「おう、アクセル!」
フォルドが俺を見て、元気に手を振ってくる。
そんなフォルドの横では、ルースも手を振っていた。
また、2人の側にはミユの姿もあり、俺を見て頭を下げてくる。
昨日月に戻ってきたのだが、やはりと言うべきか1日でサラブレッド隊の補給は終わらなかった。
もしくは、補給は終わっていたのだが、サラブレッド隊の面々に休養をさせる為に今日は休みにしたのか。
ともあれ、今日の俺はフォン・ブラウンにやって来た。
「月はどうだ?」
フォルド達に近付き、そう尋ねる。
フォン・ブラウンも、以前……ルナ・ジオン建国前と比べると、やはり変わっていた。
特に大きいのは、コバッタや量産型Wが結構な数街中にいるといったところだろう。
連邦軍の兵士がいなくなったので、治安を守るという意味も含めて考えると、コバッタや量産型Wの仕事は大きい。
「そうだな。地球に比べると随分と違う」
「俺が見た感じだと、以前とは随分変わったな。……正直なところ、以前と比べて賑わってると思う」
フォルドとルースがそれぞれ答えるが、その様子を見る限りだとフォルドはフォン・ブラウンに来たのは初めてで、ルースは以前にもフォン・ブラウンに来た事があったらしい。
ミユの方は? と視線を向けると、ミユは少し考えてから口を開く。
「以前聞いていた話からは、違いますね。……ただ、ルースの話を聞いた限りだと、今の方がいいようですけど」
「……それは否定しない。以前の月の中には連邦軍を嫌って連邦軍の兵士に因縁を付けるような奴もいたからな。それ以外にも柄の悪い奴も減ってるのが分かる」
複雑な表情を浮かべるルース。
ルースにしてみれば、以前来たフォン・ブラウンとここまで変わっているというのは、色々と思うところがあるのだろう。
とはいえ、以前と今ではどっちが暮らしやすくなったのかをフォン・ブラウンの住人に聞けば、殆どが今と言うだろうが。
後ろ暗いところがある奴は、それこそ捕まって農業をさせられているか、もしくは捕まる前に逃げ出したかといったところだろうし。
そういう意味では、そのような意見が返ってくるのは当然……といったところか。
「それで、どこに行く?」
フォルドが気楽な様子でそう告げる。
相棒のルースが複雑な表情を浮かべているのは、気にしていないらしい。
ある意味、フォルドらしいと言えばらしいのだが。
とはいえ、そんなフォルドの言葉がルースの気分を切り替えさせるという意味では間違いなく……ルースはしょうがないといった笑みを浮かべつつ、口を開く。
「俺が以前フォン・ブラウンに来た時、美味かった料理を出す店があるんだ。そこに案内するよ」
「お、いいね。丁度腹が減ってたところなんだ。ミユもアクセルもいいよな?」
いいよな? と一応聞いている形だったが、フォルドの表情に浮かんでいるのは、もう決定したと、そう言ってる様子だ。
とはいえ、俺も別にそれは反対ではない。
混沌精霊となった俺にとって、食事は必須ではない。
だが、味を楽しむことは十分に可能だし、それ以外にも食べた料理はすぐに体内で吸収して魔力に変換される。
そういう意味では、食事の意味がない訳ではない。
……ただし、魔力に変換される関係上、幾ら食べても全く太らないというのは、他の者……特に女に知られると、呪われそうな視線で見られたりするから、注意が必要だったりする。
今日はミユも一緒だから、その辺は特に注意する必要があるだろう。
俺から見れば、ミユはその辺を気にしなければならない身体には見えないんだが。
ただし、それを口に出すと酷い目に遭うのはレモン達との付き合いで十分に理解しているから、口に出すことはない。
「ああ、俺もそれで構わない。一体どんな料理を食べさせてくれるのか、楽しみにしてるよ」
そんな俺の言葉に、ルースは余程自信があるのか、その店に俺達を案内する。
以前ルースがフォン・ブラウンに来たのは、ルナ・ジオン建国前だ。
そうなると、月で新鮮な食材が入手出来たとは……いや、でも月は以前から経済活動の中心地と言ってもいい場所だった。
それだけに、当然のように各企業から多くの資本が投下され、繁栄していたとしてもおかしくはない。
実際、フォン・ブラウンが月面の中でも一番栄えていた……それこそ、クレイドルが首都になる前は月の首都と呼んでもいいような場所だった。
それは、地球圏でも屈指の大企業たるアナハイムが資本を大規模に投下したからという理由もある。
……それ以前に、コロニーを建設する際の資材各種を一旦フォン・ブラウンに集めてから、コロニーを建設する予定の宙域にマスドライバーや輸送船で運ぶといった真似をしたので、アナハイム以外にも連邦が大規模に資本投下をしたのは間違いなかったが。
つまり、このフォン・ブラウンであれば本来なら地球とかに出なければ食べられないような新鮮な食材が豊富にあってもおかしくはないという事なのだろう。
ルースの案内に従って歩きながら、3人に尋ねる。
「それで、アナハイムからの補給は満足出来たのか?」
「満足……うーん……そうだな……」
ルースが難しそうな、それでいてどこか面白そうな表情をフォルドに向ける。
そのような表情を向けられたフォルドは、微妙に嫌そうにしていた。
何だ? 何かあったのか?
そんな意味を込めてミユに視線を向けると、ミユは笑いを堪えながら口を開く。
「実は、アナハイムにはルースの知り合いがいたんですけど、その人にフォルドはやり込められたんですよ」
「それは……なるほど。何でフォルドがこんな表情をしているのかが、理解出来た」
「けっ!」
俺の言葉に、不満そうな様子を見せるフォルド。
こうして見る限りでは、フォルドにとって余程面白くない出来事だったのだろう。
とはいえ、そんなフォルドではあるが本気でへそを曲げている訳ではないのは明らかだ。
「俺とルースのどこが似てるんだよ。俺は将来的に禿げたりなんかしねえぞ」
「おいっ! そういう意味じゃないだろ!」
フォルドの言葉に、ルースがそう叫ぶ。
……うん。ルースは髪の毛を結構気にしていたからな。
苦労性なのか、戦闘のストレスなのか、遺伝的なものなのか……その理由は分からなかったが、ルースの額が後退してきているのは事実だ。
誰が言ったのかは分からないが、ルースとフォルドが似てるってのは、別にその辺について言った訳じゃないと思うんだけどな。
ただ、俺が見た感じではルースとフォルドが似てるとは、到底思えない。
フォルドが楽観的な性格をしており、どこかゲーム的な感覚で戦争を見ているのに対して、ルースは慎重な性格をしており、しっかりと戦争を現実として見ている。
とはいえ、フォルドの場合はそんな感覚でもしっかりとした技量があるからこそ、それに対して他の奴は何も言えないんだよな。
ともあれ、そんな2人が似てるとは思えない。
それを言った奴は一体何を考えてそんな事を言ったんだろうな。
「ついだぞ、ここだ」
フォルドと似ているという話を誤魔化すように、ルースがそう告げる。
そんなルースが示したのは、一軒の店。
その店は、そこまで大きな店ではない。
いわゆる、チェーン店の類ではなく個人でやってる店だ。
外側から見た感じでは、雰囲気のいい店のように思える。
「わぁ……よさそうなお店ですね」
その店を見て、ミユが感嘆の声を上げる。
どうやら、ミユの目から見てもあの店はいい店だと思ったのだろう。
「ふーん。……まぁ、いいんじゃないか?」
フォルドは納得した様子ではないらしいが、それ以上不満を口にする様子はない。
「さぁ、入ろう。いつまでも外にいると目立つし」
「……目立つか?」
ちなみに、当然の事ながらフォルド達は連邦軍の軍服ではなく、私服を着ている。
基本的に月で軍服を着ていても問題はないのだが、月には元々連邦軍を面白く思っていない奴も多い。
そういう連中にとっては、月が独立したのを契機に、月で連邦軍の軍服を着ている奴がいれば絡んでいく……という問題が起きているという話は聞いていた。
とはいえ、当然の話だがフォン・ブラウンの治安はコバッタや量産型Wによって守られている。
連邦軍に絡んで、その結果として問題を起こせばそいつは農作業の強制労働となる。
……ちなみに、農作業=強制労働といったような認識になりやすいが、クレイドルには強制労働でも何でもなく、普通に農業をして生計を立てている者も相応にいる。
それも、この月での農作業である以上、当然のようにかなり高給取りだったりする。
その上、強制労働の方はその役割から機械の類は殆ど使わずに昔ながらの手作業での仕事となっているが、普通に農家をしている家なら機械を使って効率的に仕事を進めていた。
とはいえ、人間というのは農薬の類を使わないで収穫された野菜の方を好ましいと思うのは間違いない。
そのような野菜は本来なら高額なのだが、罪を犯して捕まった罪人の作った野菜という事で、野菜の値段はそう高くはない。
とはいえ、そのような野菜は当然のように数は少なく、実際に購入されている野菜は農家の方が多いのだが。
ただし、実際にクレイドルで農業を始めた時期から考えると、まだそこまで多くの野菜が収穫は出来てないのは当然だろう。
「さぁ、入ってくれ」
ルースが、まるで自分の家のような態度で、俺達を店の中に案内する。
そうして店の中に入ると、店の外見と同様に中の雰囲気も悪くはない。
客の数はそれなりに多いが、満席といった訳ではない。
店の雰囲気を考えれば、本番は夜なのだろう。
それを考えれば、昼にここまで客が入ってるのは十分なのだろう。
「いらっしゃいませ。……あら。ルースさん?」
店の中に入ってきた俺達を見た店員が近付いてくると、その店員の女はルースを見てそう笑みを浮かべている。
どうやら、ルースが店を気に入っていたように、店の方でもルースの事を覚えていたらしい。
店員は美人ではなく可愛いという印象を受ける女だ。
ルースの方もそんな女に笑みを向けているのを考えれば、それなりに嬉しいのだろう。
「久しぶり。今日は知り合いを連れて来たんだけど、4人分頼めるかな?」
「はい、こちらにどうぞ」
笑みを浮かべる店員。
その笑みは、久しぶりにルースと会ったからなのか、それとも店に客がやって来たからか。
何となく後者なような思いをしつつ、テーブルに案内される。
4人なので、普通のテーブル席で十分だった。
そうして水とメニューが俺達の前に置くと、店員は去っていった。
「それで、この店のおすすめは?」
「肉料理だな。タンシチューとビーフシチューは両方ともお勧めだ。それ以外にもクリームシチューとか、煮込み料理が美味い」
「それはいいな」
タンシチューとか結構聞いたことはあるが、実際に食べる機会というのはそう多くはない。
ビーフシチューの肉を牛タンにすれば、タンシチューになるんじゃないか? と思わないでもなかったが、一般的にタンシチューと言われている料理は分厚い牛タンを長時間煮込んだ料理だ。
具材も基本的には牛タンだけ。
とはいえ、それはあくまでも俺が知ってる情報だし、店によっては他にも具材を入れたりしてもおかしくはない。
それに対し、ビーフシチューというのは、ジャガイモ、タマネギ、ニンジンといった野菜が具材として入っている。
肉も牛肉ではあるが、色々な部位が使われる。
すね肉、すじ肉といったように長時間煮込めばとろけるような柔らかさを持つ部位や、しっかりと噛み応えのある、これぞ肉といったようなもも肉。
ただ、マリューや千鶴が作ってくれるビーフシチューの場合、もも肉の場合は長時間煮込まず最後の方で焼いてからビーフシチューに混ぜてルーに馴染ませるように煮込むのだが。
長時間煮込んだ、口の中で解れるような肉よりも、しっかりとした噛み応えのある、これぞ肉といった食感の方を俺が好むためだ。
「そうだな。なら俺はタンシチューとビーフシチュー。それとパンを貰うか」
「……そんなに食べて大丈夫なのか?」
フォルドが呆れたように、そしてミユが羨ましそうにそう言ってくるが、俺は問題ないと言葉を返す。
それこそ、食い放題だったり、何分以内に食べれば無料という挑戦メニューの類があれば、俺としては望むところなんだが……残念ながら、この店はそういうのがある店ではなく、落ち着いて、ゆっくりと食事を味わうような店だ。
そう言えば、フォン・ブラウンにその手の店があるかどうかは確認してなかったな。
ここでの食事が終わった後で、その手の店を探してみるのも面白いかもしれない。
そんな風に考えながら、他の面々がどのような料理を注文するのかを楽しみにしながら……そう言えばデザートを注文していなかったと思い出し、再度メニューに視線を向けるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1060
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1591