奇跡の子供達の一件については、荒野の迅雷に次ぐ……いや、同等の重要事項という事になった。
ただし、それくらい重要なのであれば誰を派遣するのかというのが問題になる。
勿論、このハワイには相応に戦力が揃っている。揃っているのだが……問題なのは、派遣出来る数はどうしても少数になるという事だ。
ただでさえ荒野の迅雷やその仲間達を連れてくることになっている以上、多数を派遣する事は出来ない。
また、俺が欲しいのはあくまでも奇跡の子供達3人だが、その奇跡の子供達の家族や……場合によっては友人とかそういう連中もこちらに来たいと、そう思う可能性は十分にあった
そうなると、こちらとしても人数をあまり派遣出来ない。
つまり、少数精鋭を派遣するという事になる。
ゲラートの部下の闇夜のフェンリル隊は荒野の迅雷の方に回す必要があるので、それ以外で精鋭を用意する必要があった。
「そんな訳で、協力して欲しい」
俺の言葉に、目の前にいる面々……ギニアス、ノリス、ガトー、アイナの4人がそれぞれの反応をする。
ノリスとガトーはそれが命令なら従うといった様子を見せており、ギニアスはあまり気が進まないといった様子。そんな中でアイナはその優しい性格からか、真っ先に賛成に言葉を上げる。
「私が行きます」
「あー……うん。ただ、それはそれでちょっと困るんだよな。まさか、オーストラリアに行くのにアプサラスⅢを持っていく訳にもいかないし」
アプサラスⅢは、ルナ・ジオンの象徴……というのはちょっと違うが、それでもルナ・ジオンのMAであると、強烈に印象づけられている。
東南アジア戦線の戦い、そしてオデッサ作戦。
その双方でアプサラスⅢ――東南アジア戦線の場合はアプサラスⅡだったが――が見せた衝撃は、かなり強い。
それこそアプサラスⅢを見れば、それがルナ・ジオンの機体であると認識出来るくらいには。
また、アプサラスⅢのMAとしてかなりの大きさを持つ。
それこそ、隠れるのが基本的には不可能であるというくらいに。
そうである以上、アプサラスⅢがオーストラリアに行くというのは、今回の件にルナ・ジオンが……ハワイが関係しているという事を如実に示してしまう。
今回の一件は可能な限り連邦軍には隠密に動きたいし、もし万が一見つかったとしても、それはルナ・ジオンではなく、ジオン軍であると認識させたい。
そういう意味でも、出来ればアイナには今回の一件には関わって欲しくなかったのだが……
「アクセル代表。私、別にMAしか操縦出来ないという訳ではありませんよ」
そう、アイナが俺に向かって言ってくる。
その表情にあるのは、冗談でも何でもなく、真剣な色だ。
本当か? と視線をノリスとガトーの2人に向けてみる。
俺の視線の意味を理解したのか、ガトーが口を開く。
「アイナの言ってる事は真実です。エース級……とまではいきませんが、ベテラン程度の実力は持っているかと」
その言葉に、話を聞いていたノリスも頷く。
この2人がそう言うのであれば、それは決して嘘という訳ではないだろう。
ノリスは娘代わりとして、ガトーは恋人としてアイナと接する事が多かったが、この2人は私情で判断を曇らせたりといった事はしない。
それこそ、もしアイナがMSの操縦を苦手としてるのなら、そういう風にはっきりと言うだろう。
この2人に及ぶとまではいかずとも、それでも十分一人前と呼ぶ事が出来るだけの技量を持っているのは間違いない。
となると、残る問題は……
「アイナを借りて構わないか?」
アイナの兄にして上司でもある、ギニアス次第となる。
ぶっちゃけた話、純粋にMSのパイロットとしてという訳ではなく、折衝役という意味ではアイナは是非欲しかったりする。
ノリスとガトーは、共に強面と呼ぶに相応しい。
ガトーはノリスに比べれば幾らかマシなのは間違いないのだが、それでも軍人……もしくは武人といった雰囲気を強く醸し出していた。
大人ならともかく、今回確保して欲しい奇跡の子供達にしてみれば、ノリスもガトーも受ける印象はそう違わないだろう。
そんな2人に比べると、アイナは優しい雰囲気を持っている。
……以前シローに会った時の態度は置いておくとして。
そんな訳で、今回の一件においてはアイナが来てくれるのであれば大きい。
「正直、迷いますね。アイナはアプサラス計画においては重要な人物です。特にアプサラスをⅠ、Ⅱ、Ⅲと操縦してきた経験を持つという時点で、出来ればそのような危険な真似はさせたくありません」
「お兄様……」
少しだけ責めるような視線をギニアスに向けるアイナ。
アイナの性格を思えば、その辺は理解出来ないでもない。
ただ、それよりも前に俺はギニアスに話を聞くべき事があった。
「ちょっと待った。アプサラス計画において重要な人物って……アプサラスはⅢで完成じゃなかったのか? 以前提出された資料によれば、アプサラスはⅢで完成だと、そう書いてあったように思うが?」
そう。俺が以前聞いた話によると、確かそうなっていた筈だ。
だというのに、ギニアスの今の説明を聞く限りでは、まだこの先が……アプサラスⅣがあるとでも言いたげな様子だ。
「はい。現状ではまだ構想中ですが、アプサラスⅢまでの運用で色々と問題になったところを改修した、新しいアプサラスを考えています。特に宇宙でも使えるようにする為には、色々と新しい技術の開発も必要ですし」
「……なるほど」
実際、アプサラスⅢは凶悪なまでの攻撃力を持ってはいるが、決して最強無敵の兵器といった訳ではない。
特に大きい問題なのは、やはりその防御力だろう。
ルナ・チタニウム製の装甲を採用したので、Ⅱまでと比べればⅢは非常に高い防御力を持っている。
だが、それはあくまでも実弾に対しての話であり、ビーム兵器には意味がない。
ビーム兵器が主体となるだろう将来を思えば、アプサラスは攻撃力は高くても、防御力という点で致命的なまでに劣っている。
また、基本的に武器が集束メガ粒子砲と拡散メガ粒子砲しかないというのも痛い。
これはつまり、MSに接近された時に何も対処出来ないということを意味しているのだから。
一応、それを防ぐ意味もあってグフ・フライトタイプのような飛行可能なMSを護衛としてつけているが、それも絶対とは言えない。
可能であれば、的にならない為に可能な限り小型化し、ビーム兵器に対抗する何らかの技術を開発し、敵が近接攻撃をしてきた時にはそれに対処出来るようにする。
すぐ思いつくだけでこれだけの改良点がある以上、ギニアスがⅣに向けて考えているというのも、理解は出来ないでもない。
「取りあえず興味深いのは間違いないし、資料を提出してくれ。アプサラスが宇宙でも使えるようになれば、かなり便利だしな」
それに、基本的にアプサラスは宇宙から地球に降下して目標をメガ粒子砲で破壊するといったコンセプトのMAだ。
だが、現状のアプサラスⅢでは、完全に宇宙に出るようなことは出来ない。
だが……もし宇宙からアプサラスⅢが単独で地球に降下出来るようになったとすれば、どうなるか。
それは、敵対する者にしてみれば悪夢でしかないだろう。
対空装備とか迎撃用MS……いや、この場合は迎撃用戦闘機か? ともあれ、その辺りを充実させるしかないが、ルナ・チタニウム製の装甲を持ち、ビームも無効化するだけの能力を持っているアプサラスⅣが完成すれば……
連邦軍も、そんな兵器を月が持ってると知れば、迂闊に敵対しようとは思わない筈だ。
ジオン公国が降伏した場合、連邦軍としては自国内を纏める為にも外に敵を必要とする可能性が高い。
そうした場合、敵対する相手というのはどうしても限られてしまう。
その最大の候補が、やはり月だろう。
だが、アプサラスⅣが完成していた場合、月を敵とするのは間違いなく躊躇するだろう。
当然だ。
何しろ、月に拠点を持つルナ・ジオンを敵とした場合、それこそいつジャブローにアプサラスⅣが降下してくるか分からないのだから。
数日ではあるがジャブローで生活した身としては、ジャブローにいる政治家達は攻撃される事をかなり恐れている。
だからこそ、連邦軍が月を敵としようとはしないだろう。
あ、でもアプサラスⅣの性能を知らないとそんな真似も出来ないか。
「それで、アクセル代表。オーストラリアの件ですが……」
俺がアプサラスⅣについて考えているのを悟ったのか、アイナが話を元に戻す。
「取りあえずアイナにも行って貰うように頼むって事で。……ただ、奇跡の子供達が現在どこにいるのかというのは分からないから、それを探す必要があるぞ」
雑誌によれば、校外学習か何かで出掛けていた帰りにコロニー落としを察知したのだが、それは奇跡の子供達の家にいる家族を助けるのは不可能だったという事になる。
つまり、奇跡の子供達は戦災孤児になっているのだ。
そうなれば、どこにいるのか見つけるのは結構苦労するだろう。
こうして雑誌に載っている分、何の情報もない相手を見つけるよりは楽だろうが。
「分かっています。ですが……アクセル代表には必要なのでしょう?」
「俺がじゃなくて、セイラが必要としてるといった方がいいな。いや、もっと正確に言えば、このままにするとキシリア機関なり、連邦軍の諜報部なりが奇跡の子供達を連れていく可能性が高い。そうなればどうなるのかは……考えるまでもないだろう?」
フラナガン機関の一件は大々的に公表されている。
勿論、具体的にどのような実験が行われていたのかといったような事までは公表されていないが、想像するのは難しくはない。
連邦軍にとってもそれは同じだろう。
……いや、連邦軍の場合は寧ろニュータイプの研究で遅れている分だけ、フラナガン機関よりも過激な実験をしてもおかしくはない。
もしくは、キシリア機関、連邦軍以外のどこか他の勢力に奪われるという可能性もある。
その辺の事情を考えると、やはり高いニュータイプ能力を持つセイラが率いている月に来た方が、奇跡の子供達にとっても安全だろう。
他にもマリオンやクスコのように、ニュータイプがいるというのも大きい。
それにフラガナン機関の研究所から助け出した子供達もいるので、そういう連中とも奇跡の子供達は上手くやってくれると思う。……正確には思いたい、か。
もっとも、連邦軍の場合はアムロがいたりするのだが。
「分かりました。一応念の為に聞きますが、その奇跡の子供達にフラナガン機関で行われていたような、非人道的な実験をしたりはしませんよね?」
確認を求めるように、アイナがそう聞いてくる。
アイナにしてみれば、自分達が苦労して助けた……いや、自分達が関わっていなくても、子供達が何らかの理由で非人道的な実験をされるというのは許容出来ないのだろう。
また、当然のように俺もそんな事をするつもりは一切ない。
「当然だろ。そもそも、月はニュータイプのセイラが治めてるんだ。そんな場所でニュータイプの子供に非人道的な実験をしようものなら、それこそすぐにでも知られてしまう。そんな事をしてセイラを怒らせようと思う奴はいないだろ。それに、フラナガン機関の連中は殆どが強制労働の真っ最中だし」
一応フラナガン機関の中でも、子供達に同情的な研究者もいた。
そのような者達は、現在月でニュータイプの研究に携わっている筈だった。
そんな研究者達なら、ニュータイプについての実験をするにしても、その実験に協力する相手の事をしっかりと考えて実験を行うだろう。
そもそもの話、実験をされるニュータイプ――正確には候補なのだが――にしても、扱いがきちんとしていれば意欲的に実験に協力するだろうし、そうなれば実験も効率的に行われる筈だ。
フラナガン機関の連中も、そのくらいは考えてもよかったと思うんだが。
「分かりました。アクセル代表がそう言うのであれば、信用してもよさそうですね」
安堵した様子を見せるアイナ。
取りあえず、これで話は決まりか。
アイナが迎えに行けば全て解決……という風に簡単にはいかないと思うが、それでも勧誘の成功率が高まったのは間違いない。
「アイナ、もし勧誘した時に向こうが乗り気じゃないなら、セイラについて話してもいい。自分達よりも高いニュータイプ能力を持つ人物のいる場所に行くと知れば、多少は安心する筈だ」
「そう、ですね。分かりました。そうさせて貰います」
もし奇跡の子供達の中に本物の……そして高レベルのニュータイプ能力の持ち主がいるのなら、あるいは月に存在するセイラの存在を感じとるかもしれない。
いや、そこまでは無理か?
恐らくこのUC世界で最高のニュータイプ能力を持っているセイラですら、地球にいるニュータイプの存在を感じ取ったりは出来ないんだし。
にしても、奇跡の子供達しかり、アムロしかり、セイラやシャアも子供の頃は地球にいたって話だし……ニュータイプってのは宇宙に出て人が進化したとか、そういう風に認識されてる筈だったと思うんだが、これってどういう事なんだろうな。
そんな風に思いながら、俺はアイナ達と打ち合わせを続けるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1025
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1584