巨大MAは動きを止めた。
俺の中にも、コックピットを貫いたという確信があった。
だが、それでもこれだけの巨体だ。
もしかしたら、ビームで貫いたのはこの巨大MAのコックピットではなく、まだ何か隙を窺っている可能性があるのでは? と思い、一応念の為にステータスを確認する。
すると撃墜数が1上がっており、それによってようやくこの巨大MAを撃破したとのだという事を納得出来た。
ステータスで撃破したかどうかを確実に確認出来るってのは、何気にかなり便利だよな。
そう思いながらも、溜息が出る。
結局、この巨大MAは無傷で確保することは出来なかった。
それどころか、コックピット部分にかなり大きなダメージを与えてしまったのだ。
勿論、コックピットにあのバリアのシステムの中心があったとは限らないが、それでも……そう、それでもあのバリアを起動させるシステムがあったのは間違いない。
この巨大MAを調べれば、多分あのバリアについては何らかの情報を得られるだろうが、それでもやはり完品で持ち帰りたかったいうのが正直なところだ。
後の可能性としては、ソロモンにこの巨大MAの情報がないかという事だが……そうだな。ルナ・ジオン軍を率いてる面々やガトー、ノリスに可能な限りその辺りの情報を持ち帰るように通信しておくか。
「ルナ・ジオン軍でこの通信を聞いてるのは誰がいる?」
ルナ・ジオン軍のチャンネルで通信を送ると、やがて映像モニタにはシーマの顔が映し出される。
『久しぶりだね、アクセル』
「シーマが来てたのか。……まぁ、考えてみれば当然か」
シーマは、ある意味でルナ・ジオン軍の象徴とも呼ぶべき存在だ。
ジオン軍によって騙され、コロニー内で毒ガスを使わされたのだから。
その辺りの事を告発した事により多くの者がシーマの境遇に涙し、それでも前向きに生きてきたシーマは多くの者に慕われていた。
……シーマが美人だというのも、この場合は関係しているのだろうが。
まさに悲劇のヒロインといったシーマは、その美貌や操縦技術の確かさ、海兵隊を仕切る指揮能力から、現在では宇宙の蜉蝣の異名を持つ。
そんなシーマが指揮をする海兵隊は、ルナ・ジオン軍の中では特別な権限を持つ事でも知られている。
そんな海兵隊だけに、チェンバロ作戦の援軍として参加するのはおかしな事ではなかったのだろう。
勿論、ラルやガイア達も来ているのを考えれば、海兵隊だけではないのだろうが。
『それで? 通信を送ってきたのは何でだい? 今は戦いで忙しいんだけどね』
恐らく、シーマは戦いながらこちらに通信を送っているのだろう。
この辺りは、さすが異名持ちといったところか。
「出来るだけ早くソロモンの内部に侵入して、コンピュータ……特に技術関連のデータを押さえてくれ。そっちから俺の姿が見えているかどうかは分からないが、この巨大MAはビームを防ぐバリアのようなのを持っていた。それ以外にもアプサラスⅢと同等、もしくはそれを超える大出力のメガ粒子砲を撃ったりしてるから、出来ればその辺のデータも欲しい」
『ふむ。なるほどね。アクセルが戦ったMAについては、こっちでも確認していたよ。ビームを防いだのも見ている。……個人的には、何でそんなバリアを持っているMAにビーム兵器を命中させる事が出来たのかが、知りたいけどねぇ』
どうやら、俺が精神コマンドの直撃を使うところもしっかりと見ていたらしい。
相変わらずの抜け目のなさだが、そのような抜け目のなさだからこそ、半ば独立している、もう1つのルナ・ジオン軍とも呼ぶべき海兵隊を任されているのだろうが。
「見ていたなら分かるだろう。この巨大MAは、間違いなくルナ・ジオン軍にとって大きな意味を持つ。……それと、可能ならドズル・ザビの身柄も確保しておいて欲しい」
ドズル・ザビ。
その名前を聞いたシーマの表情は若干嫌そうなものになる。
シーマにとって、ザビ家というのは自分に毒ガスを使わせた者の名前だ。
……ドズルがその辺の事情を知っていたかどうかは、微妙だと思うが。
当時のシーマは突撃機動軍に所属していた。
つまり、キシリアの部下だったのだ。
そのキシリアは毒ガスの件を知っていた可能性は高いが、ドズルがそれを知っていたかとなると……正直、どうだろうな。
ただ、ドズルはザビ家の中でも軍事の専門家という立場だ。
その辺の事情を考えれば、もしかしたら知っていたという可能性は決して否定出来ない。
シーマの中にあるのも、そんな複雑な思いなのだろう。
「シーマの気持ちも分かる。だが、ドズル・ザビはザビ家の中ではまともな人材と言ってもいい。それに、ジオン軍の軍人の中でも慕っている者は多い。それだけに、押さえておけば使い道は色々あるのも事実だ」
『……分かったよ』
俺の言葉に納得したのか、それとも納得はしていないが仕事だからと判断したのか。
その辺りの事情は分からなかったが、それでもシーマは俺の言葉に頷いた。
「悪いな」
『いいさね。アクセルには色々と世話になってるし。それを思えば、それくらいはどうって事ないよ。それに、ザビ家に関してはドズルとガルマには特に恨みがある訳じゃないし』
「任せた。俺はこの巨大MAを収納したら、一旦ヤンマに戻る。……連邦軍の動きを邪魔をしない方がいいけどな」
『ガトーとノリスの2人の指揮権はこっちに貰ってもいいんだね?』
「ああ、それで問題はない」
そう言い、シーマと軽く言葉を交わしてから通信を切る。
ガトーとノリスの指揮権に関しては、同じルナ・ジオン軍である以上、問題はない。
また、シーマは海兵隊を指揮しているのを考えれば、指揮能力に不安はないし。
ともあれ、話は終わった以上、俺も次の行動に移す。
重装フルアーマーガンダムのコックピットを開き、宇宙空間に出る。
当然ながら、俺はパイロットスーツの類は着ていない。
だが、混沌精霊である以上、生身で宇宙空間に出ても全く何の問題もない。
そうして外に出ると、俺は重装フルアーマーガンダムのすぐ側にある巨大MAに触れる。
さて……これでこの巨大MAのコックピットのパイロットがまだ生き残っていれば空間倉庫に収納は出来ないのだが……どうなる?
どうなる? と思いつつも、撃墜数が上がっている以上はその辺の心配をする必要がないと思うんだが。
そう思いながら巨大MAの装甲に触れ……次の瞬間、巨大MAは今までそこにあったのは冗談か何かだったかのように、姿を消す。
この光景を見ていたのか、少し離れた場所ではソロモンに取り付こうとしていたジムが操縦ミスをしてソロモンの外壁部分に機体をぶつけていたが……まぁ、それは俺からは何とも言えない。
ちなみに、ソロモンのジオン軍にとって奥の手だったらしい巨大MAを俺に撃破され……空間倉庫に収納されて消滅した為か、ソロモンのジオン軍はその多くが撤退を始めていた。
勿論、まだソロモンに残って連邦軍と戦っている者もいれば、連邦軍の中には撤退しようとしているジオン軍に追撃をして撃墜数を稼いでいるような奴もいる。
後者に関しては、それで撃墜数を稼いでも意味はあるのか? と思わないでもなかったが。
MSの撃墜数というのは、当然のように記録に残る。
であれば、その数値を上げておきたいと思うのは当然の事なのだろう。
ただし、追撃戦で撃墜数を稼いでも、当然のようにそれは実力とは言いがたい。
つまり、その数値を基準にして厳しい戦場――本来の撃墜数であれば何とかなるような戦場に出撃させられた場合、死ぬ可能性が高かったが。
また、ジオン軍も撤退するとなれば、連邦軍が大人しく撤退させてくれるとは思っていない。
当然のように、腕利きのパイロットが操縦するMS……それもゲルググとかの最新鋭量産機とかが、守っているのだ。
連邦軍で追撃を行おうとしたMSパイロットは、当然のようにそこまで技量が高い訳ではない。
自分の技量に自信を持っているのなら、それこそ追撃をするのではなく、まだ戦っているジオン軍のMSと戦えばいいのだから。
そんな訳で、ソロモンの周辺では現在も多くの戦いが行われている。
まさにチェンバロ作戦の総決算といったところか。
シーマ率いる海兵隊には、出来るだけ多くの技術情報を得てきて欲しいんだが。
MSの生産ラインとか、そういうのはさすがに俺達が入手するのは無理だろうけど。
そんな戦いを見ながらヤンマに向かっていると……
「何っ!?」
不意にこちらに飛んできたビームを、半ば反射的にスラスターを全開にすることで回避する。
攻撃してきた相手に視線を向けると、そこにはゲルググ1機が存在していた。
それも、ただのゲルググではない。機体色を白に塗ったゲルググだ。
どうやら、流れ弾でも何でもなく、明確に俺を狙ってきたらしい。
何でここで俺を? と思ったが、重装フルアーマーガンダムは当然のように目立つ。
そして俺の操縦する重装フルアーマーガンダムが巨大MAを撃破したのは、戦場で多くの者が見ていただろう。
恐らく、このMSのパイロットはあの巨大MAのパイロットと親しい関係にあったか何かで、だからこそ巨大MAを倒した俺に仇討ちのつもりで襲い掛かって来たということか。
そう考え……ふと白のパーソナルカラー? と疑問を持つ。
ジオン軍の中でも異名持ちが多く揃っているのは、キシリア率いる突撃機動軍だ。
だが、ドズル率いる宇宙攻撃軍にも異名持ちがいない訳ではない。
……シャアも元々はドズルの部下だったらしいし。
ともあれ、そんな宇宙攻撃軍の中でもトップクラスに有名な異名持ちの1人が、白狼シン・マツナガ。
そのパーソナルカラーは白で、俺に向かって再びビームライフルを撃ってきたゲルググの機体色も、白だ。
その上、しっかりと確認してみると、ゲルググの左肩には白い狼を模したパーソナルマークまでペイントされている。
ここまではっきりとすれば、俺に向かって攻撃をしてくるゲルググのパイロットが誰なのかは、考えるまでもなく明らかだ。
向こうの考えとしては、ソロモンにとって奥の手だった巨大MAを撃破した俺を撃破して、連邦軍の士気を落とそうといったところか。
実際には俺は連邦軍所属ではなく、月の人間ですらなく、シャドウミラーの代表なのだが……重装フルアーマーガンダムに乗っているのを見れば、そんな判断は出来ないだろう。
ジオン軍にとって、ガンダムというのは連邦軍の象徴的な存在なのだから。
そうである以上、重装フルアーマーガンダムを撃破しようと考えてもおかしくはない。
……ただ、若干の疑問は残るが。
「っと!」
ビームライフルではどうしようもないと判断したのか、ゲルググは全速力で間合いを詰め、ビームナギナタを振るってくる。
MA的な性質を持っている重装フルアーマーガンダムは、当然のように近接攻撃に弱い。
いや、頭部バルカンやビームサーベル、ビームライフルといったような攻撃方法がある以上、アッザムやアプサラスⅢ、ビグロといった本当の意味でのMAに比べれば、近接攻撃に対処するのは不可能ではない。
だが……敵がその辺のパイロットならまだしも、白狼の異名を持つ相手となると……セカンドアーマーによって、思う存分機体を動かすことが出来ない今の状況ではちょっと厳しい。
なにより、MSの反応速度の遅さも計算に入れて戦わなければならないのだから。
スラスターを全開にして、ゲルググとの間合いを開けようとする。
しかし、マツナガもMSの性能差から距離を離されれば不利になるというのは理解しているのか、それは許さないとひたすらに間合いを詰めてきた。
そうして振るわれるビームナギナタの連続攻撃を、俺はビームサーベルと機体操縦で回避していく。
不幸中の幸いだったのは、マツナガが俺を倒すということだけに集中していることか。
それこそ攻撃の仕方によっては、メガビームキャノンの砲身とかを切断したりとか出来そうなんだが……何故か、ただひたすらに俺を殺そうとしてくるんだよな。
出来ればマツナガはドズルと一緒にガルマの陣営に取り込みたい奴である以上、ここで殺したくはない。
しょうがない。無力化して捕虜にするか。
こちらに向かって再び振るわれたビームナギナタの一撃を受け止めつつ、腰の左右にあるビーム砲を発射する。
だが、さすが白狼の異名持ちと言うべきか。
両足を一気に撃破するつもりだったのに、咄嗟にスラスターを使って動いた為に、破壊出来たのはゲルググの右足だけだ。
それでも、AMBAC機能の件を考えると、向こうの戦力は大きく減ったのは間違いない。
それでも全く躊躇することなく攻撃を仕掛けてくるマツナガ。
そのビームナギナタの一撃をビームサーベルで受け、切り結んだところで接触回線を使って通信を送る。
「降伏しろ。そうすれば待遇は約束する」
『ふざけるなぁっ! 貴様、自分が何をしたのか分かっているのか!』
怒りと共にそう叫び、重装フルアーマーガンダムから距離を取るマツナガ。
何だ?
俺が聞いた話によると、マツナガというのは冷静で激高するような性格ではないと思うんだが。
そう疑問に思ったところで……不意に通信が入る。
『アクセル、聞いてるかい?』
映像モニタに表示されたのは、シーマ。
マツナガの攻撃を捌きながら、口を開く。
「どうした? 悪いが今は忙しいんだ。話は……」
後にしてくれ。
そんな俺の言葉を最後まで聞かず、シーマは口を開く。
『あんたが倒した巨大MA……ビグ・ザムというらしいんだけどね。どうやら、そのビグ・ザムを操縦していたのはドズル・ザビだったらしいよ』
その言葉を聞き、俺は何故マツナガがここまで怒り狂ってるかの理由を理解するのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1190
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1617