしないように見張っていて欲しい」
「あー……なるほど。アクセルがいなくなるのを考えると、万が一にも馬鹿な事を考えたりしたら、困るか」
俺と綾子の間で交わされている会話で、何故綾子がここに呼ばれたのかを理解したのだろう。ガルマが若干不機嫌そうな表情で口を開く。
「一度捕まった以上、逃げるような真似はしない。そもそも、そのような女性に仮にも軍人である私がどうにか出来る筈がないだろう」
まぁ、これはガルマが特別馬鹿だとかそういうのではなく、純粋にこの世界の人間であればそのように思ってもおかしくはない。
外見だけなら、綾子はとてもではないが本職の軍人に勝てるようには見えないしな。
身体付きも、毎晩の行為のおかげか、非常に女らしいものになっているし。
「言っておくけど、綾子はお前よりも強いぞ」
「は? 何を言っている」
俺の言葉に、理解出来ないといった様子のガルマ。
仮にも士官学校を主席で卒業した身としては、綾子に負けると言われて素直に納得したりは出来ないのだろう。
「綾子もこの世界の人間じゃない。MSとかそういうのがない代わりに、魔術とかがある世界の出身だ」
……とはいえ、綾子本人は別に魔術師とかそういうのじゃなかったんだが。
聖杯戦争に巻き込まれ、その結果として半サーヴァントといった存在になったのだ。
もっとも、ガルマにその辺まで全てを教えるつもりはないが。
「ぬぅ」
俺の言葉だけでは納得出来なかったのか、ガルマは不満そうな、そして疑わしそうな様子を隠しはしない。
「まぁ、俺が手紙を届けに行ったら、腕相撲でも何でもして試してみればいい。……それで、手紙の方はもういいのか?」
そう告げると、ガルマは頷いて俺の方に手紙を渡す。
とはいえ、ここはあくまでも臨時の部屋であって、紙の類はあっても封筒の類はないので、本当に普通の紙に書いただけの手紙だが。
趣味が悪いとは思ったが、それでもホワイトベースについての情報とかが書かれていないのかを確認する。
驚いたのは、手紙の内容に自分がシャアに裏切られたといった内容がなかった事だろう。
「てっきり、シャアの件についても報告すると思ったんだがな」
「……イセリナは、普段は大人しいが芯は強い。もし私がシャアに裏切られて暗殺されそうになったなどと知ったら、それこそシャアに復讐しようとしかねない」
それは芯が強いんじゃなくて、気が強いって言うんじゃないか?
そう思ったが、取りあえずその件については言わない方がいいので、黙っておく。
「なるほど。まぁ、取りあえずこれなら問題はないだろ。……それで、イセリナだったか? この手紙を渡す女には、どこに行けば会える?」
そもそも、俺はイセリナという女の顔も知らないのだから、それこそどこにいるのか、どのような人物なのかといった事を知らないと、届けようがない。
「イセリナは、ニューヤークの前市長の娘だ」
ニューヤーク。
ニューヨークじゃなくて、このUC世界においてはニューヤークなんだよな。
いやまぁ、それがUC世界だと言われれば、納得するしかないんだが。
「前市長の娘か」
玉の輿、もしくは逆玉。……いや、どっちも違うな。
考えてみれば、ガルマもイセリナも両方金持ちなんだから、そういうのは関係ないのか。
となると、政略結婚……いや、婚約はしたものの、結婚には反対されているという事は、それもないか。
その後、イセリナの家について聞き出し――部屋の位置を聞かれて不機嫌そうになっていたが、それはしょうがないだろう――た後で、俺は早速手紙を届けに行く事にする。
イセリナの性格がガルマから聞いた通りだと、その復讐の刃はシャアじゃなくてホワイトベースに向けられかねないという点が大きい。
「じゃあ、綾子。手紙の件が終わったら通信機で連絡をするから待っててくれ」
こうしている今もホワイトベースは移動している以上、何らかの目印のような物は必要だった。
また、シャドウミラーが使っている通信機は、ゲートを使っての通信なのでミノフスキー粒子があっても問題はない。
その辺りの事情を知らないガルマは、俺の言葉に不思議そうにしていたが。
「ここか」
ホワイトベースがいたのが、ロングビーチ近く。……正確には、ロングビーチから離れていくところだったので、イセリナの家までの移動は影のゲートを使えば一瞬だった。
ニューヤークの元市長ではあるが、現在はロスに邸宅を構えているらしい。
まぁ、北米を支配しているガルマの近くにいれば、色々な情報を素早く入手出来るという事なのだろう。
そんな訳で。現在俺がいるのはロス。
視線の先には、ガルマに言われた通りイセリナが住んでいるのだろう屋敷があった。
当然のように警備は厳しいのだろうが……それは、あくまでもUC世界の人間に対する警備であって、魔法を使う存在に対する対策は考えられていない。……当然だろうが。
そんな訳で、俺は特に緊張する様子もなく影のゲートに潜って屋敷の中に入り込む。
前もってガルマからイセリナという人物の部屋がどこにあるのかというのは聞いているので、特に迷う様子もなく、その部屋に到着した。
到着したのだが……
「ひっく、ひっく……」
既にガルマの戦死という知らせを聞いたのか、部屋の中には泣き声が響いていた。
服が皺になるのも構う様子がなく、ベッドに倒れ込むようにして泣いている女。
幸い、部屋の中にはイセリナと思われる女が1人だけだが……部屋の外、扉の外には、護衛か見張りと思しき者の気配がある。
さて、この状況でどうやってイセリナに接触するか。
イセリナが俺を見て悲鳴を上げれば、当然のように扉の前にいる人物が中に入ってくるだろう。
あるいは、部屋の中が盗撮や盗聴されている可能性も……いや、ないか。
イセリナの立場を考えれば、そのような真似が出来る筈もないだろうし。
よし、なら……
影のゲートの中から、掌サイズの炎獣を一匹産みだし、部屋の中に放つ。
部屋の中の電気は消えており、月明かりのみが光源となっている状況だったので、白炎で出来た炎獣の姿は非常に目立つ。
それこそ、泣いていたイセリナがすぐに気が付くくらいには。
掌サイズのリスの炎獣は、ベッドに倒れ込んで泣いているイセリナのすぐ側に到着する。
炎獣という名であっても、その熱さは触れても火傷しない程度でしかない。
……もっとも、海水浴をしても平気なくらいの気温である以上、若干暑いと思ってもおかしくはないのだが。
ともあれ、イセリナは自分のすぐ側に突然現れた炎獣に気が付き、顔を上げる。
もしこれで、炎獣が巨大な獅子の炎獣だったりした場合は、イセリナの口から悲鳴が上がっただろう。
だが、イセリナの前に今いるのは、あくまでも掌サイズのリスの炎獣。
だからこそ、イセリナも悲鳴を上げず、じっと見つめる。
「貴方、一体……?」
「炎獣だよ」
「っ!?」
その疑問に答えた俺に対し、イセリナは素早く叫ぼうとするが、それを遮るように、言葉を続ける。
「ガルマ・ザビはまだ生きている」
「っ!?」
再び息を呑むイセリナ。
ただし、今度息を呑んだのは、悲鳴ではなく驚きを隠す為か。
そのままじっと俺の言葉を吟味するように考え、やがて俺に……いつの間にか自分の部屋に入ってきた不審人物に向かって口を開く。
「それは、本当?」
「ああ。ガルマが乗っていたガウが爆破されるよりも前に、俺が突入して助けた。……これがガルマからの手紙だ」
そう言い、空間倉庫から取り出したガルマからの手紙をイセリナに渡す。
何もない場所から突然手紙を出した俺に驚いた様子のイセリナだったが、それでもガルマからの手紙という方に意識が向いているのか、驚きの声を上げるよりも前に手紙を受け取り、読み始める。
とはいえ、手紙そのものはそこまで長くはない。
ガルマが手紙を書く時間は、そんなになかったからというのが大きい。
そんな訳で、1分かそこらで手紙を読み終わったイセリナだったが、最初からまた読み直す。
あー、うん。しっかりと読みたいのは分かるんだが、出来れば一度こっちに意識を向けて欲しい。
「ガルマ様……」
再度手紙を読み終わったイセリナは、小さくそう呟く。
「ガルマが生きてるってのは、分かって貰えたか?」
「ええ。それで、貴方は一体……?」
「うん? 魔法を使ったので、大体察していると思ったんだけどな。このUC世界において、魔法を使える人物は限られている筈だ」
「……シャドウミラー……」
「正解。まぁ、今は連邦軍に雇われて、ホワイトベースで傭兵の真似事なんかをしてるけどな」
そう告げると、イセリナの表情は複雑なものになる。
まぁ、俺達がガルマを攻撃して殺そうとしたところを、自分達で助けるなんて真似をしてるんだから、それも当然だろうが。
「それで、ガルマ様は今どこに? やはりホワイトベースでしたか。その軍艦の中なんですか?」
「そうだ。とはいえ、別に捕虜って訳でもないけどな」
正確には俺の部屋に軟禁ってところか。
……まぁガルマが気絶している間に手足を縛って猿轡まで使ったのを考えると、ある意味で捕虜よりも待遇は酷いかもしれないが。
ああ、でも俺は別に南極条約とかには加入してないので、その辺は気にする必要がないのか?
連邦軍の軍艦に傭兵として乗ってる時点で、そんな訳ないだろと思うが。
「それで、ガルマ様はこれから一体どうなるのですか?」
「取りあえず、この戦争が終わるまではハワイにいて貰う事になると思う」
「では、私もハワイに連れて行って下さい」
「……気持ちは分かるけど、イセリナの立場だと、色々と問題がないか?」
仮にも前ニューヤーク市長の娘にして、財閥とかそういう場所でも名前が知られている人物だ。
そんな人物が急にいなくなってしまえば、当然のように周囲は心配するだろう。
特に父親はジオン嫌いとして知られているらしいし。
「その心配はいりません。お父様は……亡くなってしまったので」
「……は?」
イセリナの口から出たのは、予想外の言葉。
だが、イセリナの様子を見る限りでは、とてもではないが出鱈目という風には思えない。
つまり、その言葉は真実なのだろう。
「理由を聞いてもいいか?」
「昨夜起きた、あの戦い……連邦軍やゲリラの類を引き入れたのが、父だったとジオン軍に知られた為です」
「あー……なるほど」
そう納得するが、それでもいきなり殺すというのはちょっと疑問だ。
キシリア機関辺りが動いたのか? それなら、十分可能性はありそうだが。
「そんな一件の後でも、ガルマと一緒にいたいと?」
「はい。今の私には、もうガルマ様しかいません」
いや、他にも色々とあると思うんだが。
そう思うも、今のイセリナには何を言っても無駄だろう。
その辺は、それこそガルマとイセリナが2人で解決するべき問題だった。
「分かった。いますぐって訳にはいかないけど、ガルマがハワイに到着したら、迎えに来る。それまでは、ジオン軍とかに怪しまれないようにしておいてくれ」
取りあえず面倒臭い事はガルマに丸投げする事にして、そう告げるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:425
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1469