ベルファスト基地ですごすようになってから、数日……その日、ホワイトベースの通路を歩いていると、何やら怪しげな行動をしているカイの姿を発見する。
もっとも、怪しげなといってもその行動はそこまで妙なものではない。
どちらかと言えば、人目を忍んでいる感じか。
「カイ?」
「っ!? ……なんだ、アクセルかよ。脅かさないでくれ」
「いや、そう言ってもな。お前は何だってそんな風に怪しげな行動をしてるんだ? それを見れば、気になって当然だろ?」
「そ、それは……その、まぁ、ちょっと色々とあるんだよ。分かるだろ? な?」
そう言ってくるカイだったが、この場合は一体どう反応すればいいのやら。
実際にカイが何を言いたいのかというのは、何となく理解出来ないでもない。
決定的な何かという訳ではなく、恐らくはそんな感じなんだろう的な意味で。
そしてカイがそのような事をする理由で思い当たるのは、1つ。
つまり……女だ。
それも、この状況でそのような態度を取るという事は、恐らくベルファストで見た、カイと一緒にいた女。
その女にでも会いに行こうとしているのだろう。
一応ホワイトベースではそういうのは自粛するようにといったような命令……とまではいかないな。
ふわっとした感じで、ブライトから頼まれている。
そんな状況であるが故に、無理に行こうとすれば行けない事もないんだろうが……
「お前の気持ちは分かる。分かるが……ベルファスト基地の中には、俺達に好意的ではない奴も多いのは分かってるだろ?」
「それは……」
ベルファスト基地の中には、ゴッグが襲ってきた戦闘で俺達に助けられた事を嬉しく思っている者もいるが、逆に面子を潰されたと、そしてホワイトベース隊がいなくても自分達でどうにか出来たと思っている者もいた。
そんな者達にしてみれば、ホワイトベース隊に好意的な感情を抱けという方が無理だろう。
とはいえ、こうして見た限りでは、俺の言葉を聞いてもカイが諦める様子はない。
そうなると……さて、どうするか。
少し考えたものの、すぐに俺は何をするかを決める。
「分かった。それでもカイが街に行きたいのなら、俺が送ってやろう」
「え?」
一瞬、俺が何を言ってるのか分からないといった様子を見せるカイ。
当然だろう。
先程までは、ホワイトベースから出ない方がいいと言っていたのに、それが突然変わったのだから。
だが、俺にしてみれば、カイに恩を売っておくというのは大きい。
アムロやユウ程のスーパーエースとでも呼ぶべき能力はないが、それでも今のカイはUC世界全体……ジオン軍を合わせても、エース級の実力を持っているのは間違いない。
そんなカイだけに、ここで恩を売ってけばジオンの独立戦争が終わった後、もしかしたら……本当にもしかしたらの話だが、月に来るという可能性も残っている。
勿論、この程度の恩で決断するとは思えないが、それでもこのように恩を重ねる事により、何かあった時には俺を頼ってくるようになるかもしれない。
カイを街中に連れていくだけで、その恩が少しでも積み重ねられるのなら、俺がそれをやらない筈がなかった。
「あ、そうだ。一応聞いておくけど、お前の今日の仕事は終わったんだよな?」
現状でMSパイロットの仕事というのは、そこまで多くはない。
ブライトに提出する書類と、ある程度の訓練くらいか。
勿論それだけではなく、他の部署の手伝いをしている者もいる。
だが、それはパイロットの仕事ではなく、あくまでも自分の意思で手伝っているといったようなものだ。
……まぁ、オデッサ作戦の最中のような時だったりすれば、また話は違うのだろうが。
今はベルファスト基地での待機中なので、そんな感じだ。
「え? ああ、勿論それは終わったけど……でも、ホワイトベースから出るって言ったって、どうやって?」
「忘れたのか? 俺には影のゲートがある。普通にホワイトベースを出るとなれば、確実に見つかるだろう。けど、魔法……影のゲートを使っての転移となれば、この世界の者にはどうしようもない」
「うわぁ……」
カイの視線に呆れの色が混ざる。
何でだ? ここは、俺を褒めたり、尊敬したり、感謝したりしてもいいと思うんだが。
そんな風に疑問を抱くが、取りあえず今はその辺りの事を考えないようにしておく。
「なら、行くぞ」
「いや、ちょっと待ってくれ。俺は誰にも知られずに街中に行けるのは助かるけど、何でアクセルはそこまでしてくれるんだ?」
その質問にどう答えるか迷う。
ここで素直に恩を売る為だと言った方がいいのか、それとも誤魔化した方がいいのか。
……取りあえず誤魔化しておくか。
「そう難しい話じゃない。俺もちょっと街中に行こうと思ってたんだよ。アイリッシュシチューってのが名物らしいんだけど、この前はゴッグの襲撃のせいで食べる事が出来なかったからな」
「ああ、アイリッシュシチューか。うん、美味いよなあれ」
「……食ったのか」
どうやら俺がまだ食っていないアイリッシュシチューを、カイは既に食っていたらしい。
何て羨ましい。
「え? ああ、羊の肉のシチューってのは、あまり食ったことがなかったけどな。俺が食ったのは美味かったぞ」
あー……カイに恩を売る為に街中に連れていこうかと思ってたんだが、何となくそんな気分ではなくなってきたな。
そんな風に思ってたのだが、まさか食い物の恨みでカイを連れていかないというのは不味いだろう。
ただ……そうだな。本来なら俺が街中に行く用事があるというのは、カイを送っていく名目だったんだが……その名目通り、アイリッシュシチューを食べるのもいいかもしれないな。
聞いた話だと、アイリッシュシチューは日本の肉じゃがとか言われていて、レシピは多種多様らしい。
だとすれば美味いアイリッシュシチューを鍋ごと購入して空間倉庫の中に入れておくというのは、ありかもれないな。
「じゃあ、行くぞ。準備はいいのか?」
「え? ああ。そりゃあいいけど……何で不機嫌なんだ?」
「特に理由はない。それよりほら、行くぞ。今なら誰にも見られてないから、俺に近づけ」
「分かった」
そう言い、カイが俺に近づいてくる。
俺の言葉を完全に信じた訳ではないのだろうが、カイも俺の魔法使いとしての腕は知っている。
そうである以上、誰にも見つからないように移動出来るのならと、そう思うのは当然だったのだろう。そして……
「うっ、うわっ、うわぁああっ! ちょっ、おいアクセル!? これ、いいのか本当に?」
影のゲートに沈んでいく感触に、カイの口から悲鳴が上がる。
この影のゲート、慣れれば影に沈む感触は全く問題ないんだが、それでもやっぱり最初はこの感触に驚く者が多い。
とはいえ、カイの驚きようは少し予想外だったが。
「大丈夫だって。この感触は何も問題ない。……ほら」
影のゲートに完全に沈んだ次の瞬間、俺とカイはベルファストの街中に姿を現していた。
「え? 嘘だろ……?」
「本当だ。これは別に幻とかそういうのじゃないぞ」
幻影系の魔法を使えばこういう真似も出来るかもしれないが、生憎と俺にそっち関係の才能はない。
スキルとして習得すればどうにかなったかもしれないが……今はスキル欄も満杯だしな。
「ともあれ、これで街中には来た。俺はこれからアイリッシュシチューを食べに行くけど、カイはどうする?」
「え? ……あ、悪い、俺は行く場所があるんだった。それで、帰りはどうすればいい?」
「そうだな、カイはどれくらいの時間が掛かりそうだ? 俺はアイリッシュシチューを始めとして、各種名物料理を食うだけだから、そっちに合わせるけど」
その言葉に、安堵した様子を見せるカイ。
俺の力でここまで移動してきたけど、この状況からどうやって帰ればいいのかは分からなかったらしい。
……まぁ、普通はそうか。
「えっと、そうだな。なら2時間。2時間くらいでここに戻ってくるから、それでいいか?」
「へぇ、2時間……ね」
カイの口にした2時間という言葉に、俺は意味ありげな笑みを浮かべる。
そんな俺の笑みの理由が分からなかったのか、カイは疑問の視線をこちらに向けてきた。
「何だよ、2時間がどうかしたのか?」
「いや、2時間だと……ご休憩としてはちょうどいい時間だと思ってな」
「ご休憩? お前一体何を……っ!? ば、馬鹿! いきなり何を言ってるんだ!」
カイにも俺の言っているご休憩の意味が分かったのか、慌てたようにそう言ってきた。
ご休憩……ラブホテルや、ファッションホテル、アミューズメントホテル等、色々と言い方はあるが、いわゆるそういう行為を行う為の施設での2時間使う時の名目だ。
今更だが、ご休憩の意味を理解したという事は、この世界にもそういう施設は普通にあるんだな。
「ん? 違うのか? 2時間って言うから、俺はてっきり……」
「違う! あまり長時間ホワイトベースを留守にしていれば、他の連中に怪しまれるからだよ!」
「ふーん。……まぁ、取りあえずそういう事にしておくか」
「しておくかじゃねーっての……ったく。とにかく、いいか。2時間後にここで待っててくれよ。じゃあな!」
そう言い捨て、カイは走り去る。
少しからかいすぎたか? ……ともあれ、どうやらカイは、まだあの時にナンパした女と一線を越えてはいないらしい。
ああ、でもそれも当然か。
考えてみれば、カイがナンパしたあの日のうちにゴッグが攻めて来て、その結果として俺達もすぐにホワイトベースに戻ったんだ。
カイも当然俺と一緒の行動を取っている筈であり、ナンパした日からその女とは会っていないと考えるべきだろう。
まぁ、そんな短時間でも女の扱いに慣れていれば、そういう関係になれた可能性もあるが……カイの場合は斜に構えているところはあっても、女に慣れている訳ではない。
ホワイトベースでは色々と言い寄ってはいたが……うん。まぁ、全滅してたし。
その辺の事情を考えれば、ある意味でそれは納得の結果なのかもしれないな。
ともあれ立ち去ったカイの後ろ姿を見送ると、俺は以前ミナトと一緒に行った化粧品店で聞いたレストランに向かう。
ミナトや綾子のような恋人と一緒に食べるのもいいし、友人と一緒に食べるのもいい。
けど、たまにはこうして1人で食べるというのも、悪くはない……と、そう思う。
いつも1人で食べるというのは、どこか味気ないものがあるのは間違いないが。
ともあれ、そんな訳で以前教えて貰ったレストランを探し……それなりに賑わっている店の為か、すぐに見つける事が出来た。
ただ、どうにも客層の殆どがカップルだというのは……あ、そうか。化粧品店で聞いた時は、俺もミナトと一緒だったしな。
だからこそ、カップルが多いこの店を紹介したのだろう。
それに、カップルが多いとはいえ、客の全てがカップルという訳ではない。
1人で食事をしている者も何人かいる。
そういう意味では、別に俺がここで食べても問題はないのか。
……まぁ、確かに間接照明とかが使われていて、雰囲気のいい店だしな。
それを考えれば、ここがそのような店と認識されるのも、おかしな話ではない。
「いらっしゃいませ」
店の中に入ると、早速店員によって席に案内され、メニューを渡される。
結構メニューも豊富だな。
ジオンと連邦で大規模な戦争が行われているのに、それでもこれだけのメニューを用意出来ているのは、素直に凄いと思う。
その辺もこの店の経営努力とか、そんな関係からなんだろうけど。
色々と気になるメニューはあるが、俺がこの店にやって来たのは、あくまでもアイリッシュシチューを目当てにしてだ。してなのだが……アイリッシュシチューだけでも4種類もあった。
山羊の肉、羊の中でも若いラム、大人のマトン、そして牛肉。
アイリッシュシチューは、日本でいう肉じゃがのような料理で様々な味があるって話だったし、それを考えればそこまで不思議でもないのか?
ともあれ、折角なので4種類のアイリッシュシチューを全部注文する。
「え? その……大丈夫ですか? 1食ずつでもそれなりに量がありますけど」
「構わない。俺はこう見えても大食いでな。その辺は気にしなくてもいいから、どんどん持ってきてくれ。ここのアイリッシュシチューは美味いって聞いて、楽しみにしてたんだ」
「はぁ、では……」
少し戸惑いながらも、店員は厨房に向かう。
10代半ばの今の俺の姿を見れば、アイリッシュシチューを4人前も食べられるようには見えなかったのだろう。
あ、でも今の俺くらいの年齢は食べ盛りだったりする筈だから、そのくらいは食べてもおかしくはないような……
ともあれ、注文は受けて貰えたし俺も残すつもりはない。
全てを美味く平らげてから、カイとの待ち合わせの時間まで色々と食い歩きをして名物料理を色々と食べる事にしよう。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:905
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1561