「では、これで失礼します」
そう言い、敬礼した技術士官はホワイトベースで運用していた陸戦型ジムを載せたトレーラーに乗ってホワイトベースから出ていく。
それを見送った俺は、同じく艦長という事でここにいたブライトに尋ねる。
「これでホワイトベース隊の戦力もまた強化されたな」
「ああ。それに陸戦型ジムと陸戦型ガンダムで操作性もそう違わないらしいから、機種転換訓練の類も殆ど必要ない」
「……それでも、欲を言わせて貰えば、もう少し早く配備して欲しかったんですけどね」
俺とブライトの会話に割り込んできたのは、今回陸戦型ガンダムに乗り換える事になった者の1人、フィリップ。
フィリップにしてみれば、自分が乗る機体だけに、十分に訓練をしたかったのだろう。
だが、実際に陸戦型ガンダムが配備されたのは、今日。
オデッサ作戦開始の2日前だ。
「司令部の方も、今は大規模な作戦前で忙しいんだろう。……作戦の内容については理解したか?」
「それは分かってますよ。というか、レビル将軍も俺達をこき使う気満々ってのは分かります。だからこそ、陸戦型ガンダムのような高性能機をこうもあっさりと配備したり、腕利きの精鋭をホワイトベース隊に集めたりしたんでしょうが」
フィリップの言葉の内容からすると、自分の事も腕利きに数えてるな。
それが間違いという訳ではないんだが。
「そう怒るな。実際、ホワイトベースの使い道としてそれが最善なのは間違いないんだからな」
ブライトがフィリップを落ち着かせるように言う。
俺としては、正直レビルとフィリップ、双方の気持ちが分かってしまうだけに、何とも言えない。
「ホワイトベースは遊撃部隊として、随時司令部の指示に従う事、か」
そう、オデッサ作戦においてホワイトベースに命令された事実を呟く。
「そうだよ。アクセルはどう思う? 明らかに俺達を使い潰そうとしているようにしか見えないだろ?」
「そう言われるとそうかもしれないが、ホワイトベース隊としても、そっちの方がいいのは間違いないぞ」
「何でだよ?」
「部隊として纏まって行動するなら、全部隊が揃って行動するのが相応しい。だが、今のホワイトベースでそんな真似が出来るか? いやまぁ、出来るかどうかで言われれば出来るんだろうが、戦力的にかなり無駄だろ?」
「それは……まぁ、そうだな」
模擬戦を繰り返した事で、他の連邦軍のMS部隊が具体的にどれだけの技量を持ってるのかというのを知っているフィリップは、俺の言葉に渋々とだが納得したように頷く。
総合的な戦闘力が1の部隊と、10の部隊が歩調を揃えて行動する場合、当然のように10の部隊が1に合わせる必要がある。
そうなると、10の戦闘力のうち1しか使えないという事になり、9は無駄になってしまう。
それは、連邦軍の戦力的に非常に大きな損失となってしまう事は、明らかだ。
勿論この1とか10というのはかなり強引で単純な表現であって、実際の戦いではもっと複雑なのだが。
それでも、言ってみれば腕が未熟な連邦軍の部隊とホワイトベース隊が一緒に行動するという事は、メリットよりもデメリットの方が多い。
これがジオン軍なら、異名持ちとかのエースパイロットを前面に押し出しているので、MS部隊の方でもある程度それに対応出来るのだろうが……残念ながら、今の連邦軍にはそんな真似は出来なかった。
「そんな中でホワイトベース隊を最大限活用するには、遊撃というか、司令部からの指示で連邦軍が不利な場所に戦力を派遣して火消しをするって戦い方が有効だと、上の方でそう考えてもおかしくはないだろ」
「……分かってるんだけどよ。でも、それでもやっぱり面白くないと思うのは当然だろ」
フィリップにしてみれば、捨て駒とかそういう風に扱われているように思ってしまうのだろう。
それでも俺の言葉に感情的な不満だけを口にするだけなのは、何度となく模擬戦を繰り返してきたからこそ、フィリップも連邦軍のMSパイロット達がジオン軍に、そして自分達と比べてもかなり差があると理解しているのだろう。
いや、寧ろフィリップだからこそか?
模擬戦の難易度的に、どうしてもフィリップは戦う事が多くなり、それだけに実際に連邦軍のMSパイロットの実力を一番知りやすくなるのは当然だった。
「ともあれ、もう命令は下ったんだ。それに遊撃隊という事は、司令部からの命令がない時は自由に動いても構わないって事になる」
何気にこの点が個人的には一番嬉しかった。
陸戦強襲型ガンタンク隊の隊長を務めているアリーヌとの約束もあるので、この自由に動ける時間というのは、非常にありがたい。
アリーヌを裏切った恋人を見つける事が出来れば、可能なら確保しておきたいし。
クライド・ベタニーの顔写真は、MPから既に回して貰っている。
本来なら機密なのだろうが、レビルの口利きというのは、こういう時にかなり効果的だ。
後の問題は、どうやって確保するかだよな。
いっそ、今のうちにオデッサに侵入してクライドを確保しようと考えなかったかと言われれば、その答えは否だ。
だが、MSを盗むのと違って、クライドがどこにいるのか分からないというのが、この場合はネックだ。
このオデッサ作戦においては連邦軍に勝って貰いたいが、それでいながら相応の被害を受けても欲しいというのが、正直なところだ。
連邦軍の勝利が月としては既定路線なのは間違いないが、だからといってここで余裕を持って勝ちすぎても困る。
戦後の力関係とかその辺りの事情を考えると、ジオン軍には奮戦して貰う必要があった。
だからこそ、影のゲートと空間倉庫という凶悪な組み合わせで、オデッサに存在するジオン軍のMSを盗むといった真似をしていないのは、その辺の理由があっての事だ。
……ぶっちゃけた話、完品のドムを1機か2機くらいなら構わないんじゃないかと思ってもいるのだが。
「ふーん。アクセルの考える事は、よく分からないな。ただまぁ、取りあえず軍人としては命令された以上、やるしかないんだろうけど」
「だな。陸戦型ガンダムについては、実際に使っているサンダースやシローに……シローは無理か」
「無理だな、うん」
俺の言葉にしみじみと頷くフィリップ。
ブライトも事情は分かってるのか、何とも言いがたい表情で視線を逸らす。
現在、シローは色々と問題がある状態になっている。
原因としては、ギニアスとアイナをホワイトベースに連れてきた時に、シローがアイナに一目惚れした件が大きい。
すぐにアイナにガトーという恋人がいる事が判明してシローは失恋したのだが、そんな光景はシローを好きでアタックし続けてきたキキにしてみれば面白くない訳で、結局あの日……というか、食堂で耳を引っ張られて連れて行かれた時に、キキがシローを抱いたらしい。
表現が逆では? と思わないでもないが、立場的にはそんな感じらしい。
ともあれ、シローとしてはキキの好意に気が付いてはいたものの、それに応えるといった真似はしていなかった。
これで明確に拒否でもしていれば話の流れは違ったのかもしれないが、そのような真似もしなかった。
それはキキを傷つけたくなかったからなのか、それともキキという存在と一緒にいることが楽しかったからなのか。
その辺りの理由は俺にも分からなかったが、ともあれ優柔不断なシローの態度が、今回の件に辿り着く理由となった。
そうしてキキに抱かれた……捕食されたシローは、キキのような子供――実際はそこまで年齢は離れていないのだが――に手を出してしまったことでショックを受けており、仕事の途中でも精細を欠くようになっている。
キキの方はシローと寝た事で、すっかり恋人気分らしいが。
この辺は時間が経てば解決する問題だろう。
ただ、その時間が現在残されていないのだが。
2日後にオデッサ作戦が開始される以上、その時にシローが使い物にならないのは困る。
ちなみにオデッサ作戦の開始は2日後だが、明日にはワルシャワ基地を出発してオデッサに向かう事になる。
足の遅い部隊とかは、既に出発していた。
ホワイトベースが明日出発出来るのは、あくまでも空を飛んで移動する事が可能だという特殊性からだ。
勿論、そうして移動している時でもジオン軍に各個撃破されるという可能性がある以上、一定の集団での移動となっているのだが。
ともあれ、ワルシャワ基地は現在かなり人の数が少なくなっているのは事実だ。
「シローには、可能な限り早く立ち直って欲しいのだがな」
ブライトが呟く声が聞こえてくるが、正直どうだろうな。
戦場に放り込めば、そのショックで立ち直ってくれる可能性も十分にあるのは間違いないが……それがシローの為になるかどうかは、正直微妙だろう。
とはいえ、現在のホワイトベース隊の中で一番MS指揮に長けているのはシローであるというのも、また事実だ。
そうである以上、オデッサ作戦が開始されるまでに出来るだけ早く復帰して欲しいというブライトの希望は分かる。
「その辺は、いっそキキの愛にでも期待したらどうだ? シローの性格を考えれば、一度抱いた……抱いた? まぁ、取りあえず抱いたという事にしておくけど、そんな抱いたキキを見捨てるといった真似はまず出来ないだろ」
ブライトとはまた違った意味で、シローは生真面目な性格をしている。
そんなシローであれば、キキが奮起させるような真似は十分可能だろう。
……結局キキにとっては最善の結果という形になりそうだが。
ちなみに、シローやキキは原作ではどういう扱いだったんだろうな。
アプサラスというMAがあそこまで特殊なものである以上、恐らくアプサラスも原作には出て来た筈だ。
そしてアイナがそのパイロットだった以上、アイナに一目惚れしたシローも原作の登場人物だった可能性は高い。
その時もガトーがアイナの恋人で、シローが今回と同じ結果を迎えたのかどうかは、俺にも分からなかったが。
「シローの性格を考えれば、そうだろうな。全く、少しくらい女遊びをしていれば、その辺は気にしなくてもよかったのにな」
フィリップが呆れたように言うが、シローの生真面目さを考えれば、女遊びをするようには到底思えない。
……もしシローが女遊びをしようとしても、それこそキキが止めただろうし。
「シローがキキと会う前にフィリップに会っていれば、もしかしたら……本当にもしかしたらだけど、女遊びが出来たかもしれないな」
「だろ? シローは運が悪かったんだよ。 ……とはいえ、シローの性格を考えれば、もし女遊びをしていたら、悪い意味でのめり込んでいた可能性もあるけどな」
「あー……それは否定出来ない」
シローの性格が性格なだけに、一度娼館とかそういう場所に行って女を抱けば、その女に一途になってもおかしくはない。
とはいえ、娼婦をしている女にしても連邦軍の士官でMSパイロットのシローは優良物件なのは間違いなかったが。
そう思えば、キキにとってシローが今のままだったというのは、運が良かったのだろう。
「ともあれ、シローにはオデッサ作戦が始まるまでに復帰して欲しいけどな」
そんな風に、俺達はシローの話題で盛り上がるのだった。
「で、どんな具合だ?」
「特に問題はないわね」
陸戦型ガンダムから降りてきた綾子が、俺に向かってそう告げる。
予想した通り、陸戦型ジムから陸戦型ガンダムへの乗り換えというのは、そこまで問題ではなかったのだろう。
もっとも、そう言えるのはトールギスなどというとんでもない機体を操縦していた経験があるからこそ、かもしれないが。
陸戦型ジムから陸戦型ガンダムへの乗り換えという点とトールギスでは、それこそ比べものにならないくらいに違う。
そんな綾子にしてみれば、この程度の事はそう大した問題でもないのだろう。
「そうか。なら、オデッサ作戦でも問題ないな」
「そうね。……でも、あまり私達が活躍しすぎるのも問題なんでしょう?」
そう告げるのは、何日か前に寝物語として連邦軍にも相応に消耗して欲しいと言ったのを覚えていたからだろう。
「そうだな。それは正直な気持ちだ。けど、アプサラスⅢを出す以上、そこまで無理をする事はないかもしれないと思い直した。それに、もしオデッサが落ちると次に戦いになるのは恐らくソロモンだ。そうなれば、嫌でも連邦軍は消耗する事になる」
宇宙要塞ソロモン。
その名の通り、要塞である以上は敵を迎え撃つのにこれ以上の場所はない。
また、ザビ家の中でも純粋な軍人として下に慕われているドズルがソロモンを本拠地としている為に、士気も高い筈だ。
その辺を思えば、ドズルによって連邦軍が大きな被害を受けるのは、ほぼ確実だろう。
ただ、個人的にはドズルは純粋な軍人だけに扱いやすいだろうし、ギレンやキシリアよりは色々と便利だと思うんだよな。
ガルマもドズルには可愛がられていたというし。
可能であれば、ドズルを助けたいとは思う。
綾子と話をしながら、そんな事を考えるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:690
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1522