前線基地の占拠から戻ってきた俺達は、当然のように不満を抱く。
……何気にフィリップが一番怒っていたのが、少しだけ意外だった。
フィリップにしてみれば、アムロとの付き合いはそこまで長いものでもないだろうに。
訓練とかを一緒にする事により、一種の連帯感でも持っていたのか。
その辺りの理由は俺にも分からなかったが、ともあれフィリップがあの蒼い陸戦型ジムについて怒っていたのは事実だ。
そして、追撃を中止させたイーサンからの指示に関しても。
「でも、あの蒼い陸戦型ジム、凄い動きでしたよね。それこそ、普通なら到底耐えられないような動きでした」
「あー、まぁ、サマナの言いたい事も分かる。よっぽど対G能力の高い奴が乗ってたんだろうな」
ホワイトベースの食堂にて、特にやる事がない俺達はこうしてあの前線基地での戦闘についての不満やら感想やらを言い合っていた。
そんな中でも特に大きかったのは、やはりあの蒼い陸戦型ジムについてだ。
「アムロは戦ってみてどうだったんだよ? 互角に戦ってるように見えたけど?」
ジュースを飲みながら、カイがアムロに尋ねる。
そんな問いに、アムロはフライドポテトを食べながら、首を横に振った。
「うーん、そうですね。何て言うかこう……そう、機体性能に振り回されているというか、そんな感じはしました。純粋な技術という点では、そこまで高くないように思えます。何て言うか……そう、野生の獣といった印象でしょうか?」
揚げたてのフライドポテトを軽く振ってそう告げるアムロ。
ちなみにアムロの食べているこのフライドポテトの材料のジャガイモは、この前シローと一緒に行ったゲリラの村で栽培されている物らしい。
それをシローの口利きで購入したとか何とか。
食料の類は現地調達が一番いいのは事実だしな。
「野生の獣って……それで、アムロと互角にやり合ったんだろ? だとすると、そいつの操縦技術が高くなったら……ちょっと、手に負えないんじゃねえか?」
恐る恐るといった様子でカイが尋ねるが、俺はそれに首を横に振る。
「いや、多分それはないな。あのパイロットは、操縦技術がないからこそ、アムロとやり合えるくらいに強かったんだ。もし下手に操縦技術を覚えようものなら、寧ろ戦力は落ちると思う」
野獣のような戦い方と精密な操縦技術。
その2つは融合出来ない訳ではないが、それが非常に難しいのも事実だ。
少し戦ってみたところでは、あの蒼い陸戦型ジムにそのような事が出来るとは思わない。
「そういうものか?」
「うむ」
フィリップの言葉に、ユウも同意する。
この辺は、アムロのように成り行きでパイロットになった訳ではなく、きちんとMSパイロットとしての訓練を受けた上で陸戦型ジムを操縦しているからこその判断だろう。
野獣の如き動きと、精密なMSの操縦技術。
その両方を持っている奴がいたら、それは間違いなく才能のあるパイロットだ。
出来ればシャドウミラーに……とはいかないが、それでもルナ・ジオンには引き抜きたい。
「まぁ、それはそれとしてだ。またあの蒼いMSが出て来たら、どうするんだ? 反撃はしても、こっちから攻撃は出来ないのか? しようと思えば、多分また上から止められるし」
「フィリップが言いたい事も分かるが、ブライトから聞いた限りでは難しいだろうな」
ブライトの様子を見る限りでは、よっぽど上……イーサンから厳しく言われているのは多分間違いない。
そう考えると、もし蒼い陸戦型ジムが襲ってきても、防御は出来ても反撃は許可されないという可能性が十分にある。
今回はアムロを狙ってくれたからよかったが、操縦技術に劣っている者……具体的に言えばサマナに襲い掛かられた場合は非常に困る。
あの運動性を考えれば、ガンタンク隊が襲われた場合も非常に困るだろう。
そうなると、ブライトからの要請であっても、こっちが無理を押し通して撃破してしまった方がいい……のか?
一応、ゴップからの依頼を受けている以上、それを達成する為という理由はある。
とはいえ……
「結局、あの陸戦型ジムは、どういう素性の機体なんだろうな。パーソナルカラーとかあるのを考えると……やっぱりジオン関係か?」
機体を自分のパーソナルカラーに塗るというのは、ジオン軍では頻繁に行われている。
……というか、蒼のパーソナルカラーは、青い巨星の異名を持つラルのものだ。
まぁ、蒼と青はニュアンス的に微妙に違うのだが。
まさか、実はラルが連邦軍に協力しているとか……ないよな?
セイラを姫様と呼んで慕っているラルの事を考えれば、そんな真似はしないだろうが。
だが、連邦軍でパーソナルカラー云々という話を聞いた事はない。
そもそもの話、連邦軍にはMSそのものが少ない。
そんな状況でパーソナルカラーとかそういうのをやるような余裕はなくても、おかしくはなかった。
戦闘機とかなら、もしかしてパーソナルカラーとかがあるのかもしれないが……残念ながら、その辺は俺にも分からない。
ともあれ、連邦軍のMSがパーソナルカラーを使っているという事は、かなり違和感がある。
「けど、ジオン軍なら友軍の識別反応を出すのは、不味いんじゃ?」
サマナの言葉は正しいが、これは戦争だ。
勝利する為にはあらゆる手段を使ってもおかしくはない。
……とはいえ、人知れずやるというのならまだしも、あそこまで堂々とやるのか? という思いがない訳でもないが。
「今度来たら、俺が倒してやるよ。そうすれば、アクセルも安心するだろ?」
フィリップがそう言うが、ぶっちゃけあのMSの動きを考える限りでは、フィリップだけで勝てるとは到底思えない。
それどころか、負けないだけで精一杯といったところだろう。
「期待してるよ。……もっとも、あの蒼い陸戦型ジムがまたこっちに姿を現すかどうかは、俺にも分からないけど」
恐らく、あの蒼い陸戦型ジムの乱入は、向こうにとってもイレギュラーな事態だった筈だ。
だとすれば、同じような事がまたあるかと言われれば、それは微妙なところだろう。
「ともあれ、だ。あの蒼い陸戦型ジムについて考えるのはこの辺にしておくとして、俺達はイーサンからの要望に従って敵の前線基地を攻略した、後は……これからどうなるかだな」
イーサンにとって、俺達が戦力となるというのは証明された。
そうであれば、次にイーサンが何を望んでくるか。
それこそ、捨て駒として使うかどうか。
恐らくそんな風にしないとは思うが、それでもレビルへの対抗心を考えると、完全に否定は出来ない。
次は前線基地ではなく、本当の意味でジオン軍の戦力が揃っている基地に攻撃をしろとか、そんな風に言ってこないといいんだが。
「あ、そう言えば……アクセルさん、ピクシーの件ですけど、もしかしたらビームライフルが使えるようになるかもしれませんよ」
「は? 本当か?」
いきなりのサマナのその言葉に、少しだけ驚く。
当然だろう。今までピクシーは射撃武器と言えば、90mmサブマシンガンと頭部のバルカンしか存在しなかった。
牽制とか弾幕を張るという意味ではそれなりに使いやすかったが、射撃武器で一撃必殺とはいかなかったのも、また事実だ。
そうなると、やはり俺としてはビームライフルが欲しいと思ってもおかしくはない。
動力炉的な意味で言えば、ピクシーの核融合炉は十分にビームライフルを使える領域にあるんだし。
とはいえ、ピクシーの動力炉の出力が高いのは、その分のエネルギーを使って純粋に機体性能を上げているから、というのが大きい。
ビームライフルの方にその出力の多くが取られるとなると、場合によってはビームライフルを使っている間は機体性能が落ちるという可能性もある。
狙撃をするのならともかく、俺が考えているのは中距離から近距離……また、ピクシーの機体性能を考えれば、混戦の中でも使うビームライフルという印象だ。
もっとも正確に言えば、ビームライフルではなくビームガンやビームピストルとでも呼ぶような、取り回しのしやすい武器がいい。
「それで、具体的にどういうビームライフルなのか分かるか?」
「いえ、ただ格納庫でメカニックの人達から聞いた話によると、近いうちにミデアがやって来るという事でしたから」
「ミデア……マチルダか」
「お、それって女の名前だよな? どんな女だ? 美人なのか?」
俺の言葉を耳にしたフィリップが、女の名前は絶対に聞き逃さないといった様子で尋ねてくる。
こういうところ、本当にマメだよな。
……まぁ、女関係で俺が何かを言っても、それは説得力がないだろうから、何も言わないが。
「美人かどうかで言えば美人だけど、婚約者がいるらしい」
「げぇ……まぁ、美人ならそれもしょうがないんだけどよ」
俺の言葉に、見るからに落ち込んだ様子を見せるフィリップ。
そんなフィリップは放っておいて、サマナに詳しい事情を聞こうとするのだが、聞いた話ではサマナも詳しい事は分からないらしい。
どうやら本当に詳しい話を聞くためには、格納庫に行く必要があるようだ。
とはいえ、今は格納庫でもかなり忙しいだろうしな。
何しろ戦闘が終わった後のメンテナンスは絶対に必要だ。
特に連邦軍はMS運用のノウハウがなく、ましてやMS整備のノウハウもない。
ある程度は亡命してきたり、寝返らせたりするMSパイロットから聞き出す事も出来るし、戦闘機とか戦車の整備で応用も出来るだろう。
だが、やはりそれで完全にとはいかない以上、連邦軍としては少しでも異常がないかどうかを確認する必要があった。
この辺、何気に連邦軍としても結構大事なところだよな。
シャドウミラーの機体となれば、それこそ長年の信頼もあるし量産型Wやバッタ、コバッタといった者達がその辺はやってくれるから、心配はあまりないんだが。
ともあれ、そんな訳で連邦軍のメカニックは今が一番忙しい時であるが故に、今はまだ手を出さない方がいいだろう。
「それにしても……」
と、不意にカイがアムロを見ながら、口を開く。
「あの蒼い陸戦型ジム、徹底的にアムロだけを狙ってたけど……何か、心当たりはあったりするのか?」
そんなカイの疑問は、俺も感じていた事だ。
あの蒼い陸戦型ジムは、何を考えてアムロだけを狙ったのか。
それは、素直に俺も知りたい事ではあった。
さっき蒼い陸戦型ジムの話題はこれまでと言ったばかりではあるのだが
「一番弱い敵を狙った、とか?」
「いや、それならこの中だとサマナか、ガンタンク隊だろ」
「む」
フィリップの言葉に、ハヤトが面白くなさそうに呟く。
自分がこの中で一番弱いと言われたようなものだから、それも当然だろうが。
ただ、ガンタンクが接近されれば非常に厳しくなるというのは、間違いのない事実だ。
それこそ綾子のような技量でもなければ、あの蒼い陸戦型ジムを相手に接近戦を挑まれれた場合はどうしようもないだろう。
「じゃあ、何でアムロ? 一番強いってなったら、それこそアクセルだろうし」
カイがそう言いながら俺の方を見てくるが、アムロが若干悔しそうにするものの、今は口を開く様子がない。
実際、シミュレータの模擬戦をやれば俺が勝つのだから、アムロとしては何か言うに言えないのだろう。
「考えられる可能性としては、俺が傭兵扱いだからアムロを狙ったというのはどうだ?」
傭兵扱いなら、契約が終われば俺はホワイトベースから去る。
いや、実際に去るかどうかはまだ分からないが、一般的に傭兵と言われれば、そういう風に思ってしまうのは当然だろう。
それに比べると、アムロはホワイトベースに所属しているMSパイロットだ。
時間が経ってもアムロがいなくなるという事はない。
そしてユウに対しても、シミュレータではあるが勝ち越しているアムロは、純粋にこのホワイトベース所属のMSパイロットとしては最強であると言ってもいい。
そう説明すると、皆が納得した様子を見せる。
見せるが……その案を出した俺自身、どこかその言葉に納得出来なかった。
軽く戦闘しただけではあるが、俺が戦ったあの蒼い陸戦型ジムは、何というか……一種の強迫観念に近いものすら感じられたのだ。
勿論、T-LINKシステムがある訳ではないので、明確にそれを感じたという訳ではない。
どちらかと言えば、あくまでもそういう印象を受けたという表現の方が正しい。
だが、明確な証拠がある訳でもない以上、口にしても意味はないしな。
けど、アムロ……アムロか。
この中でアムロが狙われる理由として思いつくのは……ニュータイプ能力とかも関係あったりするのか?
そんな風に疑問を抱きつつも、こちらもまた確証がある訳でない。
というか、そうなると連邦軍にニュータイプを理解し、研究している存在がいるという事になる。
ただでさえニュータイプという存在は信じられていないのだから、それを思えば……ちょっと考えられないか。
そう判断し、俺は話に戻っていくのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:510
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1486