綾子とデートをした翌日……昨日とは裏腹に、今日はミナトの代わりに綾子がベッドの上でダウンしていた。
「ケダモノ」
俺を見たミナトがそんな風に言ってきたのだが、今の状況を思えばそんな風に言われても仕方がないのは間違いない。
「ケダモノの本性を見せようか?」
「嫌よ。私だけでアクセルに勝ち目がある訳がないじゃない。……そもそも、ホワイトスターでもそうなんだから、結果は最初から分かっていたんだけどね」
「なら、ホワイトスターに戻ってからの夜を楽しみにしてるよ。何だかんだと、ホワイトベースでは禁欲的な生活を送ってたし」
「……どの口がそんな事をいうのかしら。全く、ケダモノなんだから」
呆れたように言ってくるミナトの視線を受けながしてから、口を開く。
「取りあえず明日のHLVで月に戻る事になったから、そのつもりで準備を進めておいてくれ」
「そうね。いつまでもケダモノの相手をしていたら、それこそ身体が保たないし。もっとも、準備といったところで……お土産を買うくらいしかやる事はないわよ? あ、イセリナに挨拶くらいはしてもいいかも」
「綾子は今日はちょっと起きられないだろうし、それもいいかもしれないな。俺はちょっとゲラートと打ち合わせをしてくる。今日の夕食は3人で食べよう」
「……言っておくけど、明日寝坊しない為にも、今日はしないからね」
「残念だな。夜のミナトは普段以上に色っぽいのに」
「ばっ、馬鹿! 一体何を言ってるのよ!」
そう言いながら、照れ隠しの突っ込みとして魔法の矢を撃ち込もうとするミナトをその場に残し、俺は政庁に向かうのだった。
「よう」
「……アクセル、突然執務室に出てくるのは止めてくれないか。今のお前は俺の客人って事になってるんだから、普通に訪ねてきても会えるんだぞ」
書類仕事に集中していたゲラートが、呆れたようにそう言ってくる。
にしても、ゲラートの客人か。
実際、プライベートビーチで遊んだ時も、その身分を使って入ったようなものだしな。
俺がシャドウミラーのアクセル・アルマーであると知ってるのは、そう多くはない。
それも当然の事だった。
多くの者が知っているアクセル・アルマーというのは、セイラと共にルナ・ジオンの建国宣言を行った20代の男だ。
だが、今の俺は色々と動きやすいという事もあって、10代半ばの姿で行動してる。
……そういう意味では、20代のミナトや綾子との夜は、いわゆるおねショタって奴なのか?
いや、10代半ばなんだからショタにはならないか。
ともあれ、そんな訳で上層部の限られた者以外は俺を見ても年齢の違いから俺をシャドウミラーのアクセルとは認識出来ない。
だからこそ、俺はシャドウミラーのアクセル・アルマーではなく、ゲラートの客人という扱いになっているのだろう。
「悪いな、そうなればそうなったで、色々と面倒も多いからな」
これは別に嘘でも何でもなく、大袈裟な話でもない。
俺は何度もこうして影のゲートを使って気軽に会いに来ているが、ゲラートはハワイを治めている人物なのだ。
ルナ・ジオンが唯一地球に持つ領土。
そういう意味では、ぶっちゃけルナ・ジオンの中でもかなりの重要人物という扱いになるのは間違いない。
そんな人物に会いたいと思う者は、それこそ幾らでもいる。
そのような状況で俺がゲラートとのアポを取ろうとしても、当然のように色々と時間の調整をしたりする必要があり、結果として実際に会えるまでにはかなりの時間が必要となる。
……まぁ、今のゲラートと面会をしようとして、今日アポを取って今日会うといった真似をするのが、色々とおかしいんだろうが。
ともあれ、そんな面倒を避ける為にはやっぱりこうして直接執務室に顔を出すというのは一番手っ取り早いのは間違いない。
「はぁ。……で? 今日は何の用事だ?」
「明日HLVに乗るから、その挨拶に。それと、オーストラリアの件もちょっと気になってるし」
何だかんだと、この前オーストラリアに行った時は、荒野の迅雷ヴィッシュ・ドナヒューや奇跡の子供達に会えなかったんだよな。
だから、その辺が気になっているというのもある。
ただし、奇跡の子供達に対しては俺が接触するとアムロの二の舞となる可能性もあったので、元から接触する気はなかったが。
「そうか。オーストラリアの方は順調らしい。まだ向こうを出発はしていないらしいがな。奇跡の子供達の方は……こちらはまだ接触に成功していないという話だ」
「そうか。……アイナ達なら何とかなると思っておくか。それよりも、何か月に知らせる必要がある情報とかはあるか?」
「特にないな。基本的には通信で何とかなるし、何かあってもHLVで誰かを月に向かわせればそれでいいし」
素っ気なくそう告げる。
いや、特に急を要する報告がないというのは、ハワイの統治が平穏に行われているという事を意味してるんだから、そこまで気にする必要はないのか。
「分かった。じゃあ……」
俺はこの辺で。
そう言おうとした瞬間、まるでタイミングを計ったかのように通信機が着信の音を告げる。
その通信に出たゲラートを横目に、俺は影のゲートを展開してそこに身体を沈ませていく。
ハワイを治めるゲラートは、当然のように忙しい。
そうである以上、ここに居座って時間を奪うような真似をしても……と、そう思っていたのだが……
「何っ! 奇跡の子供達を確保しただと!?」
首まで影に沈んだところで、ゲラートのそんな興奮した声が聞こえてくる。
俺はその声を聞いた瞬間、影のゲートに沈み掛けていた身体を元に戻す。
ゲラートの口から出た言葉は、とてもではないがそのまま聞き流すことが出来る内容ではなかったからだ。
ゲラートも、影に沈もうとしていた俺が再び戻ってきたのを見て、真剣な表情で頷くと、映像モニタに視線を向ける。
「ちょうどここにはアクセルもいる。詳しい説明をしてくれ」
その言葉を聞きながら、椅子に座っているゲラートの後ろに回り込む。
すると映像モニタにはアイナの姿があった。
『アクセル代表、いらしたのですか?』
「ああ。明日には月に帰るから、その前に挨拶をしておこうと思ってな。それで……ゲラートが言ってた事は本当か? まぁ、アイナがそういう出鱈目を言うとは思えないけど」
『ありがとうございます。報告に間違いはありません。奇跡の子供達……ヨナ・バシュタ、ミシェル・アベスカ、リタ・ベルナルの3人を確保する事に成功しました』
アイナが笑みを浮かべてそう言ってくる。
その様子に後ろ暗いところはないし、そもそもアイナの性格を考えればそんなことが出来るとも思えない。
思えないが……それでも、一応聞いておく。
「アイナ、一応聞いておくけど、奇跡の子供達とは友好的な関係を築いてるんだよな?」
『はい。あの子達は傷ついてます。そのような相手に、高圧的に出るような真似はしません』
まぁ……だろうな。
俺が雑誌で読んだ内容が事実だとすれば、奇跡の子供達はコロニー落としを予言はしたものの、家族を守る事は出来なかったのだ。
つまり、まだ子供だというのに自分の家族を失ってしまった。
……勿論、この戦争で両親を亡くした子供達というのは、それこそ世界中に大量にいるのは間違いないだろう。
決して奇跡の子供達だけが突出して悲運だという訳ではないのだが、それでも家族を失ってしまったのは間違いない。
「そうか。ならいい。それで確保したって事は、月に来るのを承知したんだな?」
『はい。ですが、その……』
言いにくそうな様子を見せるアイナ。
何かあったのか?
「どうした?」
『その、子供達と一緒にいた避難民の中にも、月に移住したいという人達がそれなりにいるんですが……』
あー……なるほど。
まぁ、その気持ちは理解出来ないでもない。
普通なら、月に移住したいと思わない者であっても、コロニー落としがあった場所に住み続けるよりは、全く別の場所でやり直したいと思ってもおかしくはない。
また、わざわざ奇跡の子供達をスカウト……引き抜き? ともあれ誘ってきたのだから、普通に移住するよりは多少優遇されるかもしれないと考えるのも、おかしくはなかった。
ただし、この場合に問題なのは奇跡の子供達はともかく、一緒に来たいという者達を優遇する必要があるかという事だろう。
まぁ、奇跡の子供達がこちらに対して好意を抱いてくれるのなら、それくらいはしてもいいけど。
実際、月は仕事が多くて幾ら人がいても足りないんだし。
そういう意味では、移住希望者というのは多ければ多い程にいいのも事実。
「ただ移住するだけなら、こっちとしては全く問題はないんじゃないか?」
「そうだな。寧ろ移住を希望する者が増えれば増えるだけ、こちらとしても助かるというのが正直なところだ」
俺の問いに、ゲラートがそう答える。
ただし、と。言葉を続けるのを忘れなかったが。
「奇跡の子供達の知り合いだからといって、過度な援助をしたりはしないし、扱いとしても他の移住者達と同様だ。それでも構わないのなら、移住を許容すると伝えてくれ」
『分かりました。では、そのように』
アイナもゲラートの言葉に特に異論はないのか、あっさりと頷く。
アイナの性格を考えれば、それこそもう少ししっかりと保護した方がいいのでは? とか言いそうなものだが……
この辺は、兄のギニアスや育ての親たるノリス……いや、違うな。恐らくは恋人のガトーの影響が強いんだろう。
ガトーは軍人と呼ぶよりは武人と呼ぶに相応しい人物だ。
そんなガトーと付き合ってるだけに、アイナも優しさは以前のままではあるが、同時に厳しい一面も増えたといったところか。
「それで、奇跡の子供達はどうだった? 直接会ってみたアイナの正直な感想を聞きたい」
『いい子達ですよ。ただ、少し不安定なところもありますが』
「まぁ……だろうな」
コロニー落としで故郷が消滅し、家族が失われたのだ。
10ヶ月以上前の話であっても、その光景をそう簡単に忘れるような事は出来ないだろう。
寧ろ少し不安定といった状態ですんでいるのが驚きだ。
……周囲の大人達が励ました影響なのか、それとも元々心が強かったのか。
その辺の事情は俺にも分からなかったが、それでも今の状況を思えば、なんとなく予想が出来ない事はない。
「取りあえず、アイナはその3人が落ち着くように……まぁ、俺が言うまでもないか」
『ふふっ、それでもアクセル代表のお墨付きを貰えば、色々とやりやすいですよ』
アイナの性格を考えれば、心が傷ついている子供達を放っておくような真似はしないだろう。
そう思っての俺の言葉だったが、実際にその言葉は正解だったらしい。
ガトーと付き合うようになっても、やはりアイナの根本は変わらないといったところか。
とはいえ、ガトーもアイナのそういう場所に惹かれたんだから、そのような場所が変わってしまえばガトーとの関係も上手くはいかないだろうが。
「けど……そうなると、アイナ達も月に向かった方がいいか? アイナに懐いているのなら……けど、アプサラス計画の兼ね合いもな」
現在、ギニアスはアプサラスⅣを開発中だ。
アプサラスⅢは強力無比なMAだったが、色々と難点も多い。
その欠点をどうにかする為に、次のアプサラスを開発中なのだ。
そしてアイナは、アプサラス計画におけるテストパイロット。
……今のルナ・ジオンなら、別のテストパイロットを用意する事も不可能ではないだろうが、それでもやはり色々な面でアイナがテストパイロットをやった方がいいのは間違いない。
何しろ、アイナはMSのパイロットとしては平均よりも上だが、MAのパイロットとしてはかなりの才能を持っている。
それこそ、MSパイロットで比較した場合、アムロやシャア並……とまではいかないが、ユウくらいの実力はあってもおかしくはないと、そう思えるだけの才能を持っているのだ。
だからこそ、アプサラス計画におけるテストパイロットをアイナから変更するというのは、将来的に……アプサラスⅣについて考えた時に、デメリットしか存在しない。
『お兄様に少しお願いをしてみようかと。……お兄様も、最近研究が行き詰まっていたようなので、暫く月で気分転換をするのもいいかと思いますし』
なるほど。
ギニアスの気分転換も兼ねて月に来るというのは、ありかもしれないな。
アイナがいなくてアプサラス計画が進まないのなら、それこそアプサラス計画そのものを一時的に休止して、アプサラス計画の面々にゆっくりしてもらうというのは、悪い話ではない気がする。
ギニアスも、ディアナの面々と通信ではなく直接話してみると、何か新しい発想が浮かぶ可能性もあるし。
「分かった。ギニアスがそれでいいのなら、アイナの言う通りに進めても構わない」
アイナの提案に、俺はそう頷くのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1060
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1591