俺の言葉に、ティアンムとブライト、そしてブリッジにいた全員の視線がこちらに集まってくる。
いや、ミナトだけは俺が何をしようとしているのかを何となく理解しているのか、納得したような視線をこちらに向けていた。
「アクセル、それは一体どういう事だ? 何をどうするつもりだ?」
「簡単なことだ。この戦場にいるダブデの全てを、俺が撃破してしまえばいい」
しん、と。
俺の言葉の意味が理解出来なかったのか、ブリッジにいる面々と、映像モニタに表示されているティアンムまでもが黙り込む。
普通に考えれば、俺の言ってる事は滅茶苦茶だ。
それを思えば、こんな対応をする理由は理解出来る。
だが……それでも、今の状況を考えるとそれが最善なのは間違いないのだ。
後は、連邦軍側で俺の要求に応えられる程の報酬を出せるかどうか、だな。
ぶっちゃけた話、今の状況でも既に連邦軍は俺にかなりの借りを作っている。
そんな中で、水爆を……マ・クベがこの状況で用意したという事は、恐らくオデッサに集まっていた連邦軍の部隊の大半を殲滅――前線のジオン軍諸共に――するだけの威力を持っていると考えてもいい。
であれば、それを避ける為の報酬は当然のように相応のものとなるだろう。
「撃破すると言っても……どうやってだ? アクセルも、ティアンム中将の言葉は聞いていただろう? この戦場には、ダブデが多数いる。それを順番に撃破していくのは……」
「難しいだろうな」
ブライトの言葉を遮り、そう告げる。
その言葉を聞いたブライトは一瞬呆気にとられた表情を浮かべ……だが次の瞬間、俺に向かって睨み付けてくる。
この忙しい時にふざけるなと、そんな思いを懐いているのだろう。
ブライトが俺に向けて何かを怒鳴ろうとしたのを、手を出して止める。
「難しい。けどそれは、あくまでもピクシーならの話だ。幸いにも向こうは南極条約違反をしてくる以上、こちらとしても介入する口実になる」
『それは一体、どういう意味なのか……聞かせて貰えますかな』
ティアンムは俺の言葉に興味を示したように視線を向けてくる。
というか、今の状況ではどうしようもない以上、何らかの策があるのであれば俺に頼りたいと、そういう事なのだろう。
「簡単な話だ。ピクシーで無理なら、それ以外の機体でやればいい」
「いや、待て、それ以外の機体って言われても……アムロのガンダムでも使う気か?」
ブライトの口からアムロのガンダムという言葉が出て来たのは、総合的な性能で見た場合、やはりアムロのガンダムがホワイトベース隊のMSの中でも一番上だからだろう。
地上での戦いという点では、ピクシーの方が上かもしれない。
しかし、ビームライフルを持っている点や、何よりもピクシーでは対応出来ない宇宙でも普通に行動出来るという点を考えると、総合的にはやはりガンダムに軍配が上がるのだ。
だが、俺は首を横に振る。
「違う。ガンダムの性能が幾ら高くても、1機でダブデの全てを撃破するといった真似はまず出来ない」
「なら……」
「だから、俺が使うのはホワイトベース隊のMSではなく、俺が持っている機体だ。シャドウミラーのな」
一瞬、俺が何を言ったのか理解出来なかった様子のブライト。
その行動は先程俺が何とかすると言った時と同じような感じだ。
とはいえ、絶句している今の状況を考えると、その意味は先程とは全く違うのだろうが。
「その……それは一体、どういう意味だ?」
「グラナダの戦闘についての映像は、見た事があるんじゃないか?」
その一言がある意味で致命傷となり、ブライトは息を呑む。
『ニーズヘッグ……でしたか。それを使って貰えると?』
「ああ。だが、当然のように、あの機体はシャドウミラーの中でも最高の性能を誇る機体だ。それを使う以上、先程も言ったように相応の報酬を用意して貰う。それを用意出来るか?」
『報酬、ですか。……それは一体、何を求めているのでしょう?』
少しだけ警戒した様子で、ティアンムがこちらに聞いてくる。
さて、正直なところ報酬を要求はしたが、具体的に何を欲しいかというのは、決めてなかったんだよな。
普通に考えれば、このオデッサ辺りか?
いや、けど地上の拠点はハワイだけで十分だしな。
ぶっちゃけた話、オデッサを貰っても得られるのは資源の類だけだが、その辺はわざわざオデッサを占領しなくてもキブツを使えばどうとでもなるし。
そうなると、MS?
とはいえ、オデッサ攻略に協力する報酬として新開発のMSを貰うというのは既に決まってるし……あ、そうだ。
「この戦争が連邦軍の勝利で終わった場合、ジオン公国から接収出来た代物は、月に優先権が欲しい」
『それは……』
予想外の言葉だった為だろう。ティアンムが戸惑う。
連邦軍にしてみれば、今回の戦争では多くの被害を出した。
その補償という意味でも、ここはやはり自分達こそがジオン公国から様々な物を欲した……といったところか。
そんな中で月に優先権を持っていかれると、それは非常に痛い。
連邦軍にとって、その条件は可能な限り避けたいだろう。
……とはいえ、こちらとしては特に何かこれだ! というものが他に何かある訳でもなく……
ジオン公国から接収出来る物は、ルナ・ジオンにとって大きな利益となるのは間違いないだろう。
『こちらの一存では決められないし、何より支払う代償が大きすぎるかと。……では、お互いに協議をしてそれを決める。そういうことではどうでしょう?』
ティアンムの立場としては、それが精一杯か。
ティアンムは中将という立場ではあっても、連邦軍を実質的に支配する立場にいる訳ではない、
勿論一定の影響力があるのは、間違いないだろうが。
ともあれ、協議をするか。
中将たるティアンムがそう言ったのなら、レビルや連邦政府の面々もそれを無視する訳にはいかないだろう。
であれば、こちらとしてもその条件で引き受けるのがいいか。
それに……もしティアンムの言葉を聞いてそれを無視しようとする者がいても、これからオデッサで起きる戦いを前にすれば、それを無視しようなどとは思えない筈だ。
であれば、後は連邦軍に有言実行して貰えばいい。
ぶっちゃけた話、エザリアを始めとした政治班ならもっと踏み込んだ条件を整える事出来たのかもしれないが、今の切羽詰まった状況を思えばそんな時間もない。
……攻めの交渉が得意なレオン辺りなら、一体どれだけの譲歩を引き出せたのやら。
とはいえ、レオンに出張って貰うのはジオンの独立戦争が終わった後でにして貰った方がいいか。
「分かった。こっちはそれでいい。……言っておくが、この約束を破った場合、月は完全に地球と敵対する。場合によっては、ジオン軍じゃなくて月が地球に攻めてくるという事も承知しておけよ」
脅し、もしくは確認の意味を込めて告げられた俺の言葉に、ティアンムは真剣な表情で頷く。
何だかんだと、連邦軍はジオン軍の独立戦争で大きな被害を受けた。
今は何とかそれも挽回してきてはいるが、これまでの連邦軍の人的被害はとんでもない数になっている筈だ。
それでもオデッサ作戦のように連邦軍がジオン軍に勝っているのは、連邦軍の方でもかなり無理をしているからだろう。
そんな状況で、ジオン公国の独立戦争が終わった後ですぐに月と戦うなどという事になれば、それこそ連邦軍は保たない。
それに連邦軍がジオン軍との戦いで有利に進める事が出来ているのは、あくまでも物量の差だ。
ザク1機に61式戦車が複数で当たる事が出来るのが、連邦軍が有利な理由だろう。
しかし……月の場合は、メギロートやバッタがいる。量産型Wの操るシャドウもいる。
バッタは連邦軍が現在所有している戦力であっても、ある程度何とか出来ない事もない。
だが、それでも大きな被害が出るのは間違いないだろうし、メギロートにいたっては、ぶっちゃけた話、ガンダムよりも性能が高い。
勿論それはあくまでも機体の性能の話であって、パイロットの能力までは考えていない。
いやまぁ、メギロートにも専用のAIがあって、そのAIは数百年も戦闘を続け、学習し続けてきたAIだ。
それこそ、その辺の新兵程度ではどうしようもないのは明らかだろう。
『分かりました。その件については最善の行動をさせて貰います』
こうして、取りあえずティアンムとの契約は結ばれて通信が切れる。
「さて、と」
ティアンムの姿が消えた映像モニタを一瞥すると、俺はブリッジから出ようとするも……そんな俺の背中に、声が掛けられる。
「アクセル! その、本当に大丈夫なのか?」
ブライトの表情にあるのは、一種の戸惑い。
とはいえ、その理由も納得出来ない訳ではない。
ブライトにしてみれば、なまじ俺と知り合いなだけに、いきなり俺がニーズヘッグを使ってダブデを全て撃破するというのを、完全には信じられないのだろう。
普通なら、こういうのは相手の事をよく知らないから信じられないといった風になってもおかしくはない。
だが、今回の場合は色々と事態が特殊な為か、寧ろブライトが俺をよく知っているからこそ、完全に信じられないのだろう。
「安心しろ。今まで俺がピクシーを使ってどれだけの戦果を挙げてきたと思っている。ニーズヘッグは、俺が今まで使っていたピクシーとは全く比べものにならないくらいの、高い性能を誇ってるんだ。だとすれば、このオデッサにいるダブデ数隻を撃破するのは、難しい話じゃない。……もっとも、オデッサ作戦最大の手柄は俺が貰う事になるから、それが面白くない奴はいるだろうけど」
実際、今まで必死になってオデッサ作戦で戦い抜いてきた連邦軍の兵士にしてみれば、いいところで俺が全てを横から奪っていくと、そう考える者も皆無ではない。
特にこのオデッサ作戦で注目されていたジムを使っているMS部隊にしてみれば、本来ならこのオデッサ作戦は大々的なジムのお披露目として、注目を集める筈だったのに……それが最終的には、ニーズヘッグに全てを奪われるのだから。
ニーズヘッグの、そして俺という存在に恨みを抱いてもおかしくはない。
「それは……何とも言えないが……」
「まぁ、その辺はどうにかするから、そうだな。せめてここで見てろよ。ニーズヘッグの活躍をこんな間近で見るような事は、そう簡単には出来ないぞ。なぁ?」
俺の視線を向けられたミナトは、笑みを浮かべながらそれに頷き、口を開く。
「そうね。MSが運用され始めたばかりの今のUC世界では、ニーズヘッグという存在は性能的に上すぎて、ちょっと参考にするのは難しいかもしれないけど……それでも、MS……いえ、人型機動兵器がここまでいけるというのを、実際に知ることが出来るというのは大きいと思うわ」
そんなミナトの言葉を聞きながら、俺は影のゲートを使ってホワイトベースのブリッジから抜け出す。
そうしてホワイトベースの外に出ると、一応周囲の様子を確認する。
遠くからは爆発のような戦闘音が聞こえてきており、上空からはセイバーフィッシュを始めとして、連邦軍の戦闘機が何機も飛んでいるのが見えた。
さて。
ここでニーズヘッグを呼び出しても、周囲に被害を被る何かはない。
それを確かめてから、俺は空間倉庫の中からニーズヘッグを選択する。
瞬間、俺の後ろにはニーズヘッグが姿を現す。
全高15m程度と、このUC世界のMSと比べれば決して大きくはない。
だがそれで……その機体から感じられる圧倒的なまでの迫力は、ジムやザクとは比べものにならないくらいだ。
実際にホワイトベースのブリッジにいる面々が……そしてブリッジ以外にいる面々の視線も、大量にニーズヘッグに向けられているのが分かる。
その圧倒的な迫力から、不思議なくらいの吸引力……カリスマのようなものすら、そこには存在していたのだ。
ニーズヘッグが放っている迫力は、ニーズヘッグの持つ力と……そして何よりFate世界で宝具化した影響もあるのだろう。
そんなニーズヘッグのコックピットに、俺は空を飛んで移動する。
コックピットの中に入ると、T-LINKシステムによるチェックで俺を認識し、機体が自由に動かせるようになる。
テスラ・ドライブを使い、空高くに上がっていく。
UC世界のMSではあれば、スラスターを使って強引にジャンプをしたり。グフ・フライトタイプのようにジェットエンジンを使って空を飛んだり……といったような飛行の仕方だったが、テスラ・ドライブは違う。
ミノフスキークラフトともまた違う、重力を感じさせないような、ふわりとでも表現する移動で空を上っていくのだ。
そうして、かなりの高度まで上がったところで、地上を確認する。
T-LINKシステムを使った索敵は、この戦場に存在するダブデの姿を容易に把握する事が出来た。
その数、5隻。
思ったよりもその数は少ないが、オデッサ作戦が始まってからの戦いでジオン軍も結構な被害を受けていると思えば、ある意味妥当なのか?
ダブデのような陸戦艇を建造するには、当然のように相応のコストが必要なのだが、それを考えればこれは寧ろかなりの戦力を集中していると言ってもいいのかもしれないな。
あの中の1隻は、恐らく俺がピクシーで攻撃したダブデなのだろう。
そう思いながら、俺はT-LINKシステムのマルチロックオン機能を使い……T.T.キャノン、ランツェ・カノーネを二門、メガ・バスターキャノン、ブラックホール・ランチャーを同時に使用し……次の瞬間、5つの巨大な爆発が地上に生まれるのだった。
その中の1つが、かなり巨大な爆発だったが……恐らくあれが、水爆を搭載していたダブデだったのだろう。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:885
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1557