「……感謝する」
数秒の沈黙の後で、イーサンは俺に向かってそう言ってきた。
キキの村の近くで捕らえた、旧ザクのパイロットを引き渡した事による感謝の言葉だ。
もし旧ザクのパイロットを捕らえたのがシローのようなイーサンの部下であれば、わざわざこのように感謝の言葉を口にする事はなかっただろう。
だが、俺達はレビル直属の部隊で、今は一応イーサンの指揮下に入っているとはいえ、本来なら別の指揮系統だ。
だからこそ、イーサンは俺達に向かって感謝の言葉を述べる必要があった。
とはいえ、それはあくまでもシャドウミラーの代表たる俺がいるからだろうが。
もしここにいるのがブライト達だけなら、例えレビル直轄の部隊であっても、このような事にはならなかっただろう。
「いえ、こちらも役目を果たせた事で安堵しています」
ブライトが敬礼しながら、イーサンに告げる。
中尉と大佐。その階級には大きな開きがある以上、ブライトの緊張は当然なのだろうが。
「いや、助かったのは間違いない。これまでにもジオン軍の軍人を捕虜にはしていたが、情報源が増えるというのはいい事だ」
これは、俺達に対する牽制か?
俺達が捕らえたMSパイロットは有益な情報源の1人ではあるが、それでもそこまで重要ではない、と。
イーサンにしてみれば、精一杯の強がりといったところか。
こちらとしては別にそこまで恩に着せるつもりではなかったのを考えると……その辺はイーサンがどう考えるか、だな。
ともあれ、今回の一件ではそれなりに結果を出したという事で、イーサンとしても俺達に色々と配慮をする必要が出て来るだろう。
今までも蔑ろにされていた訳ではないのだが。
「それで、俺達はこれからどうすればいいんだ? この基地が拠点として活躍してくれるのは嬉しいけど、俺達もずっとここにいるような真似は出来ないんだが」
「それは……少し、待って貰えると助かります。実は、アクセル代表が捕らえてきた捕虜を含め、多くの捕虜から得た情報によってこの辺りで中心となっている敵の拠点を見つける事が出来そうなので」
なるほど。イーサンとしては、俺達の戦力を使ってこの辺り一帯の敵の本拠地を叩きたい訳か。
敵の本拠地を叩いて、その結果イーサンの部下の被害が少ないというのは、イーサンの評価に繋がるだろうし。
「その件はレビルには?」
「……了承して貰っています」
若干、苦々しげな表情を浮かべるイーサン。
やっぱりレビルに頭を下げるというのは、面白くなかったのだろう。
とはいえ、それはそれ。
ここで下手にレビルから無許可で俺達が東南アジア戦線の戦いに参加するという事になれば、色々と不味い事になっていただろうし。
「そうか。なら、俺からはこれ以上は何もない。……ブライト」
「イーサン大佐。では、私達はこれで失礼します」
俺の言葉に、ブライトは短くそう告げて敬礼する。
このままここにいても、色々と問題があると思ったので出来るだけ早くイーサンのいる部屋から出たかったのだが、この様子を見る限りではどうやらブライトも俺と同じ気持ちだったらしい。
イーサンも、これ以上俺達と一緒にいても自分が不機嫌になるだけだと判断しているのか、ブライトの言葉に特に何も言う様子はなく、敬礼を返し、俺とブライトは部屋を出るのだった。
「ふーん。じゃあ、結局もう少しここにいる事になるの? まぁ、食事とかは新鮮な食材を使えるから、食堂でも美味しい料理が食べられるけど」
ホワイトベースの食堂で、ミナトが生春巻きを食べながらそう告げる。
生春巻きといえばベトナムというイメージがあるし、実際にベトナムも場所的には東南アジアなので、この基地に生春巻きの材料があってもおかしくはないのだが、それでも何だか微妙な感じがする。
いや、食堂で出される生春巻きが不味いという訳ではない。
実際に俺が生春巻きを食べたことはそこまである訳ではないが……それでも十分に美味いと思う。
四葉が作る生春巻きに比べると数段落ちてしまうが、これは比べる相手が間違っている。
「そうだな。ただ、ジオン軍も自分達が攻撃されるというのは分かっている以上、黙ってこっちの行動を待っているような真似はしないと思うんだけどな。……ミナトはどう思う?」
「このままだとジリ貧だとは分かってると思うわよ? でも、そんな状況で向こうに出来る事はあまりないんでしょうね。もし一発逆転が狙える手があるのなら、それに手を出してもおかしくはないと思うけど」
ミナトの言う事も分からない訳ではない。
ジオン軍にとって、この東南アジア戦線は最重要という訳でもない。
なら、ここでどうしようもなくなった場合、それこそ自爆でも何でもして連邦軍を道連れにする……というのは可能性的にあるか。
そう考え、ふと嫌な想像をしてしまう。
「ジオン軍は、核兵器とか使わないよな?」
「それは……だって、南極条約で禁止されてる筈でしょ? もしそんな真似をしたら、ジオン軍にとっても最悪の結末を迎える事になるわよ?」
ミナトの言葉は正しい。
だが、軍人の中には自分が手柄を上げるのであれば、何をやってもいいと思っている者も多い。
それこそこの基地のトップのイーサンが、そういうタイプだろう。
そんな者達にとって、核兵器というのは相手を一掃するという意味では、非常に魅力的だ。
しかも自分達が追い詰められつつある現状を打破するという意味でも、大きい。
……もっとも、ミナトの言う通り実際に核兵器が使われるような事があれば、それはジオン軍にとって最悪の結果を招く事にもなりかねない。
ザビ家にしてみれば、絶対に止めろ! と叫びたくなってもおかしくはない選択だ。
「そこまで考えなしな事は、多分やらないと思うけどな。ジオン軍が南極条約を破るという事は、連邦軍もそれを守る必要がなくなるんだし」
そうなれば、ジオン軍が最初に南極条約を無視したのだからという事で、連邦軍も核兵器を使えるようになる。
俺が知ってる話だと、ザクバズーカは核兵器装備型のC型が使っていたバズーカをそのまま流用している武器だ。
連邦軍が鹵獲したザクがある以上、ザクバズーカも当然その中にはあるだろうし、そうなれば連邦軍のMSでも核兵器を使用可能となる。
……ザクバズーカの規格に合わせた核兵器を作る必要が出て来るが、連邦軍であればその程度はそこまで難しくはないだろう。
そのような事になれば、サイド3はそれこそ核兵器の恐怖に怯えることになる。
ザビ家にしてみれば……特にサイド3にいるギレンとデギンにしてみれば、最悪の展開だろう。
いや、別にサイド3に限らず、ソロモンにいるドズル、グラナダにいるキシリアにしても同様だ
ザビ家の中で安穏としていられるのは、ハワイにいるガルマだけとなってしまう。
とはいえ、ガルマも南極条約が破棄されたとなれば、黙っていられるような性格ではないだろうが。
「南極条約の破棄、ね。自分がやったら同じ事をやり返されると、そのくらいはジオン軍も当然理解してるでしょうけど……ともあれ、そうならないように祈ってるわ。アクセルはともかく、私は核兵器を使われたら対処のしようもないし。……綾子なら、何とか出来そうな気もするけど」
「どうだろな。半分サーヴァントではあっても、半分は生身だ。霊体化が出来れば核兵器を使われても問題はないだろうが、それが出来ないからな」
銃弾を斬り落とすといった事は普通に出来る綾子だが、それが核兵器の爆発ともなれば、対処するのは難しいと思う。
爆発そのものを切断するとか、そういう事は出来ないよな?
何だか半サーヴァントの綾子だけに、普通にそんな事が出来そうな気がしないでもない。
「ともあれ、実際にはそう簡単に南極条約の破棄は出来ないと思うから、そこまで心配する事はないだろうな。……確約は出来ないけど」
戦争というのは、容易に人を狂わせる。
今まで幾多もの戦場を駆けてきただけに、俺はそれを十分に知っていた。
だからこそ、この東南アジア戦線でジオン軍を任されている人物が、そのような事にならないように祈るだけだ。
そうして話していると、見覚えのある人物が食堂に入ってきた。
その人物は、ミナトを見ると嬉しそうに口笛を吹き……だが、一緒のテーブルに俺がいるのを知ると、見るからにがっかりとした様子を見せた。
あまりに露骨なフィリップの様子に、呆れたらいいのか、笑えばいいのか。
どうするか迷っていると、それでもフィリップは気を取り直して俺達の方にやって来る。
フィリップも、別にミナトと会うのはこれが初めてという訳ではない。
既にモルモット隊がホワイトベースに合流してからそれなりに日数が経っている以上、それは当然だろう。
そして――俺が言うのも何だが――女好きのフィリップとしては、ミナトを見た瞬間には言い寄っていた。……即座に断られたが。
それでもこうして暇を見つけてはミナトに言い寄っている辺り、その打たれ強さは賞賛されてもいいかもしれない。
「ここ、いいか?」
フィリップの言葉にミナトに視線を向けると、そこでは呆れたような表情を浮かべつつも、それで構わないといった様子を見せていた。
ミナトも、別にフィリップを嫌っている訳ではない。
友人としてなら、それなりに面白い相手だと以前言っていたし。
もしフィリップの態度が馴れ馴れしいものだったり、それどころか力でミナトをどうにかしようとしていれば、ほぼ間違いなく今頃は手足の1本や2本はへし折られていただろう。
ミナトも綾子程ではないにしろ、その技量は非常に高い。
シャドウミラーのメンバーとして、エヴァと生身の訓練を重ねているのだから。
……このUC世界において、生身の戦いでミナトに勝てる人物がいるのかと聞かれれば、即座にいないだろうと答えるくらいには。
「別にいいけど、無駄な事はしない方がいいと思うわよ?」
ミナトがフィリップにそう告げる。
言外に……いや、この場合は直接的にか? 自分を口説いても無駄だと、そう示す。
だが、フィリップの方はそんなミナトの態度に特に堪えた様子もなく、白い麺類の入った丼とフォークを持って俺の隣に座る。
ミナトの隣ではなく、俺の隣に座ったところがフィリップの気遣いなのだろう。
「別にそういうつもりはないって。ただ、どうせ何かを食うなら、美人と一緒に食った方がいいと思っただけだよ」
「ふーん。……メカニックの娘といい雰囲気だって聞いたんだけど、そういう真似をしてもいいのかしらね?」
「げっ、何でそれを……」
「女の情報網を甘く見ない事ね」
自信に満ちた笑みを浮かべるミナト。
実際、女同士の情報網ってのは色々ともの凄いからな。
中には、とても男には言えないような事だったりも、その情報網で共有されてるらしい。
その情報網は俺も色々と気になるけど、取りあえず今はフィリップを助けておくか。
「フォーか、それ?」
「あ、ああ。そういう料理名らしいな。俺も初めて食うから、美味いかどうかは分からないけど」
フォーというのは、生春巻きと同じくベトナムの料理で、こちらも以前四葉に食べさせて貰った事がある。
小麦粉から作る中華麺やパスタ、うどんと違って、フォーは米粉から作る麺だ。
俺が食べたのは、塩味系の透明なスープに牛肉とかが入った奴だったが……フィリップが持つのは鶏肉が入っていた。
美味そうではある。
「それで、一体2人で何の話をしていたんだ? もしよかったら、俺にも聞かせてくれないか?」
「別に何か重要な話をしていた訳じゃないな。ただ、ジオン軍側の東南アジア戦線の司令官が核兵器を使ったら大変だって話をしただけだ」
そう言った瞬間、フォーを口に含んでいたフィリップは、ぶふぅっという音を立てながらその中身を吹き出す。
……フィリップの向かいに誰も座っていなかったのは、不幸中の幸いだろう。
ミナトの方は、自分の生春巻きを確保しながら、素早く距離を取っていた。
この辺りの判断の早さは、さすがだ。
ホワイトベースに限らず、乗り物全般を極限まで乗りこなすには、それだけの能力が必要だという事だろう。
同時に、ホワイトスターでエヴァと行っている訓練も、その判断力に関わっているのは間違いない。
「げほっ、げほっ……あ、悪い」
咽せていたフィリップが我に返ると、自分で吹き散らかしたものを拭く。
厨房にいる何人かからは鋭い視線を向けられていたが、その辺は半ば自業自得だろう。
後片付けを終えたところで、フィリップは改めて俺に視線を向けてく。
「それで、核兵器って……マジか?」
「いや、多分使わないとは思うけどな。もし使えば、ジオン軍としては最悪の結果をもたらすし。……それでも、ジオン軍の指揮官によっては……といったところか」
そんな俺の言葉に、フィリップは微妙に嫌そうな表情を浮かべるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:510
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1486