キキがホワイトベースに乗っていた事でシローと一悶着あったが、それ以外は特に何か騒動がある事もなく時間が流れ……やがて、出発の時となった。
実際にはブライトとかはイーサンと色々相談をしたりしていたので、何か騒動があった訳でもなくというのは、あくまでも俺の主観でしかない。
ブライトにしてみればイーサンを含めて連邦軍上層部との話をしたりといった事で、忙しかったのは間違いない。
そんな訳で東南アジアから出発し……現在ホワイトベースは、ポーランドにあるワルシャワに向かって進んでいた。
ブライトの話によると、どうやらワルシャワにオデッサ攻略の為に連邦軍は戦力を結集させているらしい。
ホワイトベースも、そんな戦力の一端になる訳だ。
「正直なところ、ホワイトベースの戦力は突出しすぎてないか?」
今日も元気にシミュレータで模擬戦をしている連中を見ながら、そう呟く。
俺の言葉に、カイが同意するように頷いて口を開く。
「そりゃ、これだけエースが集まってれば、突出しすぎっていうアクセルの話も理解は出来るけどね。……寧ろ、そんな戦力が集まってるからこそ敵が集まっている場所に投入されかねないのが、ちょっと怖いな」
そう告げるカイもホワイトベースの中でも腕利きなんだから、自信を持ってもいいと思うんだが。
ちなみに新しくMS隊に配属されたシローとサンダースだが、シローはダンケルとラムサス以上、ヤザン未満。サンダースはヤザンと互角といったところだ。
あくまでもシミュレータの模擬戦での結果なので、実機を使えばまた別かもしれないし、実戦になれば、そちらでもまた別の可能性が高いが。
新兵同然と言ってもいいヤザンに負けた事に愕然としていたシローだったが、シローに期待されているのはMSの操縦技術ではなくMSの指揮なので、操縦技術の方は取りあえず他の者達の足を引っ張らない程度にあれば、それでいい。
……本人はそれでも納得出来ないらしく、今も模擬戦に励んでいるが。
「ジオン軍も、もうオデッサが狙われるという事は承知している筈だ。そうである以上、周辺からオデッサに戦力を集めているのは間違いない。ラサ基地の戦力も、脱出した者達は大半がオデッサに向かったみたいだしな」
俺とカイの話に、リュウが割り込む。
カイはともかく、リュウはガンタンクのパイロットだから、模擬戦ではあまり戦えないんだよな。
ちなみにシロー達と一緒にやってきたミケルにガンタンクのパイロットをさせてみたが、やはり操縦技術という点では何だかんだと今まで激戦を潜り抜けてきたガンタンクのパイロットには劣ったので、結局普段は雑用、いざという時に銃座の担当という事になったらしい。
「周辺からも? そうなると、戦力を引き抜かれた場所はどうなるんだ?」
「当然戦力は弱くなるから、この機に乗じて連邦軍が活発に動いているらしい」
いつも通り、下士官のネットワークから仕入れた情報を披露するリュウ。
この辺りのネットワークは、相変わらず凄いよな。
ちなみにネットワークという意味でなら、キキの持つゲリラのネットワークもある程度大きい。
とはいえ、ゲリラの方はその地区でならともかく、他の地区のゲリラとの繋がりはそこまで強くはなく、あくまでも補助的な情報と認識しておいた方がいい。
……もっとも、ゲリラだからこそ軍人では入手出来ない情報を持っていたりもするのだが。
「そうなると、オデッサでの戦いでこれからの地球の覇権をどちらが握るかが決まるかもしれないな」
「そこまで簡単に話は進まないだろうけど、勝った方が有利になるのは間違いない。……もし連邦軍が負けるような事になれば、それこそ現在攻めている周辺のジオン軍の基地からも撤退する必要が出て来るだろうし」
少しだけ憂鬱そうにリュウが呟く。
とはいえ、リュウは一介の下士官でしかない。
ブライトの腹心という立場ではあるが、それがどこまで役立つのかは、微妙なところだろう。
「シロー! 頑張れー!」
『ばれー!』
キキがシローを応援し、カツ、レツ、キッカの3人もそんなキキと一緒にシローを応援する。
レツとキッカは積極的な性格をしているので、キキともすぐに仲良くなっても不思議ではなかったが、3人の中では一番大人しいカツまでもがキキとすぐに仲良くなったのは少し驚いた。
この辺、普段から村で小さな子供達の相手をする事も多いと言っていたキキの言葉が決して嘘ではなかったという事の証だろう。
キキは自分の役割をこなしながら、時間を見つけてはシローの部屋に遊びに行き、部屋の片付けとかをしているらしい。
それも誰かに見られないようにではなく、寧ろ見せつけるように堂々と。
病院での話を聞いた時もそうだったが、完全に外堀を埋めにきているよな。
シローがそれに気が付いているのか、いないのか。
あ、でも気が付いていれば何らかの行動を取るだろうし、それをしないとなると、全く気が付いていない……のか?
とはいえ、シローも別にキキを嫌ってる訳ではなく、好意を抱いているのは分かる。
問題なのは、その好意が異性に対する好意なのか、それとも妹的な存在に対する好意なのかどちらかということだろう。
……これで、キキが同年代だった時のあやか達のような女っぽさを持っていれば、異性の好意に持っていけそうではあるんだが。
だが、キキの場合は外見的な意味で女らしさは……まだ10代半ばなんだし、将来に希望を持ってもおかしくはないか。
そんな事を考えていると、不意にキキがこっちを見てくる。
それも、厳しい視線で。
もしかして、これもまた女の勘とか、そういうので俺の考えている事を理解したのか?
「何か用?」
「いや、シローの応援を頑張ってると思ってな」
「ふーん」
それだけを言うと、キキは俺から視線を逸らす。
最初に会った時……それこそ、シローと一緒にキキの村に行った時は、そこまで嫌われているような事はなかったし、その後でも基地に遊びに来ているキキと何度か話をする機会はあったが、その時も嫌われたりはしていなかったと思う。
だが、ホワイトベースに乗ってから、何故か妙に嫌われてるんだよな。
俺は特に何かした覚えもないのだが。
そんな風に考えつつ、嫌われたのならしょうがないと判断しながら、リュウやカイといった面々と話をしながら、模擬戦を眺めるのだった。
ビー、ビー、ビー。
警報が鳴ったのは、夜の7時すぎ。
少し早い夕食も終わったので、ミナトや綾子と話でもしようかと、そう考えている時の事だった。
『敵機接近、敵機接近。MS隊は至急出撃の準備をして下さい』
モーリンの声がホワイトベースの艦内に響く。
いや、けど……敵?
勿論、現在は戦争中である以上は、どこに敵が現れてもおかしくはない。
それでも、東南アジア戦線を連邦軍が手中に収めた事もあり、何よりもジオン軍はオデッサに戦力を集めているという事もあって、この辺で敵と遭遇するというのは予想外だったのは間違いない。
そう疑問に思ったが、敵がいるのなら戦わなければならないのは事実だ。
急いで格納庫に向かい、ピクシーのコックピットに座る。
東南アジア戦線の基地を出発してから、ここまで時間は十分にあった。
そのおかげで、メカニック達によるMSの整備は万全だ。
……アルフという凄腕の技術者が来たというのも、それに一枚噛んでいるのは間違いない。
「それで、敵は?」
ピクシーのコックピットから、ブリッジに通信を送る。
映像モニタに映し出されたのは、モーリン……ではなく、ミライだった。
『ガウが2隻、ホワイトベースと平行するように移動しているらしいわ』
「……ガウが?」
ガウがこの辺を飛んでいるとなると、もしかしてオデッサに向かっている戦力か?
オデッサが連邦軍対策に少しでも多くの戦力を必要としている以上、この辺りでガウと遭遇するのは、分からないでもない。
けど、よりによって夜戦か。
MSがあるので、生身で戦うよりは楽だが、それでもやはり夜戦となると、昼間よりも戦いにくいのは間違いない。
また、問題なのはこのホワイトベースで夜戦を経験した事がある奴がどれだけいるのかという事でもある。
アムロやカイは、宇宙での戦いもあるので何も知らないよりは夜戦で戦えるだろう。
……あくまでも何も知らないよりは、だが。
宇宙での戦いも夜戦と若干似たようなところがあるのは事実だが、それはあくまでも若干でしかない。
言ってみれば、水中での戦いが宇宙での戦いと若干似ていると、そんな感じだろう。
後は、モルモット小隊やヤザン達、08小隊が夜戦でどれだけ戦えるかというのが、この場合は問題になってくるだろう。
「夜戦となると、慣れていない奴も多い。いっそ、ここは戦わないで見逃したらどうだ?」
そう告げるが、ミライに代わってブライトの顔が映像モニタに映し出される。
『アクセルの考えも分かるが、出来ればあのガウは撃破しておきたい。ここで見逃せば、間違いなくオデッサに向かう筈だ。そうなれば、オデッサを攻める時にむざむざ敵の戦力が増える事になる。それは可能な限り避けたいし、今のうちに各個撃破しておきたい』
各個撃破ってこういう時にも使う言葉だったか? という、どうでもいい疑問を抱かないでもなかったが、ブライトの気持ちも理解出来る。
ただでさえ、現在オデッサには多くのジオン軍が集まってきているのだ。
その戦力を多少なりとも減らすことが出来るというのであれば、ブライトでなくても連邦軍の軍人なら誰でも思うところだろう。
……それこそ、ワルシャワに到着するよりも前に手柄を立てるという意味もある。
ブライトは生真面目なので、手柄云々というのはあまり興味がないかもしれないが、連邦軍の軍人としてオデッサに向かう戦力を少しでも減らしておきたいという事なのだろう。
頼む、と。そう視線を向けてくるブライトの言葉に、少し悩む。
俺の正直な気持ちを言わせて貰えば、ぶっちゃけた話ガウ2隻程度の戦力がオデッサに向かおうと、ここで撃破しようと、大して変わらない。
ホワイトベースに乗っているMSパイロットは腕利き揃いなので、多くの者がその程度の戦力はあまり気にしないだろう。
……サマナ辺りは、少し危ないような気がしないでもないが。
現状で無理に倒す必要は……と考えたところで、ふとガウならMSを搭載してるのではいか? と思い直す。
基本的に、ガウはMS輸送機としての一面が強い。
MSの代わりにドップを搭載している場合もあるが、オデッサの増援という事を考えれば、やはりMSの可能性の方が高いだろう。
ジオン軍は基本的にMS前提の戦略だし。
それに……まぁ、ドップならドップで、使い道がない訳でもない。
最悪、キブツに入れれば資源には……いや、それらは全て、俺がガウの中身を全部貰えるというのが前提での話か。
とはいえ、この状況で攻撃すると言ってきたブライトだけに、交渉してみる余地はあるか。
「ブライト、もしガウを撃墜して、あのガウがMSやドップを積んでいた場合、俺が貰ってもいいか?」
『何? いや、それは……』
口籠もる様子のブライト。
その気持ちも分からない訳ではないが……それでも、こちらとしては出来ればガウの中身を欲しいのは事実だけに、譲れる場所ではない。
「連邦軍がオデッサを攻撃する際に、敵戦力が少ない方がいいんだろう?」
『……』
俺の言葉に、迷うブライト。
だが、そんなブライトを急かすように、モーリンが口を開く。
『敵のガウ、こちらから離れていきます! 行動から考えて、こちらの存在を察知した訳ではない模様!』
『くっ、分かった。だが、敵を倒すのを優先してくれ。ガウの搭載しているMSを確保する為に手を抜いて攻撃をするといった真似はしないように!』
よし、ブライトからの言質は取った。
これで、ガウを撃破した後で残っていたMSの類は、俺が貰える事になる。
ブライトにしてみれば若干不満もあるかもしれないが、今の状況を思えばそのくらいのボーナスはあってもいいだろう。
何しろ、敵はガウだ。つまり空を飛んでいる状況である以上、こちらからの攻撃手段はどうしても限られる。
この状況では……地上用として開発されており、通常よりも高い機動力や推力を持っているピクシー、それと宇宙空間用の装備を外して設計された陸戦型ガンダムと、その改良機たるブルーディスティニー。それと、アムロの乗っているガンダムといったところか。
そんな中で、やっぱり一番最善なのは陸戦型ガンダムの上位互換たる俺のピクシーだろう。
ブルーディスティニーは……EXAMシステムがあるから、不安定さが心配だ。
そういう意味で、やはりここは俺のピクシーが出撃するのが最善であり……ブライトの許可を得たところで、ピクシーはカタパルトデッキまで運ばれるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:590
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1502