ギニアスとアイナのホワイトベース見学の途中、遭遇したアイナとシロー。
これが運命的……なのかどうかは、正直なところ分からない。
だが、シローがアイナを見た瞬間に心を奪われてしまった……言ってみれば一目惚れに近い状態だったことを考えると、このままという訳にもいかない。
普通に考えればシローの気持ちはスルーしてしまえばいいだけなのだが、俺がホワイトベースに乗っている関係上、アイナがホワイトベースに来る事がないとは言えない。
また、アプサラスⅢがオデッサ作戦に参加するというのを考えれば、余計にその可能性は高いだろう。
だからこそ、ここでしっかりとシローの淡い想いを断ち切っておいた方がいいだろうと判断し、こうして食堂にやってきた訳だ。
ちなみにギニアスはミナトを呼んでサンダースと共にホワイトベース内を見て回っている。
こんな状況だというのを考えると、ギニアスの態度はそれでいいのか? と思わないでもなかったが、ギニアスがそれでいいと言っているのであれば、それで構わないだろう。
「その、それでアクセル代表。私はここで何を?」
「そうだな。取りあえず話してみたらどうだ?」
アイナもジオン公国では落ちぶれたとはいえ、名家の出身だ。
そうである以上、当然のように今までも多くのパーティとかに参加してはいただろうし、自分が人から注目を浴びるだけの美貌を持っているというのも理解はしているだろう。
だからこそ、自分がシローにどのような視線を向けられているのかは知っており、それでどう対応すればいいのか迷っている……といったところか。
なので、取りあえず話して恋人がいるというのを匂わせてみれば、シローも諦める……かもしれない。
絶対とは言えないが。
ともあれ、その辺は上流階級での生活に慣れているアイナに任せるしかない。
いっそ、キキとガトーも連れてくるか?
ガトーが俺の女に何をしている的な事を言えば……言えば……いや、ガトーがそんな台詞を口にするとは、到底思えない。
キキの方は、アイナに鼻の下を伸ばしているシローをどうにかするといった風にする可能性はあるから、何とかなるかもしれないが。
「その、アイナさんもやはりオデッサ作戦に参加を?」
「ええ。兄の開発したMAに。アマダ少尉はホワイトベース隊の所属という事は、ラサ基地の作戦にも参加を?」
「あー……はい。ただ、その時はまだホワイトベース隊に所属はしていなかったので、別の部隊としての戦いでしたが」
「それは大変でしたね」
「ええ。まさか、ラサ基地が自爆をするとは思ってもいませんでしたし。それにしても、あの戦いは始めから凄かったですね。知ってますか? 丸い機体が放ったビームで山肌に穴が空いたんですよ。おかげで戦いそのものはかなり楽になりましたが」
「あの……その……その丸いのに乗ってたのが私です」
「……え?」
顔を赤くして告げるアイナの言葉に、シローは言葉に詰まる。
この様子を見ると、どうやらシローはホワイトベースの隣にあったアプサラスⅢについては全く気が付いていなかったらしいな。
気が付いていれば、アイナがここにいるという事の因果関係とか、そういうのも理解出来ただろうに。
あ、でも本来ならMA云々ってところで気が付いてもおかしくはなかったのか?
そんな風に思いつつ、俺は紅茶を口に運ぶ。
口の中に広がる豊かな香りは、紅茶の茶葉が高級な物であるか、もしくは紅茶を淹れた者の腕が良かったのか。
普通に考えれば後者なのだが、食堂のスタッフの紅茶を淹れる腕がどの程度のものなのかというのは、俺も知っている。
そうなると、やはり紅茶の茶葉が高級な……いわゆる、等級の高いものになったという事なのだろう。
模擬戦を繰り返した事でホワイトベース隊の実力を知り、少しでもお近づきになっておこうと、そう考えたのだろう。
まぁ、その気持ちも分からないではない。
お礼の品として、色々な嗜好品の類が送られてくるようになったのは、俺にとっても嬉しい事だが。
「なるほど。お兄さんがあのMAを、……凄いですね。兄妹揃って国の為に頑張るなんて」
「いえ、私達だけでは色々と難しかったと思います。シャドウミラーの協力があればこそですし、私生活の方ではあの人が励ましてくれたので」
お、アイナが攻めたな。
あの人と、そう口にした瞬間のアイナの表情は、間違いなく女の顔だった。
それを見たシローは……うん、アイナの表情から事情を察したのか、かなりショックを受けた様子を見せている。
まぁ、今のアイナの様子を見れば、恋人がいるというのは予想出来る。
もしくは恋人がいなくても、好きな相手がいるという感じか。
「その……あの人と言うのは?」
「私の恋人です」
「あ、そ、そうですか。アイナさんは魅力的ですし、そのような人がいてもおかしくはないですよね」
ショックを受けつつも、それを何とか表情に出さないようにしながら言うシロー。
とはいえ、そのショックを受けた表情を隠すといった事には成功していない。
その時、更に事態が動く。
「キキねーちゃん、こっちこっち! ジュース飲もうよ!」
「あ、こらレツ! ちょっと待ちなさいってば。ジュースはいいけど、飲みすぎると夜におねしょするわよ! ……シロー?」
食堂の中に走ってきた、レツとキキ。
その後ろにはハロやカツ、キッカ、フラウといった面々もいる。
キキとフラウは同年代という事もあってか、それなりに上手くやっているらしい。
らしいのだが……今はそんなのはどうでもいいような空気が食堂の中に流れる。
当然だろう。キキにしてみれば、食堂にやって来たら自分の好きな男が見た事もない美人と一緒にいるのだから。
……一応俺もそこにはいるのだが、その辺はキキの目には入っていないらしい。
キキの立場になってみれば、今この時は色々と面倒な状況だけに、部外者的な立場にいる俺が目に入らなくてもおかしくはないが。
キキは女の直感によるものか、アイナを真剣な表情で見る。それこそ、睨むといった表現が決して間違っていないかのような、そんな様子で。
とはいえ、アイナとキキでは女としての魅力という点では、普通ならアイナの勝利だ。
勿論キキも可愛らしいと言っても間違いはないのだが、それでも女として見た場合はまだ子供だ。
外見だけではなく、性格とかそういう点でも。
「シロー、その人は誰?」
キキが尋ねる声は穏やかで、笑みすら浮かべている。
浮かべているのだが……口元では笑みを浮かべていても、目の中に笑みはない。
一緒にジュースを飲もうと言っていたレツも、そして後から食堂に入ってきたカツ、キッカ、フラウも……気のせいかハロまでもが、数歩後退っているように思える。
キキが爆発するのではないかと、そう思ったのだろう。
実際にキキは元ゲリラだけあって、決して気が長くはない。
何かがあれば、すぐにでも暴力に訴えてもおかしくはなかった。
シローもキキとはそれなりに付き合いが深いだけに、そんな性格は知っているのだろう。
焦った様子で口を開く。
「ほら、彼女はあれだよ。ラサ基地攻略の時に最初に巨大なメガ粒子砲を撃った機体のパイロット。オデッサ作戦でも協力するという事で、アクセルに案内して貰ったんだ」
「ふーん……本当?」
キキの視線が俺に向けられる。
嘘を吐いたら許さないと、そう如実に示している視線。
そんなキキに頷く。
「ああ、それは間違いない。ホワイトベースの外にあるMAを見なかったか? あれがアイナの乗ってるアプサラスⅢだ」
俺の言葉に、キキは少しだけ納得した様子を見せた。
シローは書類の件で気が付く様子はなかったが、アプサラスⅢの存在は殆どの者が気が付いている。
……いやまぁ、ホワイトベースの横にあれだけ巨大なMAが存在しており、しかもそれをグフ・フライトタイプが守っているのだ。
そこに興味を抱くなという方が無理だろう。
「ああ、あの。……で、何でそのMAだっけ? そのパイロットとシローが仲良く話してるのさ?」
「いや、一応俺もいたんだが」
まるでこの場には2人しかいないようなキキの言葉に、半ば反射的にそう返す。
何故かシローから感謝の視線が向けられたが、それは取り合えず気にしない事にでもしておこう。
「ああ、そう言えばアクセルもいたんだね。……ただ、今はちょっとシローと話したいから、引っ込んでてくれる?」
俺とキキの間は、それこそ隔絶したという表現が相応しい程に実力の差がある。
だが、それでも俺はキキの言葉に黙り込んでしまう。
これが、恋する女の底力という奴か。
「ねぇ、シロー。それで? 何でルナ・ジオン軍の人と話してるの?」
「そ、それは……」
「安心して下さい。貴方が気にするような事は、何もありませんでしたので」
言葉に詰まったシローを助けるように、アイナがそう告げる。
突然言葉を発してきた恋敵――キキ視点で――のアイナに鋭い視線が向けられる。
だが、キキに視線を向けられたアイナは、睨み返すといったこともなく……寧ろ、母性的で包み込むような笑みを浮かべつつ、口を開く。
「今も言ったように、私とアマダ少尉はアクセル代表と3人で少し話をしていただけです。それに一応言っておきますが、私には恋人がいます」
「あ、そうなんだ」
アイナの恋人がいる宣言で、キキの視線から力が弱まる。
これはUC世界だからこそだろうな。
シャドウミラーなら、重婚が可能だし。
そして、はっきりと恋人がいるというアイナの言葉にショックを受けるシロー。
さっきそれらしいことを匂わされていたが、それでももしかしたら……という希望があったのだろう。
シローの一目惚れは、こうしてあっさりと破れる事になる。
いやまぁ、元々この恋が叶う可能性はなかったんだし、それを思えばこの結果は不思議でも何でもないんだが。
「ええ。なので、私がアマダ少尉とどうにかなるといったことはありませんので、安心して下さい。私はガトーを愛してますから」
そんなアイナの言葉で、アイナの恋人の名前がガトーだと理解したのだろう。
アイナの様子も見て、本当に恋人がいるというのを理解したキキは、先程までとは違う種類の笑みを浮かべてシローに近づいていく。
「全く、シローも恋人がいる人を相手に、誤解させるような真似をしたら駄目でしょ? ほら、ちょっと行こう。話したい事があるしね」
「え? いや、だが、その……」
ここにサンダースでもいれば、どうにかしてシローを助けるような事が出来たかもしれないが、頼りになるシローの部下はここにはいない。
……いやまぁ、ここにサンダースがいても、恋愛の件でどうにか出来るとは思えなかったが。
「痛っ! ちょっ、おいキキ! 手を離せって!」
「ごめんあそばせ」
騒ぐシローと、ホホホと笑い声を上げながらシローの耳を引っ張っていくキキ。
わざとらしい上品な挨拶をした後で、キキはシローと共に食堂から出ていく。
レツを始めとした他の面々とジュースを飲むとか言ってやってきたのだが、今はもうそんなのはキキの頭の中には存在しないだろう。
「えっと、アクセル代表。これでよかったんでしょうか?」
「そうだな。多分、これが最善の結果だったと思う」
もしアイナとガトーが付き合っていなくても、恐らくアイナとシローがくっつくという結末は難しかった筈だ。
ジオン軍を心の底から憎んでいるシローにしてみれば、それこそジオン公国では名家だったサハリン家の令嬢たるアイナというのは、憎むことはあっても友好的にというのは難しいからだ。
それこそ、余程の何かがなければシローがジオン軍を相手に抱いている憎悪をどうにか出来るとは思えなかった。
その辺りの事情を考えれば、この結果はベストではなくてもベターなのは間違いない。
そう思いながら、俺はカツ、レツ、キッカに声を掛ける。
「キキはいなくなってしまったけど、ジュースを飲まないか?」
「ジュース? 飲む!」
真っ先に賛成の声を上げたのは、レツ。
3人の子供の中ではリーダー格だけに、レツがそう言えばカツとキッカの2人もそれに賛成する。
レツはキキに恐怖した事を既に忘れたかのような、そんな態度で嬉しそうに叫ぶ。
子供だけに、目の前に面白い何かがあれば、そっちに集中してしまうのだろう。
俺にとっては、ここで泣いたりされないで助かったが。
「わぁ、お姉ちゃん綺麗」
「あら、そう? ふふふ、ありがとう」
そんな声に視線を向ければ、そこではキッカとアイナが嬉しそうに笑っている。
キッカにしてみれば、やはりカツやレツと遊ぶのも楽しいが、自分と同性のアイナと話したりするのも、十分に面白かったのだろう。
「さて、取りあえず何を飲む? 折角だから、今日は色々なジュースを飲み比べてみるとかいいかもしれないな。ただし、残さない程度にな」
そう言いながら、キキの事を完全に忘れさせようと、俺は告げるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:690
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1522