オデッサ作戦が終わって数日……祝勝会の翌日からも、俺達はそれなりに忙しい時間を送っていたのだが、ホワイトベース隊はジャブローに行くようにと命令を下された。
もうオデッサの周辺には強力な敵は残っていないと、そう判断されたのだろう。
だからこそオデッサ基地を占拠した連邦軍が、現在は色々と動き回っていた。
それが最も顕著なのは、やはりMSだろう。
……何しろ、オデッサ基地にはイフリートが保存されていたというのだから。
イフリート。言うまでもなく俺が以前使っていたMSで、地上用MSとして考えれば、現在存在するMSの中でもトップクラスの性能を持つ。
もっとも、移動するのは普通に二足歩行なので、純粋に機動力という点ではドムに劣るのだが。
ただ、その点を抜かせば高性能なMSなのは間違いない。
結局操作性の悪さや、コストが高すぎるとして量産性が悪いという事で結局正式採用はされなかったが。
ただし、その性能が高いのはEXAMシステムを搭載する為の機体として選ばれた事からも、明らかだろう。
乗る者の技量が高ければ、それこそ一騎当千といった活躍をするのに十分な性能を有しているのだ。
もっとも、マ・クベは色々と改修しているようだったが。
多少興味はあったが、連邦軍の方で色々と実験をしたり性能を確認したりといったような事をするらしいので、俺が手を出すような余裕はなかった。
いっそ、オデッサ作戦の追加報酬としてオデッサ基地にあったイフリートも貰おうか?
そう思わないでもなかったが、考えてみれば今回のイフリートの一件は色々と……それはもう色々と面倒な事になっている以上、あまり手を出さない方がいいと判断した。
ともあれ、そんな諸々を終えたホワイトベースは、現在ジャブローに向かって進んでいた。
「それにしても、少し不安じゃないですか?」
格納庫でシミュレータ訓練を眺めていると、そんな風に声を掛けられる。
声を発したのは、アムロ。
その言葉とは裏腹に、そこまで不安そうな表情を浮かべてはいない。
俺に話し掛ける切っ掛けとして、そんな話題を選んだといったところか。
「不安? 何が不安なんだ?」
「今のホワイトベースですよ。マットさん達がいなくなったのは、痛いと思いませんか?」
「そうか? ……まぁ、痛いかどうかと聞かれれば、痛いと答えるしかないんだが」
オデッサからの移動に際して、一番大きな変化はやはりマット達の小隊がホワイトベースから降りたことだろう。
ホワイトベースと協力するのは、あくまでもオデッサ作戦の間だけという事だったので、それは当然の成り行きではあったのだろうが。
マット達との別れも、そこまで大袈裟なものじゃなかったし。
同じ連邦軍だけに、また戦場で会う機会もあるだろうと、そう言っていたな。
……あ、でもホワイトベース隊はレビルの直轄部隊で、マット達はコーウェンの直轄部隊。
そしてコーウェンはレビルの派閥と考えると……
「ジャブローで補充される戦力って、もしかしたらマット達になるかもしれないな」
「え? 本当ですか?」
アムロの表情に浮かぶのは、喜びの色。
ここまでマット達と一緒に動くのを喜ぶとは、正直俺から見ても予想外だった。
アムロとマットって、そこまで仲がよかったか?
そんな疑問を抱くも……今はその辺を気にする必要はないか。
「あくまでも俺の予想だけどな。……ただ、マット達が来るとなると、色々と問題も起きると思うが」
マットとヤザンの相性は、控えめに見ても最悪という言葉しか出ない。
オデッサ作戦の時は、この作戦の間だけという事もあって正面からぶつかる事は……ない訳ではなかったが、それでも本格的にぶつかるといった事はなかった。
しかし、それがずっと一緒になるとなれば、どうなるか。考えるまでもないだろう。
間違いなく、大きな衝突となる。
それこそ、場合によっては処分が下される程の。
……そもそも軍人同士が喧嘩をした時点で、処分が下されてもおかしくはないのだが。
「え……それは……」
アムロも俺の言葉で危険だという事を察し、言葉に詰まる。
何だかんだと、アムロはヤザンとも仲がいい。
というか、ヤザンが何気に面倒見がいいんだよな。
アムロには未だに勝てていないヤザンだったが、それでも自分より年下、それも本来なら軍人ですらない――今は表向き軍人という扱いだが――相手に負け続けていても、それで嫉妬してアムロに対する当たりを強くするといったことはない。
そんなヤザンだけに、アムロとしてはマットとぶつかって欲しくはないといったところか。
「取りあえず、さっきも言ったがマット達が来るかもしれないというのは、あくまでも俺の予想でしかないぞ。もしかしたら、もっと別の連中が来る可能性だってあるし」
連邦軍程の巨大な組織になれば、その戦力はかなり多い。
それこそEXAMシステムを搭載したブルーディスティニーのように、下手をすれば上の者ですら知らない間に何らかの戦力が用意されている……といった可能性は十分にある。
ある程度の地位にいる将官が、自分の手柄にする為に独自に開発をするとか。
そうして開発された戦力のお披露目の場としては、ホワイトベースは決して悪いものではない。
レビル直轄ということは、そうして開発された戦力をレビルに示す絶好の場所ともなるし、ホワイトベースには現在の連邦軍……いや、UC世界全体で見ても、腕利きのパイロットが揃っている。
そういう連中のデータを集めたり、新規開発した何らかの兵器を使ってみたり……そういう面で、ここは色々と使い勝手のいい場所なのは間違いのない事実なのだ。
「もっと別の連中ですか。……気をつけます」
「ああ、そうした方がいい。俺達がいなくなると、ホワイトベースの扱いも変わるだろうしな」
今までは、曲がりなりにもシャドウミラーを率いる俺がいたことで、連邦軍としてもホワイトベースを疎かには出来なかった。
その辺りは、マチルダがミデアで潤沢な補給物資を運んできていた事も、影響しているだろう。
だが、俺がいなくなってしまえば、レビルと敵対している派閥がいらないちょっかいを出してくる可能性は十分にある。
ホワイトベースにもその影響が出るという可能性は決して否定出来ないだろう。
少なくても、今までのように潤沢な補給物資を受け取るのは難しくなってもおかしくはない。
俺達がいなくなっても、ホワイトベースが精鋭揃いであるのは変わらないのだから、極端に冷遇されるといった事も、恐らくはないと思うが。
現在の連邦軍の最大派閥で主流派のレビル直轄部隊というのが大きい。
もしホワイトベースに意味もなく不遇の対応をしたりしようものなら、それはレビルに喧嘩を売ってると思われてもおかしくはないのだから。
とはいえ、ホワイトベースがここまでレビルと親しくなったのは、あくまでもシャドウミラーの代表たる俺が乗っていたから、というのが大きいのだろうが。
「ホワイトベースの扱いですか? ……今以上に優遇されるということはないですよね」
アムロも俺の言いたい事は分かっているのか、若干の不満を滲ませてはいるが、それ以上は何も言わない。
「まぁ、優遇される事はないけど、冷遇される事もないだろうから、その辺はあまり心配しなくてもいいと思うぞ」
取りあえずそう言っておく。
実際に今の状況を考えれば、連邦軍がホワイトベースを冷遇する理由は殆どないのだから。
ここで意味もなく――理由としては嫉妬くらいか――冷遇して、その結果としてホワイトベース隊のやる気を失せさせるといった真似をしたら、その結果は連邦軍に跳ね返ってくる。
……まぁ、俺としては連邦軍がホワイトベースを徹底的に冷遇して、その結果としてホワイトベースが連邦軍に愛想を尽かして月に亡命してくるといった流れになれば、最適だとは思うのだが。
ただ、ブライトの性格を考えればそんな事になるとは、到底思えない。
「あ、終わったみたいですね」
アムロの言葉に視線を向けると、そこでは確かに模擬戦が終了していた。
そうして出て来たのは、いつものように無表情のユウと、悔しそうにしているヤザンの姿。
ヤザンもホワイトベースに搭乗して、多くの実戦を潜り抜けてきたし、シミュレータでの模擬戦もかなりやっている。
だというのに、未だにユウに勝つ事は出来ない。
ブルーディスティニーは陸戦型ガンダムをベースにした機体だが、シミュレータではEXAMシステムは使えなくなっている。
つまり、現状でヤザンが負けているのは純粋にユウの技量の高さ故の事だ。
もっとも、陸戦型ガンダムとジムでは幾らか性能の差があるというのも、間違いのない事実なのだが。
一体ヤザンは、ユウとの模擬戦で何連敗してるのか。
正直なところ、俺もその辺は分からないが、それでもヤザンは諦めるという事を知らないかのように、ユウに模擬戦を挑んでいた。
この辺の何気に努力家……というか負けん気の強さが、ヤザンの急成長の原動力なのは間違いないよな。
そんな風にヤザンを眺めていると、不意に隣でその様子を見ていたアムロが口を開く。
「アクセルさん、模擬戦の相手をして貰えませんか?」
「……俺か? 珍しいな、アムロが俺との模擬戦を希望するなんて」
「もう、アクセルさんがホワイトベースに乗ってる時間は少ないですしね。……で、どうです?」
「構わないぞ」
オデッサに到着すればホワイトベースからはいなくなるのだから、その前にアムロが俺と訓練をしたいと希望するのであれば、それに応じるのは構わない。
「僕もこれまで随分と戦いを経験したので、そう簡単にはやられませんよ」
「そういう台詞は、1度でも俺に勝ってから言うんだな」
お互いにそう挑発し、俺達はそれぞれシミュレータに向かう。
「おい、アクセルとアムロが模擬戦やるってよ」
「マジか? うーん、これがどうなるかは微妙なところだが……アムロがどれだけ踏ん張る事が出来るかだな」
「いや、アムロも最近はかなり凄い活躍をしてるし、もしかしたら結構互角に戦えるかもよ? アクセルも、あのニーズヘッグとかいうとんでもない機体を使う訳じゃないだろうし」
そんな風に聞こえてくる声。
メカニックやパイロット、何らかの理由で偶然格納庫にいただけの面々。
様々な者達の注目が集まっている中で、俺とアムロがそれぞれシミュレータに乗り込み、模擬戦を開始する。
戦場となるのは、草原。
幾つか岩の類があるが、それ以外はかなり見晴らしのいい場所で、ここで戦うとなれば地形の利用も限られるだろう。
アムロが正々堂々と実力で俺と戦いたいと示しているのは、間違いなかった。
別にこれが最後の模擬戦という訳でもないのだろうが、それでもアムロにしてみれば、俺と戦うのを待ちかねていたという思いはあるんだろうし、そうおかしな話ではないのか?
そんな事を考えている間に、模擬戦が始まる。
お互い見えないくらい離れた場所からの戦いだけに、まずは相手を見つける必要がある。
そんな訳で、まずはガンダムの姿を探すのだが……
「っと!」
そんなピクシーの動きを牽制するように、放たれたビームライフル。
とはいえ、その一撃はこちらに命中するようなことはなく、少し離れた場所の地面を爆発させる。
どうやら、向こうの方が先にこちらを見つけたらしい。
T-LINKシステムとかがあれば、こちらが先に見つけられるといった事はなかったと思うんだが、それは今更の話だしな。
アムロにしてみれば、まずはこちらの反応を見ようと、そういう考えなのだろう。
それはいいのだが、攻撃をしてくれば当然のようにそれがどこの方向から攻撃したというのは、すぐに分かる。
だからこそ、こちらとしてもそれに対応するのは難しくはなく……俺はピクシーを真っ直ぐそちらの方に向けて走らせる。
アムロの乗ってるガンダムと違い、俺のピクシーはあくまでも近接戦闘を重視して開発された機体だ。
ビームスプレーガンや90mmサブマシンガンのおかげで、ある程度は中距離からの攻撃にも対処は出来るのだが、それでもガンダムの持っているビームライフルには負ける。
だからこそ、相手の得意な間合いではなく、こちらの得意な間合いで戦う必要があった
……もっとも、ガンダムにも近接戦闘でならビームサーベルという凶悪な武器が存在しているのだが。
「いたな」
進んだ先にガンダムが待ち構えていたのを確認し、両手にビームダガーを持つ。
本来ならビームスプレーガンや90mmサブマシンガンで相手を牽制するといった手段をとってもよかったのだが、向こうもこちらが近づいたのを見ると、ビームライフルを投げ捨て、ビームサーベルを引き抜いた。
恐らく、ビームライフルを撃っても俺の操縦するピクシーなら、あっさりと回避出来ると、そう考えての行動だったのだろう。
そんな風に思いながら、俺はピクシーを突っ込ませるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:900
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1560