結局ドムのパイロットは生きていたので、捕虜としてワルシャワまで連れて行く事になった。
MSのパイロット程度では、特に何かこれといって重要な情報も持ってはいないだろう。
だが、もしかしたら何らかの情報を持っている可能性もある。
その辺は連邦軍の情報部に任せるといったところか。
ちなみに捕虜はドムのパイロットだけではなく、他にも何人かいる。
墜落したガウだったが、そこで何とか生き残る事が出来た奴もいたんだよな。
運がいいのか悪いのか。
死んでいないというのは運がいいのかもしれないが、連邦軍に捕らえられたジオン軍の軍人と考えると、そこまで運がいいとも思えない。
一応南極条約にて捕虜の扱いも決まっているのだが、コロニー落としなんて事をしたジオン軍に対して恨みを持っている者は多い。
そういう連中に尋問される事になれば……とてもではないが、運がいいという事にはならない。
もっとも、それは逆でもある。
ギレンの演説によって自分達が選ばれた存在だと勘違いした者だったり、ギレンやザビ家に対して狂信的な忠誠を誓っている者にしてみれば、連邦軍の軍人を尋問する時に南極条約を守るかどうかと言われれば、疑問だろう。
ともあれ、捕虜に関してはワルシャワに到着したら引き渡して終わりなので、俺がそこまで気にする事じゃないか。
「おい、アクセル。お前一体何をしたんだよ? MSとか、どこに……」
諸々の雑用を済ませ、食堂で紅茶を飲みながらゆっくりしていると、ヤザンが俺の前にやって来るや否や、そう尋ねる。
ヤザンの後ろでは、部下のダンケルとラムサスがどこか申し訳なさそうな様子を見せながら、それでも興味深そうにこちらに視線を向けていた。
「どこにって……あれ? お前達見た事がなかったか?」
ラサ基地攻略の時とか、俺が一体どうやってアプサラスⅡを運んできたと思って……いや、そうか。あの時は俺はホワイトベースと別行動していたから、ヤザン達はその辺を知らないのか。
ただ、空間倉庫については別に隠している訳じゃないし、それなりにオープンに使っている以上、知っててもおかしくはないんだが。
「見た事? あんなの、初めて見たぞ。アクセルが触ったら、ドムを始めとしてMSの残骸とかが纏めて消えたんだぞ!?」
興奮している様子のヤザン。
初めて空間倉庫を見れば、こうなって当然か。
ただ、ザクやガウ、ドップの方は、パイロットの死体がまだ中に入ったままなんだよな。
後でその死体を出して埋葬する必要がある。
……ぶっちゃけた話、死体であってもキブツに入れれば普通に資源やら何やらに変換出来る。
それは、マブラヴ世界のBETAの死体で実証済みだ。
それでもBETAの死体はともかく、人間の死体はキブツに入れたくはない。
感情的な面もあるが、キブツを使って生み出した資源で取引をしている色々な世界の者達にしてみれば、人間の死体から出来た資源を欲しいとは思わないだろう。
BETAの死体は取りあえず棚に上げておくとして。
「そうか。あれは簡単に言えば、空間倉庫って言って……魔法の1つだと思って貰えばいい」
実際には空間倉庫は俺の転生特典で魔法ではないのだが、その辺りを詳しく説明する訳にもいかない。
それに、ネギま世界とかペルソナ世界なら、もしかしたら……本当にもしかしたらだが、空間倉庫のような魔法があってもおかしくはなかった。
というか、ネギ辺りなら新しい魔法としてそういう魔法を開発とかしてもよさそうだけどな。
「魔法、か。……なぁ、アクセル。その魔法って、俺でも覚える事が出来るのか?」
興味津々といった様子のヤザン。
いや、それはヤザンだけではなく、ダンケルとラムサスも同様に俺に視線を向けていた。
魔法というのが、ヤザン達の好奇心を強く刺激したのだろう。
もっとも、ヤザンの性格とかを考えれば、ヤザンが欲している魔法は戦闘用の魔法とか、そういうのだろうが。
「覚えられるかどうかと言えば、覚えられる。ただ、このUC世界で魔法を覚えるのは難しいだろうな。ましてや、シャドウミラーの本拠地たるホワイトスターと繋がっている月、ルナ・ジオンの首都たるクレイドルじゃなくて、連邦にいるようなら尚更」
もし魔法を覚えられるとすれば、当然のようにそれは月に……それもクレイドルにいる人物が一番可能性が高いだろう。
そこから連邦にいる者が魔法を使えるようになるのは、いつになるのやら。
そもそもの話、魔法というのはシャドウミラーと繋がっているルナ・ジオンの大きなアドバンテージである以上、それを敵対はしていなくても他国である連邦の人間に教えるような真似をするかと言われれば、答えは否だろう。
「本当か?」
「絶対とは言わないけど、普通は自分達にとって不利になるような真似をすると思うか? そもそもの話、ルナ・ジオンは国力という意味では連邦に負けてるんだし」
ルナ・ジオンの人員は、サイド3から引き抜いた者が多い。
ただ、月そのものを所有しているという点で、ジオン公国よりは国力が高かったりする。
月はこのUC世界においては有数の商業規模を持つ場所だけに、サイド3よりは随分とマシな状況であると言ってもいい。
月の住民の中には、絶対にルナ・ジオンの支配を受けないといった者もいたが、そういう連中は既に捕らえてクレイドルで農作業に回すか、場合によっては月を追放したりしている。
後ろ暗い事をしている奴が、何気にそっちに手を貸しているという事もあったが……そういう連中はその後ろ暗い所を大々的に公表されたりしてるんだよな。
そういう意味では、現在の月は安全な場所だと言ってもいい。
「月、か。……あー……なぁ、アクセル。月に行けば強い相手と戦えるのか?」
「取りあえず、ルナ・ジオン軍に所属しているパイロットには異名持ちだったり、そこまでいかなくてもエース級が結構な数いるぞ」
ダンケルとラムサスを連れて3人で行動しているヤザンにしてみれば、同じように3人で行動している黒い三連星とかがヤザンと戦うのに丁度いいかもな。
もっとも、今のヤザン達と黒い三連星では、技量的な意味で圧倒的に黒い三連星の方が上だ。
「そういうのじゃなくて。……ほら、シャドウミラーってのは、異世界に行けるんだろ? そこに行けば、魔法とかそういうのも覚えられるのかって意味なんだが」
なるほど。ヤザンはどうやら、MSでの戦いではなく、生身での戦いの方に興味を持っているらしい。
ヤザンの性格を考えれば、それは特におかしくはない、のか?
とはいえ、そう思っているのはヤザンだけで、ダンケルとラムサスの方は特に生身での戦いに興味があるようには見えなかったが。
「そうだな。魔法のある世界の1つには、拳闘士という職業が存在してる場所もある。他にもダンジョンがあったりとか、モンスターがいたりとか」
「モンスター!? そんなのもいるのか!? 見たいな」
ヤザンにしては、珍しいくらいに目を輝かせていた。
……随分と予想外だな。
もっとも、目を輝かせていても、それはやはり戦いに関しての割合の方が大きいのだが。
うーん、そうだな。今日はちょっと暇だし。
「そんなにモンスターを見たいのか?」
「ああ、見たい。何だ? 見せて欲しいと言えば、見せてくれるのか?」
半ば挑発混じりというか、言っても駄目だろうといった感じでそう告げてくるヤザンだったが、そんなヤザンの態度に興が乗ったというのも間違いない。
だからこそ、俺はそんなヤザンの言葉に頷いてみせる。
「いいだろう。ヤザンには魔法がどういうものかを見せておいた方がいいしな」
「本当か!?」
まさか、あっさり俺が了承するとは思わなかったのか、ヤザンは……そしてダンケルとラムサスの2人も、驚きの視線を向けてくる。
「ああ。ただ、そうだな。この場所でやる訳にもいかないし、広い場所……格納庫辺りでやるか」
実際には、現在のホワイトベースには15機という、搭載可能な限界までMSを搭載している為、格納庫も決して広い訳ではない。
だが、それでもホワイトベースが移動しながら広い場所となると、やはり格納庫が最適なのは事実だった。
「そんなに広い場所じゃなくてもいいんじゃないか?」
「いや、どうせならヤザン達だけじゃなくて、希望している全員に魔法がどういう存在なのかを見せたい。そんな訳で、まずはブライトに連絡して希望者を集める必要があるな」
話しているうちに気分が乗ってきたので、俺は早速行動に移すべくブリッジに連絡をするのだった。
現在俺は、格納庫の中で大勢の人の前に立っていた。
それこそ、MSを最大限搭載している格納庫ではあるが、それでも整備とかをする為に相応の広さがある格納庫にも関わらず、身動きがしにくくなるような、それ程に人々が密集している。
ブライトに許可を貰って格納庫を使わせて貰う事になり、魔法に興味のある者は格納庫に来るようにと放送して貰った結果、この有様となったのだ。
それこそ、現在ホワイトベースは運行に必要な最低限の人数だけで動かしており、もしガウと遭遇した時のようにジオン軍と遭遇したら、間違いなく出遅れる事になるだろうと思える程の人数が、現在ここには集まっていた。
何しろ、本来なら艦長のブライトまでもがここにいるのだから。
ミライの姿もあるのは、現在このホワイトベースの操艦はミナトがやっている証だろう。
ミナトにしてみれば、ホワイトスターでの暮らしで魔法は見飽きているといったところか。
ちなみに、現状では敵の姿も周囲にないからという事で最低限の人数でホワイトベースを動かしているが、その動かしている者達にしても、俺が魔法を使う映像は流れる事になっているので、臨場感的にはどうかと思うが、一応見られない事もない。
ブライトから前もって、この映像は連邦軍に提出するかと言われてるが、それは構わないと返していた。
今から俺が使う映像は、色々とショッキングなのは間違いない。
ぶっちゃけた話、カツ、レツ、キッカといった子供達はいない方がいいとも思えるんだが……子供の好奇心というのは、恐ろしい。
それ以外だと。シロー、サンダース、ミケル、キキといった08MS小隊関係者は、半信半疑という形でここに集まっていた。
08MS小隊関係者とは、東南アジア戦線の連邦軍の中では深いが、ホワイトベースにいる連中と比べれば、どうしても関係性は薄くなるから、あまり俺の言葉を素直に信じられないというのも、分からないではないのだが。
「さて、集まってくれた事だし無駄に時間を使うのも勿体ない。早速いくぞ」
そう告げ……まずは初級編という事で、右腕を白炎へと変化させ、次の瞬間にはそこから獣や鳥の姿をした存在が次々と生み出される。
炎獣。俺の白炎によって生み出された、疑似生命体。魔法的に言えば使い魔と言ってもいいのかもしれない存在だ。
『おおおおおおお』
まさか、いきなりこのような魔法を見られるとは思わなかったのか、様子を見ていた者達全員が驚愕の声を上げる。
「これは炎獣。触っても熱くはないから、安心して触ってくれていいぞ」
その言葉に真っ先に動いたのは、キッカだった。
それに若干遅れてカツとレツも動き、結果として子供3人が触っても何も問題がないという事で、他の大人達も炎獣に触れる。
ブライトが恐る恐るといった様子で炎獣に触れているのは、少しだけ興味深かったが。
そのまま十分程が経過して落ち着いてきたところで、俺は炎獣を集めて口を開く。
「まずは初級編という事で炎獣を出したが、次に出すのは純粋に戦闘用の代物だ。子供達、それと戦いに慣れていないような者達は見ない方がいい。……どうする?」
「少し待って下さい」
俺の視線を向けられたフラウが、カツ、レツ、キッカを連れて格納庫を出ていく。
子供達はかなり不満そうな様子ではあったのだが、それでも力の差は歴然でどうしようもないのは間違いない。
「フラウおばさん、俺だって見てえよ!」
レツがフラウにそう言い、次の瞬間には悲鳴を上げた。
……まぁ、10代半ばでおばさん呼ばわりされれば、耳を引っ張りたくなるのも当然かもしれないが。
ともあれ、フラウが出て行った以外は全員がここに残っていた。
特にヤザンは、これからが本番だと思っているのか、興味津々といった様子だ。
炎獣も、十分強いんだけどな。
実際にW世界ではMSを倒すといった真似もしてるんだし。
「じゃあ、いくぞ。……来い、刈り取る者」
そう言い、軽く床を蹴る。
すると次の瞬間には、俺の影から刈り取る者が姿を現す。
見るからに凶悪という表現が相応しいその姿は、魔力を感じたり、生身での戦いは一般的ではない――あくまでもネギま世界やペルソナ世界に比べて――このUC世界の者達にさえ、その強さを肌で感じさせるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:640
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1512