模擬戦は、当初の予想以上にあっさりと終わった。
バニング小隊を相手にした俺が感じたのは、やはりバニング小隊は実戦経験がまた足りないという事。
バニングは他の面々よりもある程度動けていたが、それ以外の面々はやはり経験不足が目立つ。
ともあれ、これによって連邦軍の中でも自分がMSパイロットに選ばれたからといって、エリート意識や特権意識を持っている奴の考えが多少なりとも収まってくれればいいんだが。
そんな風に思いつつ、唖然としているバニング小隊をその場に残して、俺はミデアの近くに……メカニック達が集まっている場所に移動する。
ちなみに、この模擬戦は録画されているので、ワルシャワに戻った後は多くの連邦軍の軍人が見る事になるだろう。
MSを使っての模擬戦……それもホワイトベース隊のような精鋭部隊という事で、興味深く見て貰える筈だ。
そんな訳で後は帰るだけ……何て事になる筈もなく。
「よし、次は俺だな。モンシア、決着の時だ!」
ヤザンが嬉々として自分のジムに乗り込むと、模擬戦をやるべく進む。
そんなヤザンの言葉で我に返ったのか、モンシアが乗っていると思われるジム以外の3機がこちらに戻ってきた。
この状況でうるさく騒ぎ立てたりしなかった辺り、素直に褒めてもいいと思う。
お互いの間にあった実力差を敏感に感じたから、という事もあるんだろうが。
ともあれ、通信でやり取りをしたのかモンシアとヤザンのジムはお互いに距離を取って向き合う。
今度の模擬戦は1対1だからだろう。どちらかが先に移動して相手を待ち受けるといったような事はせず、ある程度の距離でお互いが向き合う、言わば決闘スタイルとでも言うべき代物だ。
正直な話、こういうやり方が実戦で使えるのかと言われれば、微妙なところだ。
実際の戦闘では、こうしてお互いに準備を整えてから戦うというのは……ないとは言わないが、かなり機会は少ないのだから。
そうしてお互いが向き合い、やがて開始の合図が掛かったのか、双方共に動き出す。
双方共にビームサーベルを持っての行動なのは、示し合わせてのものなのか、それとも偶然なのか。
実は、MS同士の戦闘で近接戦闘になるというのは、基本的にはあまり多くはない。
遠距離からのビームライフルを含めた射撃武器で勝負がつくのが一般的だった。
それでも今回はこうしてお互いがビームサーベルを手に相手に向かう。
2機共が一緒に間合いを詰めた結果、予想以上に接近するのが早い。
そんな中で我慢出来ず、先にビームサーベルを振るったのはモンシア。
そんな展開に、少し驚いた。
攻撃的、防御的という風に操縦タイプを分けた場合、モンシアはその性格から攻撃的なタイプだろう。
だが、それを言うのならヤザンも間違いなく攻撃的だ。
それどころか、明らかにモンシアよりも攻撃的なタイプとしては上だろう。
だというのに、ヤザンはモンシアが攻撃をするのを待っており……モンシアのジムが振るったビームサーベルを回避し、その隙を突くようにビームサーベルを突く。
斬るのではなく、突く。
それも、コックピットを狙っての一撃。
ある程度のベテランなら、ここからでもスラスターを使って強引に攻撃を回避するといった真似も出来たりするのだが、残念ながらモンシアにそのような技量や余裕は存在せず……結局俺の時と大差ない時間で、模擬戦は終了するのだった。
「なるほど。では、MSを操縦する際には、コックピットの計器だけを信じる訳にもいかないと?」
バニングの言葉に、俺は頷きを返す。
ちなみに俺の周囲にはベイトとアデルの姿もあり……モンシアは、少し離れた場所で裸踊りをやっていた。
何気に結構人気が――見世物的な意味でだが――高く、男女問わずにキャーキャーと歓声を上げている。
……正直、男の裸踊りは見たくないので、やらなくてもいいとは言ったんだが。
ヤザンに5連敗したという事もあってか、意地になってしまって今の状況になっている訳だ。
そう、ヤザンとモンシアとの間で行われた模擬戦は、結果としてヤザンの5連勝で終わった。
モンシアも何とか食らいついたりはしていたのだが、それでも結果としては負けてしまったのだ。
アデルから聞いた話によると、ジャブローでMSの訓練をしていた時のヤザンとモンシアの対戦成績は、若干ヤザンが有利ではあったがほぼ互角と言ってもよかったらしい。
だというのに、MSの操縦訓練が終わってそれぞれの戦地に派遣され……次に会ってみれば、そのほぼ互角だった筈の技量はヤザンの方が圧倒的に上となっていた。
これはヤザンの才能もあるが、同時にヤザンの努力の証でもある。
ホワイトベース隊には現在UC世界においてトップクラスの実力を持つアムロやユウがおり、そんな相手と飽きることなく模擬戦を繰り返していたのだ。
また、俺や綾子といった面々とも繰り返し模擬戦を行っているのだから、ヤザンにとっては最高の環境にあったと言ってもいい。
その結果が、モンシアの裸踊りという結果だった。
まさか、この裸踊りが原因で裸踊りのモンシアという異名……異名か? ともあれ、そんな風に呼ばれるとは、俺も思わなかったが。
というか、ジオン軍と違って連邦軍は異名持ちが少ないのに、その数少ない連邦軍の異名持ちが裸踊りのモンシアになるのだから、連邦軍としてはたまったものではないだろう。
「アクセル代表、今日の模擬戦はありがとうございました」
バニングがそう言って敬礼をしてくる。
年齢的にMSパイロットは結構厳しくなってきてもおかしくはないバニングだったが、今のバニングは年齢の衰えなど全く感じさせないだけの能力を持っていた。
この辺は素直に凄いと思う。
「ああ、正直なところ、こっちとしてもそれなりにいい訓練にはなった」
「いえ、あの短時間で負けてしまった事を思えば、お恥ずかしい限りです。今度模擬戦をやる機会がありましたら、次こそはもっとしっかり抗いたいと思います」
「そうか。頑張ってくれ。こっちも、今度は俺だけじゃなくて他の面々も連れてくるよ。俺は色々と例外だが、ホワイトベース隊にはまだ腕利きのパイロットも多いしな」
「ありがとうございます」
そう告げたバニングは最後に再び敬礼し、ベイトとアデルに未だに裸踊りをしているモンシアを連れてくるように命じて、自分達のミデアに戻っていく。
それを見送ると、俺はどこか満足そうにしている……それこそ、満腹の食事をして満足している様子にも見えるヤザンに声を掛ける。
「ヤザン、向こうも帰るみたいだし、俺達もそろそろ帰るぞ」
「ん? ああ、分かった」
そう告げるヤザンは、明らかにいつもより気が抜けているように見えた。
その気持ちも分からないではないんだけどな。
ヤザンにとって、モンシアというのは自分と互角のライバルだった筈だ。
だというのに、暫くぶりにあって戦ってみれば、自分が圧倒的な実力差で勝利したのだから。
自分が今までやって来た模擬戦は決して伊達ではなかったという事を結果として見せられたのだ。
それをまだ完全に消化しきれていないのだろう。
ピクシーをメカニック達に任せると、俺はヤザンを引き連れてミデアの中に入っていく。
既に皆も帰る準備を進めており、この模擬戦の映像は間違いなく連邦軍の上層部を揺るがす事になるだろう。
……モンシアの裸踊りの映像も、流れる事になるだろうが。
その辺は自業自得と思って貰おう。
というか、モンシアの奴、最初は嫌々だったが、最後の方になると寧ろ喜んで踊っていたような気も……しないではない。
まぁ、モンシアが新たな性癖に目覚めたというのは、取りあえず置いておくとして。
「ほら、お前にはこれからの模擬戦でも頑張って貰う必要があるんだからな」
現在ホワイトベース隊のMSパイロットの中で、一般的な意味での訓練を受けたのはヤザン、ダンケル、ラムサスの3人だけだ。
そうなれば、当然のようにこの3人が他のパイロット達に対する標準という事になるだろう。
もっとも、ヤザン達は選抜されただけあって元々技量も高かったのだが。
とはいえオデッサに集まってきている連邦軍のMSパイロットも、大半がヤザン達やモンシア達の同期だと言ってもいいのだろうが。
こうして、俺達はミデアでワルシャワに帰るのだった。
「おお、アクセル。どうだった? ……聞くまでもないだろうけどな」
ミデアからのMSの移動はメカニック達に任せ、ホワイトベースに戻ってきた俺はそのままブライトに会いに行った。
一度はブリッジに行ったのだが、書類の整理があるという事で艦長室にいると聞き、艦長室にやって来たのだが……
ブライトは机の上にある書類を眺めながら、俺にそう尋ねてくる。
ブライトにしてみれば、サイド7を出てからずっと俺の戦いを間近で見てきたのだ。
その上、乗っているMSはピクシーという、陸戦MSの中でも最高峰の性能を持つ。
そうである以上、模擬戦で俺が負けるというのは考えられなかったのだろう。
実際にそれは間違っていないので、頷きを返す。
「模擬戦の映像は連邦軍で共有されるって話だったが、かなり刺激的な映像になったとは思うぞ」
その言葉に、何故かブライトの視線に呆れの色が混ざる。
それこそ、『お前、またやったな』といった様子の呆れの視線。
実際には何か特別な事をやった訳ではなく、実戦慣れしていない点が大きく出たのと、何よりも純粋に実力の差が出たのが大きい。
MSを運用し始めたばかりの連邦軍と、様々な機種に乗って戦場で戦ってきた俺との間では、どうしてもそこに絶対的な実力差が出てしまう。
「俺の件はともかく、ヤザンも模擬戦で勝ったぞ。それも、ジャブローにいた時の同期で、その時は実力がほぼ同じだった相手に5連勝だ」
実はその相手は俺に絡んで来たモンシアでもあったのだが、取りあえずそれは言わないでおく。
「ほう。それは、ヤザンがホワイトベースに来てから、実力を劇的に上げたという事か?」
「だろうな。毎日のようにユウやアムロといった面々と模擬戦もしてたしな」
ヤザンとしては負けず嫌いが発揮した結果だったが、それが今のヤザンの持つ実力に反映されていたのだとすれば、ヤザンがホワイトベースに来た甲斐はあったという事だろう。
本人がそれを喜ぶかどうかは、また別の話だ。
「そうなると、オデッサ作戦が始まるまでは、模擬戦の申し込みが多くなると思うか?」
「間違いなく」
オデッサ作戦に参加するMS隊としては、ジオン軍との戦いで死にたくはないだろう。
であれば、模擬戦を行って少しでも技量を上げようと考える筈だ。
また、同時にオデッサ作戦に参加する指揮官級は、自分の部下が少しでも多くの成果を、と思うのは間違いない。
現場に出るMSパイロット、そして後方からMSパイロットに命令を出す立場の指揮官、双方共に俺達ホワイトベース隊に模擬戦を挑むのは、損がないのだ。
であれば、ここで動かないはずがないだろう。
「模擬戦をやる上で、難易度とかを考えておいた方がいいかもしれないな。ゲームみたいに」
ゲームみたいにという俺の言葉に、ブライトは納得した様子を見せるのが少し意外だった。
生真面目なブライトの事だから、ゲームの類は今まで全くやったことがないのだと、そう思っていたのだ。
だが、このブライトの様子を見る限りでは、相応にゲームについての知識があるらしい。
「ベリーイージー、イージー、ノーマル、ハード、ベリーハード、インフィニティといったところか?」
ペルソナ世界で順平とやったゲームの難易度は、確かこのくらいに分類されていた筈だ。
人数に対して少し難易度が多いような気がしないでもないが、選択肢が多いというのは、選ぶ方にとって悪い事ではない。
……問題なのは、ホワイトベース隊でどうやってその辺を分類するかといった事だろうが。
俺はインフィニティ……いや、ベリーハードか? そしてインフィニティは、俺、綾子、アムロ、ユウで相手をする、と。
俺は単独で、綾子とアムロとユウで1個小隊。……うん、まさに現状の連邦軍においてはインフィニティという難易度が相応しい。
いっそここに、後方からガンタンク隊の支援砲撃があるというのも、ありか?
「程々にな」
難易度を考えている俺を見て、ブライトがそう言ってくる。
どうやら俺の表情でどのような事を考えていたのか、理解したらしい。
「連邦軍のMS部隊がオデッサ作戦で生き残る為だしな。ここで甘やかすような真似をした場合、ジオン軍のMS部隊に撃破されかねない。なら、しっかりと訓練をしておいた方がいいだろ?」
そう告げると、ブライトは若干浮かない様子を見せながらも、俺の言葉に頷く。
「……程々にな」
それでも、ブライトの口から出て来たのは、数秒前の言葉と全く同じだったが。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:640
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1512