転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2554話

「今日はありがとう」

 

 そう言い、セイラは俺の前に紅茶の入ったカップを置く。

 ここは政庁にある、セイラの私室の1つ。

 正確には、お茶を楽しむ為の部屋……と言うべきか。

 俺も今まで何度も入った事がある部屋だ。

 とはいえ、本来ならこの部屋に入れる者というのは恐ろしく少ないのだが。

 セイラの私室という事は、つまりセイラにとって私的な相手……それも好意を持っている相手でもなければ、ここに招待するようなことはないのだから。

 そんなセイラの私室の1つで寛ぎながら、俺は紅茶を口に運ぶ。

 

「うん、美味い」

「そう、よかった。……それにしても、アクセルも色々な物を持ってきたのね」

 

 その色々な物というのが、何を示しているのかは明らかだ。

 つまり、俺が連邦軍から報酬として貰ってきたMSを含めた諸々だろう。

 ……さっきの会議では話に出なかったが、戦闘機の類も結構な量、貰ってきている。

 MS全盛の時代になりつつあるUC世界だが、地球上では空を飛べるMSは非常に限られている。それに宇宙での件を考えても、戦闘機、航空機、航宙機といった類はコスト的な面で、MSよりも圧倒的に優れていた。

 ルナ・ジオンがシャドウミラーの後ろ盾があって資源の類を気にしなくてもいいとしても、それでも全てをシャドウミラーに甘える事は出来ない……といったところか。

 例えば、クレイドルから他の月面都市に移動する時、MSで移動するとなると、相応にコストが必要となる。

 もっとも、もし襲撃されたという事を考えれば、航宙機の類よりもMSの方が安心なのは間違いないが。

 ただし、航宙機とかでの移動となるとMSよりも小さい分、見つかりにくいという利点もあるが。

 

「まあな。ただし、基本的にはディアナで解析が終わったらホワイトスターに持っていくから、戦力化は出来ないぞ」

 

 あくまでも、これはディアナに貸しているというだけだ。

 もしこれで、実は俺がディアナに預けたMSやら何やらは、譲渡されたなどと考えるような者がいたとすれば、そのような相手は相応の対処をする必要があるだろう。

 勿論、出来ればそのような真似はしたくないというのが正直なところだが。

 俺の前にいるセイラは、当然その辺りの事情を理解しているので、素直に頷く。

 

「分かってるわ。……そう言えば、少し話は変わるんだけど。アクセルがいない間に、月に新しい企業が参入してきたのだけれど」

「それは別に珍しい話でもないだろ?」

 

 セイラの言葉の意味が分からず、そう尋ねる。

 クレイドルはまだしも、月面都市という点で考えれば、多種多様な企業が存在しているのだ。

 以前までの月であれば、かなり強い影響力を持っていたアナハイム・エレクトロニクス。

 本拠地があるのは地球だが、フォンブラウンにもかなり巨大な社屋を持っているって話だし。

 それ以外にも多くの企業が月には存在する。

 ……それこそ、この商機を逃してたまるかと、クレイドルに進出を目論む企業も多い。

 とはいえ、コバッタや量産型Wの影響で後ろ暗いところがある企業は二の足を踏んでいるのだろうが。

 ただし、一切その手の後ろ暗いところがない企業というのも珍しいので、実際には月で後ろ暗い事をしなければ問題がないといった感じではある。

 そんな訳で、今から新しい企業が参入してくると言われても……寧ろ、行動を起こすのが遅いのでは? という思いの方が、寧ろ強い。

 

「そう思っても仕方がないけど、その企業は最近出来た企業で、とてもではないけど大きな企業とは言えないのよ。それこそ、寧ろ小規模と言ってもいいわ」

「それは……なるほど。少し珍しいな」

 

 これが、中堅や大企業であれば、行動が遅いと考えても不思議ではない。

 もしくは小規模な組織であっても、それなりに続いている企業だったり、もしくは月で新たに興された会社であれば、そこまでおかしな話ではない。

 だが……月に新たに参入してきたというセイラの言葉から予想すると、月以外の場所で新規に起ち上げられた会社であるにも関わらず、月にやって来ようとしたといったところか。

 正直な話、かなりリスクを負っているな。

 月の内情について詳しく知ってる俺なら、そこに大きな利益があると考えられる。

 だが、小規模で起業したばかりともなれば、得られる情報は決して多くはない。

 そんな中で月に来るとすれば……

 

「どこかの大企業や……場合によっては、政府の紐付きだったりしないか?」

 

 連邦、ジオン、サイド6……大きな勢力としてはそれくらいだが、他にも勢力という意味では色々と存在している。

 そのような勢力が、少しでも月の情報を集める為に小さな会社を作って月に向かわせたのではないか。

 そう疑ってしまうのは当然だろう。

 だが、そんな俺の言葉にセイラは首を横に振る。

 

「いえ、その会社……ブッホ・ジャンク社の人に会ってみたけど、そういう嫌な感じはしなかったわ」

 

 これが普通の女の言葉なら、そんな印象が何の役に立つと思ってもおかしくはない。

 だが、それを言ったのがセイラとなれば、話は変わってくる。

 現在UC世界において最高峰のニュータイプ能力を持っているセイラがそう思ったという事は、少なくてもセイラと会った相手は何かを企んでいたりといったような事はなかったのだろう。

 いや、勿論企業として何らかの企画を考えているとか、そういう事はあるだろうけど。

 ちなみに以前まではセイラをこのUC世界にて最高のニュータイプと呼んでいたのが、最高峰となったのは奇跡の子供達の件が原因だった。

 コロニー落としを予知――正確には違うのだろうが――するだけのニュータイプ能力を持っているのなら、それはかなり高いニュータイプ能力だと予想出来た為だ。

 実際にどれだけの能力を持っているのかは、話を聞いただけなので、まだ分からない。

 それこそ、直接会ってみない事には。

 だが……同時に、最初にアムロを会った時の事を考えれば、奇跡の子供達とも会わない方がいいのでは? という思いがある。

 アムロはそれなりに成長していた事もあり、俺と会った時の一件はトラウマになったものの、それを克服出来た。

 しかし……それがアムロよりも年下の子供ともなれば、一体どうなるのか。

 それこそ、強烈なトラウマを与えてしまう可能性もあった。

 普通ならそんな馬鹿なと思うのだがアムロと会った時の事を考えると……どうしても、そう思ってしまう。

 

「それで、ブッホ・ジャンク社って名前からすると、ジャンク屋か?」

「ええ。その辺の情報の早さも評価出来るわね」

「だろうな。……それこそ、一体どこから情報を得たものやら」

 

 月の周囲には大量の小惑星が浮かんでいる。

 いわゆる、スペースデブリだ。

 そのスペースデブリは、基本的にはただの岩塊だったりする事が殆どだったが、ぶっちゃけた話、シャドウミラーとしてはその岩塊が欲しい。

 ホワイトスターにあるキブツを動かす上での原材料は、何でもいい。

 それこそ、少し前まではマブラヴ世界の地球からBETAの死体が大量に運び込まれていたが、ハイヴがほぼなくなってしまった現在となっては、BETAの死体を用意出来ない。

 ……まぁ、火星には量産型Wやメギロート、イルメヤ、バッタ、コバッタといった戦力が現在は配備されており、そこで大量のハイヴに攻め込んでは、日々BETAの死体を大量に運んできているのだが。

 それ以外にも、シャドウミラーが国交のある世界からは産業廃棄物やゴミの類をかなり安い金額を貰って、キブツの原材料として使用している。

 そんな中でも、UC世界の月の周辺にあるデブリは、非常にありがたい代物だ。

 だからこそ、月の住人……それこそ、クレイドル以外の月面都市のジャンク屋が持ってきたデブリも、シャドウミラーが買い取るという事になっている。

 そういう意味で、月のジャンク屋というのは何気に高給取りになるのは間違いない。

 そんなジャンク屋産業に月以外の企業を入れるというのは、俺にとっても少し予想外だった。

 情報は……多分、月にいる住人から得られたんだろうけど。

 機密の類は厳しく監視しているが、問題がない手紙やメール、通信……といったものは、普通に許可している。

 だからこそ、その辺から情報を入手したのだろうというのは、何となく予想出来た。

 

「ともあれ、ブッホ・ジャンク社は特に問題はないと思うわ。……とはいえ、油断は出来ないでしょうけど」

「ん? 特に怪しいところはなかったんだろ? なら、いいんじゃないか?」

「それでも、全面的に信用する訳にはいかないでしょう?」

 

 何だかんだと、セイラも結構用心深くなっているな。

 まぁ、月の女王という立場にいれば、それも当然なのかもしれないが。

 そんなセイラを見ていると、ふとあの話をしてみてもいいかと、そう思う。

 何か明確な理由があった訳ではないのだが、それでも何故か今この瞬間にそう思ったのだ。

 

「セイラ」

「え? ……何、いきなり」

 

 いきなり自分の名前を呼ばれた事で驚いたのか、セイラが紅茶のカップをテーブルに置いて尋ねてくる。

 何だか頬が薄らと赤くなってるように思えるけど、風邪だったりしないよな?

 そんな風に思いつつも、多分大丈夫だろうと判断して言葉を続ける。

 

「このUC世界についての情報は、シャドウミラーと国交のある世界ではそれなりに知られている。……正確には、ホワイトスターで情報がある程度広まっていて、それを聞いた者達が自分達の世界に戻って話してるといった感じだが」

 

 ルナ・ジオン軍の精鋭の一人、ケンやその仲間と家族達は、一時的に身の安全を守るためにホワイトスターにいた。

 その辺からも、情報が広まったのかもしれないな。

 

「そう。……何だか微妙な気分だけど。それが、どうかして?」

 

 何故か少し不機嫌な様子になるセイラ。

 だが、数秒前の頬が赤くなっている症状も、今はもうない。

 女心は難しい。

 そう思いながら、説明を続ける。

 

「そんな中で、SEED世界という……MSを使う世界がある」

「知ってるわよ。私とシャドウミラーの付き合いがどれだけ長いと思っていて?」

「そうか。なら話は早い。そのSEED世界にアドゥカーフ・メカノインダストリーって兵器メーカーがあるんだが、その会社から1つの提案があった」

「アドゥカーフ・メカノインダストリー社?」

「ああ。俺も聞いた事がなかった会社だけど、どうやらMAの開発に興味があるらしい」

「それはまた……随分と物好きね」

「俺もそう思う」

 

 このUC世界と違い、SEED世界のMAというのは一般的に宇宙用の戦闘機とかの事だ。

 メビウスやメビウス・ゼロといったような戦闘機もMAに分類されているのを思えば、その辺を想像するのは難しい話ではないだろう。

 その上、SEED世界においてはMSが戦力の主力となっている。

 その辺の事情を考えれば、その状況でMA開発に興味を持つというのは……普通に考えて、かなり奇妙な話だ。

 

「ともあれ、物好きだろうが何だろうか、UC世界のMAに興味を持っているのは事実だ」

「つまり、ディアナと共同研究でもしたいと?」

「惜しい。正確には向こうが希望しているのはMIP社だ」

「でも……」

 

 セイラが何か言いたげな視線をこちらに向ける。

 それが何を意味しているのかというのは、俺にも容易に想像出来た。

 

「そうだな。MIP社は基本的にシャドウミラーやルナ・ジオンと親しい関係にあるが、それでも月のではなく、あくまでもジオン公国の兵器メーカーだ」

 

 元々、ルナ・ジオンとシャドウミラーが最初に接触したのはMIP社だし、ギニアスの件でも結構な人数を派遣して貰っている。

 また、ビグロやその生産設備を譲渡してきてもいる。……勿論、こちらは有料だが。

 グフ系の件や高機型ザクを譲渡してきたでジオニック社と、ヅダの件でツィマッド社が。

 その辺りの理由から、MIP社が少し危機感を抱いたというのもあるのだろうが……

 ともあれ、ジオンの独立戦争が終わった後ならMIP社をディアナが吸収出来るかもしれないが、今は無理だ。

 

「けどディアナにはMIP社出身の奴も多い。だとすれば、向こうの要望を一応満たしている訳だ。……ただ、今更、本当に今更の話だが、この世界の技術を考えると迂闊にSEED世界の技術を取り込むのはどうかと思ってな」

「本当に今更の話ね。そもそもルナ・ジオンではシャドウミラーの機体や他の世界の機体が普通に使われているじゃない」

「まぁ……それは否定しない」

 

 クレイドルでも、メギロートやバッタ、コバッタとかが普通にあるし、ルナ・ジオンが建国した当初にルナ・ジオン軍の主力機はSEED世界やW世界のMSだった。

 また、ハワイでは現在もSEED世界とW世界の水中用MS、水陸両用MSを普通に使っている。

 ……そう言われてみれば、確かに本当に今更の話なんだよな。

 そんな風に思いつつ、取りあえず戦争が終わった後で、SEED世界の技術とUC世界の技術を使ったMAについて相談するという事になったのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1060
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1591

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