アプサラスの試験が終わった日の夜、俺は……いや、俺だけではなく、ミナトと綾子も含めて、現在俺達はパーティに参加していた。
いや、パーティというよりは宴会と表現した方がいいのか?
ともあれ、今日サハラ砂漠で行ったメガ粒子砲の発射実験は見事に成功した。
幾つか改善の余地が出たところもあったらしいが、それはあくまでもよりアプサラスの性能を高めるという意味での改善となる。
小さな不具合の類はあったが、修正するのに時間は掛からないらしいし。
「この様子では、それこそ今のままでもすぐに戦場に出せそうな完成度です。これも、アクセル代表達のおかげですよ」
ワインを飲みすぎたのか、若干顔を赤くして告げてくるギニアス。
その隣では、ドレスを着たアイナが少し困ったように……それでいて、嬉しそうに兄の姿を眺めていた。
「俺達は資金や資源を提供したが、きちんとした結果を出したのは、あくまでもお前達だ」
「そう言って貰えると、嬉しいです」
言葉通り、本当に嬉しそうな様子を見せるギニアス。
実際、アプサラスを開発するにあたって、俺達は資金や資源を出した。
そのお陰で技術的な蓄積をしっかりと作る事が出来て、それによって結果が出たのだ。
新しい兵器を作るにしろ何にしろ、基礎技術というのは重要なものだ。
それは戦闘技術という点でも変わらない。
基礎を疎かにした者が新しい技術を得ようとしても、それは小手先のものにしかならないだろう。
「それで、アプサラスは具体的にいつくらいに使えそうだ? 勿論Ⅲじゃなくて、Ⅱの方で」
今日のアプサラスの試験結果を見て、技術者の何人かがアプサラスは現状のままでも実戦に出す事が出来ると、そう言っていた。
さっきギニアス本人も似たようなことを言っていたし。
ユーラシア大陸では、間違いなく大規模な戦いとなる。
ゴップがこちらに依頼してきた以上、それはほぼ確実だろう。
自分達だけでどうにか出来る自信はあるのかもしれないが、同時に少しでも戦力が欲しいと、そう考えてピクシーを俺に渡してまで依頼をしてきたのだから。
そうである以上、その作戦でアプサラスを使いたいと考えるのは、当然だった。
少なくても、今日見たメガ粒子砲の一撃は後方からの援護射撃という点では、ガンタンクやガンキャノンを遙かに超える威力を持つ。
……まぁ、メガ粒子砲は実弾のように山なりに撃ったりといった真似は出来ないのだが。
SEED世界のビームなら、曲げられる技術が確立されてるんだけどな。
そういう点ではちょっと使いにくいかもしれないが、それでもあの威力は魅力的だ。
とはいえ、連邦軍が戦う相手となると、その敵はジオン軍だと考えてもいい。
あまり軍人らしくないアイナはともかくとして、ガトーやノリス辺りは、ジオン軍と戦うという点に大きな抵抗を覚える可能性がある。
そうなると、アプサラスだけを派遣して貰った方がいいのかもしれないな。
「そうですね。大きな改修は必要ありませんし、改修する部分に関しても基本的にはすぐに出来る場所です。改修が終わった後で異常がないかどうかを改めて確認し……数日中には使えるかと」
そう言いながら、ギニアスの視線には強い好奇心の色が宿る。
アプサラスを実戦で試す機会があると、そう判断しているのだろう。
「そうか。なら、近いうちにちょっとアプサラスの派遣を頼む事になるかもしれないから、その準備をしておいてくれ。……ただ、敵は恐らくジオン軍だ。気が向かない奴に強制するような真似はするなよ」
「分かっています」
俺の言葉に頷くギニアス。
取りあえず、これでガトー達が無理にジオン軍と戦う必要はなくなるだろう。
アプサラスの護衛が本当に必要だったら、ハワイにいるメギロートやバッタを使うという方法もあるが。
ガトー達が無理そうなら、ゲラートに話を通しておいた方がいいだろう。
「なら、頼んだ。……まぁ、今日はその辺の事は気にせず、精一杯楽しんでくれ。アプサラス計画で、今までは皆が忙しかっただろうからな」
そう言い、空間倉庫の中からワインを取り出す。
それは、W世界でデルマイユから盗んだ物の1つだ。
俺はアルコールの類を飲めないので、持っていても意味はなかったのだが……こういう時には使い道があったようで何より。
「これは……?」
「異世界のワインだ。このUC世界においては、正真正銘これ1本しかない代物だ」
とはいえ、W世界とUC世界は同じガンダムというMSを使っていたりする事もあってか、共通点も多い。
そうなると、もしかしたらデルマイユが持っていたこのワインと同じ銘柄の物はあってもおかしくはない、のか?
「ありがとうございます。……皆! アクセル代表がこの世界にはたった1つしか存在しない、異世界のワインを提供してくれた! 連邦軍の元帥でも、連邦議会の議長でも、ジオン軍の総帥ですら飲む事が出来ない、そんなワインだ!」
『わあああああああああああああああああっ!』
ギニアスの言葉に、話を聞いていた者達全員が歓喜の声を上げる。
……中には、もう酔っ払って適当に流しているだけの奴もいるのだろうが。
ともあれ、そのワインを飲んだ者達からの評判は非常に高い。
デルマイユが集めていたワインだけの事はある、といったところか。
俺には理解出来ないが、ワインというのは高級な物になれば1本で数百万円とかするのもあるらしい。
それこそ、それ以上の値段のワインも。
このワインはそんな値段にはならないと思うが、それでもこれだけ皆が喜んでいるのなら、それでいい。
提供したワインは1本だけなので、皆がグラスに1杯も飲めてはいないが。
「アクセル代表、ありがとうございます。これで皆の士気も上がり、アプサラスの開発はもっと進むでしょう」
「頑張ってくれれば、俺もワインを提供した甲斐があるよ」
そうして、俺はギニアス達と共にパーティ、宴会、打ち上げ……そんな時間を楽しむのだった。
アプサラスのメガ粒子砲の実験を行った翌日……俺は、数日ぶりにホワイトベースにやってきていた。
取りあえず差し入れとして、ロコモコバーガーやロコモコ丼のようなハワイの名物を幾つか持っていたが……
「いや、嬉しいか嬉しくないかで言えば、嬉しいんだけどな」
ロコモコ丼を食べながら、リュウは微妙な表情で俺の方に視線を向けてくる。
箸の扱いも上手い辺り、リュウはこういう丼料理も食べた事があったのだろう。
リュウの場合は名前からして日本風だし。
「ステーキとかの方が良かったか?」
「いやいや、ステーキは焼きたてが上手いんであって、冷たいステーキはちょっとね」
俺の言葉にカイがそう言ってくるが、空間倉庫に入れておけばいつでも焼きたてのステーキが食べられるんだがな。
まぁ、気分的にこういう場所でステーキを食べてもあまり美味くないと、そう思ってもおかしくはないけど。
ちなみに、現在俺達がいるのはホワイトベースの格納庫。
多くの者が現在はホワイトベースの修理で働いている場所だ。
ハワイに駐留するルナ・ジオン軍の技術者やメカニック達の数が大半となっている。
そんな訳ではあるのだが、現在はそのような者達も揃って全員がロコモコバーガーやロコモコ丼を食べて一休みしている。
「今度は焼きたてのステーキを持ってきてやるよ。……それで、ホワイトベースの様子はどうなんだ?」
「良くも悪くも、予想通り……といったところか」
リュウがしみじみと呟く。
予想通りという事は、ルナ・ジオンにとってはそう悪い話じゃない。
思う存分ホワイトベースのデータを取る事が出来るし、ガンダムやガンキャノン、ガンタンクといったMSのデータもまた同様なのだから。
特に教育型コンピュータの類は、ルナ・ジオン軍でも採用することが出来れば将来的に非常に便利な代物になるだろう。
もっとも、かなりのコストが必要らしいので、もし教育型コンピュータを使うにしても、それは恐らく限られたエースパイロット……それこそラルやシーマ、ガトー、その他諸々といった面子になるのだろうが。
「そうか。そうなると、問題はマチルダ率いるミデア隊がいつハワイまでやって来るかって事だな」
ミデア隊がホワイトベースの部品を持ってやって来るのなら、それが来ればホワイトベースの修理は加速度的に進む。
そうなると、当然のようにホワイトベースがハワイを出発するのも早まり……アプサラスの方がちょっと問題になったりもするんだよな。
そこまで大きな改修はないって話だったから、あまり時間は掛からないだろうけど。
「そう言えば……なぁ、アクセル。手伝いに来ているルナ・ジオン軍の技術者が言ってたんだけど、ルナ・ジオン軍ではジオン軍のMSとかの改修計画をしてるって本当か?」
不意に、リュウがそんな風に尋ねてくる。
だが、俺はすぐに返事をする事は出来ない。
何故なら、少なくても俺はそんな事を聞いてはいなかった為だ。
いや、報告書とかを読み飛ばしたからか?
ただ、だからといってその言葉に頷ける事があるのかと言われれば、答えは否だ。
そもそも、ルナ・ジオン軍では独自開発したヅダを正式採用機として使っている。
……まぁ、実際にはヅダはツィマッド社が開発してザクとのコンペで負けた機体なので、正確には独自開発とは言えないのだろうが。
とはいえ、ビームライフルが採用されたり、ルナ・チタニウムを関節部分に使ったり、動力炉も以前の物をかなり改修したり、簡単に装備を変えて様々なバリエーションに変更出来たり、こちらはまだ成功していないが、連邦軍で採用されているフィールドモーターを搭載したりといった風に、信じられない程の拡張性を備えている。
そのヅダがあるのに、わざわざジオン軍のMSを改修する?
そう考え……このハワイであれば、そのような事になってもおかしくはないと思い直す。
ヅダは確かに非常に高い性能を持つMSだが、その性能をフルに発揮出来るのは、あくまでも宇宙での話だ。
一応地上でも使えない事はないのだが、その性能は大幅に落ちる。
そして実際、現在ハワイで使用されてるMSはW世界やSEED世界のMSであったり、ジオン軍から脱走した者達がその際に手土産として持ってきたMSだったりする。
そう考えれば、純粋に地上用のMSを開発はしていない以上、ジオン軍のMSを改修して使うというのは、おかしな話ではない。
「そうだな。俺の方まで連絡は届いてないけど、ハワイという立地を考えれば、そういう事をやってもおかしくはないと思う」
取りあえず、リュウにそう返しておく。
後でゲラートにでも聞けば、その辺の事情は分かるだろうし。
そもそも、正式には俺はシャドウミラーの人間であって、ルナ・ジオンの人間ではない。
別にルナ・ジオンの出来事の全てを俺に知らせる必要があるのかと言われれば、その答えは否なのだから。
そんな風に話しながら、俺はホワイトベースへの差し入れを終えるのだった。
「ん? ああ、その件か。そうだな。間違いなくうちでやっている」
ホワイトベースへの差し入れが終わった後、そのまま政庁にあるゲラートの執務室に移動してMSの改修の事を尋ねると、あっさりとそんな答えが返ってきた。
「一応聞いておくけど、月に報告はしてるんだよな?」
「勿論だ。……本来なら、ヅダの地上仕様を開発して貰うという予定もあったんだが、今は色々と忙しいらしくてな。……連邦軍のガンダムだったか? それの解析と、ヅダにフィールドモーターを組み込むってので」
そう言い、ゲラートはこちらに視線を向けてくる。
うん。その両方共、俺が持っていった案件だな。
俺がそっと視線を逸らしたのを見て、ゲラートは笑みを浮かべて言葉を続ける。
「別にアクセルを責めてる訳じゃないから、気にするな。実際、月が本拠地のルナ・ジオンとしては、宇宙用のMSを最優先するのは当然だしな」
「そう言って貰えると、こっちとしても助かるよ。……で? 改修しているMSって?」
「グフだ。正確には全て俺達が改修してるって訳じゃなくて、元ジオニック出身の技術者が持ってきた。サイド3にあるジオニック社から流れて……いや、意図的に流された改修案らしい」
そう言い、コンピュータを少し操作してから、俺にモニタを向ける。
そこに表示されているのは、確かにグフだ。
だが、俺が以前問題視していた左手のフィンガーバルカンは撤去され、普通のマニピュレータになっている。
このおかげで、左手でも普通に武器を持つ事が可能だろう。
また、フィンガーバルカンを撤去した代わりに、シールドと一体化したガトリングシールドがあり、更にその内側には3連装ガトリング砲がある。
また、ヒートロッドが鞭から……言ってみればKMFのスラッシュハーケンに似たような物に変わっていた。
ヒートサーベルも、グフが使っていた物とは違い、発熱させなくても普通に剣として使えるらしい。
全体的に見ると、かなり優秀な機体だとは思うが……
「けど、グフ、か。……もしかして、趣味で選んだんじゃないよな?」
そう尋ねる俺に、グフの設計に関与した経験を持つゲラートはそっと視線を逸らすのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:425
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1469