「うわぁ……海だ……」
そう呟いたのは、誰だったのか。
現在、ホワイトベースは北米を脱出する事に成功し、ハワイに向かっていた。
ユーラシア大陸に向かう前という点では、若干回り道になるのだが。
それでも現在のホワイトベースの状況を思えば、ハワイに向かうという選択肢が最善なのは間違いない。
数日前に補給に来たマチルダ率いるミデア隊のおかげで、幸いにもホワイトベースは7割程の力を発揮出来るようにはなっている。
とはいえ、その7割というのもあくまで応急処置なのだが。
そんな状況でユーラシア大陸に向かうのは、自殺行為でしかない。
連邦軍にとっても最新鋭のピクシーを依頼料として俺に渡すといった真似をする以上、ホワイトベースでユーラシア大陸に行けば、絶対に何らかの動きがある筈だし。
俺とブライト、マチルダが行った話し合いは、ハワイに寄ってホワイトベースを出来る限り修理するというのが前提となっていた。
そんな訳で、現在ホワイトベースは太平洋を横断している最中だったのだが……海を見るのは、別にこれが初めてという訳でもないだろうに。
そもそもの話、北米では短時間ではあったが、海水浴を楽しむ事が出来たのだ。
いや、あの時は結局途中でアムロがジオン軍の勢力圏内に入ったおかげで、結局休暇は数時間で終わったんだから、海水浴を楽しめなかった奴もいるのか?
そう考えると、何気にアムロは恨まれてもしょうがないことではあるんだよな。
もっとも、砂浜から見る海と現在のように海を移動中のホワイトベースから見る海では、色々と違うところも多いのだろうが。
「そう言えば、ジオン軍って水中用のMSも開発してるんだよな? それって、どんな具合なんだ? もしこの状況で襲ってきても、対処出来るのか?」
隣に来ていたリュウが、そう俺に聞いてくる。
何故俺に? と思わないでもなかったが、月がジオン公国とも取引をしているのは半ば公然の秘密に近く、そして俺がアクセル・アルマーであると知っていれば、当然のようにその辺の事情について聞きたくなるのだろう。
「そうだな。それなりに力を入れてるってのが、俺の知ってる情報だ」
そもそも、地球は7割が海という惑星だ。
当然ながら、それだけ水中用MSの出番というのは多くなる。
実際、ハワイでもシャドウミラーから譲渡された水中用MSを普通に使われているし。
宇宙でのMSは、基本的にヅダに機種変更が行われている。
本来なら、この辺は結構大変なのだが……幸か不幸か、ルナ・ジオン軍に所属している軍人はジオン軍に比べると少数精鋭だ。
……まぁ、宇宙の蜉蝣の異名を持つシーマに憧れたりして、急激に軍の志願者が増えたのは事実だが、そちらはまだMSのパイロットとしての訓練が終わっていない者が多い。
結果として、ジン、シグー、ストライクダガー、リーオーといった機体を使っていた者はそこまで多くなく、また宇宙の拠点もルナツー占拠前は月だけで、生産したヅダを運ぶのにもそこまで苦労はしなかった事により、機種転換は上手くいった形だ。
だが、そんな宇宙に比べると地球で唯一月の勢力下にあるハワイは、島国の集まりである以上、どうしても普通のMSよりも水中用MSの類が必要となり、SEED世界やW世界で開発された機体が活発に使われていた。
一応ジオン軍から……あれ? 兵器メーカーの方だったか? ともあれ、譲渡されたズゴックの類もあるが、どうしてもそれを運用するには部品とかそういうのが問題になってくる。
この戦争が終わった後で、ジオン公国にある兵器メーカーを囲い込む事が出来れば、その辺もどうにかなりそうなんだが……それは今更の話か。
「そうか。やっぱりジオン軍は水中用のMSを……」
「連邦軍でも、その辺の情報はそれなりに知られている筈だけどな」
実際、水中用MSは現在開発中という訳ではなく、普通にもう運用されているのだ。
月で傍受出来るジオン公国のニュースでも、水中用MSが連邦軍の潜水艦部隊に大きな被害を与えたとか、そんな風に流されていた筈だ。
「聞いた事はあるような気がするな。……ただ、今までは宇宙だったから、そこまでは気にしてなかったんだよ」
「あー……うん、なるほど。ともあれ、そういう訳で連邦軍も水中用のMSは開発した方がいいと思うぞ」
「俺に言われても困る。それこそ、アクセルはゴップ提督と仲がいいんだろう? なら、アクセルからゴップ提督に言ってくれないか?」
リュウのその言葉に、何故か周囲で俺とリュウの話を聞いていた他の軍人達も頷く。
お前達、海に感激してたんじゃなかったのか?
「機会があったらな。というか、俺が何か言わなくても、ゴップはその辺は承知していると思うんだが」
何だかんだと、ゴップは有能なのだ。
当然水中用MSについて考えていても、おかしくはない。
というか、水中用MSという一点においては、ぶっちゃけジオン軍よりも連邦軍の方がホームベースの地球に海がある分、ノウハウはありそうだが。
サイド3とかにも海洋コロニーの類はあるらしいが、それでもやはりコロニーと海では、どうしても差が出て来てしまう。
特に深海……とまでいかなくても、ある程度の深さの海という環境を用意するのは、コロニーでは難しいだろう。
「だと、いいんだがな。……海に対するノウハウはあっても、MSに対してのノウハウはどうしてもジオン軍に劣る。……どこぞのお月様が連邦軍に協力してくれれば、色々と楽なんだろうけど」
「そのどこぞのお月様は、ハワイでホワイトベースを修理するんだから、十分協力してると思うが?」
今のディアナには、プロトタイプガンダムの調査やジオン軍と連邦軍のMS技術の融合という点で忙しく働いているので、連邦軍に人を派遣するような余裕はない。
特にヅダをフィールドモーターで動くようにしたり、ヅダ用のビームライフルを開発したりといったこともしている。
SEED世界やW世界の水中用MSを売却するという方法も、ないではないが……そうなると、当然のように技術が盗まれる可能性が高い。
将来的にそのような事になるのはしょうがないにしても、その時を出来るだけ遅くしたいと思うのは当然だった。
「ぬぅ。それは分かるが……」
「きゃーっ! あははは、こっちこっち! ほら、ハロ!」
「ハロ、ハロ、マテ、キッカ、キッカ」
不意にそんな声と共に、ハロ、カツ、レツ、キッカの3人と1機がやってきて、俺とリュウの話は途中で途切れる。
まぁ、北米でのピリピリとした時間が終わって、こうして海の上に出て来たんだと思えば、はしゃいでもおかしくはないか。
「こら、待ちなさい!」
そんな3人と1機を、フラウが追いかけていく。
忙しい時はホワイトベースのブリッジでオペレータをやっているフラウだったが、今は特に敵もおらず、安心して進む事が出来るので、特に問題はないのだろう。
……原作でも、北米を脱出してユーラシア大陸に向かう時は、こうして特に何か問題が起きたりせず、ゆっくりとした時間だったのだろうか。
そんな風に思いながらも、隣を見る。
そこでは、リュウがキャーキャー言いながら走り回っている子供達を見ながら、小さな笑みを浮かべていた。
リュウも、戦争戦争、また戦争といった感じで戦い続けていたから、こういう光景を見て心が安まったのだろう。
「海、か。初めて見た時は驚いたが、それでも何度も見れば飽きてしまうな」
部屋に戻ってくると、そこではミナトとガルマの2人がチェスをしていた。
そうなると、現在ホワイトベースを操縦しているのはミライなのだろう。
ジオン軍に襲われるといった事もないので、特に問題はないのだが。
そんな状況で、海を見てきたと言ったところでガルマが口にしたのが、今の言葉だ。
地球方面軍司令という立場にある……いや、あったガルマにとって、海というのは既に見慣れたものなのだろう。
ミナトの方は、少しだけ残念そうな表情を浮かべている。
「あら、私はアクセルと一緒に海を見てみたかったわ」
「ふんっ、私に負ければ、いつでもアクセルと海を見る事は出来るだろう」
盤面を見ながらそう告げるガルマだったが、俺が見たところではミナトが有利に戦況を進めている。
とはいえ、俺はチェスに関しては大まかなルールを知ってるくらいだ。
つまり、取りあえず打てるといった程度でしかない。
「俺が見た感じ、ミナトの方が有利だと思うんだけどな。ガルマはここから逆転の手があるのか?」
「当然だろう! 幾ら何でも、私がこのまま負けるなどという事は、有り得ない!」
「なら、ちょっと楽しみにしていようかしら。……ふふっ、ここからどうするのかしらね」
そんなミナトの言葉に、ガルマはぐぬぬ、といった表情を浮かべながら、盤面を睨み付ける。
俺が見ても戦況はミナトが有利なのだが、もっとしっかりと詳しい者が見れば、それこそ戦況が有利といった様子ではなく、半ば勝負が決まっている状況なのか?
そんな中で数分考えたガルマが、やがてゆっくりと自軍のポーンを動かす。
「あら」
そんなガルマの様子に、小さく呟くミナト。
それが一体どのような意味を持っていたのか、それはチェスにそこまで詳しくない俺でも理解出来た。
つまり、ガルマが打った今の手は、決して良手という訳ではなく、寧ろ悪手と呼ぶべき手なのだろう。……多分。
実際、それを見たミナトがすぐにルークを動かす。
「ぐぬぬぬ」
ガルマの口から悔しそうな声が出る。
ぐぬぬ、とか言う奴ってあまりいないよな
いやまぁ、ガルマのように他にも何人かいるのは事実だが。
明日菜とかも、時々ぐぬぬとか何とか言ってるし。
「ならば……こうだ!」
数分の考えの後、ガルマがナイトを動かす。
だが……そうしてナイトを動かした光景を見たミナトが浮かべたのは、笑み。
それこそ妖艶なという言葉が相応しいような、そんな笑みだった。
「まさかその手を打ってくるとは思わなかったわね。……はい、チェックメイト」
「なぁっ!?」
完全に予想外といった様子のガルマ。
だが、ミナトが妖艶な笑みを浮かべ、そして盤面を見たガルマがこれ以上は何も言えなくなっているのを見る限りではガルマの負けは決まったらしい。
「これで私の4連勝ね。どうする? まだやる? それとも他のボードゲームでもいいけど」
「いらん、もういい」
不満たっぷりの様子のガルマ。
まぁ、ミナトの様子を見る限りでは、どうしようもない程、一方的にやられていたみたいだしな。
ミナトは遊んでいるような様子に見えるが、実は頭がいい。
それは、ナデシコ世界で多くの資格試験に合格していた事を思えば明らかだろう。
……ガルマも士官学校首席卒業なんだから、頭はいいと思うんだが。
この場合は、それぞれの経験が強く出たといった感じか。
「ガルマもミナトには敵わない、か」
「……ふん」
俺の言葉に髪を弄りつつ、不満そうに鼻を鳴らすガルマ。
そんな何でもない行為なのだが、そのような行為であってもガルマはその生まれのせいか、何故かどことなく仕草に上品さが滲み出る。
ガルマ本人は、そんな事を言われると面白くはないのだろうが。
「ミナトに負けてるようだと、シャドウミラーのメンバーに勝つのは難しいぞ?」
別にミナトがボードゲームの類で一番弱いという訳ではない。
だが、それでもミナトより強い奴はそれなりの数存在するのも事実だ。
……もしガルマをシャドウミラーの本拠地たるホワイトスターに匿うような事になったら、その辺をちょっと試してみても面白いかもしれないな。
ふと、そう思う。
もっとも、ガルマを匿うのはハワイと決めている以上、ホワイトスターに行く事があるのかどうかは、微妙なところなのだが。
「その時までには、私も実力を上げておくさ」
負けず嫌いな様子を見せるガルマだったが、実際にもしそんな事になったらどうなるのかは、ちょっと気になるところでもある。
「なら……」
今度は俺と何かゲームでもしてみるか。
そう言おうとした瞬間、部屋の通信機が着信を知らせる。
ガルマも既に慣れたもので、即座に部屋の隅に避難する。
とはいえ、実はこれって連邦軍としての通信なんだから、ガルマに聞かせるのは不味いんだよな。……本当に今更の話だが。
そう思って通信のスイッチを入れると、そこには切羽詰まった様子のブライトの姿。
今の状況で、ここまでブライトが緊張するような事があったか? と疑問を抱くが、ブライトの性格から考えて、これが悪戯だったりする事はない。
そうなると……
「何があった?」
『ガルマ・ザビの国葬を中継していて、ギレンが演説をするそうだ。見ておいた方がいい』
そう、告げる。
その言葉を聞いたガルマの表情は、ショックを受けているようでいながら、納得もしてるような……そんな奇妙な表情だった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:425
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1469