ロスにあるイセリナの家での用事を済ませて今度はイセリナが急いで書いた手紙を預かると、俺は再び影のゲートを使ってホワイトベースがいた場所まで移動する。
とはいえ、ホワイトベースは少しでも早くロングビーチから……ジオン軍と戦闘になった場所から離れようとしていたので、当然ながら俺が先程転移した場所に戻ってきても、そこには既にホワイトベースの姿はない。
もっとも、ホワイトベースがどこにいるのかというのを見つけるのは、そんなに難しい話ではないのだが。
少しでも早く離れようとしているので、どこかに隠れたりといった真似は……取りあえずしていないと考えてもいい。
それも絶対ではないので、もし見つける事が出来なければ綾子に渡した通信機を使って場所を確認する事になったのだろうが。
ただ、幸いにも特にそういう事はしていなかったらしく、ホワイトベースを見つける事に成功するのだった。
「ぐぬ……」
何とかホワイトベースに乗り込む事に成功し、自分の部屋に戻ってみると、そこではガルマが悔しげに綾子の方を見ているという光景が広がっている。
何だかドップとかルッグンが接近しているのと間違われないように注意しながら移動してきたのが、馬鹿らしくなるような光景だ。
「ガルマ」
「ん? あ……」
呼び掛けられてようやく気が付いたのか、ガルマが俺に視線を向け、視線を逸らし……だが、すぐに再び視線を向けてくる。
「アクセル。私の手紙はイセリナに無事渡すことが出来たのか?」
「ああ。……ほら、取りあえず返事を貰ってくる事は出来たぞ」
そう言い、イセリナから受け取った手紙をガルマに渡す。
封筒も何もない状況だったガルマの手紙と違い、イセリナの部屋にはしっかりと封筒の類があり、またイセリナが書いた手紙ならルナ・ジオンやシャドウミラーにとって重要な情報が書かれていないという事もあり、特に検閲の類はしていない。
「……」
そんな手紙をガルマは無言で受け取ると、ベッドに座って壁に背中を預けて目を通す。
その表情に浮かぶのは、期待と後悔、歓喜と無念。そんな様々な表情。
ここでホワイトベース撃沈という功績を挙げ、イセリナとの結婚を狙っていたガルマにとって、今の状況は色々と思うところがあるのだろう。
「で、イセリナという人はどんな人だった?」
「そうだな……お嬢様らしいお嬢様といったところか」
「お嬢様、ね。私達の中だと、あやかや千鶴みたいな? ああ、コーネリアもだっけ?」
「そこで凛の名前を出さない辺り、親友だよな」
凛の家は洋館……それこそ屋敷と呼ぶに相応しい大きさであり、それだけを見ればお嬢様と呼んでも間違いない。
何枚も猫を被っており、あまり知らない相手にはそれらしく接するしな。
だが、実際には宝石魔術の為に資金が必要だという事もあり、資金繰りがかなり大変だったらしい。
没落したお嬢様か?
……それを言えば、ガンドが連続で飛んでくるだろうけど。
「ちなみにコーネリアはお姫様じゃなくて、皇女様だな。……女王様と言いたくなったりもしないでもないが」
この場合の女王様というのは、性的な意味……SM的な意味での女王ではなく、本来の意味での女王だ。
今のコーネリアは、まさに女王と呼ぶに相応しい風格がある。……ベッドの中では可愛いんだけどな。そのギャップとか。
「ともあれ、そうだな。……あやかや千鶴を、精神的にもっと打たれ弱くした感じか」
ガルマ曰く、芯は強いという事だったが、それでもやはりあやかや千鶴に比べれば数段落ちる。
もっとも、色々な意味で潜ってきた修羅場の数が違うのだから、それはしょうがないのだろうが。
「ふーん。まさにお嬢様って感じだね」
何かを思い出すように、しみじみと呟く綾子。
「何だか、色々と言いたげな様子だな?」
「いや、そういうお嬢様らしいお嬢様ってのは、あまり付き合いがなかったから。同じ市長の娘でも、とてもお嬢様と呼べないような高校の同級生とか、凛にジャーマンスープレックスを決めるお嬢様とかなら知ってるんだけど」
どんなお嬢様だ、それは。
一瞬そう突っ込みたくなったが、もしそれを言ったら色々と面倒な事になりそうだったし、何よりガルマがちょうど手紙を読み終わったところだったので、その辺の話は止めておく。
「どうだった?」
「……イセリナの父上が死んだのか」
「らしいな」
ガルマの言葉に、短くそう返す。
イセリナにしてみれば、自分の婚約者だけではなく、父親まで死んでしまったのだ。
当然のように、ショックが大きいだろう。
ガルマとの結婚に反対をしていたのを考えると、イセリナと父親との関係は決して良好な訳ではなかった筈だ。
それでも、やはり父親である以上は、悲しむのは当然だろう。
お互いに憎み合っているのであればともかく、そこまではいってなかったみたいだし。
「そうか。……そうか……」
そう告げ、ガルマは手紙から視線を逸らし、天井を見る。
イセリナの父親について何か思うところがあるのか、それとも単純に悲しんでいるイセリナの側にいられない自分を情けなく思っているのか。
そのまま数十秒が経過すると、やがてガルマの視線がこちらに向けられる。
「この手紙には、私がハワイに連れて行かれるという事になっているが?」
「そうだな。ガルマの身の安全やら、俺達……連邦軍じゃなくてルナ・ジオンやシャドウミラーにとって、一番都合がいいのはハワイにいて貰う事だし」
もっと正確には、月に連れていくのが一番いいのかもしれないが……月だとサイド3と近いというのもあるし、サイド3から移住してきた者も多く、そういう者達は当然のようにガルマの顔を知っているので、万が一を考えると避けたい。
いっそ、バルジやリーブラ辺り……もしくは、ホワイトスターにでも連れていくという選択肢もないではないんだが、それは今は考えないようにしておくとしよう。
「そうか。それで、この手紙にはイセリナもそのうちハワイに来ると、そう書いてあるが……可能なのか?」
可能なのか? と聞いてはいるが、その視線にあるのは期待の色だ。
そんなガルマの期待に応えるように、俺は頷いて口を開く。
「可能だ。そもそも、ガルマの手紙を持っていっただろ? なら、同じような事が何で出来ないと思うんだ?」
「それは……」
俺の言葉に、ガルマが黙り込む。
魔法についてそこまで詳しくないガルマだけに、その辺を疑問に思ってもおかしくはない。
「ともあれ、そんな訳で……ガルマをハワイで匿う事が出来たら、イセリナを連れて来る用意はある。とはいえ、あくまでもイセリナがそれを望めばだけどな」
今はまだ感情に流されているイセリナだが、明日、明後日といったように時間が経てば、ある程度落ち着いてくる。
そうなった時に、果たしてそれでも今の生活を捨ててガルマと一緒にいる事を選ぶのかどうかは……どうなんだろうな。
いや、生活レベルを落とすというのもそうだが、この場合は北米を捨てて……つまり、今までの自分の友人や知り合いを捨ててガルマの下に走るという事になる。
それは、イセリナにとってもかなり辛い選択なのは間違いない。
勿論、独立戦争が終わった後でガルマの存在を公に出来るような時がくれば、イセリナも友人と連絡を取れるようにはなるだろう。
だが、それでもその友人達がイセリナを快く迎えてくれるかどうかは分からない。
その全てを承知の上で、ガルマと一緒にいるというのを選ぶのなら、俺もそれ以上は何も言わないし、素直にハワイまで連れて行くだろう。
「イセリナが、どちらを望むのかは分からない。分からないが、私は愛する女性が望んだ事であれば、素直に受け入れるつもりだ」
きっぱりとそう断言するガルマの姿に、それを見ていた綾子が口笛を吹く。
愛に生きると、そう断言したのが清々しかったといったところか。
「お前がそう言うのなら、それはそれでいい。……ともあれ、ガルマはハワイに到着するまでは大人しくしてて貰うけど、それでいいな?」
「なぁ、アクセル。ロスまで影のゲートを使った転移で移動出来たのなら、それこそ今からでもガルマをハワイまで連れて行ってもいいんじゃないか?」
不意に、綾子の口からそんな疑問が出る。
そう言われてみれば、別にホワイトベースで一緒に行く必要はないんだよな。
ホワイトベースにいれば、それこそ隣の部屋のアムロとかに見つかる可能性もあるんだし。
それに、ハワイにいるゲラートは俺がシャドウミラーの人間で、その上で魔法使いであるという事も知っている。
その辺の事情を考えれば……
そう思い、俺は綾子の考えを採用しようとしたその瞬間、ガルマが口を開く。
「待ってくれ。出来れば、私はこの木馬……いや、ホワイトベースか。このホワイトベースと共にハワイに向かいたい」
まさか、ガルマの口からそんな言葉が出るとは思っておらず、本気か? とガルマに視線を向ける。
本職の軍人は多くなくても、ホワイトベースが連邦軍の軍艦である事は間違いない。
ましてや、ジオン公国でも人気の高かったガルマを殺したと、そうジオン軍には認識されてるのだ。
そうである以上、恐らくこれからホワイトベースはジオン軍に執拗に狙われるという事になりかねない。
そんな場所にいれば、可能性は低いとはいえ、ホワイトベースの撃沈にガルマが巻き込まれる可能性も十分にある。
ましてや、ガルマを大っぴらに部屋の外に出す訳にはいかない以上、色々と面倒な問題が起きるのも事実だ。
「何でそんな風に考えた? このホワイトベースに乗っていれば、危険な目に遭うのは確実だ。それなら、今すぐにでもハワイに移動した方が楽だとは思わないか?」
「そうかもしれない。だが、それでは……私が、私自身を納得させる事が出来ない」
自分を納得させる事が出来ない、か。
その気持ちは分からないではない。
親友だと思っていたシャアには裏切られ、ましてやそのシャアは実はジオン・ズム・ダイクンの1人息子だったというのだから。
そして、婚約者のイセリナの父親までもが殺された。
特に後者の一件は、ガルマの性格から考えて手を下したのはガルマの部下ではなく、キシリア機関の者の可能性が高い。
それこそ、この一晩でガルマの周辺の状況は大きく……それこそ、どれくらいと考えるのが馬鹿になる程に変わった事を意味していた。
そんな状況であるだけに、今のガルマにとっては考える時間が必要なのだろう。
……その考える場所が安全なハワイではなく、何故かホワイトベースだというのは、若干思うところがないでもないが。
「ガルマの気持ちは分かった。けど、俺がそれを考えてやる必要はないと思わないか? そもそもの話、死にそうだったガルマをガウから助けただけで、十分ガルマの為に動いていると思うが。それに、ガルマの手紙をイセリナに渡し、イセリナからの返信も持ってきてやった。これでも、随分とガルマの為に働いていると思わないか?」
「それは……」
俺の言葉に、ガルマが黙り込む。
ザビ家の人間として、自分の為に誰かが動くのは当然と、そう思っていた一面もあるのだろう。
だが、今の状況でガルマをわざわざホワイトベースに残すのは、それこそ危険要素しか存在しない。
そうである以上、こちらが危険を冒すに相応しい利益を出して貰わなければ、こちらとしても無理をしようとは思わなかった。
そもそもの話、ガウで死にそうだったガルマを助けた時点で、こちらとしては十分にガルマの利益になっている行動を取っているのだから。
「何が望みだ?」
「そうだな。取りあえずジオン軍が開発した全MSのデータと、その実物を……5機ずつ貰うか。それと、何か俺達にとって利益になる情報でもあれば、尚いいな。どうする?」
「MSと言っても、今の私は死んだ事になっているのだろう? であれば、MSを渡すというのは難しいと思うが」
「その辺は、ガルマに書類を作って貰えばいい。そうすれば、シャドウミラーの政治班がジオン軍と上手く交渉してくれるだろうよ」
MSを渡すというのは、ジオン軍にとっては決して許容出来る事ではないだろう。
だが、ジオン軍……いや、ジオン公国は、月とシャドウミラーによって資源を握られている。
勿論、完全にという訳ではなく、オデッサを始めとして地球にあるジオン軍の占領地からは、大量の資源がサイド3に届けられてはいるのだが、それでも月から買ってる資源は決して少なくないのだ。
敵対組織という事で、連邦軍よりも高く売ってはいるが、それによってジオン軍が助かっているのも、間違いのない事実。
そうである以上、ガルマの直筆の書類の類があるのであれば、それを断る事は……やろうと思えば出来るかもしれないが、実際にそれをやろうと思わない可能性の方が高い。
ガルマを可愛がっているドズル辺りならともかく、ギレンやキシリアといった面々なら、利益と不利益を計算して、色々と交渉は必要かもしれないが、最終的には認める筈だった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:425
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1469