転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2574話

『ふむ、分かりました。その辺は前もって約束した通りで構いません』

 

 ヤンマのブリッジにある映像モニタに表示されたキルスティンは、若干納得いかない様子ながらも、俺の言葉に素直に頷く。

 向こうにしてみれば、今回の一件……シムスとシャリアを俺が捕虜にし、更にはブラウ・ブロまで確保したのは、色々と思うところがあったのだろうが……それでも前もって約束していた以上、何も言えないといったところか。

 

「分かって貰えて何よりだ」

『それで、捕虜の方は?』

「見張りを付けてあるよ」

 

 見張りが人間ではなくコバッタである事は、取りあえず言わないでおく。

 今の状況でそのような事を言えば、それこそ人手が足りないのならと、誰かを派遣してくるとか言いかねないし。

 キルスティンは軍人らしい軍人だが、それでも今の状況でなら少しでもこちらの情報を掴む為の行動を躊躇したりはしないだろう。

 だが、ヤンマは現在のシャドウミラーの主力戦艦だ。

 カトンボ共々無人艦――今は量産型Wが艦長をしているが――でいながら、性能は非常に高い。

 そうである以上、こちらとしてはヤンマの情報を連邦軍に渡すのは出来るだけ避けたかった。

 実際には、こうして一緒に行動している間にも、サラブレッドやサラミスの方で色々と情報を得てはいるのだろうが。

 そのくらいの役得は、キルスティンにも……いや、連邦軍にもあっていいだろう。

 そもそも、これまでの戦いでヤンマが本気を出した事はない。

 基本的には武器で援護射撃の類を行うような事もなく、純粋にMS母艦としての役目しか果たしていない。

 それでヤンマがどのような軍艦なのかを確認しろという方が無理だろう。

 もっとも、その外見が連邦軍のサラミスやマゼラン、ジオン軍のムサイやザンジバルといった軍艦と比べても大きく違うので、必要なデータはそれこそ幾らでもあるのだろうが。

 

『そうですか。それは安心ですな。ですが、相手はジオン軍です。くれぐれも気をつけて下さい』

「ああ、その辺は全く心配はない」

 

 実際、もしシムスとシャリアが妙な真似をしたら、コバッタはその機銃を使って攻撃するだろう。

 ……あるいは、シャリアは恐らくニュータイプである以上、俺と接触してみたら面白い罰になるかもしれない。

 あ、でも俺と接触したニュータイプは体験する内容はそれぞれ違うらしいが、結果としてニュータイプ能力は強化される。

 シャリアが大人しく味方になるのならそれもいいが、意地でも月に味方をしないといったような事になった場合は、面倒な事になるな。

 ただ……これは念動力でも何でもないただの勘だが、シャリアと接した限りでは、ザビ家の狂信者だったり、我欲に塗れているといった様子もない。

 だとすれば、セイラと会えば意外とあっさり月に味方をするのではないか? と思わないでもない。

 

『それで、アクセル殿。今回の件はともかくとして……出来れば一度フォン・ブラウンに行きたいのですが』

「……フォン・ブラウンに? 一体何の為にだ?」

 

『補給をしたいのです。それで連邦軍がフォン・ブラウンのアナハイムに連絡をして、補給物資を用意して貰う事になったのですが、月は……迂闊に近づけませんので』

「だろうな」

 

 月の周囲には機動要塞が存在しており、無許可で近付いてくる相手がいれば、バッタやメギロート、強力な敵を相手にした場合は量産型Wの操縦するシャドウが出て来る。

 それは、キルスティンとしてもごめんなのだろう。

 とはいえ……当然のように疑問はある。

 

「それで、何でわざわざ月で補給を? ルナツーで補給を受ければいいと思うが」

『ルナツーよりも月の方が近いというのもありますし、何より現在の連邦軍はチェンバロ作戦の準備で忙しく、余裕がありません』

「なるほど」

 

 その言葉に頷くが、実際にはそれだけが全てという訳でもないだろう。

 間違いなく、それ以外の理由……具体的には月の様子を探るようにといったような命令がされていても、おかしくはない筈だった。

 ……とはいえ、見られて困るような事は……少なくても、フォン・ブラウンにはない。

 基本的にクレイドル以外の月面都市は、以前とそう変わらない。

 コバッタや量産型Wがいるという点が多少は違うのだろうが。

 それに、今の状況で月に行くというのは、俺にとっても悪い話ではない。

 捕らえたシムスとシャリアを引き渡す事が出来るし、ブラウ・ブロをディアナに渡すといった事も可能となる。

 あ、でもブラウ・ブロはニュータイプ用MAだし、そうなると譲渡されるのはニュータイプの研究をしている場所か?

 その辺の判断は、セイラか……もしくはアンリのような上層部の人間が判断するだろう。

 そうである以上、俺が考える必要はないか。

 とはいえ、ブラウ・ブロに使われている技術が気にならないかと言えば、また嘘になるのだが。

 ……ただし、ニュータイプというのは恐らくこのUC世界特有の存在だ。

 そうである以上、その技術をシャドウミラーで採用したとしても、それを使える者がいるとは思えない。

 あるいはニュータイプ能力の持ち主がシャドウミラーに入れば、ニュータイプ能力も使えると思うけど。

 ただ、有線で制御するビーム砲というのは、ちょっと興味深い。

 ファントムだったりソードブレイカーだったりが実用化されている以上、有線制御のビーム砲というのは採用されるかどうかは微妙だが、非常に興味深い技術であるのは間違いない。

 

「分かった。捕らえた連中も月に引き渡したいと思っていたしな。そういう意味では、一度月に戻るというのは俺にとっても悪い話じゃない」

『ありがとうございます』

 

 キルスティンの口から感謝の言葉が出る。

 ただし、サラブレッドのブリッジにいる面々がどう思っているのか……というのは、俺にも分からない。

 正直な話、向こうが妙な行動を取らない限りは見逃しても構わないと思っている。

 もしかしたら、サラブレッドもそれを理解した上で、その辺の行動をしているのかもしれないが。

 

「気にするな。それで月の滞在はどのくらいになる予定か聞いてもいいか?」

『そう時間は掛かりません。1日……何か問題が起きたらという事を考えると、2日といったところでしょうか』

「そうか。なら、余裕をもって2日にするか。もし時間が余ったら、フォン・ブラウンを見て回るといい。以前も大きかったが、今はもっと繁栄しているし、何より以前と違ってかなり安全になっている」

 

 夜に女が1人で出歩いても全く何の問題もないという点では、フォン・ブラウンに限らず……他の月面都市も含めて、治安は以前と比べても飛躍的に増している。

 そういう意味では、一般人にとって間違いなく暮らしやすくなったと言えるだろう。

 月をルナ・ジオンの手から解放するといったようなことを目的としたゲリラの類も、今はほぼ全て壊滅して存在していない。

 だからこそ、今この状況では……そんなゲリラの生き残りが1人もいないとは断言出来ないが、それでも地球圏全体で見てもハワイと同様に限りなく安全な地区なのは間違いない。

 

「この補給が終わってからも、また戦いの日々が始まる。そして遠くないうちにチェンバロ作戦が始まるんだ。それを思えば、今のうちに少し骨休めをしてもいいんじゃないか?」

『……そうですな。そう言って貰えるのであれば、お言葉に甘えましょう』

 

 キルスティンにしてみれば、自分の目でフォン・ブラウンをしっかりと見てみたいという思いもあるのだろう。

 何しろ、月がルナ・ジオンの領土となってから連邦軍が月に来たのはそう多くはない。

 だからこそ、ヤンマについての情報収集をしていたのと同じように、月面都市についても情報収集をしたいといったところか。

 機密情報の類を流さない限り、フォン・ブラウンを初めとする月面都市からでも普通に通信を送ったり、メールや手紙を送ったりといったような事は出来る。

 だが、自分の目でしっかりと確認するというのも、この場合は大きい。

 やはり、通信とかそういうのでは分からないような事も、実際に自分の目で見れば分かる事もあるのだから。

 キルスティンも、俺がそんな事を考えているというのは、当然分かっているだろう。

 それでも誘いに乗ってきたのは、余計な事……踏み込みすぎたりしない限りは、こっちからも特に妙な真似をしないと、そう判断している為か。

 

「月での休日を満喫してくれ。……もっとも、騒動は起こさないでくれるとこっちとしても助かるけど」

 

 フォルド辺りは、何となく問題を起こしそうな気がするんだよな。

 トラブルメーカー……いや、ゲートで転移した先々でトラブルを引き寄せまくっている俺が言うべき事じゃないか。

 ともあれ、こうして話は纏まり……サラブレッド隊は月に向かうのだった。

 

 

 

 

 

「シャリア、ちょっといいか?」

「何でしょう?」

 

 月に向かっている最中、俺はヤンマの中を見て回っていたシャリアを見つけて、声を掛ける。

 ブラウ・ブロに乗っていたのを思えば、ニュータイプの中でもかなり有望株の筈だ。

 そうである以上、少し話しておきたかった。

 ……ただし、ニュータイプである以上は俺と接触するような事は絶対に避ける必要があったが。

 

「お前の事を聞かせて欲しい。……お前は元々ジオン軍だったのか?」

「はい。木星エネルギー船団で隊長をしていました」

「……隊長? 艦長ではなくか?」

「はい」

 

 俺の問いに、落ち着いた様子で言葉を返すシャリア。

 今までのニュータイプといえば、小さいのは奇跡の子供達がそうだし、一番年上であってもセイラやアムロ、シャアといった感じで10代後半から20代前半といったような感じだ。

 そういう意味では30代から40代と思われるシャリアは、ニュータイプとしては非常に貴重な存在でもある。

 一体何が原因で、この年齢で覚醒したのか……もしくは、実は昔からニュータイプとして覚醒していたのが、今になってジオン軍に知られたのか。

 その辺の理由は具体的に分からなかったが、非常に珍しい存在であるというのは間違いのない事実だった。

 

「シャリアがニュータイプとして覚醒したのはいつだ?」

「さて……そう言われても、正確には分かりませんとしか答えられませんが」

 

 なるほど。

 どうやら、自分でも自覚出来るようなニュータイプとしての覚醒というのはなかったらしい。

 

「なら、何が理由でニュータイプとして覚醒したと思える?」

「分かりません。ただ、フラナガン機関の研究所では、木星に移動したのが何か関係があるかもしれないと、そう言われてはいますが」

「木星? けど、エネルギー船団は別にシャリアだけじゃないんだろ?」

「そうですね。結構な人数がいます」

 

 そうなると、木星に行ったからといってニュータイプになれる訳じゃないか……もしくは、ニュータイプとしての素質がある者だけが木星に行けばニュータイプになれるのか?

 木星云々というのが、そもそも全くの勘違いという可能性もある以上、はっきりとは言えないが。

 ただし、これは試してみる価値があるな。

 あるいは……本当にあるいはだが、木星に行っただけでニュータイプになれるのだとすれば、ルナ・ジオン……いや、シャドウミラーにとってはこれ程美味しい事はない。

 もっとも、そのような真似をすれば当然のようにシステムXNについて知られる事になるだろう。

 出来れば、その辺はまだ避けたいんだよな。

 木星に行くというのが、実際に自分の目で木星を見ないといけないのか、それとも見えなくても木星の近くに移動すればそれで十分なのか。

 もし後者でも十分なら、宇宙船の中に入れてシステムXNで転移してしまえば、それで問題はなくなるが。

 ……ただし、セイラやアムロ、シャア……はニュータイプなのかどうかはまだはっきりとしないが、他には奇跡の子供達も当然のように木星に行った事がある訳ではない。

 だとすれば、ニュータイプと木星は関係ないのか?

 もしくは、木星もニュータイプになる要員の1つであるだけとか?

 その辺りのはっきりとした理由は分からないが、取りあえずこの件はセイラに報告して試してみる価値はある。

 もしくは、恐らく駄目元ではあるが、シャドウミラーの人員をUC世界の木星に連れて行ってニュータイプに覚醒するかどうかを試してみるか。

 ただ、ニュータイプというのは基本的にはUC世界独自の概念なんだよな。

 だとすれば、UC世界以外の人間がニュータイプに覚醒するかどうかは微妙なところだ。

 とはいえ、全く期待出来ない訳でもない。

 例えば俺のSPだ。

 ステータス上はSPという数値なのだが、ネギま世界やFate世界、ペルソナ世界においては魔力として認識される。

 また、どの世界でも魔力という言葉は同じでも、その本質は微妙に違っていたりするのに、その全てでニュータイプとして対応出来るのだ。

 これが俺だけなのか、他の者も同じなのか。

 そして他の者も同じ場合は、もしかしたら……本当にもしかしたらだが、シャドウミラーの人間でもニュータイプとして覚醒する可能性はある。

 そんな風に思いながら、俺はシャリアと会話を続けるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1060
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1591

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