ともあれ、連邦軍との誤解は解けた。
この場合、もっとも悲惨だったのはエルランの命令によって俺達を襲ってきた連邦軍の部隊だろう。
ブライトから殺さないようにと言われていたので、可能な限り敵を殺さないようにはした。
実際、俺達との戦闘で連邦軍の部隊に死者はいない。
……とはいえ、死者がいないから怪我人もいないという訳ではない。
考えてみれば当然なのだが、ジムの手足を切断して胴体と頭だけになれば、そのまま地面に落ちる。
その衝撃によって、大なり小なり……打撲といった軽い怪我から骨折のような重傷まで、怪我をした者はいる。
宇宙開発を含めて技術が発展しているUC世界だが、治療技術という点で考えた場合は、そこまで発展していない。
現在シャドウミラーが繋がっている世界の中で、年代的な意味での後進国たるマブラヴ世界と比べても、治療技術は劣っている。
とはいえ、BETAと長年に渡って戦い続けてきたということを考えれば、マブラヴ世界で治療技術が発展するのも当然だろう。
必要は発明の母とは、よく言ったものだ。
そんな訳で、治療技術が進んでいないUC世界においては、骨折程度であろうとも暫く治療に専念する必要があるのは間違いない。
これで事務要員とかだったら、足の骨折くらいなら仕事に問題はないんだが……MSのパイロットで足を怪我しているのは、致命的だ。
死人こそ出ていないが、軍人としてはこのオデッサ作戦にはこれ以上参加出来ないという者が大量に出てた訳だ。
もっとも、そのへんは今更の話だと言ってもいいんだが。
「で、問題なのはだ。そのエルランだったか? そいつをどうするかだな」
ホワイトベースの食堂で、ヤザンが不愉快そうに告げる。
ヤザンの性格を考えれば、エルランの行動が許せなかったのだろう。
うーん、これはちょっと意外だったな。
ヤザンの事だから、そんな裏切り者の事なんかどうでもいいとか言うのかと思ったんだが。
「どうするも何も、俺達が特に何かしなくても結局終わりだろう?」
ヤザンを落ち着かせるというか、単純に事実を口にする。
「終わり? どういう事だよ?」
「オデッサ作戦で、今までジオン軍が的確にこっちの攻撃を止める事が出来ていたのは、エルランという情報源があったからだ。だが、そのエルランも連邦軍から既に逃げ出していない。そうなると、ジオン軍はこれから連邦軍の情報を得る事は難しくなる訳だ。……そうなってしまえば、エルランが幾らジオン軍に協力していようと、ジオン軍の負けはほぼ確定だと言ってもいいんじゃないか?」
そうなれば、エルランも当然のように最悪の結果を迎える事になる訳で……わざわざ俺達が何かをしたりする必要もないと思う。
まぁ、エルランの息の掛かった奴が連邦軍にまだ残っている可能性はあるが、それでもエルラン程の地位がある訳ではないから得られる情報に限りはあるし、エルランの一件もあって色々と厳しくなっている今は、情報を流すのは難しいだろう。
もっとも、ヤザンにしてみれば、自分の手で何らかの落とし前を付けたいと、そう思っているのかもしれないが。
「本気かよ、アクセル?」
「ああ、いたって本気だ。もしエルランが俺達にちょっかいを出してきた事を後悔させてやりたいなら、そうするのが一番手っ取り早いと思うぞ」
そう告げると、ヤザンは面白くなさそうにコップの水を飲んで、その中に入っていた氷を噛み砕く。
苛立ちを解消する方法として、それを選んだのだろう。
ぶっちゃけた話、俺もエルランに対して思うところがない訳ではない。
だが、どちらかというと今まで……こうして決定的に尻尾を出すまでエルランを捕まえる事が出来なかった、連邦軍の方に思うところがある。
今まで散々暗躍してきたエルランだけに、連邦軍ならもっと早くスパイだと特定出来たのではないか? と。
……もっとも、ルウム戦役でジオン軍に捕らえられたレビルを解放した功労者だという事だし、まさかそのエルランが……という思いを抱いていた者も多いのだろう。
あれだ。何らかの犯罪が起きた時、まさかあの人が? と、そんな気持ちを抱く奴。
ともあれ、これは間違いなく連邦軍の失態である以上、こちらとしては迷惑料といった事で、オデッサ作戦が終わった後で貰う報酬を、増やして貰うとしよう。
そう判断しているからこそ、俺はぶっちゃけ今回の件ではあまり怒っていない。
そもそもの話、今回の一件はあくまでも連邦軍の出来事だし。
「そう言えば、艦長室ではどんな会話がされてるんでしょうね」
アムロがそんな風に呟く。
現在、ブライトとコーウェンはホワイトベースの艦長室で何らかの話をしている。
何らかのというか、恐らく今回のエルランの一件に関するものか、オデッサ作戦に関するものだろう。
今まではエルランのせいで、オデッサ作戦がどのように進むかが漏れていた。
また、エルランが逃げ出す際には当然のように何らかの土産を持っていく必要があっただろう。
オデッサ作戦のデータというのは、それこそ非常に大きな意味を持つ。
……もっとも、今まで散々ジオン軍の邪魔をしてきたホワイトベース隊を撃破していれば、それが最良の土産になったのは間違いないのだろうが。
「これからオデッサ作戦をどう進めるかについての話し合いだろうな。……エルランのおかげで、当初予定していた作戦はジオン軍に筒抜けになってしまっただろうし」
「うわぁ……それは不味いな」
リュウが深刻そうに呟く。
どういう事だ? と、軍隊経験のない者達の視線が向けられると、リュウは言葉を整理するようにしながら説明を始める。
「知っての通り、このオデッサ作戦は連邦軍の総力を結集したと表現出来る程の作戦だ。参謀本部を含めた上層部が、練りに練った作戦と言ってもいい。そんな作戦だけに、エルランに知られたからすぐに次の作戦を……といったような真似は出来ないんだ」
それは、間違いのない事実だ。
現場にいるホワイトベース隊は、上からの命令に従ってピンチになっている連邦軍の部隊のいる戦場に向かってそれを助けるという火消しを専門にしていたが、それはあくまでも現場にいるからこそ、そう認識していた事でしかない。
実際にはビッグトレーにある作戦本部にて、レビルを含めた多くの者が、前もって決められている作戦スケジュール通りの行動をしていた。
それがエルランの一件があったからといって、すぐに変えることは出来ない。
……いや、あるいはミノフスキー粒子の類がなければ、リアルタイムで指示を出す事によって、その辺をどうにか出来た可能性もある。
だが、ミノフスキー粒子が存在する現状では、リアルタイムの通信はかなり近距離でなければ出来ない。
昔の戦争のように、伝令の類が必須となるような、そんな現状なのだ。
それを思えば、今の状況ですぐに作戦案を1から練り直すなどといった真似はまず不可能だろう。
とはいえ、オデッサ作戦についての情報をエルランに持ち出されているし、何よりエルランもオデッサ作戦の立案に携わった身だ。
そうなると、オデッサ作戦をそのままに進める訳にもいかない。
リュウがそう説明すると、皆が難しい表情でそれを受け止める。
「下手に難しい戦術が出来ないのなら、いっそシンプルな戦術を選ぶとか?」
俺のその言葉に、リュウの説明を聞いていた面々の視線が向けられる。
「どういう事だよ?」
カイのその問いに、俺は勿体ぶるように紅茶を一口飲んでから、口を開く。
「作戦前に立てていた予定は完全に狂った。それを修正するような余裕はないし、それを指示する方法もない。ならいっその事、連邦軍全軍で一気に目的のオデッサ基地に向けて出撃すればいいんじゃないかと思ってな」
それは、作戦とも呼べない作戦だった。
正面から戦えと、そう言ってるのだ。
作戦もなにもない、そんな行動。
とはいえ、今のままでは色々と難しい以上、それが一番簡単な作戦なのは間違いなかった。……うん、やっぱり作戦とは呼べないな。
「いや、それは……」
リュウが言葉に詰まる。
ヤザンやマットを始めとした、軍人としての知識を持つ者達もリュウと同様に驚きの表情を浮かべていた。
まぁ、ある程度の知識がある者なら、そうなってもおかしくはない。
とはいえ、そうなった場合はジオン軍も連邦軍に対抗する為に戦力を集める必要がある。
そうなれば……連邦軍としては、今まで温存していたアプサラスⅢを出せる訳だ。
アプサラスⅡより性能が上がったアプサラスⅢだけに、ジオン軍が纏まってくれれば、こちらとしては一網打尽だろう。
あ、でも連邦軍じゃなくてルナ・ジオンの秘密兵器と呼ぶべきか。
「こっちが集まれば、ジオン軍も集まる必要がある。そしてジオン軍が集まれば、アプサラスⅢの出番もある」
その言葉に、ラサ基地攻略戦に参加した者達の表情には納得の色が浮かぶ。
山肌を貫き、その内部にあるラサ基地と直通通路を作ったのを思い出せば、ジオン軍に莫大な被害を与える事になるというのは、納得出来る話だろう。
とはいえ、ラサ基地での戦いを実際に見た事がない者にしてみれば、そこまでアプサラスというMAは信じられない。
「ともあれ、アプサラスの特性としては、多数の敵を纏めて消滅させられるというものだ。レビルなら、その辺をしっかりと考えた上で……」
どうにかしてくれる。
そう言おうと思ったが、その言葉に割り込む形でモーリンの声が食堂内に響く。
『連邦軍の本陣が見えてきました。全員、それぞれ自分の持ち場に戻って下さい。繰り返します。連邦軍の本陣が見えてきました。全員、自分の持ち場に戻って下さい』
その言葉に、食堂にいた他の者達もそれぞれ自分の作業場に戻る。
俺達も、一応MSにすぐに乗れる場所にいた方がいいだろう。
エルランがいなくなった以上、もう攻撃される心配はない筈だが……それでも、今まで色々と予想外の事があったのを考えると、いつでもすぐに行動に移せるようにしておいた方がいいのは間違いない。
場合によっては、それこそエルランの手の者がまだ連邦軍の中にいる可能性もあるし。
「ともあれ、事態がどう動くかというのは俺達がああだこうだと考えても、意味はない。それこそ、連邦軍の上層部が考える筈だ」
そう締めくくる。
とはいえ、ブライトを通じてレビルに俺の提案をしておくのは悪くないだろう。
アプサラスの能力を、大勢の連邦軍に見せつけるというのは、現在起こっているジオンの独立戦争が終わった後で、下手に月やハワイにちょっかいを掛けるような真似をしないという事になるのだから。
連邦軍の勝利でこの戦争が終わった後、その仮想敵国は当然のように月となる筈だ。
ジオン公国以外で唯一の国家となるのだから、それは当然だろう。
ましてや、連邦政府の中には月の持つ経済力や天下り先のポストとして魅力的だろうし、何よりもシャドウミラーを含めて異世界の技術を得られるかもしれないのだ。
その辺りの事情を思えば、戦後を睨む必要は出て来る。
このオデッサ作戦が終われば地球におけるパワーバランスは逆転し、ジオン軍の多くは地球から追い出される事になり、戦場は宇宙になる筈だ。
……とはいえ、ルナツーの一件もあるので、連邦軍が宇宙で活動するのは難しいんだよな。
一応返還交渉は終わってる筈なので、使えないという事はないんだろうが。
「おい、アクセル、どうした? 格納庫に向かうんじゃないのか?」
「ああ、悪い。そうだな。何があるか分からないし、格納庫に行くか」
カイにそう返し、MSに向かう。
ここまで移動してくる中で、MSの補給も終わっている。
ビームの充電は、一応俺のピクシーは高性能機で戦力として頼れるという事で、最優先で行われていた。
ホワイトベース隊のMSはビーム兵器を装備している機体が多い。
そのビームライフルは格納庫にある専用の機械でしか充電出来ず、その機械の数も決して多くはない。
例えば、ホワイトベースに搭載されているMSが3機程度であれば、その辺りも特に問題はなかったのだろう。
だが、現在のホワイトベースはレビル直轄の部隊として働く為に、多くのMSを搭載している。
それを考えれば、充電器の数はとてもではないが足りないのだ。
この辺はハワイでもその辺の技術が未発達だけあって、改良されていない。
オデッサ作戦が終わった後はジャブローに行くので、その時に改良されるんじゃないか……とは思っているが、ジャブローに到着すれば俺は降りる為、気にする必要はなくなる。
というか、シロー達も降りるだろうし、MSの数は一気に少なくなるので、現状のままでもどうにかなると判断される可能性もあるな。
オデッサに到着すると、ホワイトベース隊の戦力はがくっと下がるのは、ほぼ間違いない。
俺と綾子というMSパイロット2人は降りるし、ホワイトベースを上手い具合に操縦しているミナトも同様に降りる。
……いやまぁ、そもそも俺達が乗っていたというのが、異常ではあるのだが。
「MSの補給の方は大丈夫だな?」
「はい。ビームスプレーガンの充電も含めて、完璧です」
メカニックと会話を交わし、俺はピクシーのコックピットに乗り込むのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:750
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1534