「ふーん。まぁ、そういう事ならいいけど」
俺の説明に、そう言いながらもミナトは完全に納得した様子は見せていない。
まぁ、一緒にハワイで観光をしたり、デートをしたりといったことを楽しむつもりだったのに、いきなり俺がオーストラリアに行く事になったのだから、仕方がない。
こういうのも、一応出張と言うべきなのか?
多少の時間は掛かる予定だったが、同時に日帰りの出張でもあるんだが。
「ほら、ミナトも落ち着きなよ。アクセルだって今の立場を考えれば、そうなるのは仕方ないんだから」
綾子がミナトにそう声を掛けると、一応はそれが通じたのかミナトもそれ以上は何も言わずに頷く。
デートの時にしっかりとサービスしておかないといけないな。
ハワイらしい観光名所……キラウエア火山だったか? そこに行ってみるのも面白いかもしれないな。
そんな風に思いつつ、ともあれゲラートに用意して貰ったホテルに向かう。
最初はどこかの空き家でも貸して貰えればという思いがなかった訳でもないのだが、考えてみれば今のハワイというのは、それこそ人口密集地……という表現では生易しいような、そんな場所だ。
そうである以上、当然そのような者達が住む場所も必要になり、ある程度の金持ちであれば空き家を借りてそこに住むといった事は普通に行われる。
それどころか、ゲラートから聞いた話によると、広い家……それこそ屋敷では一組の家族だけではなく、何組もの家族が共同生活をしているような場所も多いと聞く。
現在のハワイはそれだけ多くの者が集まっているのだ。
そういう意味では、色々と秘密のある俺達が泊まる場所としてホテルの用意がされるのは、ある意味で当然だったのだろう。
「それなりにいい部屋らしいぞ。特に夜景は最高らしい」
100万ドルの夜景というのは陳腐な表現だが、そのような表現が相応しい光景らしい。
特に今は人が多いので、その辺の関係もあって多くの者が夜になれば明かりを使うから、200万ドルの夜景といったところか?
「そうなの?」
夜景という言葉に興味を持ったのか、ミナトの機嫌は直ったらしい。
そんなミナトと綾子を連れながら、ゲラートに用意されたホテルに向かう。
人が多くなれば、当然のように質の悪い奴が増えたりもするのだが、コバッタや量産型Wのおかげでその辺は心配しなくてもいい。いいんだが……それとはまた別の意味で、俺達は人目を集めてしまう。
何しろ、ミナトも綾子もタイプこそ違えど、双方共に絶世のという表現が相応しい美人だ。
そうなれば、別に質の悪い男ではなくても嫉妬の視線を向けてくる奴がいるのは当然だろう。
まぁ、何だかんだと俺も嫉妬の視線を向けられるのには慣れているので、以前程は気にならなくなっていたが。
ともあれ、目的のホテルに到着すると、既にゲラートからの連絡を受けていたのか特に待たされる事もないまま、最上階のスイートルームに案内された。
このホテルはハワイの中でも最高級のホテルで、当然その最上階近い部屋となれば、泊まるのに相応の料金が必要となる。
そんな部屋だけに、いざという時……それこそ俺達のような突然の客が来た時の為にゲラートが確保してあるのだろう。
ぶっちゃけ、それで幾ら使っているのかがちょっと気になるが……まぁ、その辺はルナ・ジオンの政府や軍でどうにかする事だから、深く追求はしないでおく。
「じゃあ、俺は早速オーストラリアに行ってくるから、そっちはここで待ってるか、もしくは適当に観光でもしててくれ」
「アクセルだから大丈夫でしょうけど、気をつけてね。オーストラリアは現在激しい戦闘が起こってるでしょ?」
綾子のその言葉に頷き、俺は影のゲートに身体を沈め……次の瞬間には、大量の魔力を消耗しつつ、オーストラリアに姿を現す。
「さて」
既にゲラートから連絡が入ってる筈なので、ハワイに退避するジオン軍と接触する必要があるんだが……どうやって接触するかだな。
ゲラートから聞いた話によると、この辺りだった筈なんだが。
俺が転移してきた街は、結構な大きさだ。
オーストラリアはコロニー落としでシドニーが消滅したからか、戦争の影響は他の地域よりも大きいんだよな。
ジオン軍を率いている者の能力や性格からか、居丈高に接するのではなく、友好的に接しているので、住民の敵対感情もそう強くはない。
いや、実際には心の中ではジオン軍を憎いと思っている者は多いのだろうが、ジオン軍からの配給がなければ生きていけない以上、ジオン軍に睨まれるような真似は出来ないのだろう。
そんな訳で、オーストラリアのジオン軍はオーストラリアの住人と友好的な関係を築いている。
……まぁ、俺は別にジオン軍の軍服を着ている訳でもないので、綾子やミナトを連れていない今の状況なら問題なく民衆に紛れる事が出来るんだが。
「そうなると、まず問題なのは……一体どうやって向こうに接触するかだな」
呟きつつ、その辺の通行人からこの街の名前を聞く。
取りあえず街はハワイから派遣された闇夜のフェンリル隊をメインとした者達が拠点として使っている場所なので、後は軍事基地にでも行けばいいのか。
そうして考えていると……
「あれ? アクセル?」
不意にそんな声で名前を呼ばれる。
声のした方に視線を向けると、そこにはモヒカンに近い髪型をしている男の姿があった。
それが誰なのか、俺は知っている。
「ニッキか。ある意味、丁度よかったな」
ニッキ・ロベルト。
ゲラートの部下として有名な、闇夜のフェンリル隊。
そのメンバーの1人だ。
闇夜のフェンリル隊がここに来ている以上、そのメンバーが街中にいてもおかしくはない。
「やっぱりアクセルだ。どうしたんだよ、いきなり」
「聞いてないのか? 何でも運び出せないMAが2機あるとかで、俺がそれを回収に来た」
「あー……あれか」
どうやら、俺が来る事は知らなかったみたいだったが、MAについては知っていたらしい。
「アッザムオルガとライノサラス。どっちもハワイまで持っていく事は出来ないんだろ? いや、無理をすれば出来るのかもしれないけど、かなり厳しいって話は聞いてる」
「そうなんだよな。そういう事なら、アクセルが来てくれたのは俺としても助かるよ。けど、何で基地じゃなくてここに?」
「その基地の場所が分からなくてな。一応ゲラートからは話を通してるって聞いてるんだが」
「そうなのか。なら、俺が案内するよ」
「いいのか? こうして街中に出てるって事は、今は自由時間なんだろ?」
「そうだけど、俺としてはあのデカ物をどうにかして欲しいからな。色々と邪魔なんだよ」
あー……うん、なるほど。
アッザムもそうだったが、基本的にMAというのは大きい。
だが、ジオン軍にとっても機密である以上、その辺に適当に放り出して連邦軍にMAの情報を渡す訳にもいかないだろう。
だとすれば、MAをどこに置くか。
当然、ジオン軍の基地となる。
……だが、この基地は亡命してハワイに向かう者達の拠点となっている以上、当然ながらハワイに持っていく多くの兵器を集める必要がある。
そんな場所に、ただでさえ巨大なMAが……しかも2機もあるとなれば、色々な意味でそれは邪魔になるだろう。
特にニッキは闇夜のフェンリル隊の中でも新人というか、下っ端というか、そんな感じだ。
勿論技量の面ではとてもではないが新人の域ではないのだが。
それでも荷物を運んだりといったような事をする必要がある以上、ニッキのような下っ端はかなり使われる。
そういう意味では、ニッキにとってMAが2機というのは邪魔なのだろう。
「そう言えば、今日は1人なのか? シャルロッテはどうした?」
「別に、俺はいつもシャルロッテと一緒に行動している訳じゃないんだけど」
ニッキはそう告げるが、俺の印象……まだジオン軍でシーマの部下として海兵隊にいた頃に会った時は、シャルロッテと一緒にいた事もあってか、どうしてもそういう印象の方が強い。
……シャルロッテ、何気にニッキと相性がいいと思うんだけどな。
ただ、俺が知ってる限りではニッキに対して強いライバル心を抱いているので、その辺がニッキとしては思うところがあるのだろう。
とはいえ、シャルロッテは顔立ちが整っているので、男ならそういう女と距離が近いのなら、羨ましいと思える者が多いだろう。
「そうなのか? まぁ、くれぐれも鳶に油揚げを奪われないようにな」
「……何か、俺達の事を誤解してないか?」
「さて、どうだろうな。ともあれ、俺もいつまでもオーストラリアにいる訳にもいかないし、とっととMAの場所まで案内してくれ」
「分かった。じゃあ、行くか」
そう告げたニッキと共に、俺はジオン軍の基地に向かう。
特に何か騒動がある訳でもなく基地に到着すると、ニッキが基地の前の守衛と言葉を交わし、俺は特に何か詮索されるような事もないまま、基地の中に入った。
基地の中では、大勢のジオン軍の軍人が……いや、ジオン軍の軍人だけではなく一般人と思われる者達も忙しく働いている。
「あれ、いいのか? 一応ここは軍事基地だろ?」
「ん? ああ、俺も疑問に思ったんだけど、いいんだってさ。考えてみれば当然だけど、この基地の軍人達はその殆どがここから出てハワイに向かうんだから、そうなればジオン軍の機密とかはそんなに気にしなくてもいいだろ?」
「……殆どって事は、やっぱりハワイに来ない奴もいるのか?」
民間人が働いているのは、少しでも報酬を求めての事だろうと納得する。
機密が関係ない以上、多くの者が出来るだけ仕事をして食事を買う為の資金を欲していても、おかしくはない。
なので、取りあえずそこに突っ込むような真似はせず、ニッキが口にした『殆ど』という言葉について尋ねる。
「ああ。どうしてもジオン軍を裏切るのは嫌だっていう……ザビ家のシンパとかがいるんだよ」
「あー、なるほど。そういうのは確かにいそうだよな」
俺から見ればそうは思えないのだが、ギレンには一種のカリスマ性がある。
そのカリスマに魅せられた者達にしてみれば、ハワイに……ルナ・ジオンに亡命するというのは、とてもではないが許容出来る事ではないのだろう。
「で? そういう連中はどうしたんだ?」
下手にギレンのカリスマに影響を受けている分、もしハワイに亡命しようとすれば、それを許容出来ない奴もいるだろう。
場合によっては、銃撃戦になってもおかしくはなかった。
「取りあえず牢屋に入れてある。俺達がいなくなったら、解放して貰う手筈になってる」
なるほど。
亡命に掛かる時間は、そんなに長い時間ではない。
それくらいなら、牢屋とかに閉じ込めておけば問題はないと、そう判断したのだろう。
問題なのは、狂信者とも言うべき者達が本当にそれで大人しくしているかだが……その辺は、闇夜のフェンリル隊を信じるとしよう。
何だかんだと、闇夜のフェンリル隊はルナ・ジオン軍の中でもエリートと呼ぶに相応しい部隊だ。
例えザビ家やギレンのシンパであっても、簡単にどうこうするような真似が出来る訳がない。
……まぁ、忠誠心故に、本来よりも大きな力を発揮するような者がいてもおかしくはないが。
「なら、取りあえず問題はなさそうだな。……あれか」
話している途中で、格納庫と思われる建物……ではなく。その陰に隠れるようにして存在していた2機のMAを見つける。
1機はアッザムオルガ。
こちらは、オデッサで戦ったアッザムと比べてそこまで大きな違いはない。
勿論、細々としたシルエットは違っているが。
だが、ライノサラス。こちらは完全に初めて見る機体だ。
……頭部がザクになってるのは、一体なんなんだろうな。
アプサラスもそうだが、ザクの頭部ってMAとの相性がよかったりするんだろうか。
もしくは、単純にパーツの在庫の問題か。
アッザムとは違って、空を飛ぶのではなく……ホバー移動して地上を移動するタイプらしい。
ビッグトレー的な感じを目指して開発されたのか?
そんな風に思っても、不思議ではない。
性能的に一体どんなものなのか、少し興味はある。
「このMA……特にライノサラスの方は、仕様書とかそういうのはあるのか?」
「ああ、そっちも用意しておいたって言ってたな。ただ……うん。俺も実際にライノサラスが動いてるのを見た訳じゃないし、人聞きだけど、性能は微妙らしい」
「そうなのか? まぁ、ホバー移動をするという意味では、使い勝手がよさそうだけど……ちょっと大きすぎるしな。製造コストとか、そういうのが結構大変そうなのは分かる」
これで性能が高ければ、ハワイで運用する事も考えてもいいのだが。
ニッキが言うように性能が微妙な場合、これはディアナで一通り研究した後、ホワイトスターに持っていって、技術班の資料となる感じか?
そんな風に思いながら、俺はライノサラスを眺めるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1060
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1591