「美味いな」
それが、分厚い牛タンを食べた俺の素直な感想だ。
分厚い牛タンを焼き肉で食べるとなれば、普通なら両面を焼いてからそれを切ってその断面を更に焼くといったような真似をする……らしい。
ぶっちゃけ、この辺の知識はガイアや肉を持ってきた店員から聞いたものだ。
普通なら焼き肉屋で出てくる牛タンというのは、そこまで厚くはないから炭火で焼くのにコツはいらないんだが。
ただ、今回ガイアが注文した牛タンは、厚さ3cm近い。
それを切らずに焼くにはどうするか。
表面を焼いては少し休ませ、その休ませている時間に火を通していくといったような手間を掛ける必要があるのだ。
ただし、焼き終わった牛タンを食うと、美味いとしみじみ呟くだけの味にはなる。
焼き肉奉行とか鍋奉行とか、そういうのがいるのは知っているが、どうやらガイアもそんな奉行の1人だったらしい。
「ふふん」
俺の口から出た感嘆の一言に、ガイアは得意げな表情を見せる。
強面の顔をしているガイアがそんな真似をすると、それこそ裏社会の住人のように見えない訳でもない。
……いやまぁ、その辺は俺が言うべき事じゃないけど。
俺が今まで色々とやって来たのも、後ろ暗いところは結構あるし。
「ほら、他にも食え。こっちのロースも美味いぞ」
そう告げるガイアに勧められるままに、色々な部位の焼き肉を楽しむ。
焼き肉奉行をやっているガイアが勧める肉がどれも美味いのは、間違いのない事実だ。
そうである以上、それを楽しまないという訳にはいかない。
様々な種類の肉……それこそ、初めて聞くような部位の肉とかも食いながら、暫く時間が経つ。
大体30分くらいか。
その間は焼き肉を食い続け……それで一段落したところで、ガイアが3杯目のウーロン茶を飲みながら、口を開く。
「さて、焼き肉については取りあえず満足して貰えたか?」
「ああ。まさかガイアにこんな才能があるとは思ってなかったけどな」
黒い三連星という異名を持つ凄腕のMS小隊。
そんな黒い三連星を率いるガイアが、実は焼き肉奉行だというのは……噂だけでしかガイアの存在を知らない者にしてみれば、驚愕の事実だろう。
まぁ、近い存在だからこそ知る事が出来るってのもあるんだろうけど。
「そうか、それは何よりだ」
満足そうな……本当に心のそこから満足そうな様子を見せるガイア。
もしかして、ガイアは俺に焼き肉を食わせる為だけにこの店に連れて来たのか?
一瞬そう思うが、ルナ・ジオン軍の中でも異名持ちのエースがそんな事をする訳はないだろう。
「それで? 俺をここに連れて来たのは、何か用事があるからなんだろ? 一体どんな用事だ?」
「……その、だな。色々と話したい事はあるんだが、オルテガの件だ」
「オルテガの?」
オルテガの名前がここで出て来るのは、少し予想外だった。
てっきり、現在の月の状況とか、そっち関係の話だとばかり思っていたのだ。
「ああ。実はオルテガの奴にも春が来てな」
そう言われれば、一体何について話しているのかというのは予想出来る。
ガイアも強面だが、オルテガはそんなガイアよりも更に強面だ。
その上で黒い三連星の中では最も背が高く、性格も粗暴。
そんなオルテガと仲のいい人物を、俺は知っている。
「マリオンか?」
「ああ」
やっぱりか。
どうやら、俺の予想は当たっていたらしい。
元々、俺が知ってる限りでも、オルテガとマリオンの関係は良好だった。
ただ、その時はどちらかと言えば保護者と被保護者のような、そんな関係に思えたのも事実。
そもそも、マリオンとオルテガでは年齢に差がありすぎる。
正確な年齢を知ってる訳ではないが、マリオンは10代半ばで、オルテガは20代……いや、もしかしたら30代か?
年齢的に、倍近い。
色々と犯罪にならないか?
「俺が言うのもなんだけど、大丈夫なのかそれ?」
「あー……まぁ、大丈夫か大丈夫じゃないかと言われれば、正直大丈夫じゃない気がする」
なるほど。
何でガイアがいきなり俺に焼き肉を奢ったのか、その理由が分からなかったが、この様子を見れば何となく納得は出来る。
俺にしか相談出来る相手がいなかったのだろう。
いや、実際には他にもいるような気はするが。
それこそ、シーマとか。
ただ、偶然俺が近くを通り掛かったのを見つけて、俺に相談してきたといったところか。
「まさかとは思うけど、オルテガの方から迫ったんじゃないだろうな?」
巨漢と呼ぶに相応しいオルテガが、まだ10代半ばの華奢なマリオンに迫っている光景を想像すると、それはどこからどう考えても犯罪的な光景にしか見えない。
それこそ、何も知らない者ならオルテガの迫力に押されてマリオンがオルテガの存在を受け入れてしまったと思ってもおかしくはないくらいに。
「安心しろ。オルテガは何だかんだと、そういう点には鈍い。実際には、マリオンが積極的に攻勢に出たというのが正しい」
「マリオンが?」
俺も詳しく知ってる訳ではないが、それでもマリオンの性格はある程度知っている。
内気というか、大人しいというか……そう、いわゆる大和撫子的な性格だ。
そんなマリオンが自分からオルテガに迫る?
正直なところ、ちょっとその辺は信じられない。
ただ、ウーロン茶を飲んでいるガイアの様子を見れば、とてもではないが嘘を言ってるようには思えない。
だとすれば、ガイアの言ってる事は恐らく事実なのだろう。
そして……俺は、マリオンをそそのかすような性格をしている相手に、覚えがあった。
「クスコだな」
マリオンと一緒にフラナガナン機関の研究所から救出され、年齢が高く、ニュータイプ能力も強いということでルナ・ジオン軍のニュータイプ部隊としてマリオンと共に活動しているクスコ。
まぁ、ニュータイプ部隊となってはいるが、実際にニュータイプは2人だけなのだが。
ニュータイプ能力という事で考えれば、セイラも十分以上に強力なのだが、国の女王ともあろうものがニュータイプ部隊として戦うような真似が出来る筈もないし。
一緒に保護した子供達で軍人を目指している者達が大人になれば、ニュータイプ部隊に所属するという可能性は否定出来ないが。
ともあれ、クスコとマリオンは同じニュータイプ部隊に所属しているという事もあって仲がいい。
だが、仲がいいというのが、この場合は不味い方向に働いたのだろう。
大人しい性格をしているマリオンに対して、クスコの方は20代という事もあってか、かなり女としての色気が強い。
それだけに、マリオンから恋愛の相談を受ければ、押して押して押しまくれといったアドバイスをしても不思議ではないだろう。
「ああ。俺もそう思う。とはいえ……恨むつもりはないけどな。オルテガに春が来たのは間違いない事実なんだ。寧ろ、感謝したいくらいだ。……相手がマリオンなのが、ちょっと問題だが」
「とはいえ、ルナ・ジオンは言ってみればまだ国家として成立したばかりだ。そっち方面ではまだ法律として定まっていない可能性が高い」
ルナ・ジオンとして建国した以上、法律の基本的な部分はジオン公国や地球連邦を引き継いでいてもおかしくはない。
全てを1から考えるというのは、正直なところかなり難しいし。
だが、だからこそ頑張ればその辺をどうにか出来る可能性は……あるかもしれないな。
勿論、あくまでも可能性であって、実際は駄目となるかもしれないが。
それに、その辺の調整を失敗すると、モラル的に色々と不味い事になりかねない。
……まぁ、Fate世界やペルソナ世界での一件を思えば、その辺は俺がどうこう言えるような事ではないのかもしれないが。
「アンリ……は色々と厳しそうだし、ラルを通してハモンに相談してみたらどうだ? 多分、こっちの要望にも乗ってくれると思うぞ」
ラルとガイア達は、MSの開発初期……いや、それ以前から知り合いだったらしい。
そういう意味でも相談はしやすいだろう。
それにハモンは現在ルナ・ジオン軍ではなく、内政の方に深く関わっているから、相談するにはうってつけの相手だ。
何よりぶっちゃけた話、ラルとハモンも実は結構年齢差の大きいカップル――実質的には夫婦だが――だったりする。
ハモンがもう成人していて大人の女だから、その辺を気にする者はいないが。
ある意味で、オルテガとマリオンと似てはいる境遇なのだ。
だからこそ、今回の一件を相談した場合、協力してくれる可能性が高い。
「うーむ……そうか。分かった。考えてみよう」
俺の言葉に納得したのかどうか、ガイアはウーロン茶を飲み干し、また新たに1杯注文しながら、口を開く。
「取りあえずオルテガの件はこれでいいとしてだ。現在の月の状況についてだな」
「何か異常があったのか? 見た感じでは、特に何もなさそうだが」
「アクセルがいない間に、色々とあったぞ。それが表に出る出ないは別として」
そう告げるガイアに、俺は特に驚く事はない。
月はこの世界において色々な意味で特殊な場所だ。
連邦軍にしろ、ジオン軍にしろ、もしくはそれ以外の弱小勢力にしろ、月という存在は無視出来ないのだ。
それこそ、月を巡って色々な事が起きていても、おかしくはない。
「ガイアとして興味深かったのはなんだ?」
「そうだな。何を血迷ったのか、海賊が襲ってきた」
「……それは、また……一体、何を考えてそんな真似をしたんだ?」
連邦軍の艦隊ですら、月を攻めて来ても惨敗したのだ。
そんな場所に、海賊……この場合は宇宙海賊だろうが、そんな連中が攻めて来て一体どうなるのか。
「その辺は俺にも分からん。だが、結局はメギロートとバッタによって確保されて、現在ではクレイドルで農業に専念してるよ」
「だろうな」
基本的に、クレイドルでは捕まったからといって、何もせずに食って寝るといった生活は出来ない。
それこそ、農業という仕事をやる必要があった。
サボろうとしても、それこそコバッタや量産型Wが見張っている以上、そのような真似は出来ない。
それでいながら、食事はマブラヴ世界の合成食……それも改良される前の、不味い代物だ。
……まぁ、本当に食う事も出来ないような者なら、そんな合成食でも食えるだけいいと思うのかもしれないが、普通の味覚を持っている者にしてみれば、とてもではないが合成食を食おうとは思えないだろう。
「取りあえず、農業をする奴は多ければ多い程にいい。そういう意味では大歓迎だな」
もっとも、基本的に店で売ってる野菜とかはそれを作っている者の写真が用意されている。
海賊のような顔をしている者の写真がある野菜は、何気に避けられそうな気がしないでもない。
あ、でも何だかんだで結構犯罪者は多くなってるし、そういう意味ではクレイドルの住人も結構慣れているのか?
「もしかしたら……ああいう連中は、農業をやるのでもいいから、クレイドルに住みたいと思ってるのかもしれないな」
ガイアのその言葉に、本気か? と視線を向ける。
そもそもの話、クレイドルで農業をやる者は決して多くはない。
……もし最初から農業を希望するのなら、別に海賊となって意図的に捕まってそちらに回されるよりも、普通に農業を希望するとしてクレイドルに来ればいいだけの話だ。
基本的に罪人の仕事は農業だが、勿論普通の仕事としての農業もある。
それこそ、罪人とは違って結構な高給取りだ。
その分、仕事は結構辛いけど。
きちんと仕事としてやっていれば、合成食を食べるという……一種の罰ゲームをしなくてもいい。
利益は結構大きいのだが、それでも農業を希望する者が多くないのは……やっぱり農業は大変というイメージもあるんだろうな。
いや、決してイメージという訳ではないのだが。
手間暇を掛ければ、売りに出す野菜も高額で買い取って貰えるが、それは手間暇が面倒だという事も意味している。
「その辺はいずれ慣れていくだろ。人間、どういうのにも慣れってのは存在するんだし」
その好例が、ガイア達黒い三連星だろう。
ガイア、オルテガ、マッシュ。
3人ともが、全員強面というか迫力のある顔をしているのだが、そんな状況であるにも関わらず、クレイドルでは高い人気を誇る。
セイラとは別の意味で月の象徴に近くなり、宇宙の蜉蝣の異名を持つシーマには人気では及ばないが。
「ぐ……それを言われるとちょっとな」
ガイアも、自分の顔が強面だということは理解しているのだろう。
俺の言葉に何も言えなくなり……話題を変える事にする。
「他に俺がいない間に月で何かあったか?」
「あー……そうだな。グラナダの方でちょっと派手な動きがあったとかなかったとか。そんな感じの噂は聞いたことがあるな」
「グラナダ……か」
言うまでもなく、グラナダはキシリアの拠点だ。
そのグラナダで派手な動きが起きたとなると、それは俺にもちょっと気になるのは間違いなかった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1060
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1591