アレックスを俺に渡す。
そう言ったクリスの決意は、一体どれだけのものだったのか。
だが……それでも、俺は尋ねる必要があった。
「本気か?」
「ええ。……悔しいけど、私とアクセルだとアクセルの方がMSの操縦技術は上よ。それもちょっとやそっとじゃなくて、比べものにならないくらいに」
「そうだな」
これに対しては、謙遜したところで意味はないだろう。
クリスの性格を考えれば、アレックスの操縦データを見るくらいの事は普通にしている筈だ。
そして操縦データを見れば、自分との技量の違いをこれ以上ない形で見る事になる。
「だが……それでも俺がアレックスに乗らないで、例えばグレイファントムにあるジムスナイパーⅡに乗るという選択肢もあると思うが?」
ジムスナイパーⅡは現在俺が知ってる限り、連邦軍の量産型MSとしては最高の性能を持つ。
それこそカタログスペックではガンダムをも上回っているのだから、どれだけ凄いのかは理解出来るだろう。……装甲だけはルナ・チタニウム製ではないので、防御力という点では劣っているが。
それだけに、俺がジムスナイパーⅡを奪った場合、それは十分な戦力となるのは間違いない。
……にも関わらず、クリスは俺の言葉に首を横に振る。
「いえ、もしジムスナイパーⅡに乗る事が出来るのなら、それは私が乗るわ。その方が戦力としても十分でしょうし」
「……本気か? クリス、お前がそんな事をしようものなら、もう連邦軍にはいられなくなるぞ?」
俺は、もし本当にどうしてもアレックスを操縦しなければならない場合、クリスを関わらせるつもりはなかった。
それこそ、以前のようにクリスがいない状況で無理矢理アレックスに乗るといったような事をするつもりだったのだ。
そうなれば、勿論クリスに何の咎めもない……といったようなことはないと思うが、それでも俺と一緒にMSを奪ってサイクロプス隊と協力し、ジオン軍と戦うなんて事にはならない筈だった。
だが、ジムスナイパーⅡにクリスが乗るといったような事をした場合、それはクリスにとって致命的な事になるのは間違いない。
それこそ、俺が言ったように連邦軍にいられないようになるのは間違いなかった。
……リボーを守った功績が認められれば、あるいは不名誉除隊となるかもしれない。だが、最悪の場合は軍法会議で銃殺刑になってもおかしくはないのだ。
連邦軍の最新鋭機を他の勢力の相手に渡すのだから、判決が厳しくなるのは当然だろう。
アレックスは連邦軍の最新鋭機で、機密情報の塊なのだから。
「リボーを守る為よ」
あっさりと……それこそ、一瞬の躊躇もなく、クリスはそう断言する。
自分の信念は曲げない。
そんな態度が見て分かる。
そんなクリスの顔を……そして目を見れば、リボーを守る為に自分の出来る事なら何でもやると、そう態度で示している。
それこそ、もし自分が誰かに抱かれる事でリボーが助かるのなら、躊躇なくその身を捧げるだろう、覚悟。
そんなクリスの様子を見れば、俺からも何も言えなくなる。
もしここで俺が何か言っても、クリスは絶対に退かないと、そう理解出来たからだ。
「分かった。けど……これだけは聞かせろ。リボーを守った後で、お前はどうするつもりだ?」
「連邦軍に正直に話して罪を償うわ」
「……そうなれば、どうなるか分かってると思うが?」
「それでも、リボーを守れるのなら悔いはないわ」
そう断言する様子に、少し考え……決める。
「分かった。なら、お前は俺が貰う」
「……え?」
一瞬、何を言われたのか分からないといった表情を浮かべたクリスだったが、何故か次第にその顔が赤く染まっていく。
「そんな、貰うって……急にそんな事を言われても……まだそういう関係になるのは早いと思うんだけど……」
呟いているその声で、クリスが何を誤解しているのかが分かった。
こうして見る限り、そっち方面に対しては疎いらしい。
絶世の美女って訳じゃないけど、10人男がいたら半数以上は美人だと思えるくらいに顔立ちは整っているし、人柄も明るくて人当たりもいい。
士官学校時代……いや、高校生の時とかも、男に言い寄られたり口説かれたりとかしてもおかしくはないと思うんだが。
「勘違いするな。そういう意味で言ったんじゃない。アレックスという、連邦軍の最新鋭MSのテストパイロットに選ばれるくらいなんだから、クリスも腕の立つMSパイロットなのは事実だろ?」
「え? えっとその……」
頭がピンク色だった状態から、俺の言葉で我に返ったクリスは少し戸惑いつつ、それでも少しすると落ち着いて口を開く。
「今でこそテストパイロットをやってるけど、元々はコンピュータ技師よ」
「……なるほど。テストパイロットとしての技量も持っているコンピュータ技師なら、それこそディアナではどの部署からも欲しいと言われるだろうな」
「ディアナ? それって確か月にあるルナ・ジオンの兵器メーカーよね?」
「ああ。ジオニック社、ツィマッド社、MIP社……それ以外にも色々な場所、それこそ連邦からも人が集まって作られた兵器メーカーだ。クリスがコンピュータ技師として有能なのは、その経歴が示している。その上でテストパイロットとしても活躍出来るのなら、ディアナの連中は大歓迎だろうな」
それはお世辞でも何でもなく、純粋なる事実だ。
そもそも、現在のディアナはジオン系の技術者の割合が高い。
ルナ・ジオンという国の成り立ちから考えれば、それは当然の事なのだろうが。
連邦系の技術者もいない訳ではないのだが、どうしても数が少ない。
それでいながら、俺が連邦軍に協力していた時の報酬として、連邦軍の最新鋭MS――中には最新鋭ではない物も含まれていたが――を報酬として大量に貰い、現在はそれを解析している。
そういう意味では、連邦軍の中でアレックスという最新鋭MSの開発に参加していたクリスが来てくれるというのは、非常にありがたい筈だった。
それこそ、現在ディアナにいる連邦系の技術者は、MSの専門家といった者はほぼ皆無に近い。
……連邦軍にしてみれば、MS関係の技術者は当然のように自分達で囲っておきたいだろうし。
だからこそ、クリスはディアナにおける連邦軍系のトップになる可能性は十分にあった。
本人がそれを望むか望まないか……クリスの性格を考えれば、望まないような気がするが。
あ、でも何だかんだと真面目で責任感も強いので、意外と何とかなる……かも?
「私が、ディアナに。……その場合、家族はどうなるの?」
「基本的には月に来て貰う事になるだろうな。連邦にしろジオンにしろ、もしクリスの家族がリボーに残ったままだとすれば、それを人質にするといったような手段を取りかねないし」
レビルやゴップといった面々であれば、そんな下策を実行はしないだろう。
もしクリスを脅迫して何らかの情報を持ち出しても、それは最終的に月を……そしてシャドウミラーを敵に回すという事に他ならないのだから、
だが、それはあくまでも俺達の存在について深く理解しているレビルやゴップだからこその話であって、強硬派だったり、難しいことを考えないようにする奴というのは、連邦軍の中にも相応にいる。
それを思えば、やはりクリスの家族には月に来て貰うのが一番なのだ。
「けど、そうなると私の一存だけではどうにも出来ないわ」
「だろうな。だから、その辺は後々クリスから家族に話して貰う必要がある。……もっとも、今はそんな時間がないけど」
明日の昼には、核ミサイルが撃ち込まれるのだ。
悠長に相談しているような時間はない。
その辺は事後承諾という形になるだろう。
ましてや、今のこの状況で核ミサイルの件をクリスの両親に話しても、それは混乱するだけだろう。
であれば、やはりこの一件については今はまだ話さない方がいいと思う。
「……分かったわ。じゃあ、取りあえず私をサイクロプス隊のいる場所に連れて行って貰える? 一応、アクセルが相手に騙されているという可能性も考えると、その辺はしっかりと確認しておきたいし」
クリスにしてみれば、やはり俺は10代半ばが本当の姿のように思えているのだろう。
最初に会った時が10代半ばの姿だったのを思えば、その気持ちも分からないではない。
……実は、俺の精神年齢が実は10代半ばだとか、そんな風に感じているという事はないよな?
「そうだな。これから戦場を一緒にするんだから、顔合わせはしておいた方がいいか。アレックスの件もあるし」
クリスにしてみれば、俺がアレックスを使うのはもう半ば確定事項なのだろう。
実際、それが最善の選択だというのは分かっているし、クリスがジムスナイパーⅡに乗るのも最善の選択なのは間違いない。
であれば、やはり今回の一件に関してはそうした方がいいのは間違いないのだ。
「じゃあ、準備するわね」
「分かった」
クリスの言葉に頷くが、何故かクリスが準備を始める様子はない。
それどころか、俺に向かってジト目を向けてきてすらいた。
「ねぇ、準備をするって言ったわよね? ……アクセルがそこにいると、準備出来ないんだけど? というか、普通女の寝室に忍び込んで来てるって時点で色々とアウトなの、分かってる?」
「あー……悪い。じゃあ、部屋の外に出てるから、準備をしてくれ」
このままここにいた場合、色々と不味い事になる。
そう判断し、部屋を出る。
考えてみれば、確かに寝ているクリスの部屋に侵入したという意味で、人聞きが悪いのは間違いないんだよな。
急いでクリスに接触しなければならないと考えていたとはいえ。
そんな風に考えていると、5分と経たないうちにクリスが部屋から出て来る。
その服装は、連邦軍の軍服……ではなく、その辺に出掛けるようなラフな格好だ。
これからサイクロプス隊の面々に会いに行こうというのに、連邦軍の軍服を着た状態で向かえば向こうを警戒させるだけなのは、間違いない。
だからこそ、クリスの服装は間違ってはいない。
それにゆったりとした服装なら、武器を隠し持つ場所もあるだろうし。
そう思えば、クリスの行動は当然だろう。
「どうしたの?」
「いや、随分と早かったと思ってな。女の着替えなんだから、もっと時間が掛かるかと思った」
実際、ホワイトスターでのレモン達は、朝の準備を整えるのに結構な時間を使う。
……まぁ、風呂で夜の行為の後始末とかしてるんだから、余計に時間が掛かるのかもしれないが。
「あのね、私は軍人よ? いざという時に、着替えに時間が掛かって戦えませんでしたなんて事になったら、どうするのよ?」
その言葉は、十分に理解出来る内容だった。
とはいえ、そう言いながらもクリスはどこか微妙に顔を赤くしているが。
顔を赤くしているのはスルーして、口を開く。
「じゃあ、行くか。俺の方に近付いてくれ」
「え? ……ちょっと、何か妙な事を考えてない? 言っておくけど、変な真似をしたら、相応の対処をするわよ?」
「そんなつもりはないから、安心しろ。折角俺がアクセルだと見抜いたんだ。魔法の1つでも見せてやるよ」
「……魔法?」
俺に向けていたジト目が、興味深い色になる。
やはりクリスも、魔法には興味を抱くのだろう。
「ああ。それもネギま世界……魔法のある世界でも使える者は少ない、転移魔法だ」
実際、転移魔法は魔法の難易度的に非常に高く、そう簡単に使えるような魔法ではない。
エヴァやフェイトといった面々が使っている……というのを考えれば、その辺は分かりやすいだろう。
「そんな事も出来るの?」
クリスはどうやらファンタジーの漫画、小説、アニメ、ゲームといったようなものは楽しまないらしい。
いやまぁ、士官学校の主席合格をしているというのを考えれば、その辺りは当然なのかもしれないが。
勉強で忙しく、そういうのを楽しむような暇はなかったと、そういう事なのだろう。
……元々そういうのに興味がなくてもおかしくはないが。
個人的には勿体ないと思うが。
「まぁ、行ける範囲は限られているけどな。このコロニー内ならどこでも行けるだろうけど、他のコロニーに行く事は出来ないし、当然のように地球まで行く事も出来ない」
そう告げると、俺の言葉に納得したような、してないような……そんな微妙な表情を浮かべるクリス。
地球上で使うのならまだしも、コロニーでとなると転移魔法は微妙に使いにくかったりするんだよな。
だからこそ、今回の一件においてはそんな風に思う訳で。
「……こう?」
恐る恐るといった様子で俺に近付いてくるクリス。
十分俺の側までやってきたのを確認すると、影のゲートを展開する。
「え? ちょっ、うわ……きゃあっ!」
影に沈む感触に慣れなかったのか、クリスはそんな女らしい悲鳴を上げ……やがて俺達は完全に影に沈んでその場から姿を消すのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1190
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1617