俺の視線の先にあるのは、アプサラスⅡとはまた違った形の大福。
まん丸に近かったアプサラスⅡに比べると、アプサラスⅢは楕円形と呼ぶに相応しい姿をしていた。
また、楕円形となって横に広がった場所の下には、ミノフスキークラフトがそれぞれ1つずつ内蔵されている。
「どうです? これがアプサラスⅢです」
自信満々に告げるギニアスだが、その気持ちも分からないではない。
アプサラスⅡは、ラサ基地攻略戦でかなりの……それこそ戦況を決定づけると表現してもいいような戦果を残した。
だが、それでもギニアスにとってアプサラスⅡというのは、あくまでもアプサラスⅢを開発する為の実験機的な扱いだったのだから。
「随分と横に広がったな」
「ええ。当初予想していた通りの機動性や運動性を考えると、どうしてもこの形になりました。ただ、当初の計画と変更になった事もあります。……ご覧下さい」
そう言い、ギニアスはアプサラスⅢが映し出されていた映像モニタに、別の映像を映し出す。
そこにあったのは、アプサラスⅢ。
それは変わらないのだが、今まで見ていたアプサラスⅢとは明らかに違う部分もある。
それは、機体の両側に存在する丸い部品……ミノフスキークラフトが、細長い足? によって繋がっているのだ。
そしてミノフスキークラフトがついていない、3本目の足もある。
何というか……こう言っては何だが、どこかギアス世界のガン・ルゥを思い起こさせる。
中華連邦が開発したKMF、ガン・ルゥ。
ただし、中華連邦では技術力が足りずに2本足で機体を安定して移動させる事が出来なかった。
結果として、それを補う為にガン・ルゥには3本目の足というか、尻尾というか、そんな感じの補助脚的な存在が必要となった。
……マブラヴ世界においては、何気にガン・ルゥは結構な活躍をしたのだが、それは置いておくとして。
「これは? 随分と、その……不格好というか、狙われやすいように思えるが」
ただでさえアプサラスⅢはⅡと比べて楕円形となり、敵の攻撃が命中しやすくなってしまった。
その上でアプサラスⅢにとって重要な機関であるミノフスキークラフトをわざわざ外に出すような真似をすれば、それは敵に狙って下さいと言っているようなものだろう。
ミノフスキークラフトで空中に浮かんでいる以上、そこを攻撃されれば当然ながらアプサラスⅢは地上に落下する事になる。
何を思って自分の弱点をわざわざ晒すのか。
そんな俺の視線から、何を言いたいのかを理解したのだろう。
ギニアスは少し困ったような笑みを浮かべて口を開く。
「アプサラスⅢが放つメガ粒子砲は非常に強力です。本来なら、それを発射する為の反動に対処したり、機体の位置を固定する為にこのような形になる……筈でした」
「でした? つまり、過去形か?」
「はい。アクセル代表のおかげで、アプサラスⅡの運用データを色々と取ることが出来ましたし、何よりも提供された動力炉……ゾックの動力炉を改良して開発した新型の動力炉を3基搭載したおかげで、その辺りの問題はなくなりました。よって、この補助脚の類はなくても、普通にアプサラスⅢは運用可能です」
そう言い、自慢げな様子を見せるギニアス。
技術者として、自分の開発してきたアプサラスが予想以上の完成度となったことが、それだけ嬉しかったのだろう。
シャドウミラーの技術班を知っているので、その辺りの気持ちは何となく理解出来た。
「普通にというのは、アプサラスⅡと同じようにという事か?」
「はい。寧ろ運動性や機動性はアプサラスⅡを超えています。そして何と言っても、メガ粒子砲には新型のシステムを搭載しており、アプサラスⅡで使ったような収束された巨大メガ粒子砲として使う以外にも、複数の敵を相手に使う拡散メガ粒子砲という攻撃手段もあります」
「ほう」
ニーズヘッグにも拡散ビーム砲はあるが、ようはそのメガ粒子砲的な奴か。
もっとも、そういう意味ではピクシーで使っているビームスプレーガンも言ってみれば拡散メガ粒子砲だったりするのだが。
ただ、ビームスプレーガンとアプサラスⅢの放つメガ粒子砲では、その威力が大きく異なる。
それこそ、比べるのが間違っていると最初から言えるくらいには。
「地球上においては、これ以上ない程に強力なMAであると、そう断言させて貰います」
「だろうな」
ギニアスが言う通り、アプサラスⅢの性能が説明通りのものだとすれば、その能力は極めて強力だ。
現時点においては、連邦軍・ジオン軍共にアプサラスⅢに勝つのは難しいというくらいには。もっとも……
「敵が離れていれば、の話だけどな」
「……はい」
俺の言葉に、ギニアスは少し悔しげな表情で頷く。
これだけの巨体を持つMAで、しかも武器はメガ粒子砲だけ。だとすれば、懐に入られた場合はどうしようもない。
「いっそ、ミサイルの類でもある程度積んでみたらどうだ? 使い捨てにすれば、どうにかなるんじゃないか?」
「やれるかどうかで考えれば、出来ます。ですが、それでは殆ど焼け石に水ですので、接近してくる敵に対してはグフ・フライトタイプで対処しようかと」
「なるほど。接近してくる相手については、最初から護衛のMSに完全に任せる事にしてるのか。その辺はアプサラスⅡと同様なんだな」
「はい。それにアプサラスⅢは設計がかなり厳しいので、余分な搭載スペースはあまりないんですよ。……設計変更する前なら、まだ若干余裕はあったのですが」
性能がアップした代わりに、拡張性がなくなってしまった訳か。
よくある話ではある。
恐らく無理をすれば、多少の迎撃兵器くらいは搭載可能ではあるのだろう。
だが、こういう場合は下手に迎撃兵器があれば、敵が接近した時にパイロット……アイナがそれを使うか、それとも使わずに退避して護衛のMSに任せるかといった事を判断しなければならない。
ましてや、そんなアイナの判断は下手をすれば護衛をしているMS……ガトーやノリスといった面々を攻撃する可能性もある。
その辺の事情を考えれば、やはりここは下手に攻撃をしたりしないで、護衛は完全にMSに任せた方がいいという、ギニアスの判断は決して間違ってはいない。
「そうか。パイロットの負担を考えれば、そっちの方がいいかもしれないな」
「ありがとうございます。それと、アプサラスⅢは全てをルナ・チタニウム製の装甲としています」
「それは……また……」
若干唖然とするが、ギニアスの判断は決して間違っている訳ではない。
アプサラスⅡよりも巨大になったアプサラスⅢでは、当然のように敵に狙われる可能性が高い。
そしてこのUC世界においてバリアの類が存在しない以上、出来るのは敵の攻撃を回避出来るだけの高い運動性や機動性を与えるか、もしくはドムのように重装甲にして高い防御力を備える事だけ。
アプサラスⅢの巨体を思えば、高い運動性や機動性を与えるというのは無意味だ。
また、ヅダのように量産する訳ではなく、あくまでも1機……もし量産するにしても少数である以上、高価なルナ・チタニウムを使ってもそこまで負担はない。
何しろ、アプサラス計画はシャドウミラーがバックアップしてるのだから。
ただまぁ、例えルナ・チタニウムの装甲であっても、それで防げるのはあくまでも実弾だけであって、ビームライフルのような武器はどうにも出来ない。
せめてもの救いは、ジオン軍でビーム兵器を有する機体の大半が水陸両用MSだという事か。
取りあえずオデッサ作戦でその辺は心配する必要はない……と思う。
俺の空間倉庫がなければ、運んでくる中でその辺を心配する必要があるかもしれないが。
他にビーム兵器と言えば、ドムが一応持っている。
ただし、あれは目潰し程度にしか使えない代物なので、空を飛んでいるアプサラスⅢが心配する必要はないだろう。
そういう意味では、ルナ・ジオンとして連邦軍側に協力したのは幸いだったのだろう。
ビーム兵器に関しての技術については、間違いなく連邦軍がジオン軍を上回っているのだから。
実際に主力MSのジムですらビームライフルを使えるし。
ただ、基本的にはコストとかそれ以外にも様々な理由からビームスプレーガンが配備されてるが。
ともあれ、もしアプサラスⅢがジオン軍側の援軍として出て来れば、ビームライフルとかであっさりと撃墜されてしまった可能性が高い。
「ルナ・チタニウム製の装甲か。コスト的な問題に関してはともかく、性能的にはかなり期待出来そうだな」
ぶっちゃけた話、もし接近してきた敵がいてもルナ・チタニウム製の装甲で体当たりとかやると、アプサラスⅢの重量や質量もあって結構なダメージを与える事が出来そうな気がする。
とはいえ、アイナの性格を考えると難しいが。
「そうですね。アイナの安全を考えても、この件は多少無理がありましたが進めてよかったです」
妹思いのところは変わらないか。
ガトーとアイナの関係も認めているようだし。
……ただ、ギニアスがサハリン家の当主という事になれば、妻が必要になるんだよな。
以前までは病弱で、それこそ近い将来死ぬ可能性があったので、ギニアスが結婚するような余裕はなかった。
だが、レモンの力によって健康になった以上、ギニアスが結婚しても問題はない。
その辺、後でアイナにちょっと聞いてみるか。
アイナとしても、自分が結婚するよりも前に兄に結婚して欲しいだろうし。
とはいえ、ギニアスが結婚か。
相手をどうするかが問題だな。
この場合、相手がいないから問題なのではなく、希望する者が多いからこそ問題となる。
サハリン家はジオン公国では没落した名家といった扱いだったが、アプサラス計画を持ってルナ・ジオンに来た結果として、名家としての復活……復興? を果たした。
そしてルナ・ジオンの後ろ盾となっているシャドウミラーと個人的な繋がりがあり、本人は高い能力を持つ技術者で、美形と言っても構わない。
ぶっちゃけた話、これ以上の優良物件はそうそうないというくらいの結婚相手だ。
そんなギニアスが結婚相手を募集すればどうなるか。
考えるまでもなく、結婚を希望する者が続出するだろう。
今のギニアスとサハリン家というのは、それだけ魅力的なのだ。
……もっとも、地位や財産、シャドウミラーとの繋がりを求めてというのは、ギニアスとしても反対だろうが。
アイナもこのまま行けばガトーと結婚するだろうし、出来ればギニアスにも恋愛結婚をして欲しいところだ。
問題なのは、ギニアスがそれを欲してるかどうかってところだろうな。
ギニアスの場合は、女よりもMSとかMAの方に興味を持っていてもおかしくはない。
そうなると、やっぱり同じ話題で会話出来る……同じ趣味を持っている相手を紹介するのがいい。
そう思い、頭の中でギニアスと同じような趣味を持つ者の姿を思い浮かべていくが……メカニックとか技術者、科学者といった者達で独身の女。
そう言われて思い浮かんだのは、メイだけだった。
ダグラスに保護されている人物。
メイの実家そのものはダイクン派として、ルナ・ジオンの中でも名家として有名だ。
サハリン家もまた名家である以上、この結婚は政治的に見た場合は決して悪い事ではない。
問題なのは、これが恋愛結婚として成立するかどうかといったところだが……この辺、どうなんだろうな。
「アクセル代表? どうしました?」
「いや、ギニアスの結婚について考えていてな。アイナはガトーがいるが、ギニアスの方はどうなんだ?」
「……は?」
完全に予想外の事を聞かれたといった様子のギニアス。
実際、今までアプサラスⅢについて話していたのに、いきなり自分の結婚云々といった話になったのだから、それも無理はない。
「お前の結婚だよ。サハリン家の当主が、いつまでも独身って訳にはいかないだろ?」
「それは……」
俺の言葉に気まずそうに視線を逸らすギニアス。
この様子を見ると、恐らく俺以外……多分アイナだろうけど、その辺りからも色々と言われているな?
「そ、そう言えば! 月のディアナからの情報なのですが、ジオン軍で次期主力機のコンペがまた行われるらしいですよ?」
「は?」
露骨な話題逸らしではあったが、その話題に強い興味を惹かれるというのも、また事実。
そもそも、次期主力機という点では、俺がまだ月にいる時にリックドムと高機動型ザクでコンペを行って、リックドムが次期主力機という扱いになった筈だった。
だというのに、何故? と、そんな疑問を俺が抱くのも当然だろう。
「一体、ジオン軍で何があったんだ?」
「こちらに流れてきてる話では、ジオニック社とツィマッド社とMIP社が協力して開発したMS、ゲルググとツィマッド社が単独で開発したギャンというMSの間でコンペが行われる……という話です」
「それ、色々と矛盾してないか? ツィマッド社的に」
ギニアスの言葉に、俺はそう告げるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:690
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1522