ブルーディスティニー2号機が奪われた件の翌日。
ある意味で予想通りと言うべきか、ブルーディスティニーとイフリート改の双方は連邦軍が回収していったが、3号機に関してはこのままホワイトベース隊で使ってもいいという許可を得る事が出来た。
こっちにとっては、ベスト……とまではいかないが、それでもベターな結果だったのは間違いない。
正直なところを言わせて貰えば、EXAMシステムはシャドウミラーの技術班に対するお土産として欲しかったのは事実なのだが。
連邦軍としても、多額の研究費用とかを使っていた機体だけに、俺に引き渡すといった訳にはいかなかったのだろう。
オデッサ作戦が終わった後で、レビルに追加の要求としてEXAMシステムのデータくらいは要求してみてもいいかもしれないな。
それをくれるかどうかは、微妙なところだが。
オデッサ作戦において俺が向こうの予想以上の活躍をすれば、それを貰える可能性も十分にある……と、思う。
ともあれ、本来ならミデアが運んでくる機体の護衛をするだけの筈だったのが、気が付けばこの有様だ。
新型機を1機奪われ、その上ホワイトベース隊でも損傷した機体が何気に多い。
この後の事を思えば、かなり面倒になりそうだ。
もっとも、その面倒を引き受けるのは基本的にブライトだったりするのだが。
ともあれ、ホワイトベースも半壊……とまではいえないが、それでも何だかんだと被害を受けて、結果として現在のホワイトベース隊の総戦力は最大時に対して80%程といったところか。
これは、機体が小さいながらも損傷を受けたというのもあるが、やはりブルーディスティニーが使えなくなったのが痛い。
ユウの操縦技術を思えば、3号機はすぐに乗りこなせるようになるだろうが。
アルフから一応という事で色々と3号機についての説明を受けてはいるが……基本的に3号機は、今までユウが乗っていた1号機とそう大差はない。
細かい性能とかは色々と違うので、若干の慣れは必要だろうが、それでも操縦感覚としてはそこまで差はない筈だ。
考えてみれば、1号機だって基本的にはジム頭以外は陸戦型ガンダムなんだから、それは当然なのかもしれないが。
そんな訳で、現在俺は何人かと一緒に3号機の訓練を受けているユウを見に来たのだが……
「蒼くない、な?」
その姿を見て、思わず呟く。
そんな俺の言葉に、一緒に訓練場までやって来た他の面々も同意するように頷く。
「あれって、もうブルーディスティニーって言わないんじゃないか?」
ヤザンのその言葉に、俺も同意する。
何と言えばいいのか……俺達の視線の先で現在動いているのは、ぶっちゃけて言うとただの陸戦型ガンダムにしか見えない。
蒼のパーソナルカラーを持ってるからこそブルーディスティニーという名前だったと思うんだが、こうして見る限りでは本当にただの陸戦型ガンダムだ。
「サンダースが使っている陸戦型ガンダムそのままだよな」
カイが呆気にとられたように告げる。
実際にこうして見た限りでは、その言葉に異論はない。
とてもではないが、EXAMシステムという特殊なシステムを積んでいるようには思えない。
というか、今更……本当に今更の話だが、イフリート改はイフリートと違って頭の形がかなり変わっている。
それは通常のイフリートではEXAMシステムの搭載に無理があったからだろう。
それに比べると、ブルーディスティニーは陸戦型ジムの頭部を使っていたが、イフリート改と違って頭部の形は変わっていなかった。
そして当然のように、3号機の頭部の形も普通の陸戦型ガンダムの頭部のままだ。
この辺りは、純粋にジオン軍と連邦軍の持つ技術力の差が出ているのだろう。
基本的にMSの技術ではジオン軍は連邦の10年先を行くって話を聞く事があるけど、これを見る限りではとてもそうは思えないよな。
「これなら、シローが乗ってるEz8の方が、後継機的な感じがするな」
ヤザンのその言葉は納得出来るものがあったが、そこで納得してしまうのもどうなんだ? という思いがあった。
「ニムバスが奪っていった2号機の方は、ブルーディスティニーの名前に相応しく蒼かったんだけどな」
「だったら、ユウが乗ってる機体も蒼く塗ったらどうだ? メカニックの連中は忙しいけど、それくらいなら俺達でも出来るんじゃねえか?」
「意外だな。まさか、ヤザンからそんな言葉が出るとは」
これが、アムロだったりシローだったりといった面々が言ったのなら、なるほどと納得も出来ただろう。
だが、ヤザンがそんな事をいうとは、と。
そう思いながらも、首を横に振る。
「けど、止めておいた方がいいと思う。今も言ったが、ニムバスの奪っていった2号機も蒼い。その上で、2号機も3号機も、共に陸戦型ガンダムだ。つまり、ここで3号機を蒼く塗ってしまえば、今度ニムバスが出て来た時に見分けがつかなくなる」
「……なるほど。言われてみればその通りだな。もしニムバスだったか? そいつが3号機の振りをしてワルシャワ基地に入って来るような事があれば、破壊工作し放題だしな」
ヤザンの言葉に、それを聞いていた全員が嫌そうな表情を浮かべる。
これが荒唐無稽な話であれば、まさかそんな事がある筈がないと言えばいいだけなのだが、ニムバスが奪っていった2号機の存在を考えると、とてもではないがないとは言い切れない。
いや、寧ろニムバスの性格を考えると、嬉々としてそのような事をしてもおかしくはないと思ってしまう。
特にオデッサにいるジオン軍にしてみれば、正面から戦わないでワルシャワ基地に存在する連邦軍に損害を与えるというのは、最善の選択だろうし。
だからといって、それを許容出来るかと言えば、当然のように答えはノーだが。
「そうだな。ニムバスが奪っていった機体の事を思えば、ユウの機体を蒼く塗るのは止めておいた方がいい」
3号機を操縦するユウを見ながら、リュウが呟く。
これで、3号機が見て分かる程に2号機と違うのであれば、機体を間違えたり……誤射といった心配はないのだが。
もっとも、EXAMシステムを起動させて戦うような事があれば、その動きはかなり素早いという事もあり、援護するつもりで誤射してもおかしくはなかったりするのだが。
少なくても、相当の技量がなければ誤射してもおかしくはない。
「そうなると、蒼以外の色で塗るとか? ジオン軍と違って、連邦軍はパーソナルカラーとかないから、その辺は結構自由だよな。ブライトさんが許可を出すかどうかは別だけど」
「カイの言いたい事も分かるけど、連邦軍とジオン軍は違うところが多いしな」
ジオン軍の場合、新しい軍隊であるというのが大きい。
それだけにプロパガンダ的な意味もあって、パーソナルカラーや異名とかを推奨している。
だが、連邦軍の場合は軍としての歴史が相応に存在し、だからこそジオン軍のように好き勝手は出来ない。
……それ以外にも、組織の中に裏切り者も存在するし。
ブルーディスティニーの後継機が運ばれた件で、あれだけの戦力をジオン軍が用意出来たのは、間違いなく連邦軍からの情報があったからだ。
それも連邦軍の中でもかなり上層部に、裏切り者がいる筈だった。
ワルシャワ基地に戻ってきてから、ブライトがレビルやゴップに報告をしている筈だったが、その辺りの動きは今のところ見えない。
恐らくだが、現在は誰が怪しいのかを調べて証拠を集めているといったところか。
ただし、今の状況でそこまで悠長にしていられるのかという点が大きい。
オデッサ作戦が実行されるまで、もう少し。
もう少しという事は、当然だがある程度の時間はある訳で、それを考えれば裏切り者から情報を得た場合、ジオン軍が何らかの行動を取らないとは限らないのだ。
連邦軍を指揮するレビルとしては、その辺が非常に問題だろう。
折角作戦を立てても、その作戦が敵に流されれば、ジオン軍はあっさりとその作戦に対抗してくる可能性が高い。
それどころか、こっちの手薄な場所を狙って直接ジオン軍の精鋭……それこそ、ニムバスとかが攻撃してくる可能性は高いだろう。
EXAMシステム搭載機を持ち、本人の技量も高いニムバス。
普通に考えれば、そんなニムバスを相手にするのは、かなりの難易度だろう。
連邦軍の平均的なMSパイロットの練度を思えば、ニムバスやその仲間達に対抗出来るかどうかは……難しい。
ホワイトベース隊から防衛戦力を出すのなら、ニムバスも何とかなりそうだが。
特に同じEXAMシステムを持っているユウや、ニュータイプのアムロを執拗に狙うという今までの経験から考えれば、防衛戦力としては十分だ。十分なのだが……防衛戦力に回すと、今度は攻撃の戦力が足りなくなりかねないというのが問題だった。
「ともあれ、難しい事は上の連中が考えるだろ」
「……いや、本来ならアクセルも上の連中なんじゃないのか? こうして、俺達と一緒にいるから忘れそうになってるけど」
カイが若干の呆れと共に言ってくる。
他の面々も、そう言われれば……と、俺に視線を向けてきた。
まぁ、実際にカイの言ってる事はそこまで間違っている訳ではない。
ルナ・ジオンの後ろ盾たるシャドウミラーの代表が、俺なのだから。
自分で言うのも何だが、その身の重要性という意味では、レビルやゴップと同じくらい……いや、それ以上に高い重要性を持っているのは事実だった。
普通なら、そんなお偉いさんが戦場に出るのは自殺行為だと言われても、おかしくはない。
俺の場合は、混沌精霊なのでこのUC世界においてはその辺を全く気にしなくてもいいのだが。
「気にするな、俺は気にしない。それに、ピクシーの戦力はホワイトベースには必要だろう?」
そう告げるが、現在のホワイトベースはアムロやユウといったエース級が揃っている以上、絶対に俺が必要って程でもないんだよな。
この辺りの戦力、原作ではどうなっていたのやら。
まさか、ガンダム、ガンキャノン、ガンタンクがそれぞれ1機ずつだったとか、そういう事は……多分ないと思うけど。
そう思うも、何だか普通にありそうで微妙に怖いな。
「アクセルのピクシーが心強い戦力なのは、否定しないけどさ」
カイが何か言いたげに告げてくる。
この場合は、一体何を考えての行動なんだろうな。
そんな風に思いつつ、俺は改めて3号機を動かしているユウに視線を向ける。
さすがと言うべきか、この短時間で3号機の動きは先程までよりも明らかに違っている。
違うとは言っても、実際にはほんの些細な事でしかない。
足の動きが1秒にも満たない時間早くなったり、腕の動きが少しだけ遅くなったりといったように。
MSのパイロットでもなければ……いや、MSのパイロットでも一定以上の実力の持ち主でなければ、そんな些細な動きに気が付く事は出来ないだろう。
だが、その些細な動きの積み重ねこそが、実戦において何よりも大きな意味を持つ。
アムロのようなよほどの天才でもない限り、MSに乗っていきなり操縦してザクを倒すなんて真似は出来ないのだ。
さすが、この世界の主人公だけはあるよなと、しみじみと思ってしまう。
ともあれ、ホワイトベース隊にはそんな腕利きは多数存在する。
……連邦軍のMS隊が俺達と模擬戦を行って技量を上げようとしているのは知っているが、ぶっちゃけた話、模擬戦を繰り返す事によって、ホワイトベース隊のMSパイロットも、その技量を上げているのだ。
どれだけ技術が上がるかというのは、パイロットの才能によって大きく変わるので、絶対に追い抜けないとは言い切れないが。
ただ、ホワイトベース隊に集まっているMSパイロット達は、性格に若干の問題はあっても腕利きだったり、大きな才能を持つ者が多いのも事実だった。
その辺の者達が技量を上げても、すぐにどうこう出来る筈がないというのは明らかだった。
とはいえ、現在連邦軍に所属するMSパイロットは今までの経歴や実力といったものを認められた者達だ。
それを思えば、相応にまだ伸びる余地はある。
もっとも、それはあくまでも本人がしっかりと訓練をすればの話だ。
訓練の類をせず、怠けてばかりいるようでは、幾ら才能があっても意味はない。
それこそ、後からパイロットになった奴にどんどんと追い抜かれていく事になるのは間違いない。
何だか、裸踊りのモンシアという異名……? 異名? まぁ、取りあえずそんな風に呼ばれるようになったモンシアなら、怠惰な性格をしている事もあって、あっさりと後輩から抜かされるような……あ、でもモンシアの上司のバニングは部下を生き残らせる為には自分が嫌われてでも厳しい訓練をするといったような性格なので、その辺の事情を考えると、モンシアも生き残れるんじゃないか?
勿論、あくまでも恐らくそうだろうとしか言えないし、時の運とかそういうのも関係してくる以上、絶対とは言えないが。
そんな風に思いつつ、俺は3号機の様子を眺めるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:690
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1522