オデッサ作戦が、いよいよ始まった。
とはいえ、正確にはワルシャワ基地に集まってくるという行為そのものが既に広義的な意味ではオデッサ作戦であり、ジオン軍がオデッサに戦力を集めている中で、戦力が抽出された事によって手薄になった場所を連邦軍は襲って占領していたのだが。
ジオン軍もそんな連邦軍の狙いにも気が付いてはいたのだろうが、それでもオデッサに戦力を集めなければ連邦軍に対抗出来ないのは確実であった以上、現状ではどうしようもなかった。
ある意味では本当の意味でのオデッサ作戦が始まるよりも前に、ジオン軍は大きな被害を受けていたと言える。
……もっとも、そういうジオン軍の基地を占領したり破壊するのにも、当然連邦軍から派遣された部隊は相応のダメージを受けたのだが。
ホワイトベース隊のような少数の例外を除き、連邦軍とジオン軍の間にある戦力の質の差という意味では、ジオン軍の方が上だ。
宇宙空間程ではないにしろ、地上でもMSは高い性能を誇るのだから。
俺が少し驚いたのは、連邦軍にはそんなMSに対して生身で戦いを挑む部隊があったという事だろう。
まぁ、出来るか出来ないかで言われれば、当然のように出来る。
MSにダメージを与えられるだけの武器があり、その攻撃を命中させることが出来れば、理論的には倒せるのだから。
とはいえ、当然の話だが生身でMSに攻撃を仕掛けるとなると、仕掛ける方も大きな被害を受けるのは当然だった。
ザクマシンガンの弾丸ですら、生身の人間は命中しなくても近くを通っただけで致命傷となるのだから。
その辺の事情を思えば、それこそMSに生身で挑むというのは普通に考えれば自殺行為以外のなにものでもない。
俺のように、混沌精霊としての力を持っているとかなら、話はまた別だろうが。
綾子であっても、生身でMSに対抗は……うーん、どうだろうな。
身体能力的には問題ないのだが、俺のように物理攻撃を無効化するといったような真似は出来ない以上、ザクマシンガンが命中すれば致命傷となってもおかしくはない。
「で、俺達は火消し部隊だけに、作戦開始したものの、まだ暫く出番はない、か」
ブリッジでそんな風に呟く。
オデッサ作戦が始まって数十分。
ホワイトベース隊は、未だに当初の予定通りの場所にいた。
個人的には、出来ればアリーヌとの約束を果たす為に動きたいところなんだが。
今の状況では、それも少し難しい。
だからこそ、今はこうしてブリッジで待っているような事しか出来ない訳で……うん、取りあえず退屈なのは間違いない。
今の状況では、正直なところ何か出来るような事がないというのも、大きい。
火消し部隊としての役割を期待されている以上、まさかこの状況で勝手に出撃する訳にもいかないし。
いや、寧ろこれは連邦軍の上層部にいるスパイが俺達を自由に動かせないようにと企んでいる事ではないか?
そう思わないでもなかったが、ブライトがレビルから直々に通信を受けている光景を見ている以上、その辺りを疑う訳にもいかなかった。
実はレビルがスパイでしたとかいうのなら、話は別だが。
……まさか、ないよな?
自分で考えておいて何だけど、ルナツーの強硬派の連中と接した結果、本当に嫌になったという可能性は決して否定出来ない。
少なくても、俺ならそんな相手と一緒の軍にいるというのは、我慢出来ないだろう。
だからこそ、そんな連邦軍を捨ててジオン軍に通じた……いや、ないな。
レビルはコロニー落としをやったジオン軍やザビ家をもの凄く嫌っていた。
それを思えば、幾ら味方の馬鹿が多くても、それを放っておいて敵に通じるなんて事は、まず考えなくてもいい筈だ。
つまり、俺がここで待っているのは陰謀でも何でもない、ただの明確な事実な訳だ。
うん、暇だ。
俺はこうして暇だ暇だと言ってるだけでいいのだが、連邦軍のブライトにしてみれば、より大きな重圧に襲われているのか、悩ましそうな表情を浮かべたままだ。
ホワイトベース隊はこれまでにもニューヤークの攻略戦における陽動や、ラサ基地攻略戦における遊撃隊といったように、幾つかの大規模な作戦には参加してきた。
だが、それらの作戦と比べても、オデッサ作戦は参加人数が違いすぎた。
あくまでも公称で正確な数値ではないが、連邦軍が動員した人数は770万人だという話なのだから、連邦軍がどれだけこのオデッサ作戦に対して本気を出しているのかが分かる。
「落ち着け、ブライト。このオデッサ作戦は終わるまでに数日が予定されている筈だ。今からそんなに緊張しているようじゃ、とてもではないけど保たないぞ」
「うっ、それは分かっている。分かっているんだが……どうしても何もやることがないというのは、ちょっとな」
俺の言葉に、それでもブライトは多少なりとも緊張を解したかのように息を吐く。
ともあれ、多少なりとも緊張が解れたようで何よりだ。
現在の状況を考えれば、今の時点でブライトに精神的な消耗をさせる訳にはいかなかったしな。
「で、非常に今更の話だが、何故アクセルは未だにここにいるんだ?」
「何となくだな。今はやるべき事がないし」
ここがオデッサ作戦の本拠地となっている場所である以上、それこそここを直接襲撃されるような真似でもしない限り、すぐに俺の出番となる事はない。
火消し部隊として、どこか危機に陥ってる部隊の救援に向かえと言われた場合は、それこそすぐに格納庫に向かっても全く問題はない。
そうなると、やはり今の状況においては特にやるべき事がないというのも、間違いのない事実なのだ。
だからこそ、今の俺がやるべき事はそう多くはない。
それこそ、空間倉庫の中にあるたこ焼きでも食べるくらいか?
ペルソナ世界やネギま世界、それ以外にも幾つかの世界で購入したたこ焼きは、見掛けはそう大差ないが、実際には大きな味の違いがある。
……皆が緊張しているこの場所で俺がたこ焼きを食えば、間違いなくブライトから叱られるので、今は何もしないが。
「MSの整備の方は……いや、アクセルには言うまでもないか」
「ああ。メカニック達にしっかりと頼んである」
ホワイトベースのメカニック達は、皆が腕利きだ。
実際には、多種多様なMSの整備やら改修やら修理やらを寝る間もないような様子でさせられる事によって、自然と技量が上がったというのが正しいのだが。
そんなメカニック達にとってみれば、オデッサ作戦という大規模な作戦が始まっている以上、当然既にどのMSもすぐにでも出撃出来るように準備は万端に整えられていた。
それこそ、後はコックピットにパイロットが乗ればそれだけでもう出撃出来るというように。
だからこそ、今の状況で特に何かすぐに格納庫に行って調整をする……といったような事は必要ない。
何か急に機体の調整をする必要が出て来れば、また話は別だったが。
そう思っていると、不意にモーリンが口を開く。
「ブライト艦長、上層部より命令が下されました。エリア332にて連邦軍の部隊が敵と交戦しており、押されている模様。ホワイトベース隊はすぐに援護の為に出撃するようにとの命令です」
「何? もうか?」
つい先程までは、何も命令がないという事で戸惑っていた様子を見せたブライトだったが、こうして直接命令が来ると困った様子を見せる。
いやまぁ、その気持ちも分からない訳ではないんだが。
正直なところ、作戦が始まってから数時間でいきなり救援をするようにという命令が来るとは、俺も予想外だったし。
俺達は、あくまでも火消し部隊。
つまり、火を消しきれなくなった……その戦場で戦っている部隊だけでどうしようもなくなった時に、出撃する部隊だ。
そんな俺達にお呼びが掛かったという事は、その時点で色々と不味い状況になっているのは確実だった。
運悪く敵部隊と遭遇したのか、それとも単純に敵と正面衝突したのにどうしようもなかったのか。
その辺りはどうなのかは俺にも分からなかったが、とにかくこうしてブリッジでゆっくりしていられるような時間が終わったのは間違いなかった。
「気をつけてね、アクセル」
ホワイトベースが戦闘をする際の操舵を任されているミナトが、顔をこちらに向けるとそう言ってくる。
もっとも、その言葉の中にあるのは俺を心配するのではなく、信頼の色だ。
ミナトも、俺がこの世界の戦いで傷つくことがないというのは、分かっているのだろう。
実際にそれは間違っていないのだが。
寧ろ、ピクシーを壊してメカニックに迷惑を掛けるなといったような風に言ってるようにすら思えた。
「ああ、問題ない。俺がどうにかなる筈もないだろ」
「それでもよ」
そうして短く言葉を交わしてから、格納庫に向かう。
その間、ホワイトベース全体に、ブライトから出撃の命令があったといったように放送で流れていた。
内容としては、命令があったから出撃して、不利な部隊を助けに行くというもの。
また、追加で得られた情報なのか、敵はドムを中心にした敵部隊だというのもある。
あー……なるほど。
何故こうも早く連邦軍がホワイトベースを出撃させるつもりになったのかと思ったが、それが理由だったのか。
ジムならともかく、連邦軍の主力である61式戦車では、ドムには手も足も出せない。
これがザクやグフなら、移動速度が遅いのでまだ何とかなる可能性もあるのだが。
勿論、絶対に61式戦車でドムに勝てないという訳ではないが、地上を歩いて移動しているザクやグフに勝つのと、ホバー移動しているドムに勝つのとでは、その意味は大きく違ってくる。
少なくても、現在の状況でどうにか出来るというのは難しいだろう。
連邦軍の中にも腕利きの戦車のパイロットがいるので、そういう連中がその戦場に偶然いるとなれば、話は別だが。……難しい。
エースというのは、数が少ないからこそエースなのだ。
だというのに、そんなに大量に戦力がいるとなれば……それはエースではなく、平均的な実力となってしまうだろう。
「アクセル! 準備は出来ている!」
俺が格納庫に姿を現したのを見て、メカニックの一人がそう声を掛けてくる。
メカニックにしてみれば、ブライトからの放送があった時点で出撃の準備をしていたといったところか。
「悪い、助かる」
「いいって、気にするな。アルフ大尉からの指示もあったしな」
腕利きのメカニックが多いホワイトベースだったが、大尉という階級にあるアルフが、当然のようにトップに位置している。
いや、メカニックどころか、何気にアルフはホワイトベースの中でも一番階級は高いんだよな。
幸いな事に、アルフはリードと違ってホワイトベースの指揮に口を出すような真似はせず、メカニックの方に専念しているが。
そもそもの話、アルフの場合は技術者という一面が非常に高い。
だからこそ、メカニックとしての腕もよく、その階級もあって自然とホワイトベースのメカニックの中でトップの位置になっていった。
これで、実は実力不足だったりすれば、他のメカニック達から相手にされたりはしないんだが。
それこそ、リードのように。
だが、アルフはしっかりと実力を持っていたおかげで、リードのような扱いにならずに済んだ。
部下達に対しても、整備のコツとかそういうのを教えるような優しさもあったしな。
そのアルフだが、現在はブルーディスティニーの整備の件でユウと色々と話している。
まぁ、2号機を奪ったニムバスがオデッサにいるのはほぼ確定だしな。
もっとも、その機体の希少性から、2号機を奪った後でオデッサから脱出していなければ、の話だが。
EXAMシステムを開発したクルストがジオンから連邦に亡命してきた以上、連邦に来た事によってどんな変化――もしくは進化――をしているのか分からない以上、最悪の場合は2号機をオデッサからどこか他の場所に持って行っているという可能性もある。あるのだが……ニムバスの性格を考えれば、実はその可能性はかなり低いんだよな。
これまで接してきたニムバスの性格を考えれば、ユウとの決着が、もしくはグラナダ攻略の時に負けた俺に対してか、ともあれ今のニムバスが俺とユウ、場合によってはニュータイプのアムロのいる戦場を見逃すとは思えない。
そんな風に考えつつユウと話しているアルフを一瞥すると、コックピットに乗り込む。
機体のシステムをチェックし、ビームスプレーガンやビームダガーのエネルギーが問題なく、90mmサブマシンガンと頭部バルカンの弾丸も問題なく、推進剤も問題ない。
特にピクシーはその高機動性から燃費が非常に悪い機体だ。
そういう意味では、一番に確認する場所はやはり推進剤だった。
そうして全てが問題がないと判断すると同時に、やがて戦場が見えてきたというブライトからの通信が入り……俺は、ピクシーでいつ発進してもいいように準備するのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:700
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1524