見た事のない、装甲が厚く両手の指がフィンガーバルカンになっているグフを鹵獲したが、それだけで俺達の仕事が終わる訳ではない。
取りあえず鹵獲した機体ということで、グフの新型? 派生機? ともあれ、そのグフは俺が貰う事になり、空間倉庫に収納しておいた。
戦闘で鹵獲した機体なので、当然のようにフィンガーバルカンの弾丸とかもある程度は消費した状況のままなのだが、その辺は後でどうにかするとして……
「じゃあ、俺は指示された戦場に向かうから、そっちも無事でな」
『ああ、アクセルの方も危険かもしれないが……いや、アクセルの場合は心配する必要がないか』
補給作業を終えたピクシーのコックピットで、俺はブライトの言葉に当然だと頷いて、通信を切る。
これから俺が向かうのは、連邦軍がかなりの勢いで攻めているにも関わらず、向こうの抵抗も激しくて敵の防衛線を突破出来ないらしい戦場。
それで、ホワイトベース隊に……というか、俺に出撃要請が来た訳だ。
本来なら、それこそ別に俺が行かなくてもいい場所なのは間違いない。
だが、その戦場に陸戦強襲型ガンタンクが……アリーヌ率いる小隊がいるとなれば、話は変わってくる。
アリーヌとは契約を結んでいる以上、このような場所で死なれては困るというのが大きい。
それが理由で、俺は出撃を許容したのだ。
……もっとも、陸戦強襲型ガンタンクはホワイトベース隊との模擬戦でも勝利するだけの実力がある以上、そう簡単に負けるといったことは想像出来ないのだが。
それでも、アリーヌ達は所詮3機でしかない。
敵の数を考えれば、アリーヌ達だけで防衛線を突破するのは難しいということだろう。
「アクセル・アルマー、ピクシー、出るぞ!」
その言葉と共にピクシーはカタパルトから射出される。
ここからあまり離れていないとはいえ、それなりに距離がある。
こういう時に、ドダイとかダラニのように空を飛べるような、いわゆるサポートメカの類があれば便利なんだけどな。
そういうのがない以上、今は走って向こうに向かうしかない。
ホワイトベースに余裕があれば送って貰う事も可能だったのだが……残念ながら、ホワイトベースはホワイトベースでこれから別の戦場……それも俺が向かうのとは正反対の場所にある戦場に向かう必要があった。
しかも、向こうの方でも結構苦戦しているらしく、出来るだけ早く来て欲しいという連絡が来ている以上、こちらとしては別に行動する必要があった。
せめてもの救いは、推進剤の類は向こうの戦場に行けば余裕があるという事か。
元々燃費の悪いピクシーだけに、移動してそのまま戦闘という事になれば、あまり戦闘が可能な時間は多くはない。
これから行く戦場には、陸戦強襲型ガンタンク以外にジムもいるって話だし、取りあえず推進剤の心配はしなくてもいい。
そうして戦場に向かうが、移動を始めてから20分程が経過した頃、不意にジムの小隊と遭遇する。
見たところ、どこかに移動中といったところか。
そう思っていると、ジムの方から通信が送られてくる。
『こちら連邦軍第3機械化大隊所属のレッドスコーピオン小隊。そちらはホワイトベース隊所属のMSだな?』
ピクシーを見ただけであっさりとそう言い切る事が出来たのは、オデッサ作戦に参加する為の拠点として使用されたワルシャワ基地において、俺達は色々な意味で有名だったからだろう。
とはいえ、他のMSはともかく、ピクシーは実はそこまで有名ではなかったりする。
何しろ、模擬戦の難易度でも最高難易度でしか俺と対戦出来ないしな。
中には俺と戦ってみたいという事で個別に模擬戦を挑んで来た相手もいたが、その数はそこまで多くはない。
そして俺は、レッドスコーピオン小隊という相手と戦った事はなかった。
「そうだ。ホワイトベース隊所属の、アクセルだ」
アクセル・アルマーと名乗ってもよかったのだが、俺の正体がどこまで知られているのかというのが分からない以上、そう簡単にフルネームを言う訳にもいかない。
まぁ、俺がシャドウミラーのアクセルだと知っている者がいるのなら、わざわざ別に名乗る必要もないだろうし、知らないのならアクセルと名乗るだけで構わない。
そもそも、この世界で知られているアクセル・アルマーというのは、あくまでも20代の姿だ。
今の俺は10代半ば……アムロ達と同年代の姿をしているし、背の高さも違う。
この状態の俺を見て、俺をシャドウミラーのアクセルだと信じる事が出来る者は……それこそ、魔法の存在とかを本当の意味で理解しているような者だけだろう。
魔法? ふーん、凄いね。とかそんな感想を抱くような相手だったりした場合は、魔法で背の高さも変えられるというのを信じないだろう。
実際には魔法ではなく混沌精霊の力なのだが。
『そうか、やはりな。……俺はヤザン中尉とは同期なんだ。それで、ヤザン中尉は元気か?』
笑みを浮かべてそう尋ねてくる相手の言葉に、向こうが何を警戒しているのかを理解する。
こういう引っ掛けを出してくる辺り……いやまぁ、戦場から離れた場所でこうして1人で移動しているのを見れば、怪しんでもおかしくはないだろうが。
「ヤザンは元気だけど、少尉だぞ。階級を間違えてないか?」
そう告げると、映像モニタに表示されている男が安堵した様子を見せる。
「どうやら安心したようだな」
『すまない。このような場所で遭遇したのでな』
「それを言うなら、そっちもこんな戦場でも何でもない場所にいるみたいだが?」
『俺達はジオン軍の捜索だ。少し前に、ここでジオン軍のMSを数機発見したという情報があって』
あー……なるほど。
ジオン軍にしてみれば、正面から戦って連邦軍に勝てるとは思えない。
そうである以上、連邦軍の勢力圏内に入って破壊工作なり、レビルを含む、この作戦に参加している上層部の者を襲撃するなりといった事をしたいのか。
特に今は、連邦軍の上層部にスパイがいるのだから、レビルがどこにいるのかといったような情報もジオン軍は比較的容易に入手出来る筈だ。
つまり、俺を疑ったのもその辺が理由だったのだろう。
「それで、こうしてまだ探してるって事は、そのジオン軍は見つかってないのか?」
『そうだ。それで、そちらはこんな場所で何を?』
「ホワイトベースに援軍の要請が来てな。しかも同時に複数から。多分ジオン軍が一気に攻勢に出たんだろうが、そのおかげでホワイトベース隊も色々な場所に移動しながらの戦いとなっている訳だ。俺がこれから向かうのもその一環だ」
『いや、だが……それならトレーラーやミデアとか、そういうので移動した方が早いんじゃないか?』
「普通のMSならそうかもしれないけど、俺のピクシーの場合は走った方が圧倒的に速いんだよ。……その分、推進剤とかの消耗も激しいけど」
そう告げると、俺と話していた男は納得したような、余計に疑問を感じたような、そんな微妙な表情になる。
「さて、そんな訳で俺は忙しいから、これで失礼するぞ。そっちもジオン軍探しを頑張ってくれ。もし俺が移動中に見つけたら、倒しておく」
『いや、出来れば生かして捕らえてくれると助かる。少し聞きたい事もあるのでな』
聞きたい事? と一瞬疑問に思ったが、少し考えればすぐにその意味は理解する。
連邦軍の上層部にいるスパイが誰なのかを聞き出そうとしているのだろう。
そうなると、この連中は実は機械化大隊とか言ってたけど、それは擬態で、諜報部の所属か?
まぁ、連邦軍のスパイが捕まるというのはこちらとしても悪くないので、これ以上突っ込むような真似はしないが。
「そうか。分かった、もし遭遇したら、無力化してそっちに引き渡すよ」
『頼む』
この連中もジオン軍を探す必要があるので、これ以上は特に何を話すでもなく、別れる。
さて、それにしてもジオン軍か。
連邦軍の上層部にスパイがいるからか、そこから得られる情報を最大限に活躍してるな。
とはいえ、そんな真似をしていれば、連邦軍としてもスパイを見つけ出す手掛かりにはなる。
MS用の予備部品とか消耗品とか、そういうのが届かないというのも、スパイにしては思い切った真似をしたといった感じではあるのだ。
その辺の事情を考えると、ここまで派手に動いた以上は最悪でもオデッサ作戦が終わるまでには敵の正体を見つける事が出来るだろう。
とはいえ、スパイにしてみればオデッサ作戦が終わったらジオン軍に亡命するなり、自分を怪しんでいる者を暗殺したりといった風に考える可能性もあるのだが。
「まぁ、その辺は連邦軍の諜報部隊に任せるとして」
呟きつつ、目的地に向かってピクシーを走らせる。
平原が広がっていたり、森や林といったものがあったりするのだが、そんな中を真っ直ぐに進み続ける。
さて、目指す場所に到着するのはいつくらいになる?
そう思いながら進んでいると、不意にピクシーのモニタがミサイルが飛んできている事を知らせる。
何だ? いや、敵か!?
そう判断し、ミサイルの飛んできた方にピクシーの頭部を向け、トリガーを引く。
頭部バルカンは威力はそこまで強くはないのだが、それでもミサイルを迎撃するような事は容易に出来る。
というか、こういう迎撃や相手への牽制が目的として搭載されている武器なのだから。
頭部バルカンの弾丸によって、空中でミサイルが爆発する。
それを確認しつつ、攻撃してきた相手を探す。
まさか、誤射という事はないだろう。……1発だけだったが。
ともあれ、ピクシーのレーダーで周囲を探るも、MSの反応はない。
MSじゃない? いや、MSどころか戦車や戦闘機、戦闘ヘリの類も存在しない。
これは……ステルス?
一瞬そう思うも、すぐに違うと判明した。
何故なら近くの林の中に何人もの人影を見つけた為だ。
ミサイルであれば、それこそ使い捨てのバズーカやら何やらで発射出来るし。
ともあれ、恐らくこの攻撃の主が先程の諜報部と思われる者達が探していた連中か?
そう思い、だが生身の相手を殺さないで捕虜にするのはMSだと難しいと判断し、生身で対処する。
ピクシーのコックピットを開いて外に飛び出す。
MSの高さを考えると、これはある意味で自殺行為に等しい。
だが、それはあくまでも普通のパイロットの場合だ。
混沌精霊の俺はこの程度の落下は何でもないし、そもそもの話、空を飛ぶ事すら出来る。
そうである以上、この状況で心配するような事は一切ない。
そうしてピクシーを飛び降りながら、俺はそっとピクシーに触れて空間倉庫に収納する。
俺がピクシーから飛び出た以上、当然の話だがピクシーは動く事が出来ない。
これがニーズヘッグなら、T-LINKシステムである程度外部からの操縦も可能なのだが。
ともあれ、そんな訳でピクシーを放っておくと、先程の攻撃と同じようなミサイルがまた飛んでくる可能性がある。
それを考えれば、やはりここはピクシーは空間倉庫に収納しておいた方がいいと判断しての行動。
だが……俺に向かって攻撃してきた者にしてみれば、まさかいきなりコックピットから俺が飛び出したり、ましてやピクシーがいきなり消えたりするとは思っていなかっただろう。
明らかに、木々の間から動揺した雰囲気が伝わってくる。
このまま逃がす訳にはいかないので、地面に着地している時間も惜しいと、虚空瞬動を使って林の中に突っ込んでいく。
そうして人の気配のある場所に到着した俺が見つけたのは、動揺した様子を見せている歩兵達。
近くには、大きめのミサイル発射装置……リジーナだったか? それがある。
ちなみにこのリジーナというのは、連邦軍がまだMSを使っていない頃に歩兵でMSを破壊する為に用意された武器だ。
当然ながら、そんな連邦軍で使われている武器が用いられている以上……そこにいる歩兵は連邦軍の兵士。
いや、正確には連邦軍の軍服を着た者達という表現が正しい。
連邦軍が俺を攻撃してきたという可能性は、皆無ではないがある。
上層部にいるスパイの私兵とか、そうでなくても連邦軍程の巨大な組織となれば、当然ながら一枚岩とはいかない。
現在はレビルの派閥が最大派閥として強い影響力を持ってはいるが、別の派閥もあるのだ。
また、レビルの派閥であっても俺を……正確にはホワイトベースの活躍を疎ましく思っている者も多い。
その辺の事情を考えれば、納得出来ない訳でもない。
ただ、それでも一番可能性が高いのは、やはりジオン軍の軍人が連邦軍の振りをしている可能性が高いという事だろう。
ともあれ、俺に見つかった以上、こいつらはもう逃げる事は不可能だ。
後は捕らえて、先程の諜報部と思しき奴に渡せば色々と情報を仕入れてくれるだろう。
「さて、連邦軍のMSに乗ってる俺を攻撃してきたんだ。まさか味方って事はないよな?」
そう告げつつ、俺は地面を軽く蹴って刈り取る者を召喚するのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:705
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1525