ヴィー、ヴィー、ヴィー。
そんな音がホワイトベースの中に響く。
それがどのような意味を持つ音なのかは、それこそ考えるまでもなく明らかだ。
今まで何度となくその音を聞いていてきたのだから。
だが……その音に驚いたのは、ジオン軍の襲撃がまたあったから、というのが大きい。
現在ホワイトベースがいるベルファストでは、ホワイトベースが入港した数日前にジオン軍の襲撃があった。
2機のゴッグが攻めてきて、そのうちの1機を撃破――正確には爆散――することに成功し、残り1機は逃がしたのだが……まさか、ここでまたジオン軍が攻めてくるというのは、完全に予想外だった。
そもそもの話、ホワイトベースの戦力が殆ど出ていない状況にも関わらず、ジオン軍は撃退されたのだ。
なのに、何故またここで襲撃をしてくる?
そんな疑問を抱くのは当然だろう。
あ、でもこうしてまた襲撃があったという事は、今度はホワイトベース隊ではなく、ベルファスト基地の方から戦力が出るのか?
オデッサ基地に行っていた戦力も、そろそろ戻ってきている筈だし。
その辺の事情を考えれば、やはり今回の一件は俺達ではなく、ベルファスト基地の戦力を目当てにして襲ってきた……という可能性は十分にあった。
その辺りの理由はどうであれ、ジオン軍が襲撃してきたとなれば、こちらも相応に対処する必要がある。
まずは格納庫に向かう。
途中で何人かと会うが、その顔にあるのはまたかといったような色だ。
……その気持ちも分からなくはない。
同時に、ゴッグだと嫌だなといった表情を浮かべている者もいる。
何日か前にシミュレータで戦ったゴッグの件が影響してるのだろう。
ガンキャノンの装甲だろうと容易く斬り裂くアイアンネイルを持ち、胴体のメガ粒子砲からはアプサラスⅢの拡散メガ粒子砲のような細長いビームを撃ち、更には運動性とかも本物より圧倒的に素早いという……うん、あれってまさにゴッグの皮を被った別の何かだよな。
俺がそのゴッグと戦ったら処理落ちしてシミュレータが強制終了してしまったが、俺以外の面々はそこまでの事態にはならなかった。
綾子辺りは危ないと判断してか、結構気を遣って操縦していたみたいだが。
ともあれ、そんな訳でホワイトベースのMS隊の中の何人かには、ゴッグに対して苦手意識を持っている者もいる。
勿論、あのゴッグはメカニックの方で設定を失敗した結果だというのは分かっている。
分かっているのだが……それでもやはり、ゴッグの姿をしているというだけで、色々と思うところがあるのだろう。
「機体の状況は?」
「万全です。最高の状態にしてますよ」
ピクシーの担当をしているメカニックが、満面の笑みを浮かべてそう告げてきた。
どうやら、本当に問題はないらしい。
まぁ、前回のゴッグとの戦いではピクシーは出撃しなかったし、ベルファスト基地で十分に補給物資は受け取ったので、ピクシーを最善の状態にしておくのはメカニックにとって当然だったのかもしれないが。
メカニックに感謝の言葉を口にし、ピクシーのコックピットに乗り込む。
「ブリッジ、状況を」
ブリッジに通信を送ったのか、表示されたのはモーリン……ではなく、ブライト。
そのブライトも、どこか戸惑ったような視線をこちらに向けている。
何かあったのか? 深刻そうな表情ではないのを考えると、何か問題があった様子ではないのだが。
『アクセル、今はまだ出撃しなくてもいい。現在ベルファスト基地の戦力が敵に対応している』
「なるほど。汚名返上ってところか。……汚名挽回って事にならないといいけどな」
『どうだろうな』
いつもと違うブライトの様子。
ただ、そこにあるのは戸惑いの色だ。
こうして見た限りでは、間違いなく何らかの問題があったように思えるのだが……
「何があった?」
『ジオン軍が攻めて来たのは間違いない。だが、海にいたままで、そこから上がってくる様子がない』
「……なるほど」
ゴッグは水陸両用MSだから、海水を防壁代わりに使う事も出来る。
実際に前回ガンダムと戦った時は、そのようにしていたし。
「そうなると、海中から上半身を出してメガ粒子砲を撃ってくるとか、そんな感じか?」
『いや、違う』
「……違う?」
海水を防壁代わりにしている以上、遠距離から攻撃しているのかと思ったが。
いや、待て。確かゴッグにはメガ粒子砲以外にも……
「魚雷か?」
『最初に何発か撃ったようだが、今はもう撃ってこないな。ただ、こちらを……正確にはベルファスト基地の戦力を挑発するように、海の中を泳ぎ続けているらしい』
「は? また、随分と妙な真似をするな」
一体何故そのような真似をするのか。
そう考えて、最初に思い浮かんだのはガンダムを誘き寄せるのが目的なのではないかという事だった。
前回の戦いで、アムロのガンダムはゴッグ2機と互角に渡り合った。……最後は俺がちょっかいを出したが。
ともあれ、ジオン軍にとってガンダムは許容出来ない存在だろう。
だからこそ、ガンダムを誘き寄せて撃破しようと考えてもおかしくはなかった。
とはいえ……この状況でガンダムが出て行くと思ってるのか?
『うむ。こちらでもそう思っている。正直なところ、向こうが何を思ってこのような真似をしているのかが分からん』
ブライトも、どうやら悩んでいるらしい。
「それで、ベルファスト基地の部隊は?」
『現在展開中だ。もっとも、MSよりも61式戦車の方が多いがな』
「あー……なるほど」
敵が何機いるのかは分からないが、海水を防壁としている以上、その相手に攻撃をするのなら、61式戦車の砲弾が効果的だと判断した為だろう。
その判断は間違っていない……か?
ジムが使っているマシンガンはともかく、バズーカの類は水中にいる相手にも結構有効そうな気がするんだが。
もしくは、戦力が戻ってきてもMSの数は足りないとか。
実際、オデッサでもジムはそれなりにいたが、あくまでもそれなりだ。
全体で見れば、やはり61式戦車とか、普通の兵器の方が多かった。
『それで、だ。……ベルファスト基地の方から、ジオン軍がどういうつもりでこのような真似をしてるのかといった風に聞かれたのだが……どう思う?』
「どう思うって言われてもな。それを判断するのは、普通基地の上層部じゃないのか?」
参謀とかそういう連中がいるんだから、その辺について考えてもおかしくはない。
だというのに、何故それをブライトに聞いてくるのか。
ブライトは臨時の昇進で中尉になったとはいえ、士官学校の生徒でしかない。
そのような状況でブライトに聞いてきても……考えられるとすれば、ブライトの実戦経験に期待してか?
実際、ブライトはホワイトベースの艦長として、サイド7からここまで幾つもの戦いを潜り抜けてきた。
そんな状況だからこそ、ブライトの経験に期待をしてもおかしくはない。
『向こうも向こうで、色々とあるんだろう。……ともあれ、一番に思いつくのは、やはりガンダムを誘き寄せる事だが……』
「それは難しい、か」
港の側の海ならまだしも、聞いた話では港から結構離れた場所にゴッグはいるらしい。
そのような場所にいる以上、もしガンダムを出撃させたとしても、そちらに行くか? と言われれば、首を傾げざるを得ない。
ブライトも俺の意見に賛成なのか、頷きを返す。
『そうなる。……結局のところ、他に思いつく意図となれば港の方に軍を集中させて、それを陽動として何らかの行動をするというくらいだが……ベルファスト基地の方でもその辺を調べて貰ったが、今のところその手の動きはないらしい』
陽動にしか見えない行動を取っているのに、陽動ではない?
だとすると、一体何が目的だ?
「もしかして、新兵を実戦に慣れされる為とか?」
ふと思いついたのがそれだったが、実際にそう間違っているようには思えない。
例えMSの操縦訓練をしていても、新兵というのはいざ実戦に出るとなると、どうしても緊張して……もしくは実戦の雰囲気に呑まれて実力を発揮出来ない。
そういう意味では、ゴッグを使って基地からある程度離れた場所で自由に行動をさせるというのは、そう悪くない選択のように思える。
ゴッグは厚い装甲と海水という防壁を持っており、連邦軍の攻撃で撃破されるということは、そうそうない。
前回のように港に上陸してくるようなことでもあれば、あるいは撃破される可能性もあるのだろうが……港から距離を取っているだけに、その安全度は前回のように港で戦うよりも更に上となる。
つまり、一定の安全を確保した上で戦いの経験を積むという点では、今回の一件はある意味最善の結果なのだ。
『新兵を? ……なるほど、その可能性はあるか。だが、新兵の為にそこまでやるか?』
「やるだろ。ジオン軍にとって新兵に経験を積ませるという意味ではそんなに悪い選択肢ではない。特にジオン軍は元々人的資源が少ない。その少ない人的資源を有効に使う為に新兵を使おうとするのは当然だと思うぞ」
『うーむ……それは、だが……』
「ともあれ、ジオン軍がいるのなら出撃した方がいいのか? 今はベルファスト基地の方で対処してるようだけど。……まぁ、敵が海の中にいる以上、俺達もあまり有効な戦力とはならないけど」
水陸両用MSの件は、やはりジオン軍の方が圧倒的に有利だよな。
まぁ、ジオン軍は数年前からMSを開発してきただろうし、地球を攻撃する上で地球で最も広い海を攻略するという意味でも、前々から水陸両用MSを開発が可能だったのは痛い。
それに比べて、連邦軍はジオン軍がザクを運用しているのを見てから、そこでようやく自分達でもMSを開発したのだ。
国力がジオンの10倍とも30倍とも言われてる連邦がリソースを大量にMS開発に注ぎ込んでも、それだけで全てが解決出来る訳ではない。
……もっとも、このまま戦争が数年に渡って続くような事があれば、連邦軍の方でも水陸両用MS……もしくは水中用MSを開発して、ジオン軍を追い抜くといった事は可能かもしれないが。
だが、それはあくまでも未来の、将来の話だ。
現在進行形でベルファスト基地が襲われている現状では、それこそどうする事も出来ない。
『そうなると、やはりこちらとしては見ているしか出来ないのか?』
「どうだろうな。これが新兵の訓練かもしれないというのは、あくまでも俺がそう思っているだけであって、何か決定的な証拠の類がある訳でもない。そうなると、もしかしたら本当にこれが陽動の可能性もあるから、背後を警戒した方がいいと思う」
ジオン軍が何かを企んでいないという可能性は否定出来ない以上、それを警戒しないという選択肢は存在しない。
現在の状況で向こうが何を考えているのか分からないというのは痛いが……こういう時、空を飛ぶ機能のある機体があればいいんだけどな。
『お……これは……』
不意にブライトが少し驚いた様子を見せて呟く。
一体何があった?
そんな疑問を抱いて視線で説明を求めると、ブライトは少し安堵した様子で口を開く。
『ドン・エスカルゴ部隊が出撃した』
「ドン・エスカルゴ? ……ああ」
ホワイトベースに来てから色々と連邦軍の兵器についても調べたのだが、ドン・エスカルゴという機体もその中にあった。
そんな中でも、ドン・エスカルゴというのは対潜攻撃機という分類に入る機体だ。
ジオン軍が大きくリードしている海での戦いで、連邦軍が有利になる、数少ない戦い。
実際にドン・エスカルゴでジオン軍の潜水艦は結構な被害を受けているらしい。
その辺の事情を思えば、ゴッグが1機だけしか出撃していない現状で、ベルファスト基地の上層部が出撃させるというのはよく分かる。
とはいえ……当然のように、問題もない訳ではない。
「ここ、ドン・エスカルゴが配備されてたんだな」
『どうやらそのようらしい。いわゆる、虎の子だな』
ブライトがそう答えたのを見れば分かる通り、ドン・エスカルゴがジオン軍の潜水艦部隊に対して有効な戦力である以上、当然のように海沿いにある基地……いや、海からある程度離れている場所にある基地でも、ドン・エスカルゴを欲するのは当然だった。
多くの基地からドン・エスカルゴの配備を希望されれば、連邦軍としてもその対応に四苦八苦する。
ただえさえジオン軍の攻撃によって連邦軍は大きなダメージを受けていたのだから、ドン・エスカルゴを好き放題に量産出来る訳がない。
結果として、海沿いにある基地はドン・エスカルゴを欲するが、その需要に供給がおいついていないといった状況になっていたのだ。
だからこそ、このベルファスト基地でもドン・エスカルゴは貴重な機体の筈であり、その虎の子を出撃させたのは、それだけゴッグの存在に苛立ちを覚えていたのだろう。
後はドン・エスカルゴが撃墜されないといいんだがな。
幾らジオン軍の潜水艦部隊に大きなダメージを与えるとはいえ、ドン・エスカルゴも結局のところ対潜攻撃機であるのに違いはない。
機体の防御力は決して高くはない以上、ゴッグに撃墜されないように、祈るだけだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:905
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1561