ビグロ。
それはMIP社が開発したMAだが、当然のようにジオン軍がソロモンを守っている部隊を攻撃する筈がない。
そうなると考えられるのは、あのビグロはルナ・ジオン軍に譲渡された物だという事だろう。
元々、チェンバロ作戦に参加していたルナ・ジオン軍の中には、ビグロの部隊がいるという話は聞いていた。
そして、そのビグロ部隊を率いてるのが、ガトーの戦友たるケリィであるとも。
『お待たせしました、アクセル代表』
そうして映像モニタに表示されたのは、俺が予想した通りケリィの顔。
獰猛な笑みを浮かべつつ、言葉を続ける。
『ルナ・ジオン軍は現在ソロモンを攻略しています。自分達はアクセル代表の援護に向かうようにと言われ、やって来たのですが……問題ありませんか?』
「ああ。とはいえ、こっちも……」
そう言いつつ、背後……MS部隊が暴れている方に視線を向ける。
そこで行われていたのは、高機動型ギャンが2機だけではなく、サラブレッドとホワイトベースに所属しているMSも戦いに加わっているところだった。
どうやら、いつの間にか追いついてきていたらしい。
「見ての通り、向こうでは連邦軍のMSが戦っている。……言っておくけど、攻撃はするなよ。攻撃されたら話は別だが」
そうケリィに言うが、一応ビグロ隊のことはサラブレットやホワイトベースに言っておいた方がいいだろう。
俺からの連絡が入っていたとなれば、サラブレット、ホワイトベース双方共に間違ってもビグロを攻撃しようなどとは思わない筈だ。
ただ、問題なのはサラブレットとホワイトベース以外の連邦軍か。
今はここにいる戦力だけである程度何とかなっているが、それはあくまでも今だけの話だ。
ソロモンがすぐ近くにある以上、いずれ多くの連邦軍が殺到してくるのは間違いない。
そうなると、当然の話だがビグロ隊が連邦軍に攻撃を受ける可能性がある。
友軍信号を出していれば、多分問題ないとは思うんだが……それでも確信を得る事は出来ない。
連邦軍の上層部の中にも、月やシャドウミラーを邪魔に思っている者は決して少なくない。
そんな者達にしてみれば、この戦場で見知らぬMAが……それも外見だけで考えれば、明らかにジオン系と呼ぶべき存在が姿を現せば、行動を起こすのはおかしい話ではない。
とはいえ、そのような真似をすれば当然のように後々問題になるのは確実だ。
そうである以上、そう迂闊な真似は出来ない……と、そう思うんだが。
『分かりました。……ガトーを少し驚かせてやりたいので、これで失礼します』
「一応俺からも連邦軍に声を掛けておいた方がいいし、弾薬の類もかなり消耗したから、俺も行く」
そう言いながら、メガビームキャノンを撃ってムサイを1隻撃破する。
今のを見て、ケリィからはどこが弾薬の消耗を? といった視線を向けてくるが、メガビームキャノンの方は問題ない。
あくまでも足りないのはミサイル等の実弾なんだよな。
いや、ビームライフルの問題もあるが。
『分かりました。……では、ビグロ隊はアクセル代表と行動と共にします』
そう告げるケリィに頷き、俺は最後の一撃と残っているミサイルの全てと左右両腰のビーム砲を撃ってその場から離脱する。
てっきり追撃があるかと思ったのだが、幸いな事にそのような事はなかった。
多分、重装フルアーマーガンダムとビグロ隊によって受けた被害が、向こうの予想を大きく超えていたんだろう。
結果として、逃げ出す俺達を見ても追撃をするといったような事はなかった。
とはいえ……それはあくまでも軍艦の群れに関しての話であり、MSが戦っている戦場まで戻ってくると、またそこでは当然のように大きな戦闘が行われていた。
『うわぁ……』
ケリィの声とは思えないような、そんな声が通信で聞こえてくる。
……まぁ、ガトーの圧倒的なまでの戦いを見れば、その気持ちも分からないではないが。
そんなガトーは、こちらの姿を見つけたのだろう。
ビームランスでザク2機の胴体を同時に貫くと、それを振り払ってからこちらに近付いてくる。
『アクセル代表? その……そちらのMAは……』
『俺だ、ガトー』
『ケリィ!?』
まさか、ガトーもケリィがビグロに乗っているとは思わなかったのか、驚きの声を上げる。
とはいえ、今の状況を思えばいつまでも驚かせておくままといったようなことも出来ないだろう。
「ガトー、ケリィとビグロ隊はここで戦うから、連邦軍が妙な真似をしないように注意してくれ。……まぁ、ビグロに攻撃を当てるのは難しそうだけどな」
ビグロは運動性こそ低いが、機動力という点ではかなり高い。
それだけに、もし狙ったとしてもそう簡単に攻撃を当てるような真似は出来ないだろう。
それでも万が一を考えれば、その辺は心配しておくに越した事はないのだ。
『分かりました。それで、アクセル代表はどうするのですか?』
「俺は一旦ヤンマに戻って補給だ。ミサイル系の残弾がもうほぼないからな。それが終わったら、またすぐに出撃すると思う」
『お気を付けて』
俺の言葉にガトーは短くそれだけを言ってくる。
「ああ。そっちもな。もう少しで連邦軍の本隊も到着するだろうから、それまでは頑張ってくれ」
実際問題、俺達……ルナ・ジオン軍がここまで活躍した以上、連邦軍としてもそれを放っておく訳にはいかないだろう。
もしこの状況で……具体的には俺達の活躍だけでチェンバロ作戦が成功した場合、連邦軍としては面子が立たない。
それだけではなく、ただでさえルナ・ジオン軍の攻撃によってソロモンの最終防衛線を突破したといった形である以上、危険な場所を俺達に任せているのだ。
そんな状況で、更にソロモン攻略までされてしまったら……このチェンバロ作戦の主役は、ルナ・ジオン軍だったという事になってしまう。
実際にはソロモンを焼いたソーラ・システムの働きもかなり大きかったのだが、それは遠距離から大規模破壊兵器を使っただけでしかない。
そうである以上、当然のようにルナ・ジオン軍の方が目立ってしまうだろう。
幾らこちらと友好的に接しようとしているレビルであっても、これは致命的なのは間違いない。
だからこそ、ここまで俺達が活躍してソロモンの防衛戦力を一定数減らした以上、連邦軍が出て来るのは時間の問題だった。
そう思えば、いっそ後は全て連邦軍に任せた方がいいのかもしれないが……しかし、今の状況を思えば、そんな訳にもいかない。
そもそもの話、今回俺達がこの戦いに参加した理由の1つはルナ・ジオン軍の力を連邦軍に見せつける為というのがある。
戦後の事を念頭にした場合、この判断は決して間違ってはいないだろう。
『分かりました。とはいえ、こちらもそろそろ補給に戻る必要が出て来たので、アクセル代表が戻ってきたら入れ替わりにヤンマに戻る事になると思いますが』
そのガトーの言葉に納得する。
何だかんだと、ギャンも戦い続けているのだ。
重装フルアーマーガンダムとは違ってビームランスが主力だが、速射砲やシールドミサイルの類も牽制としては使われる。
そうである以上、戦いの中で消耗していってもおかしくはない。
寧ろ、多数のMSを相手にここまで保った辺り、凄腕と言ってもいい。
「そうだな。じゃあ、俺が戻ってくるまで待っていてくれ。何かあったら、ビグロ隊に任せてもいいと思うぞ」
実際、サラブレッドやホワイトベースからやって来たMSもいるので、ジオン軍のMSは加速度的に減っている。
そこにビグロという、極めて強力なMAが……それも一部隊として乱入してきたのだから、ジオン軍にとっては泣きっ面に蜂といった感じだろう。
それでもソロモンという要塞の中には、まだ相応に戦力が残っているのは間違いないだろうが。
ともあれ、チェンバロ作戦はこれからが恐らくクライマックスだ。
そうである以上、そのクライマックスには乗り遅れないように準備をする必要があるのは間違いない。
そんな訳で、ヤンマの格納庫に入るとすぐに補給を指示する。
それと1発でも撃てればいいので、ビームライフルや2連装ビームスプレーガンの充電も念の為に指示しておく。
これ……急速充電とか、そういう機能が欲しいところだな。
ともあれ、そうして指示を終えると、次に行ったのはサラブレッドに通信を送る事だ。
「キルスティン、言うまでもないし、戦場を見ていれば分かると思うが、戦いに乱入してきたビグロ……あのMAは、ルナ・ジオン軍の戦力だ。くれぐれも攻撃しないようにしてくれ」
映像モニタにキルスティンの顔が映った瞬間、即座に用件を告げる。
補給作業がどれだけの間続くかは分からないが、それでもあまり時間がないのは間違いない。
この後はガトーとノリスも俺と入れ替わりにヤンマに戻ってきて補給作業をするのだから。
『了解しました。では、ホワイトベースの方にもその旨、伝えておきましょう』
少し……いや、かなり意外な事に、キルスティンはすぐに俺の言葉に頷く。
「まさか、そう簡単に納得するとは思わなかったな」
『今の戦場を見れば明らかでしょう』
そう言い、キルスティンはサラブレッドのブリッジで確認しているのだろう映像をこちらに流す。
そこでは……ガンダムがビグロに掴まりながら移動しており、ビームライフルを撃って敵を倒すといったような戦闘を繰り広げている。
なるほど、ビグロをSFS代わりにしている訳か。
あのビグロに乗ってるのは、ケリィ……じゃないな。ビグロ隊の誰かだろうが、この光景を見て連邦軍と敵対していると思うような者は、まずいない筈だ。
少なくても、これを見て実はビグロはガンダムを撃破する隙を狙っている……などと言うような奴は、それこそ頭がどうかしてるんじゃないかと、そう思ってしまう。
「分かった。なら、ホワイトベースの方にも連絡をしておいてくれ」
『了解しました』
そう言い、キルスティンからの通信が切れる。
ここにいたのがサラブレッドとホワイトベースで本当によかったな。
もしここに以前サラブレッド隊を構成していた時のサラミスが2隻いれば、それこそ嬉々としてビグロに攻撃をしていたという可能性は十分にある。
そういう意味では、連邦軍……というか、チェンバロ作戦を行っているレビルやその周辺はしっかりとこっちの事を考えているのか。
連邦軍としても、ジオン軍と戦っている最中にルナ・ジオン軍という敵を作りたくはないだろうしな。
「アクセル代表、ビームライフルと2連装ビームスプレーガン以外の補給は終わりました!」
と、そのタイミングでディアナの技術者がそう声を掛けてくる。
コバッタの性能故か、ミサイルとかの補給は結構素早く終わったな。
「充電の方はどうなっている?」
「ビームライフルは残弾3、ビームスプレーガンは残弾4といったところかと」
「そうか。そのくらいあれば……まぁ、十分だろ。俺が出たらすぐにガトーとノリスが戻ってくるから、そっちの補給の準備もしておけ」
そう告げるが、ぶっちゃけ高機動型ギャンの補給ともなれば、推進剤と速射砲、シールドミサイルの補給くらいしかやるべきことはない。
ディアナの技術者としては、それこそここまで派手に動いた高機動型ギャンの各種データを取りたいだろう。
だが、今はそのような事をしていられるような状況ではない以上、その辺はチェンバロ作戦が終わってからという事になる。
……取りあえず機体が損傷するといったような事は、ガト-やノリスならそこまで心配する必要もないだろう。
「分かりました!」
そう答え、すぐに高機動型ギャンの補給準備を始めるディアナの技術者を一瞥してから、俺は重装フルアーマーガンダムのコックピットに向かう。
機体を起動させ、充電していたビームライフルを持ち上げてから、機体の状況をチェック。
先程聞いた通り、補給は終わっている。
ただし、ビームライフルと2連装ビームスプレーガンの方は駄目か。
腰のビーム砲やメガビームキャノンのように、動力炉から直接エネルギーを貰えればいいんだけどな。
ただ、ミサイルの類は全弾補給済み。
何気にミサイルというのは、目眩ましだったり、牽制だったり、敵を撃破したりと、使い勝手は悪くないんだよな。
とはいえ、ミノフスキー粒子のせいで基本的には撃ちっぱなしで誘導の類は出来ないので、使うにはコツがいるのだが。
その辺りは、命中のステータスが高い俺なら、ある程度どうとでもなったりするのだが。
そうして準備を終え……いざ出撃という時、艦長をしている量産型Wからの通信が入る。
『アクセル代表、ソロモンに動きがありました。巨大な……MAと呼ぶべきかどうかは分かりませんが、そんな敵が出撃してきます』
量産型Wは、いつものように声音を変えたりせず、冷静な様子でそう俺に告げるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1185
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1616