シン・マツナガの名前は、ディアナの技術者にとっては大きな意味を持っていた。
それだけ異名持ちというのは特別という事だろう。
……そういう意味では、月の大魔王の異名を持つ俺もまた同様に特別なのかもしれないが。
あ、でも俺の場合は月の大魔王の異名よりも前に、シャドウミラーを率いている者という意味の方が強いか。
そんな風に考えていると、マツナガは俺の方に近付いてくる。
ディアナの技術者は、そんなマツナガを見て数歩後退る。
「お前が……アクセル・アルマー」
俺の前に立ってそう告げるマツナガの声には、色々な感情が込められている。
その感情の中では憎悪が一番強い。
ドズルを殺したのだから、それは当然だろう。
とはいえ……正直、まさかドズルが前線に出て来るというのは完全に予想外だったしな。
正直なところ、俺としてもドズルを殺してしまったのが大きな痛手なのは間違いない。
本来ならガルマと一緒に確保しておくつもりだったんだが。
そのガルマにも、ドズルについては言われていたのだが……それもまた、破ってしまったな。
とはいえ、これは戦争である以上、俺もドズルを殺した事を後悔していても表情に出すような真似はせずに頷く。
「ああ、俺がアクセルだ。……お前は捕虜になった。それでいいんだな?」
「お前の言っていた事が正しければ、だ」
こちらに向け、パイロットスーツのヘルメットの向こう側から鋭い視線を向けてくる。
マツナガにしてみれば、俺の言葉が本当かどうかは確認出来ない。
あくまでも、俺の言葉だけで理解している形だ。
そうである以上、証拠を見せろと言ってもおかしくはない。
「そうだな。これが証拠になるかどうかは分からないが……」
そう言い、空間倉庫の中から雑誌を取り出す。
明らかに何もない場所から取り出された雑誌を、マツナガはじっと見る。
手品か何かだと、そのように考えてもおかしくはない。
だが……これは正真正銘、手品でも何でもない。
実際には魔法ではなく、転生特典のスキルなのだが。
「……なるほど」
俺の言葉に、そう言うマツナガ。
とはいえ、本当に理解して言ってるのかどうかは俺にも分からなかったが。
「これで証拠になると思うが? ……雑誌とビグ・ザムでは、大きさが圧倒的に違うけど」
巨大MAたるビグ・ザムと雑誌。その質量の差は、一体どれだけあるのやら。
そんな風に思うも、今の状況を思えばここで何を言っても説得力はない。
「……分かった。いや、正確には分からないが、それでもアクセルが何らかの妙な力があるのは理解出来た。だが、本当に信じるかどうかはガルマ様に会ってからだ」
「ああ、それでいい。ただ、ガルマがいるのは地球だ。ジオン軍との戦いを考えれば、実際に会うのはもっと後になると思うぞ?」
最悪、俺がいなくてもガルマと顔見知りの綾子やミナトに付き添って貰えれば、ガルマに会いに行っても構わないだろう。
だが、ガルマとマツナガが会うというのは、大きな意味を持つ。
ガルマが将来的にどのような感じになるのかは分からないが、それでもジオンの名前を継ぐといったような事になった場合、大きな役目を背負う事になる。
そんな時、ガルマの側にマツナガがいるというのは大きい。
それこそ、ドズルを慕っていたような者もガルマの下に集うだろう。
「その辺は理解している。……今は、ジオン公国の行く末を見届けようと思う」
こう告げるのを考えると、マツナガにとってはジオン公国に対して何か思うところがあるんだろう。
確かマツナガ家もジオン公国では名家だった筈だ。
それを思うと、マツナガにとってもジオン公国では色々とあったのかもしれないな。
とはいえ、ガルマに会うのが後回しでもいいのなら、こちらとしても色々とやりようがあるのは間違いない。
「そうか。なら……ちょっと待ってろ」
マツナガにそう告げ、コバッタを呼び出す。
突然姿を現したコバッタに、驚きの表情を浮かべるマツナガ。
ジオン公国やソロモンで暮らしていれば、とてもではないがコバッタなんて存在を見るような事はないしな。
「こ、これは……?」
「コバッタ。お前の監視役兼案内役だ。何か分からない事があったら、コバッタに頼めば何とかしてくれる。また、コバッタがいればヤンマ……この軍艦の中を好きなように歩いても構わない。ただし、軍事機密のように入ってはいけないような場所があった場合、コバッタが止める。それでも無理にそこに行こうとしたり、ましてやコバッタに危害を加えようとすれば……痛い目に遭うのは間違いないぞ」
俺の言葉のどこまでを信じたのかは分からない。
だが、マツナガの性格を考えれば、コバッタに乱暴な行為をしたりといったような事はまずしない筈だ。
もし何かを企んでも、マツナガが脅威なのはあくまでもMSに乗っていればの話でしかない。
いや、軍人としてある程度鍛えているのかもしれないが、それでも銃弾を素手でどうにか出来たりはしないだろう。
これがシャドウミラーの実働班とかだと、普通に素手で実弾を防いだり、回避したりといったような事をするんだが。
「……分かった。肝に銘じておこう」
コバッタの方を見ていたマツナガだったが、やがて俺の言葉に納得したのか、それとも単純に言われた事を破るような真似をするつもりがないのかは分からないが、ともあれそう答える。
「じゃあ、マツナガを部屋に案内してくれ。シャリア達が使っていた部屋でいい」
そう告げると、コバッタはマツナガを案内するようにして進む。
シャリアという名前に若干反応した様子を見せたマツナガだったが、もしかしてシャリアの事を知ってるのか?
ブラウ・ブロのパイロットをしていたニュータイプとなれば、ジオン軍で名前を知られていてもおかしくはないが。
それに木星のエネルギー船団にいたのを思えば、それなりに名前が知られていてもおかしくはない……と、思う。
あくまでも俺がそのように思うというだけで、実際にどうなのかは分からないが。
マツナガに聞けば、もしかしたら答えてくれるかもしれない。
だが、別にそこまでして聞きたい情報じゃないし、気にする事はないか。
今はもっと別に気にする事がある。
……ガルマに対して、今回の一件をどう説明するか、とかな。
ガルマにとって、ドズルというのは自分を可愛がってくれた以上、当然慕っていた筈だ。
それにガルマは甘い性格をしているのは間違いないが、それは逆に言えば家族に対して強い愛情を抱いているという事でもある。
これは……最悪、ガルマが俺と決別するという可能性も考えないといけないか?
出来ればそんな事にはなって欲しくないが。
ただ、ガルマも軍人だったんだから、戦争である以上は人が死ぬという事も考えた方がいいか。
それと月でビグ・ザムを解析する時には、ガルマをハワイから呼んだ方がいいだろうな。
死体が残ってるかどうかは微妙なところだが、その辺もしっかりと確認した方がいいだろうし。
「アクセル代表、あのゲルググはどうします?」
ディアナの技術者の1人か申し訳なさそうに尋ねてくる。
俺をアクセルと呼び捨てにする奴もいれば、こうして代表とつけてくる奴もいる。
この辺は人それぞれといったところか。
「どうするかって言ってもな。胴体と頭部は無事だけど、四肢はないだろ? そうなると、直して使う訳にもいかないだろうし」
一応ゲルググについてのデータも来ているし、ジオン軍が負けるというのは兵器メーカーにとっても既定路線になりつつあるので以前よりも接触は多くなっており、それがジオニック社、ツィマッド社、MIP社が戦後月に会社を移そうとしている事の証でもある。
結果としてゲルググの設計データや生産ラインの類も入手出来るらしいので、修復するのは可能だが……ただ、ゲルググを修理してどうするのかって問題はあるんだよな。
「そうですね。直しても意味はありません。ですが、アクセル代表のおかげで胴体が無事……どころか、ほぼ無傷というのはありがたいですよ」
「胴体が?」
「はい。勿論、このゲルググが普通のMSパイロットが乗っているのなら、ここまで喜びはしなかったでしょう。ですが、この白いゲルググは白狼の異名を持つシン・マツナガが乗っていた機体です。その操縦データは勿論のこと、細かい設定についてもお宝の山ですよ」
なるほど。そう言われれば、確かにこの白いゲルググはジオン軍の中でもトップエースの1人が乗っていたMSなのだから、データ的には大きな意味があるのだろう。
「分かった、その辺はお前に任せる。それと重装フルアーマーガンダムの補給も一応忘れるなよ」
「ありがとうございます! 補給の方も任せて下さい!」
そう言い、技術者は勢いよく頭を下げてから、早速ゲルググの方に向かった。
あの様子だと、重装フルアーマーガンダムの補給よりもゲルググの解析の方に夢中になりそうだな。
マツナガのデータが具体的にどんな事になるのかは、少し気になるが……取りあえず、悪い事にはならないだろう。
「さて、そうなるとこれからどうするかだな」
ソーラ・システムによってソロモンの表面は燃やされ、ジオン軍の奥の手だったビグ・ザムも俺が撃破した。
何より、司令官のドズルが死んでしまった以上、ジオン軍が出来る抵抗はそう多くはない。
今はもう殆どの者が逃げており、残っている敵は少ない。
そんな場所に、重装フルアーマーガンダムの補給を終えた俺が出て行けば、連邦軍にとって面白くないだろう。
俺の立場から、実際には文句を言ってくるような事はないだろうが、それでも不満を持たれるのは面白くはない。
シーマ率いるルナ・ジオン軍が現在ソロモンに侵入しているのを思えば、今更の話かもしれないが。
ただ、重装フルアーマーガンダムはその外見から目立つしな。
そんな事を考えていると、不意に格納庫の中に通信が入ってくる。
『アクセル代表、どこからともなく現れたザンジバルの改修機が連邦軍に攻撃。その結果として、連邦軍は大きな被害を受け、そこからソロモンを脱出した部隊の多くが脱出している模様です』
「……ザンジバルが? しかも改修?」
ザンジバルが改修されているというのは、決して珍しい話ではない。
身近なところでは、シーマがジオン軍時代に海兵隊の旗艦としていたのもザンジバルの改修機だったし。
とはいえ、ザンジバルはジオン軍の中でもそれなりに高価な軍艦だ。……勿論、チベやグワジン、ドロスなんかに比べれば安価だが。
そのような相手がいるとなると、厄介な事にならないとも限らない。
そうなると、やはりここは俺が出た方が……いや、けど連邦軍の面子を思えば……
『それと赤いパーソナルカラーのゲルググが確認されています』
「すぐに出る」
そう告げる。
赤いパーソナルカラーのゲルググとなれば、それはシャアだろう。
であれば、このまま放っておけば連邦軍に大きな被害が出るのは間違いない。
勿論、連邦軍にもサラブレッドやホワイトベースのように、腕利きのMSパイロットを有している部隊はいる。
だが……これは連邦軍だけに被害が出るといったような問題ではなく、出来れば俺がシャアを確保したいと、そう思っての判断だ。
『了解しました。……いえ、すいませんアクセル代表。赤いゲルググを有する部隊は連邦軍を撃退した後で既に撤収を始めております。また……赤ではありますが、外見の色を照合した結果、あれは赤い彗星シャア・アズナブルではなく、真紅の稲妻ジョニー・ライデンの機体と思われます』
「……そうか」
結局出撃する前に向こうは撤退したが、やるべき事をやったらそれ以上の欲は掻かないで、すぐに撤退するという辺り、腕利きだよな。
にしても、真紅の稲妻か。
確かキシリアの部下だった筈だが、そう考えると恐らく向こうの目的は戦力の補充か?
ギレンとキシリアが政治的に対立しているというのは、ジオン軍にいる者なら誰でも知っている。
そうである以上、いざという時の為に戦力を確保するのは当然だろう。
もっとも、キシリアはドズルとも対立していた。
それを思えば、幾ら助けられたからとはいえ、突撃機動軍に協力する者がそう多くいるとは思えない。
さて、この辺は一体どうなることやら。
少し楽しみではある。
……真紅の稲妻か。
赤い彗星と真紅の稲妻。
明らかに同じ系統の色だけに、よく見比べないとどっちがどっちか判断出来ないのでは?
そんな風に思わないでもなかったが、肝心の異名持ち2人は、その辺を気にしてないんだろうか。
もしくは、どっちかがどっちかに間違われたり。
……いや、間違われるとすれば、それは明らかにライデンの方か。
ジオン軍でもそうだが、やっぱり連邦軍においても赤い彗星の異名というのは、比べものにならないくらい有名なのだから。
そんな風に考えつつ、取りあえず状況を確認すべく俺はヤンマのブリッジに向かうのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1190
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1617