ホワイトベースのブリッジで、俺はブライトと会話をしていた。
取りあえず、俺がギャロップを倒す――実際には接収したのだが――までの説明は終わり、今は俺がホワイトベースのMS隊がどのような動きをしているのかを聞いていた。
「そうなると、基本的に全員が忙しい訳か。……戦場が広まっているのは、その影響か?」
「そうだ。どうしても戦いの中でそれぞれが動く必要があるから、それによって戦場は広まってしまう。……厄介だがな」
しみじみと呟くその言葉に、俺は同意するように頷く。
実際のところ、この戦場はかなりの激戦と言ってもいい。
連邦軍とジオン軍が正面からぶつかり合っている以上、それは当然だろうが。
それでも驚いたのは、ジオン軍が思ったよりも奮戦している事だろう。
物量では連邦軍に圧倒的に負け、1週間戦争やルウム戦役で勝利した原因のMSも連邦軍が投入してきている。その上、これまでホワイトベース隊によって結構な数のMSを撃破されている。
連邦軍の情報を流していたエルランも、既にいない。
それらの事情を思えば、下手をすれば連邦軍が圧倒する可能性すらあったのだが……にも関わらず、ジオン軍は未だに持ち堪えていた。
俺が戦ったギャロップのように、場所によっては優位性を得ている場所すらあった。
これは、ジオン軍の火事場の馬鹿力といったところか。
オデッサを失うというのは、ジオン軍にとってもそれだけ大きかったという事か。
そんな訳で、現在の状況はかなり厳しい。
……それこそ、連邦軍にとっては少し洒落にならないんじゃないかと、そう思えるくらいに。
だがそんな状況だからこそ、火消し役たるホワイトベースの役目は大きくなるのだろう。
「正直なところ、正面から戦えば楽に勝てると思っていたんだけどな」
そんな俺の言葉に、ブライトも頷く。
この様子を見る限り、ブライトも俺と同じ事を思っていたのだろう。
実際、普通に考えた場合はこちらの勝利となるのは確実なのだから、それはおかしな話ではない。
「追い詰められても、ジオン軍はすぐに折れない。それを支える何かがあるのだろう」
「いや、何かって何だよ? この期に及んで援軍が来るとか?」
自分で言って、それはないと判断する。
そもそもの話、援軍を寄越すならもっと早くに来ていただろう。
そうなると、もう大規模な援軍というのは考えられない。
あ、でも宇宙からHLVで援軍を下ろすという選択肢はあるのか。
未だに地球の上空は、その多くをジオン軍が押さえているのだから。
けど、問題なのは今のジオン軍に地球に援軍を送るだけの余裕があるかどうか。
以前ギレンが演説でジオン軍の戦力は独立戦争を始める前の段階に戻ったとか演説していたが、あの報告が盛られているという可能性を考えると、素直に信じる事は出来ない。
ジオン公国の性格を考えれば、そのくらいの事は平気でやりかねない。
……それでも完全に戻ったというのは難しくても、ある程度戻ったというのは間違いない。
それにMSの新規開発も進んでいるのを思えば、オデッサに援軍を送り込むのは不可能ではないか?
そもそもの話、このオデッサ作戦が成功した場合、間違いなく地球の軍事バランスは崩れる。
ジオン軍としても、それは望まないだろう。
「援軍、か。レビル将軍であれば、当然その辺りの事情は分かっている筈だ。また、ジオン軍にはエルランが逃亡している以上、連邦軍の情報は筒抜けと考えても間違いではない」
ブライトのその言葉には、納得するしか出来ない。
中将という地位にあった者が亡命をするという事は、それだけ大きな意味を持つのだ。
レビルの怠慢。
そう言ってもいいかもしれないが、レビルにしてみれば、まさかエルランがという思いがあったのは間違いない。
そうして話をしていると、不意にモーリンがこちらを向く。
「ブライト艦長、通信です」
通信? と一瞬だけ疑問の表情を浮かべたブライトだったが、それでもすぐに通信に出る。
すると、次の瞬間映像モニタは以前会った……そう、ティアンムだったか。そんな名前の軍人が姿を現す。
『ブライト中尉、単刀直入に聞く。現在ホワイトベースの戦力はどのようなものかね?』
挨拶も何もなしでこう言ってくるという事は、何か余程の事が起こったのだろう。
具体的に一体何が起きたのかというのは分からないが、それでもティアンムの表情が厳しく引き締められているのを見れば、それは明らかだ。
「戦力と言われても……現在ほぼ全ての部隊が出払っています。現状ホワイトベースに残っているのは、ガンタンク隊とアクセルのピクシーだけですが」
『ぬぅ……そうか……』
まさに、苦虫を噛み潰したようなという表現が相応しい様子を見せるティアンム。
そんなティアンムの姿を見て、ブライトも不安に思ったのだろう。
恐る恐るといった様子で口を開く。
「ティアンム中将、一体何があったのですか?」
『こちらの諜報部が手に入れた情報によると、ジオン軍の有する陸上戦艦のダブデの1隻に、マ・クベの指示によって水爆を搭載しているらしい』
「なっ!?」
ティアンムの言葉に、ブライトが驚きの声を上げる。
当然だろう。水爆ということは核兵器で、つまりは南極条約違反だ。
つまり、これはジオン軍が南極条約を破棄したと、そう考えてもおかしくはない。
「それは、本当ですか?」
『うむ。おまけに、どのダブデに搭載されているのかという情報までは得られていない。だからこそ、ホワイトベースの戦力に期待したかったのだが……』
苦い表情を見せるティアンム。
水爆か。……具体的にどのくらいの威力があるのか分からないのが痛い。
戦術級なのか、戦略級なのか。
……核兵器と聞かされても俺がそこまで動揺しないのは、それ以上に危険な存在を色々と知ってるからだろう。
特にギアス世界で開発され、現在ではシャドウミラーで運用されているフレイヤも分類するとすれば一応は核兵器だ。
だが、普通の核兵器と違って放射能汚染や爆発、熱反応といった現象がないので、そういう意味ではこの世界の核兵器とは大きく違う。
核兵器ではなくても、ブラックホールを利用した動力炉は普通にあるし、ましてやそれを武器にさえしているのだから、そこまで驚くといった事はない。
とはいえ、それはあくまでも俺だからの話であって、このUC世界の人間にとって核兵器というのは決して許容出来る兵器ではなかった。
ジオン軍が独立戦争が始まってからは大量に使用したが。
だが、それもジオン軍と連邦軍の間で行われた南極条約によって、禁止された。
南極条約を結んだという時点で、連邦政府や連邦軍はジオン公国を実質的に独立国家として認めているという事になるのだが、ジオン軍としてはそれだけではまだ納得出来なかったららしい。
ともあれ、そうした南極条約によって禁止されている核兵器を使うというのは、ジオン軍にとっても致命的な事になるのは間違いない。
「分かりました。戦力としては少し心許ないですが、それでもジオン軍が水爆を使おうとしているとなれば話は違ってきます。すぐに出撃し、それを阻止しましょう」
『頼む。……とはいえ、オデッサに展開しているダブデの数はそれなりに多い。どのダブデに搭載されているのかまでは分からないから、かなり厳しい戦いになるぞ』
「それは……確かに難しいですね」
ブライトの言葉に、心の底から納得する。
ダブデの数は1隻や2隻といったところではないだろう。
であれば、まさか全てのダブデを破壊する訳にもいかない。
1隻や2隻続けてダブデを破壊すれば、当然のように他のダブデも自分達が狙われていると気が付く筈だ。
そうなれば当然警戒するだろうし、何よりも水爆を積んでいるダブデは、自分達が狙われていると判断してもおかしくはない。
だからこそ、早急にどのダブデが水爆を積んでいるのかを突き止め、可能ならピンポイントでそのダブデを撃破するなり、もし撃破しなくても水爆を搭載したミサイル発射口を破壊するなりして動かなくする必要がある。
ん? ダブデで水爆を搭載しているとなると、それはやっぱりミサイルでいいんだよな?
これがザクなら、それこそ開戦当初のようにバズーカで核兵器を発射という手段を使えたのだろうが。
「ダブデに搭載したとしても、それを行うのはザクだったりしないか?」
『いや、それはない。ダブデのミサイルに搭載して発射すると報告があった』
俺の呟きが聞こえたのか、ティアンムがそう返してくる。
にしても、そこまで分かっているのなら、どのダブデに核ミサイルを搭載したのかまでを調べてもいいと思うんだがな。
連邦軍の諜報部隊は、役に立つような、立たないような……微妙なところだ。
捕まったレビルを奪還するといった真似が出来たのを思えば、連邦軍の諜報部は決して無能といった訳ではない筈なのだが。
「そうなると、やっぱりどうにかして水爆を積んだダブデを探す必要がある訳か」
『そうなる。こうして戦場が狭い中での戦いとなると、そこで核兵器を使われた場合、こちらの戦力のほぼ全てがやられてしまいかねない』
苦々しげなティアンム。
現在の状況を考えると、その気持ちも理解出来ない訳ではない。
とはいえ、その状況でどうするのかといった問題になると、それもまた難しいのだ。
「それは分かったが、ならどうするんだ? 結局のところ、俺達でダブデを潰して回るという手段しかないが」
ホワイトベースのMS隊で、ダブデをどうにか出来るのは誰かと言われれば……俺、綾子、アムロ、ユウの4人か。
別に単機で戦う必要はないので、ある程度の小隊で戦ってもどうにかなりそうではあるが。
ただし、最大の問題としては現在ホワイトベースですぐに出撃出来るMSが俺のピクシーだけといったところか。
「ブライト、他の場所に出撃している連中が戻ってくるまで、どれくらい掛かる?」
「分からない。ただし、どの戦場も連邦軍側が不利だからこそ、こちらに応援を求めて来たんだ。そうなると、すぐに戻ってくるのは難しいだろう」
「あの……」
ここがブリッジである以上、当然ながら俺達の話は他のブリッジクルーにも聞こえており、その中でオペレータをしていたモーリンが口を開いたのだ。
「水爆を使われた場合、当然ですがその被害は連邦軍だけではなく、戦場で戦っているジオン軍も受けますよね? だとすれば、水爆の一件をジオン軍に知らせてみるというのはどうでしょう?」
『……難しいだろうな』
モーリンの言葉を否定したのは、ティアンム。
難しい? と首を傾げるモーリンに、ティアンムは言葉を続ける。
『今の状況でこちらが水爆がどうこう、核兵器がどうこうと口にしても、それを前線の兵士が信じるとは思えない。連邦軍が圧倒的に有利な状況ならまだしも、今は一進一退といった状況だ。恐らく撹乱戦術だと疑われるだろう』
「そんな……」
ショックを受けたような状態のモーリンだが、ジオン軍にしてみれば、まさかマ・クベが……オデッサの指揮を執っている人物が、自分達諸共核兵器で皆殺しにするとは思わないだろう。
……寧ろ、このような状況であっさりとマ・クベが核兵器を使うと信じる方が、色々と問題だった。
ああ、でも水爆を積んだミサイルが連邦軍の後方に着弾すれば……その水爆の威力が具体的にどのくらいなのかは分からないが、その威力によっては被害を受けるのは連邦軍だけという可能性も、皆無ではない。
そこまで都合よく出来るかどうかと言えば、誰もそれに素直に頷くような真似は出来ないだろうが。
「そうなると、こっちとしてはどうしても出来る事は限られてくる訳だが……どうしたものやら」
モーリンを慰めるように……といったつもりではないが、やはり色々と思うところがある状況である以上、そう誤魔化す。
今回の一件においては、正直なところ現状ではかなり厳しい。
ジオン軍のマ・クベにしても、当然のようにそれを理解した上で水爆を用意しているのだろう。
本当に厄介としか言いようがない相手だよな。
正直なところ、この状況をどうするかは非常に悩む。
一応、奥の手があると言えばあるのだが、それを使うと俺が……アクセル・アルマーが連邦軍に協力しているというのを、完全に表に出す事になるんだよな。
勿論、エルランとかからジオン軍に情報が流れていたのは間違いなく、それを思えば今更という感じがしないではない。
しかし……同時に、それはあくまでもジオン軍も俺の存在を表沙汰にはしていなかったのだ。
だからこそ、今のこの状況でそれを表に出すかどうかは迷うところだ。
ジオン軍と連邦軍の双方に同じくらい消耗して欲しいとは思っていたが、これだと双方の消耗が大きすぎる。
そうなると、戦後云々という問題ではなく、お互いに戦力が足りない状況で泥沼になる可能性も高い。
……しょうがない、か。
「今回の件、俺が何とかしてみせよう。ただし、報酬は高いぞ?」
ブライトとティアンムに向け、そう告げるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:850
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1552