ジオン軍のMS部隊は撤退したが、連邦軍の工場付近はまさに惨憺たる有様という表現が相応しいくらいに荒れ果てていた。
市街地じゃなくて、ここを戦場に選んだのはやっぱり正解だったな。
もし市街地での戦闘になっていれば、その被害は莫大なものになっていた筈だし、当然のように死傷者も増えていた筈だ。
そんな風に考えていると……やがて、コロニーの中を軍艦が飛んでくる。
何故それを軍艦と理解出来たのかと言えば、ぶっちゃけその軍艦の外見がホワイトベースにそっくりだったからだ。
サラブレッドのように、ホワイトベースの設計データを流用して建造された軍艦なのだろう。
にしても……遅い。
既にジオン軍のMS部隊が撤退してから、10分は経っている。
俺が実際にジオン軍のMS部隊と戦っていた時間を合わせても、幾ら何でも出撃してくるのが遅すぎる。
とはいえ、サイド6は中立である以上、連邦軍としてもすぐに介入出来るような事ではないというのは理解出来ていた。
だが、今の状況で出て来たとなると……そんな風に思った瞬間、ホワイトベース級の軍艦から何機ものMSが出撃してきた。
ジムスナイパーⅡに、量産型ガンキャノンが数機ずつ。
ただし……それらの機体が持っている武器の銃口は、アレックスに向けられていたが。
『降伏しろ』
通信でそんな声が聞こえてくるが……
「俺は連邦軍の味方をしたんだが?」
『それについては聞いている。だが、貴様がどこの誰か分からない以上、警戒するなという方が無理だろう。……もう一度言う。降伏しろ』
ジムスナイパーⅡがビームライフルをこちらに向けながら、そう言ってくる。
言ってることは分かるが、ジオン軍のMS部隊でさえコロニーに被害を与えないようにビームライフルではなく実弾のマシンガンを使っていたのに、連邦軍のこいつらがビームライフルを使ってるってのは、どういう事だ?
勿論ビームライフルはビームライフルでも、本来のジムスナイパーⅡが使うような銃身の長い奴ではなく、ガンダムとかが使ってるようなタイプのビームライフルだ。
とはいえ、それがビームライフルである以上、コロニーの外壁は呆気なく貫通してしまう。
少なくても、普通に考えて連邦軍がコロニーの中で使うような武器ではない。
「コロニーの中でそんな武器を使うなんて、正気か? ジオン軍ですら、ビーム兵器ではなく、実弾を使ってたのに」
『戯れ言はいい。降伏するのかしないのか、どっちだ?』
さて、この場合はどうしたものだろうな。
MSの性能は高いが、二線級のパイロットだというのは知っている。
そうである以上、アレックスなら倒そうと思えば容易に倒す事が出来るが……今の状況でそんな真似をすると、間違いなく面倒な事になる。
かといって、ここで大人しく降伏するといったような真似も当然出来ない。
となると……アレックスを乗り捨てていくか?
多分、連邦軍が……いや、研究者達が心配をしているのは、俺がアレックスを奪わないかという事なんだろうし。
だからこそ、こうやって戦いが終わったすぐ後で連邦軍がここに到着するようにしたのか?
正直なところ、裏切られたという思いがない訳でもないが、この対応には理解出来るところがあるのもまた事実だった。
工場の研究者達にしてみれば、アレックスというのは連邦軍の持つ最新技術の塊と呼ぶべき存在だ。
……最新技術の一端なら、ガンダム7号機やフルアーマーガンダム7号機、重装フルアーマーガンダムにも色々と使われているのだが、アレックスのパイロットが俺だというのは連邦軍には知られていない。
また、それ以外でもリニアシートや新型のビームライフルのように、アレックスだけに使われている最新鋭の技術も当然ある。
アレックスを開発していた者達にしてみれば、そんな最新技術の塊を俺に奪われる訳にはいかなかったということだろう。
ましてや、今の俺は仮面を被って顔が分からないようにしているし、その上いきなり研究室に姿を現したのだ。
それで怪しむなという方が無理だった。
……あの時は、ジオン軍のMSが研究所に向かって近付いているという状況であった以上、藁にも縋る思いで俺に頼るしかなかったが、ジオン軍のMSを撃退した以上、もう俺に用はないと判断したのだろう。
さて、どうするべきか。
そんな風に考えていると……
『何をしてるんですか!』
と、不意にそんな声が周囲に響く。
声のした方に視線を向けると、そこにいたのは予想外にして、予想通りという複雑な相手……クリス。
クリスにしてみれば、このリボーにジオン軍のMSが姿を現した以上、その目的がアレックスだと判断するのは難しい話ではない。
だとすれば、それを察した時点でこの工場に向かうというのは当然の事だろう。
自分が到着した時、本来なら自分が乗る筈だったアレックスに俺が乗っているのを見て、色々と思うところがあったのは間違いないだろうが。
ともあれ、そんな状況であってもクリスの性格から考えて、俺を庇うような行動に出てもおかしくはない。おかしくはないんだが……これは不味いな。
『貴様、何のつもりだ!』
ジムスナイパーⅡのパイロットが、突然姿を現し……それだけならまだしも、アレックスのパイロットの俺を庇うといった真似をしたクリスに不愉快そうに叫ぶ。
クリスの性格を思えば、このような行動に出てもおかしくはない。おかしくはないんだが……だからといって、相手がそれに納得出来るかどうかと言えば、また別の話だろう。
特にこのジムスナイパーⅡに限らず、ここに残っているMS部隊は全員が二線級の技量しか持たない……言ってみれば落ちこぼれだ。
そんな落ちこぼれが、士官学校を首席で卒業し、更には新型の高性能機のテストパイロットをやっているクリスに嫉妬しない訳がない。
この落ちこぼれ達がジムスナイパーⅡのような、本人の技量に見合わないMSを与えられているのは、それだけここで開発されているアレックスが重要だという事を意味しており、だからこそ技量が足りなくても戦力になるように……といった感じなのだろうが。
それがまた、このパイロット達の劣等感を刺激しているのだろう。
後半はあくまでも俺の予想であって、真実かどうかというのは、分からない微妙なところだが。
ともあれ、俺が考えている間にもクリスとジムスナイパーⅡのパイロットとの言い争いは続いており、その雰囲気は加速度的に悪くなっていく。
「止めろ」
外部スピーカーでそう告げ、それはコックピットを開く。
当然のように、そんな俺に注意が集まったのか、言い争いは一時的に中断した。
とはいえ、俺が仮面を被っているので向こうからは俺の顔を見る事は出来ないんだが。
「え?」
クリスも俺を見て驚きの声を上げる。
まぁ、クリスの場合は俺がどういう存在なのかを知らなかった以上、その態度はおかしなものではないか。
『MSから降りろ』
ジムスナイパーⅡのパイロットが外部スピーカーでそう言ってくる。
向こうにしてみれば、俺の外見は研究者達から聞いていたのか、特に動揺した様子はない。
そんな言葉を聞きつつ、コックピットから飛び降りる。
「きゃああああっ!」
そんな俺の様子に悲鳴を上げるクリス。
MSの全高は18m前後。
そんな中でコックピットがあるのは胸の辺りである以上、10m以上の高さから俺が飛び降りたように見えたのだろう。
クリスにしてみれば、そんな俺の行動は自殺でもしているかのように見えたのだろう。
実際、この世界の人間なら10mの高さから飛び降りるといったような真似をした場合、下手をすれば死ぬし、そうでなくても足の骨を折るといったような事になってもおかしくはない。
だが……俺は、そんな怪我をする様子も一切見せず、地面に着地する。
「ちょっと……大丈夫!?」
俺が無事なのを見て、急いで近付いてくるとそう告げるクリス。
俺が何かを言うよりも前に、俺の身体に触って怪我をしてなかどうかを確認していく。
この辺、クリスらしいな。
「ああ、問題ない。それより、お前は俺から離れた方がよくないか?」
「え? 何で?」
正直な疑問といった様子で尋ねてくるクリスに離れるように言うが、本人はそれに対して特に気にしている様子はない。
……いや、違うな。クリスが俺を見る視線には真剣な色がある。
つまりこれは、現在の俺の状況を理解した上で俺に近付いているのだ。
それこそ、ジムスナイパーⅡを始めとするMSが妙な暴走をしないように。
クリスは俺の方を見て、口を開く。
に・げ・て。
MSを背にしているので、クリスが口を開いた様子はジムスナイパーⅡには理解出来ていないだろう。
また同時に、声を発していないのはジムスナイパーⅡのような最新鋭MSなら集音性が高くてもおかしくはないからか。
その辺の理由はともあれ、クリスが俺を逃がそうとしているのは間違いない。
本来なら、軍人なんだから見るからに不審人物たる俺を捉えるべきだろうに。
それでも俺を逃がそうとするのは、やはり工場を守って貰った感謝の気持ちか。
この甘さは軍人としてどうなんだ? と思わないでもなかったが、どこか既視感が……ああ、マリューだ。
マリューもまた、軍人としては有能だったが、冷徹になりきれないところがあった。
とはいえ、マリューは軍人は軍人でも実戦に出るような軍人ではなくて、技術者としての一面も強かったし。
それに……マリューとクリスでは、似ているようで大きく違う場所もある。
具体的には胸とか。
マリューは俺の恋人達の中でも最大級の胸の大きさを持ち、夜の行為ではマリューの魔乳と呼ばれる事もある。
そんなマリューの胸と比べると、どうしてもクリスの胸は……うん。
「貴方、もしかして……」
『貴様、何をしている! 降伏しろ!』
クリスが何かを言い掛けたが、それを遮るようにジムスナイパーⅡのパイロットが外部スピーカーで叫ぶ。
向こうとしては俺を捕らえようとしているところで、クリスが邪魔をしたのが面白くなかったのだろう。
怒声と共に、俺の近くの地面が弾ける。
何をしたのかというのは、考えるまでもなく明らかだ。
ジムスナイパーⅡの右側頭部に見えるヘッドホンのような部分の銃口からバルカンを発射したのだろう。
勿論、俺を生け捕りにしたい以上、向こうは俺に当てる気はなかった筈だ。
だが……MSを相手にする場合には威力不足の頭部バルカンだが、その弾丸は生身の人間に当たれば即死どころか、身体の残っている部分が少ない程の威力を持つ。
勿論混沌精霊の俺に対しては効果がないか、それはあくまでも俺であればの話であって、俺の側にいるクリスとなれば話は別だ。
クリスがいるにも限らず、このような無茶な真似をするのは……やはり二線級の実力しかないパイロットと自分でも理解しているので、手柄を焦っているといったところか。
「ちょっと! 何をするのよ!」
突然頭部バルカンを撃ってきたジムスナイパーⅡに向かい、クリスが叫ぶ。
だが、ジムスナイパーⅡのパイロットはそんなクリスの怒声を気にした様子もなく、平然と言い返す。
『何をするのかだって? それはこっちの台詞なんだけどな。俺達に下された命令は、その怪しい奴を捕らえる事だ。何だって連邦軍のエリート様がそれを邪魔する?』
その言葉に、クリスは何も言えなくなる。
クリスから見ても、仮面を被っている今の俺は怪しい奴という言葉でしか言い表せないのだから。
だというのに、それでもクリスは俺を庇う。
「それでも、この人のおかげでアレックスは無事だったのは分かるでしょう!?」
『そうだな。それは事実だ。だが同時に、その怪しげな仮面を被っている奴が怪しい奴であるってのも、また事実だ』
いや、そんなに怪しい怪しい言わなくてもいいと思うんだが。
顔を隠すのを最優先にしている以上、この仮面が怪しいのは理解している。
……いっそ、ギアス世界でゼロが被ってたような仮面にしてもらうべきか。
そんな事を考えつつ、ジムスナイパーⅡのパイロットに言い返そうとするクリスの肩を掴む。
「落ち着け。ここでクリスが何か言っても、向こうは最初から退くつもりはないんだ」
「けど、それは……」
俺の言葉に何かを言い返そうとするクリスだったが、首を横に振ってそれを黙らせる。
取り合えず、ここで俺が逃げるのはクリスに責任を負わされる事になる可能性がある以上、止めておいた方がいいだろう。
つまり、一旦向こうに捕まってここから離れてから逃げた方がいい訳だ。
問題なのは、捕まえれば当然のように仮面を外そうとしてくるだろう連中を相手に、どうやって顔を見られないようにするかだな。
……最悪、気配遮断や魔眼を使えばどうとでもなるか。
いや、魔眼は効果がランダムで一体どういう効果が出るのか分からない以上、こちらとしても何とも言えないんだが。
ともあれ、今の俺のやるべき事は決まっており……
「分かった、投降する」
そう、ジムスナイパーⅡのパイロットに告げるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1190
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1617