イフリートの反応は、さすがに早い。
ビームが放たれたと思った次の瞬間には既にイフリートはその場から退避しており、他の部下達……ザクが殆どだったが、そのザクの何機かに地面に着弾した爆発で軽い被害を与えたくらいだ。
イフリートの常識外れの反応に驚きつつも、以前よりも腕が上がっているのは納得出来る。
北米で遭遇してから、相応の時間が経っているのだ。
ホワイトベース隊のMSパイロットが操縦技術を上げたのだから、ジオン軍のMSパイロットが腕を上げてもおかしくはない。
ましてや、相手は元からイフリートを操縦し、使いこなすだけの実力の持ち主だ。
その辺の事情を考えれば、この反応は当然といったところか。
「ユーグ! こっちから牽制するから、そっちも射撃を中心に頼む! いいか、敵のザクじゃないMSは近接戦闘向けの機体だ。向こうの得意な距離で戦おうなんて事は考えるなよ!」
ユーグに通信を送りながらも、ミサイルを一斉発射する。
ユーグが希有な指揮能力を持っているとすれば、その判断力の高さもあるだろう。
もしその辺りに幾らでもいるような指揮官だった場合、俺が咄嗟に出した指示を素直に聞くといった事はない。
どう反応すればいいのか迷い……場合によっては、何故自分がわざわざ俺の指示を聞かなければならないのかといったように、不満すら露わにするだろう。
そうなれば、結局判断が遅れて味方に被害を出してもおかしくはない。
だが、ユーグは俺の言葉に素直に従い、即座に部下に指示を出す。
ユーグの部隊にジムキャノンがそれなりにいた、というのもこの場合は大きいのだろう。
また、ジムもマシンガンを使って攻撃を行っていた。
中にはバズーカを持っているジムもいる。
基本的にバズーカというのは、MSや戦闘機、戦車といった敵を攻撃するのではなく、敵の要塞や軍艦といった巨大な相手を攻撃する武器だ。
……まぁ、ジオン軍にしてみれば、ルナ・チタニウム製の装甲を持つガンダム系のMSとかにダメージを与えられる数少ない武器として使っている者も多かったが。
ともあれ、そのような武器である以上、砲弾の速度は遅いが破壊力という点では間違いなく一級品だ。
ましてや、四方八方から攻撃をされている現状においては、回避をするような余裕が敵にはなく……
「お」
ユーグの部下のジムがザクを撃破したのを見て、思わず声を出す。
結構腕のいい連中が揃ってるな。
そんな風に思っていると、とうとうイフリートが回避の限界に達したのか、こちらが撃ったミサイルに命中する。
とはいえ、ミサイルの威力そのものはそこまで大きなものではない。
結果として、ミサイルの威力によって敵はダメージを受けはしたが、それで撃破出来たという訳ではない。
ないのだが……ユーグの部下にしてみれば、それこそミサイルが命中した事で、敵にとっては致命的な隙だと思ったのだろう。
ジムの1機が、ビームサーベルを構えたまま敵に突っ込んでいく。
当然の話だが、味方が敵に向かって突っ込んでいったとなればこちらも十分な攻撃は出来ない。
下手にここで攻撃をした場合、ジムに命中して被害を……場合によっては撃破してしまう可能性もあるのだから。
『な……アクセル、どうする!?』
ジムが敵に突っ込んだのを見てエイガーが驚き、半ば苛立ちを露わにして叫ぶ。
まぁ、当然だろう。
ミサイルというそこそこの威力の武器を持っているフルアーマーガンダム7号機と違って、マドロックが持つ武器は低反動キャノンとビームライフルだ。
グレネードランチャーもあるが、結構な威力だしな。
だからこそ、このような場所で下手に味方が攻撃している場所に突入するなどといった真似をされた場合、マドロックは迂闊に攻撃出来ない。
「ユーグ!」
『……すまない。レドリットはうちの部隊に配属されてから、まだ日が経っていないんだ』
俺の通信に、ユーグが即座にそう答える。
……答えながらも、ユーグの操縦するジムはレドリットと呼ばれた、手柄を求めて暴走したジムを追っている。
そんなユーグの態度に思うところがない訳ではないが、連邦軍でMSの運用を始めてから、まだそこまで時間は経っていない。
そうなれば、どうしても戸惑う事も出て来てしまうのだろう。
ジャブローで訓練をしているような奴は、技術的な意味でエリートという認識だったが……いや、だからこそエリートの自分なら出来ると、そう思ってしまったのか?
「貸しだぞ。……エイガー、あの馬鹿を援護してやれ!」
『了解』
ユーグと俺の通信を聞いていたのか、エイガーは若干不満そうな様子を見せながらも、素直にこちらの指示に従う。
さて、そうなると……ユーグの技量の全てを知ってる訳ではないが、それでもあのイフリートを相手にした場合、1対1、それも部下のジムを庇いながらとなると決して容易い相手ではない。
となると、現在の俺が出来る事は……突っ込むしかない、か。
結局あのイフリートと戦う上で重要なのは、MSの性能もあるが、技量という点が大きい。
で、この場にいる者で誰の技量が高いかと言えば……やはり、それは俺だろう。
イフリートとフルアーマーガンダム7号機の相性は決してよくない以上、出来ればここで戦いたくはなかったんだが。
ただ、今の状況を考えるとそんな訳にもいかず……スラスターを最大限に噴射しながら、ビームサーベルとヒートサーベルで斬り合っているイフリートとジムのいる場所に向かう。
俺が行くと決めてから、実際に行動に移すまでは数秒。
その数秒の間に、既にユーグのジムは装甲に幾つかの斬り傷を負わされていた。
これはMSの性能差というよりも、純粋に操縦技術の差だろう。
ユーグも相応に技量は高いが、ウルフ・ガー隊のヘンリーはそれ以上に高い技量を持っている。
ただ、それだけだ。
それだけのことなのだが、それこそが今のこの状況で致命的なまでに大きい。
特に部下のジム……いつの間に被弾したのかは分からなかったが、右足が破壊されているジムを庇っての戦いとなれば、その技量差以上に戦いの難易度は高くなる。
「ユーグ、一旦退け!」
通信を入れながら、俺はビームライフルと2連装ビームスプレーガンを発射しながら間合いを詰めつつ、間合いが近付いたところで2連装ビームスプレーガンを使うのを止め、そちらの手でビームサーベルを引き抜き、イフリートに向かって斬りかかる。
ビームの攻撃によって若干戸惑った様子を見せたイフリートだったが、それでもヒートサーベルを使ってビームサーベルの一撃を防いだのは、ヘンリーの技量の高さを示していた。
とはいえ……イフリートとフルアーマーガンダム7号機となれば、重量の差はかなり大きい。
その上で、こちらの攻撃はスラスターを全開にした状態の勢いも加わっている。
結果として、イフリートはフルアーマーガンダム7号機の攻撃を受け止める事は出来たものの、勢いと重量に負けて吹き飛ばされた。
そんなイフリートを追いかけながら、ユーグに通信を送る。
「ユーグ、ここは俺に任せて、とっととその馬鹿を連れて退け!」
叫びつつ、もしかしてこれってフラグじゃ? と一瞬思わないでもなかったが、今はそんな事を考えるよりもイフリートの方をどうにかするのが先だった。
イフリート以外のMSは、エイガーとユーグの部下達によって攻撃が集中されている為か、こちらに助けに来るような事は出来ない。
つまり、今はこのイフリートをどうにかすればいいのだ。
そうだな、ヘンリーの意識をこちらに集中させればいいのなら……
意図的に相手にヒートサーベルで防がせるように振るわれた、ビームサーベルの一撃。
俺の予想通り、向こうはビームサーベルをヒートサーベルで受け止める。
「久しぶりだな。ヘンリーだったか? 相変わらずイフリートに乗ってるようで何よりだ」
『何!?』
接触回線を使い、ヘンリーに俺の存在を意識させる。
ある意味では自爆に等しい……とまではいかないが、ともあれ向こうを挑発するという意味では間違いなく有効な筈だった。
事実、ビームサーベルを受け止めているヒートサーベルがビームサーベルを押しのけようと、イフリートは頑張る。
「忘れたのか? 以前俺と戦った時があっただろう?」
『誰だ、貴様!』
叫ぶヘンリー。
これは本当に俺の事を覚えていないのか、それとも乗っているMSが違うからこそ、分からないのか。
「北米で会った筈だ。外見は違うが、ガンダムに乗ってるんだから、分かるだろう?」
『っ!?』
その一言が切っ掛けだったのだろう。
ヘンリーはそこでようやく俺の正体に気が付き、ビームサーベルを受け流した後でヒートサーベルをこちらに振るってくるが……甘い。
スラスターでその動きを回避しながら、頭部バルカンを撃つ。
威力そのものはそこまで強くはないのだが、それでも目眩ましとして使うには十分。
実際、イフリートもこちらに対しての一撃が鈍る。
その隙を突くかのように、ビームサーベルを持った腕を向け……突きを放ちながら、腕に装備されている2連装ビームスプレーガンを発射する。
ビームスプレーガンは拡散ビームである以上、距離を取ればその威力は加速度的に落ちていく。
だが、ビームサーベルやヒートサーベルで斬り合うこの間合いであれば、その威力は十分な程に強力だった。
イフリートはコックピットだけはどうにか守ったものの、機体のあらゆる場所をビームに貫かれる。
特に酷いダメージを受けたのは、足だ。
高い機動性と運動性を持つイフリートの中で、もっとも重要な場所たる足。
そのダメージを理解したのか、イフリートは一度こちらから距離を取ろうとする。
判断力が高い。
普通なら、近接攻撃が主体のイフリートを使っている以上、射撃武器が豊富にあるフルアーマーガンダム7号機との距離は出来るだけ開けたくないだろう。
足にダメージがあっても、一か八かといった感じで攻撃を仕掛けてきてもおかしくはない。
だが、ヘンリーは今の状況で攻撃を仕掛けてもこちらに通じないということを悟っているのか、間合いを詰めるのではなくこちらから離れたのだ。
……勿論、こちらから距離を取れば、射撃武器で狙われるだろうが、フルアーマーガンダム7号機と近距離で戦うのに比べれば、まだ勝算があると考えたのだろう。
「とはいえ、手は抜かないけどな!」
その言葉と共に、距離をとったイフリートに向けて2連装ビームスプレーガンを発射する。
放たれた拡散ビームはイフリートの装甲を削るだけの威力は十分に発揮したのだが、それでも大きな被害を与えるようなことは出来ない。
ヘンリーの操縦術の高さが際立っている証だろう。
ただし……こちらとしては、イフリートをここから逃がすつもりはなかった。
ヘンリーのような高い技量を持ち、それでいてイフリートという、地上では高い性能を発揮するMSの組み合わせは、脅威でしかない。
だからこそ、可能であれば今のうちに倒しておきたいのだ。
「ユーグ、こっちに攻撃が命中してもいいから、攻撃しろ!」
ガンダム7号機からフルアーマーガンダム7号機になるのに装備する、ファーストアーマー。
このファーストアーマーも、ルナ・チタニウム製だ。
つまり、ビーム兵器の類はともかく、実弾であればほぼ無効化する事が出来る。
……もっとも、ジムキャノンが装備している低反動砲の類が直撃すれば、その被害は結構大きなものになりそうだったが。
それでも、ここでヘンリーを逃すという選択肢よりは、危険を承知の上で倒す方がいい。
そんな俺の指示に、ユーグは素早く従う。
一切の躊躇なく、低反動キャノンや100mmマシンガン、ジムライフル等々、様々な攻撃が撃ち込まれる。
それでもユーグの部下らしく、攻撃の殆どはイフリートに集中していた。
流れ弾らしきものが何発か当たってるとシステムは判断してるが、取りあえずそれは無視しておく。
まさか、この状況で意図的にシステムを弄って遊軍に攻撃出来るようにして、俺に攻撃している……なんて真似はしないだろうし。
していればしていたで、後でメカニックとかが整備をしている時に判明して、それが最悪の結果をもたらすことになりかねない。
ともあれ、敵のイフリートは撤退しようとしているのだが、逃がす訳にはいかない。
幸いにして、イフリートと一緒に行動していたザクはその大半がマドロックによって撃破されるか、無力化されている。
そんな状況である以上、ここでイフリートを逃がせば、それこそ復讐をする為に襲い掛かってきかねない。
そんな訳で、俺はスラスターを全開にし……
「加速」
精神コマンドの加速を使い、今まで以上の速度でイフリートとの間にあった間合いを縮める。
ヘンリーにしてみても、まさかここで俺に追いつかれるとは思っていなかったのだろう。
驚きつつ……それでも、反射的にヒートサーベルを振り下ろしてくる辺り、さすがと言ってもいい。
そんな一撃をビームサーベルで受け止め……間近でビームライフルの銃口をコックピットに向け、トリガーを引くのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1025
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1584