「へぇ……まぁ、俺は構わないけどな。ブルーディスティニーを実戦で試せるのは、この場合大きいし」
「そう言って貰えると、助かる」
俺の言葉に、ブライトが安堵した様子を見せる。
イーサンからブライトに、そしてブライトから俺にという流れでされた説明は、東南アジア戦線にあるジオン軍の基地の攻略に対する協力要請だった。
基地の攻略という点では、以前前線基地を俺達だけで攻略した事もある。
だが、それはあくまでも前線基地であって、ジオン軍の戦力的にという意味では、そこまで重要ではない。
大変だったのは、寧ろ基地を攻略した後にブルーディスティニーのEXAMシステムが暴走してアムロを執拗に狙った事だろう。
ブライトがイーサンから協力するように要請された基地は、そういう意味では間違いなく以前の前線基地以上の戦力を有している基地だ。
だからこそ、ホワイトベース隊だけではなく、イーサンの部下もしっかりと今回の戦いには参加するらしい、
考えてみれば、この前の祭りっぽい模擬戦は、この作戦を前提にしていたのかもしれないな。
ともあれ、俺に直接話を持っていくとまたレビル関連の事でチクチクされると思ったのだろう。
イーサンは俺ではなくブライトを通じて要請してきた訳だ。
実際にこの作戦の件で色々と忙しいのは事実である以上、イーサンに暇がないというのは間違いなかったのだが。
「それで、俺達はこの作戦の主力なのか? それとも、遊撃戦力なのか?」
尋ねながらも、恐らくは後者だろうと予想は出来る。
そもそもの話、レビルに対抗意識を持つイーサンは手柄を欲しているのだ。
そのような大事な作戦で、自分の部下ではなくレビル直轄の部隊を全面に押し出すような真似をすれば、この作戦が成功しても名前を上げるのはレビルとなる。
そうならない為には、イーサンの軍を主力とする必要があった。
……とはいえ、イーサンの軍を主力とするという事は、ジオン軍の攻撃を受けるのもイーサンの軍という事になる。
被害を受けないで手柄だけを欲するというのは、無理があるしな。
少しでも被害を減らす為に、俺達が遊撃部隊という扱いになるのだろうが。
「遊撃隊だな。主力はイーサン大佐が引き受けてくれるらしい」
「もしかして、部下に命令するだけじゃなくて、自分も前線に出るのか?」
半ば冗談交じりで言った言葉だったのだが、それを聞いたブライトはしっかりと頷きを返す。
それは、イーサンが今度の基地攻略作戦に対してそこまで本気であるということを示していた。
イーサンにとっても乾坤一擲の作戦といったところか。
何故そこまで急ぐ? と疑問に思わないでもなかったが、考えてみればイーサンの判断はそこまで間違ってはいない。
俺がゴップから頼まれた、ユーラシア大陸での作戦。
それを依頼してきたのはゴップだったが、レビルとゴップは同一派閥である以上、その戦いで得られた手柄は当然のようにレビルの手柄ともなる。
いや、レビルが表に出る機会が多い以上、一番大きな手柄を挙げたと見られるのはレビルだろう。
そうなると、現状ですらかなりの差があるイーサンとレビルの間にある力――この場合は影響力や階級の類――は、より大きく開く事になる。
そのような事にならないようにする為にイーサンが出来るのは、レビルが手柄を立てるよりも前に自分も手柄を立ててレビルとの差を縮め、その上でレビルが行おうとしている作戦に自分も参加してレビルよりも大きな手柄を挙げる……といったところか。
「イーサンが動くのなら、こちらとしても文句はない。こっちを捨て駒にするような真似は、まず出来ないだろうし」
「そうだな。……こちらも、捨て駒になるつもりはないが」
ブライトにしては珍しい、強気な言葉。
実際、このホワイトベースに所属するMSパイロットは高い技量を持つ者も多い。
アムロとユウという、連邦軍でも確実にトップクラスの技量を持つMSパイロットを有している。
また、俺と綾子という傭兵としてのMSパイロットもいるのだ。
それこそ、前線基地を攻略した時と同様……いや、以前よりも連携が上手くなったし、ブルーディスティニーが戦力として加わり、綾子もガンタンクから陸戦型ジムに乗り換えた。
戦力的には、明らかに以前よりも増している。
「それで? 作戦はいつになるんだ?」
「3日後となる。それまでにMSの様子をしっかりと確認しておいて欲しい」
「分かった。アムロ達には?」
「今日のブリーフィングで話す予定だ。……もっとも、基地では既に戦闘準備を始めている。少し聡い者なら、その事に気が付いていてもおかしくはないと思うが」
ブライトの言葉にぱっと思いつくのは、やはりカイだろう。
口は悪いが、何だかんだと勘は鋭いカイだけに、その辺りはしっかりと把握していてもおかしくはない。
……とはいえ、実際にブライトからの説明を聞けば文句を言ってきそうな気もするが。
「分かった。なら、俺もその作戦に間に合わせてピクシーを調整しておく。……マチルダのミデア隊の補給は間に合うのか?」
今度マチルダが来る時、ピクシーが使える取り回しのいいビームライフルを持ってくるという話は聞いていたが、肝心のそのマチルダが現在まだやって来ていない。
一応どういう風にFCSを調整すればいいのかといった感じの情報は来ているので、ホワイトベースのメカニックがその辺は既に終わっている。
後は実際にビームライフルを使ってみて異常がないかどうかを確認出来ればそれでいい。
3日後か。それまでに来てくれるといいんだけどな。
「マチルダ中尉は責任感の強い方だ。来ると言ったら、間違いないだろう。……とはいえ、途中でジオン軍のパトロール隊と遭遇したりしなければいいんだが」
ミデアにも、一応武装はある。
だが、それはあくまでも一応といった程度の、本当に自衛する為の……いや、ジオン軍と戦っている今となっては、間違いなく貧弱な武装でしかない。
そうなると、もしブライトが心配しているようにジオン軍に襲われたりした場合、不味い事になりかねない。
勿論、マチルダだってジオン軍に見つかっても大人しくやられるだけではない。
逃げ延びつつ、この基地なり、もしくはここ以外の近隣の連邦軍の基地なりに救援要請くらいはする筈だ。
その様子がないという事は、ジオン軍に襲われてはいない筈だ。
普通なら、ミデア隊が襲われたからといって、こっちにその情報がすぐに流れてくるといった事はない。
だが……マチルダ率いるミデア隊が持ってくるのは、ホワイトベースが必要とする物資である以上、その情報は流れてきてもおかしくはなかった。
その瞬間、不意に艦長室に通信が入った着信音が聞こえてくる。
何だか、微妙に嫌な予感がするんだが……まさか、今のがフラグになったとか、そういう事じゃないよな?
そんな俺の予想とは裏腹に……通信を受けたブライトの表情は厳しく引き締められる。
ここは艦長室だからか、基本的に通信の内容は第三者に聞こえないようにはなっている。
だが、生憎と俺は人間ではなく混沌精霊で、五感は通常の人間とは比べものにならないくらいに鋭い。
その為、ブライトと話しているミライの声がしっかりと聞こえていた。
話している内容は、イーサンからの出撃要請。
……理由としては、襲われているのがこの基地に向かっているミデアなので、足の速さという点でホワイトベースが適任と判断されたとか。
そして、現在の状況を思えば、そのミデアに乗ってるのはさっき俺が予想した通り、ほぼ間違いなくマチルダだろう。
いや、勿論マチルダ以外の軍人も乗ってはいるのだろうが。
「アクセル!」
「分かってる。マチルダだな?」
「……聞こえてたのか!?」
まさか、今の会話が俺に聞こえているとは思っていなかったのか、ブライトの口から驚愕の声が出た。
この事が知られたのは若干問題か? とも思ったが、今は数分、数十秒、数秒であっても出来るだけ早く準備を整える方が先だった。
「そうだ。それで間に合うか?」
「ホワイトベースなら何とかなる。すぐに、皆を集めて出発するぞ」
断言するブライト。
その様子を見る限りでは、どうやらホワイトベースなら本当に心配はいらないらしい。
もしどうしても間に合わないようなら、影のゲートを使う事も考えていたのだが、その辺はどうやら心配いらないらしい。
出来れば影のゲートの件についてはあまり知られたくなかったので、そういう意味ではホワイトベースが間に合うというのは、俺にとっても行幸だった。
「分かった。すぐに準備する。……とは言っても、MSの方はもう準備してあるから、必要なのはパイロット達だけだろうけど」
敵の基地の攻略を間近に控えている現状、MSの整備は万全な状況になっているのは当然だった。
これが、この基地に所属しているMSであれば、ある程度の頻度で出撃するといった事も必要なので、ホワイトベースのようにMSを万全の状態にするというのは難しかったのだろうが、ホワイトベースはあくまでもレビルの部隊であって、イーサンであっても軽々しく使うような真似は出来ない。
それでもMS隊の手が足りないような時は出撃していたが。
ともあれ、出撃する回数が少ない以上、MSの整備が万全になるのは当然だった。
これで実機を使った模擬戦でもやっていれば、また話は別だったのだが。
そのような真似をすれば、当然のようにMSのチェックを頻繁に行う必要がある以上、訓練は基本的にシミュレータで行われている。
……陸戦型ジムやらピクシーやら、パーツの予備が豊富じゃない機体が多いしな。
そのようなパーツの問題を考えると、シミュレータで訓練した方が効率的なのは当然だろう。
もっとも、シミュレータは機体を動かした時のGとかそういうのは再現してくれないし、シミュレータであるが故に、実際と違うところは色々とある。
その辺を考えれば、実機を使った模擬戦の方が効率的な訓練なのは、間違いないのだが。
実機を使わずにシミュレータだけしかやっていないようなMSパイロットは、余程の才能がない限りは実戦で生き残れないというのが、俺の予想だ。
「なら、アクセルは格納庫に行ってくれ」
立ち上がりながらそう告げるブライトに頷く。
ブライトも、このままブリッジに向かうのだろう。
今回の一件では、少しでも早くミデアと合流する必要がある。
実際、艦長室でブライトは既にある程度の命令を出し終わっており、ホワイトベースは既に発進準備が始まっていた。
「ああ、それと」
艦長室を出ようとした俺に向かい、ブライトが口を開く。
「何だ?」
「ミデアの数は3隻らしい。出来るだけ確実にミデアを救出したい以上、アクセルにも出撃して貰う。それはいいな?」
何故ブライトがそのような事を言うのかというのは、俺にも理解出来た。
今まで……特にシャアと戦っていた時、俺は意図的にシャアをアムロに任せたりといった感じで、全力で戦わない時があったからだろう。
俺達がホワイトベースを降りた後で、俺だけに頼っていては不味いと思ったからこその行動だったのだが、それをやるなとブライトは言ってるのだ。
とはいえ、そのブライトの心配は今回は全く必要のない代物だ。
何故なら、今回に限っては俺はそんな事をするつもりはなかったのだから。
マチルダやそれ以外にもミデアのパイロット達が死ぬかもしれないというのに、そんな事をするつもりはない。
それにマチルダ達の命もそうだが、もしミデアが撃墜されるような事になれば、ピクシー用のビームライフルまでもが消えてしまう。
……最悪の場合、そのビームライフルがジオン軍に奪われてしまうという事にもなりかねない。
「その心配はいらない。こっちも今回はしっかりと働かせて貰うしな。それに、どんな部隊がミデアを襲ってるのかは分からないけど、案外俺達が援軍に向かえば、それだけで逃げ出す可能性もあるかもな」
それは、必ずしも根拠がないままに言っている訳ではない。
ミデアが飛んでいるのは、連邦軍の勢力圏内だ。
当然のように、ミデアを襲う者達もそれは承知している筈であり、それを知っているのなら援軍がやって来たと判断すれば、向こうも逃げ出してもおかしくはない。
お互いの戦力差を理解出来るのなら、退くべき時には退くだろう。
もっとも、以前ミデア隊を囮にしてホワイトベースを誘き寄せたウルフ・ガー隊の例もあるので、必ずしもそうとは言えないが。
ただ、あの時はホワイトベースがかなり損傷していて、その上ジオン軍の支配地域の中だったからこそ、そのような真似が出来たという点も大きいのだが。
今とあの時では、状況が全く違う。
まさか、またウルフ・ガー隊が手を出してきた……なんて事は、多分ないと思いたい。 何だかんだと、ウルフ・ガー隊は強敵だったし。
「そうか。ならいい」
ブライトは俺の言葉に安心したように、そう告げるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:510
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1486