ブライトとマットの話し合いは、当然のようにブリッジではなく艦長室で行われた。
まさか、政治に関係してくる話をブリッジでする訳にはいかないという判断からだろう。
ともあれ、俺はブリッジにマットを連れていってブライトに合わせれば、その時点でお役御免だ。
ブライトとしてはマットとの会話に俺も参加して欲しかったのだろうが、俺はそこまで深く連邦軍に突っ込むつもりはない。
ある程度の話が決まったら教えてくれと、それだけを言ってから、食堂に向かう。
今日、まだこれから何らかの戦いがあるかどうかは分からないが、それでも戦いがあるかもしれない以上、腹ごしらえをしておいた方がいいと判断した為だ。
……本来なら俺は食事をしなくても問題はないんだが、この辺りは趣味というか、精神的な満足感を求めてというか、そんな感じで。
そうして食堂に行くと……
「わーっ! キキねーちゃんが怒った! 逃げろ、逃げろ、逃げろぉっ!」
「待てこらぁっ!」
食堂が見えてきたかと思えば、カツ、レツ、キッカ、ついでにハロが食堂から飛び出して俺が来たのとは別の方に向かって走り去り、それを追ってキキが姿を現す。
子供達は俺に気が付かなかった様子だったが、キキはさすがに俺に気が付いた。
とはいえ、子供達を追ってる以上は特に話をしたりはせず、軽く視線で挨拶をすると、子供達を追って走り出す。
うん、まぁ……元気な事だ。
今の状況を思えば、本来ならこうして元気に遊んでいる訳にはいかないのだろう。
だが、忙しい今だからこそ、こうして子供達が遊んでいる姿を見れば、リラックスする者もいる。
……ただし、子供達が遊んでいる光景が気に障って面白くないと、そう考える者もいるので絶対に安全といった風には言えないのだが。
「ま、頑張れ」
聞こえていないだろうと思いつつも、子供達を追っていったキキの背中にそう声を掛け、食堂に入る。
キキにとっては、シローと結ばれた今が一番楽しい時期だろう。
そのシローはキキのような子供を抱いてしまったという事でショックを受けている様子だったが、それもキキによっていずれ解決すると思われる。
実際、キキとシローはお似合いだと思うし。
この戦争が終われば、何だかんだとあの2人はくっつく……正式に結婚したりする可能性は、十分にある。
そんな風に思いつつ食堂を見回すと、予想外の人物の姿を見つける。
「ヤザン?」
先程まではまだホワイトベースに戻っていなかったと思ったのだが、どうやら俺がマットを案内している間に帰ってきたらしい。
うーん……ぶっちゃけ、今のホワイトベースで一番マット達と相性の悪いのが、ヤザン達なんだよな。
敵を殺せる時に殺さずに逃がすといったマットと、戦いそのものを楽しむ傾向にあるヤザン。
人間としてはマットの方が正しいのかもしれないが、連邦軍の軍人としてはヤザンの方が正しい。
ただでさえジオン軍は連邦軍よりも国力が少なく、当然のように人数も少ない。
ましてや腕の立つMSパイロットともなれば、1人失った時のダメージは連邦軍よりも遙かに大きいのは当然だった。
だというのに、マットはいざという時に攻撃が出来ない。
結果として、逃したパイロットが後日連邦軍の兵士を殺すような事になっていたとしてもだ。
ある意味、これは優しさではなく甘さと表現すべきなのかもしれないな。
「アクセルか。そっちも忙しかったって聞いたが?」
「誰から聞いたのかは分からないが、忙しかったのは間違いないな」
とはいえ、忙しかったのはジオン軍との戦争ではなく、アリーヌ達の一件だが。
まさかオデッサ作戦の最中にハワイまで移動し、それどころか宇宙に向かうHLVに乗せたとは、ヤザンでも想像出来ないだろう。
それ以外にも、刈り取る者が倒したこの世界のファンタジー的な存在の件もあるし。
「ふーん。……で、その途中で他の部隊の奴を連れて来たんだろ? どんな奴なんだ?」
「それよりも、ダンケルとラムサスはどうした?」
マット達についての話を誤魔化そうと、そう尋ねる。
とはいえ、ダンケルとラムサスの2人がいなかった事が気になったのも事実だ。
あの2人は、何だかんだとヤザンに懐いている。
……実際にヤザンはその粗暴な性格とは裏腹に面倒見はいいし、操縦技術もホワイトベースに来てから急激に上がっている。
その負けず嫌いの性格や、ジャブローでの訓練から、自分がホワイトベースの中でも操縦技術では下から数えた方が早かった……というのが、面白くなかったというのもあるんだろうが。
言ってみれば、ヤザンは頼れるリーダーでもあるのだ。
もっとも、かなりアクの強い性格をしているので、合う合わないというのは大きいのだろうが。
そして、マットとヤザンは間違いなく合わない。
マットの部下達とは話してないのでどういう性格をしているのかは分からないが、マットが殺せる時に殺さないといった方針をそのままにしているという事は、それを認めているのだろう。
そうなれば、そちらもヤザンとは合わないのは間違いなかった。
「あの2人はちょっと機体の調整でメカニックと話してるよ。何でも、以前までなら問題なかった筈が、微妙に合わないらしい」
「それは、MSパイロットとして成長したって事だろうな」
何だかんだと、ヤザン達がホワイトベースに配属になってからも、結構な戦いを繰り広げてきた。
それを思えば、戦闘の中でパイロットとしての技量が上がるのは、別におかしな話ではない。
いや、寧ろ当然だと言ってもいい。
だからこそ、それを思えばMSの反応がパイロットについてこられなくなっても、おかしくはない。
……いや、寧ろそれが当然だろう。
とはいえ、それはあくまでも常識の範囲内での話であって、俺や綾子のような人外の存在に合わせるセッティングと比べるとかなり楽だろうけど。
「それだと、MSの調整をしていない俺は成長していないって事になるのか?」
「お前の場合は……それこそ、シミュレータとか実機での模擬戦を頻繁にやってるから、成長していない筈がない。ジャブローにいた時は、モンシアとはほぼ互角だったんだろ?」
「そうだな」
満更でもなさそうな様子で、ヤザンは頷く。
ジャブローではほぼ互角だったモンシアを相手に、今のヤザンは圧倒的な勝率を誇っているのだ。
モンシアだって、連邦軍の平均で見れば相応に腕の立つパイロットだし、バニングによって鍛えられ、幾つもの戦闘を積み重ねてきた筈だ。
そんなモンシアを相手に圧倒的な勝率なのだから、それはヤザンの操縦技術がとんでもなく上がっている事を意味している。
とはいえ、ヤザンとしてもそれで満足して俺の言葉に誤魔化されるといったような事はなかった。
「それで? 結局アクセルが連れて来たのは一体どんな奴なんだ? こうして隠しているのを考えると、あまりよくない連中って事か?」
そのよくないというのが、どのような意味でのよくないなのかは、正確には分からない。
分からないが、それでもヤザンの様子を見れば、恐らくその本質を突いているのだろうというのは、容易に予想出来た。
これ以上は誤魔化せない、か。
それにここで誤魔化して事情を知らないままにして、後でマット達の事を知って爆発する……とかもごめんだしな。
「レビルの一派にいるコーウェンという人物の部下を連れて来た」
「へぇ。それがあの陸戦型ガンダムや陸戦型ジムか」
少しだけ興味深そうな様子のヤザン。
考えてみれば当然なのだが、ヤザンがここにいるという事は、ヤザンのジムも現在はホワイトベースの格納庫にある筈なのだ。
そして格納庫に移動したのなら、そこにマット達の機体があるのを見るのは当然だろう。
「ああ、そうなる。……で、そのマット達だが、人道的というか、優しいというか、そんな性格をしている」
そう告げると、一瞬前まで興味深そうだったヤザンの表情が不機嫌そうなものになる。
ヤザンの性格を考えれば、マットとは到底合わないだろうと思っていた。
いたのだが……予想以上の嫌悪感だな。
「それは、つまり敵を殺さないって事か?」
「ああ。ただし、あくまでも逃げるような敵に対して追撃をしないという意味だ。自分を殺すつもりで襲ってきた相手には、普通に攻撃している」
「……そうか」
少し、ほんの少しだけだが、ヤザンの表情から険が抜けた。
これでマットが、実は自分達を襲ってきた相手であっても殺す事が出来ない、殺したくないとウジウジとヘタレるような奴であれば、それこそ背後から1発だけの誤射が起こっていた可能性もあるが、この様子を見る限りではそこまで気にする必要はないか?
その事に安堵しつつ、口を開く。
「マット達……俺が連れて来た奴がヤザンと性格が合わないのは、前もって知っている。だからマット達がホワイトベースで行動する事になっても、戦場は別にするようブライトに言っておくよ」
「助かる」
短く感謝の言葉を口にするヤザン。
マットとヤザンを同じ戦場に置けば、絶対に問題になるだろうしな。
その辺の事情を考えれば、別々の戦場に置いた方が妙な騒動にならなくてすむ。
「それで、だ。これからホワイトベース隊はどうなると思う?」
マットの件で不機嫌になったヤザンの気分を切り替えようと、話題を変える。
ヤザンにしてみれば、オデッサ作戦でホワイトベースがどうなるかというのは気になっているところだろう。
それはヤザンだけではなく、他の者も相応に気になっているのは間違いないだろうが。
「どうなるって言ってもな。……俺達がやるのは、結局のところ今までと同じ火消しだろ? でないと、連邦軍がかなり押されるし」
「そうかもしれないけど、連邦軍の上層部だってもう少し色々と考えてると思わないか? ……まぁ、最大の問題はこっちの情報がジオン軍に漏れてる事だろうけど。どう思う?」
「どう? そうだな。馬鹿な事をしてるとしか思えないが」
「それは俺も賛成だ」
連邦軍とジオン軍が正面から戦えば、結局勝つのは連邦軍だ。
ジオン軍だけにMSがあれば話は別だったかもしれないが、今では連邦軍にも普通にMSがあるし。
勿論、まだ数は少ない。少ないが……それでも連邦軍が正式量産機たるジムを戦場に出したというのは、非常に大きい。
ジオン軍にとっては、まさに悪夢と言ってもいいだろう。
MSの存在故に有利だったのに、それが覆ってしまったのだから。
とはいえ、ジオン軍もMSの有用性を理解しているが故に、連邦軍がMSを開発するというのは当然のように予想していてもおかしくはなかったが。
というか、1週間戦争やルウム戦役で連邦軍はMSにボコボコにされたのだから、それでMSの有用性を理解出来ない筈は……あ、そう言えばいたらしいな。
誰から聞いたのかは忘れたが、レビルがMSを開発するべきと提唱した時に、何人かの将官がジオンの真似をするのではなく、マゼラン級を……場合によっては、マゼラン級をも上回る戦艦を開発すればいいという、大艦巨砲主義がいたとか何とか。
現実が見えていないというか、前線の事情を理解出来ていないというか、自分のロマンに生きているというか……まぁ、そんな感じの奴がいたのは間違いない。
正直なところ、一体何を考えているのかといった風に突っ込みたくなるのだが……ルナ・ジオンに協力している身としては、そのような者は寧ろ望むべき存在だろう。
こうして協力している今となっては非常に邪魔な存在でしかないが、俺が連邦軍から離れ……そしてジオンの独立戦争が終わった後の戦後には、そのような存在が連邦軍の弱体化にある程度寄与してくれる筈だ。
もっとも、あまりにも無能な奴ばかりが揃ったりすれば、月だけが発展しているのは……もしくは、月だけがシャドウミラーと繋がっているのは面白くないとして、月を何らかの手段で接収しようとしても、おかしくはないのだが。
レビルやゴップがいる限りそんな事にはならないと思うが、それも絶対ではない。
であれば、やはり今回の一件においては色々と考えるべき事があるのは当然だろう。
「アクセル、どうした?」
「いや、ちょっとな。これからの連邦軍の事を考えてたんだよ。上層部にスパイがいるという時点で、結構残念な状況になりかねないだろ?」
「それは……まぁ、そうだけど」
俺の言葉に、若干面白くなさそうな様子でヤザンが答える。
あくまでも一時的に連邦軍に協力しているにすぎない俺は、オデッサ作戦が終われば、その後はジャブローに行ってオデッサ作戦に参加した報酬として新型のMSやら何やらを受け取ってから、ホワイトベースを降りる。
だが、ヤザンは元々連邦軍の人間である以上、オデッサ作戦が終わった後も、当然のように連邦軍に所属したままだ。
……とはいえ、ヤザン達もホワイトベースに乗ったままなのか、別の部隊に移るのかは、分からなかったが。
そんな風に考えつつ、俺はヤザンとの話を続けるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:745
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1533