「きゃああ……あ?」
影のゲートに入る最中にも悲鳴を上げていたクリスは、当然のように影のゲートから出た時もまた悲鳴を上げていた。
そして俺が出て来たのはサイクロプス隊が使っている工場のすぐ近くだった訳で……これもまた当然ながら、工場の中にいるサイクロプス隊の面々とプラスアルファでアルにもクリスの声が聞こえるのは当然だった。
「何だ!?」
そして現在のサイクロプス隊の状況で、自分達の拠点の近くでそんな声が聞こえれば、当然の話だが何かがあったのか、そう判断して工場から出て来るのもおかしな話ではない。
特にサイクロプス隊は、リボー内で暴れたこともあってか、当然のようにそんな相手を探している者は多くいる。
だからこそ、もしかしたらリボーの軍隊……いや、正確にはサイド6の軍隊たるリーア軍が襲ってきたのかもしれないと判断し、対処しようとしてもおかしくはなかった。
……そして、銃器を手に工場から出たサイクロプス隊の面々が見たのは、俺に抱きついて悲鳴を上げているクリスの姿。
これがもっと静かな場所なら、ムードもあったのかもしれないが……今のクリスの状況では、ムードも何もあったものではない。
とはいえ、押しつけられたクリスの身体は女らしい柔らかさがあったが。
同時に硬い……恐らくは銃器だろう感触もある。
クリスもサイクロプス隊と接触するとなれば、当然のように武装はしてくるか。
「アクセル……一体何をしてるんだ? 事と次第によっては、お前と協力するのを考え直す必要が出て来るんだが」
シュタイナーが、呆れたようにそう言ってくる。
無理もないか。今の俺達は、シュタイナーの目から見れば抱き合っているようにしか見えないんだから。
それこそ、今この重要な時に女とイチャついているように見えても、おかしくはない。
「落ち着け。別にこれはお前達が思うような事じゃない。……クリス、そろそろ離れてもいいんじゃないか?」
「え? ……あ!」
俺の言葉でクリスは我に返り、急いで離れる。
クリスにしてみれば、今のこの状況は心外でしかないだろう。
まさか、自分がいきなり人に抱きつくなどとは思ってもいなかったんだろうし。
「あー……その、だな。この女はクリス。クリスチーナ・マッケンジー。お前達が戦ったアレックスのテストパイロットだ。実際は、クリスが来るよりも前に俺が乗ったから、実戦は経験していないが」
「ほう」
アレックスのテストパイロット。
その言葉でようやくこちらに対する険しい視線が幾分か和らぐ。
とはいえ、実際にサイクロプス隊と戦ったのは俺である以上、その腕を本当に信用出来るかと言えば、また別だったようだが。
実際、俺が工場に忍び込んだ時に聞いた話によると、クリスはアレックスを使いこなすのは難しいという話だった。
それを考えれば、シュタイナー達の態度は当然だろう。
とはいえ、アレックスのテストパイロットに選ばれたくらいなんだから、その技量は決して低くはない筈だ。
もし技量が低いのなら、別のパイロットを用意した筈だし。
つまり、反応が過敏なアレックスはともかく、予定しているようにジムスナイパーⅡに関しては問題なく乗りこなす事が出来る……と、思う。
まぁ、最初は無理でも乗っていれば操縦に慣れてくるのは間違いないだろうけど。
「それで、その姉ちゃんがアレックスに乗って俺達と一緒に行動するのか?」
ミハイルがじっとクリスを見ながら尋ねてくる。
クリスにしてみれば、そんなミハイルの様子に気圧されるものがあったのか、1歩後退り……だが、次の瞬間には2歩前に出る。
ミハイルはサイクロプス隊の中でもエースと呼ぶべき存在だ。
そんな人物からの視線の圧ともなれば、クリスにとっては相当なものだろう。
だがそれでも、クリスはここで負ける訳にはいかないと、その場で踏ん張り……それどころか、前に出たのだろう。
この辺り、クリスの芯の強さが如実に出た形だ。
「いや、アレックスに乗るのは俺だ。クリスには連邦軍のMSを奪って操縦して貰うつもりでいる」
「……いいのか? そんな真似をすれば、もう連邦軍にはいられなくなるぞ」
「ええ。連邦軍……正確にはグレイファントムの艦長にこの話を持っていった場合、自分の手柄の為にこの状況でもサイクロプス隊を捕らえかねないわ。それなら、私が少し無茶をしてでも、リボーを守る必要があるわ」
「気に入った。こういう奴なら、一緒に行動しても大丈夫だろう」
クリスの言い分が気に入ったのか、シュタイナーはそう言いながら笑みを浮かべる。
まさかここまでシュタイナーがクリスを気に入るとは思わなかったのだが、これからの事を考えれば、これは幸運だろう。
いや、あるいはシュタイナーもその辺を理解した上で、敢えてそんな風に言ってるのかもしれないが。
ともあれ、まだ完全にお互いを信用も信頼もしていないのだろうが、それでも最初の接触としては上手く行ったのは間違いないのだろう。
「今回の件が終われば、所属がどうなるのかは分からないが、全員月に来る事になるんだ。もう少し打ち解けてもいいと思うんだがな」
その言葉に、サイクロプス隊もクリスも、双方が揃って俺に視線を向けてくる。
お互いに、まさか相手が今回の一件が終わった後で月に行くとは思ってもいなかったのだろう。
そんな面々に、俺は事情を説明する。
「まず、サイクロプス隊。こっちはジオン軍が軍事行為として行う核ミサイルの発射を阻止する以上、当然の話だがその後もジオン軍に残るのは無理だ」
正確には、その気になればジオン軍の残る事は出来るかもしれない。
だが、上層部の作戦――コロニーに核ミサイルを撃ち込むというものであれ――を独断で阻止したのだ。
当然のように他の者達からどのような目で見られるのかは想像するのも難しくはない。
中には、コロニーに核ミサイルを撃ち込んで何の関係もない民間人を虐殺するのを阻止したということを評価する者もいるかもしれないが……ソロモンを陥落させられたジオン軍の現状を思えば、責める者の方が強いと思った方がいい。
……いや、それどころかサイクロプス隊がキシリアの部下だとすれば、死地となる場所に捨て駒として使われたり、もっと最悪な場合はキシリア機関辺りによって暗殺されたりとか、そんな事をしかねない。
その辺の事情を考えれば、月に来るという選択をするのは当然だろう。
クリスと同様に家族がいる者もいるかもしれないが、そっちは月側で責任を持って脱出させるつもりだ。
そして、クリス。
連邦軍の中でも士官学校を首席卒業というエリートであるにも関わらず、アレックスを俺に貸し、その上でクリスもジムスナイパーⅡを奪って使おうというのだ。
連邦軍にしてみれば、機密情報をこれでもかと知っている人物が連邦軍を裏切るような真似をするのだから、そのまま連邦軍に残るというのは難しいだろう。
それこそ軍法会議で銃殺刑という可能性も十分にある。
あるいは銃殺刑を避けられたとしても、クリスくらいの美人なら妙な……具体的には愛人になるといったような条件を提示させる可能性も十分にあった。
レビルやゴップという連邦軍のトップにいる2人はともかく、それ以外の場所にはどうしても下種がいたりするしな。
連邦軍という巨大な軍事組織である以上、どうしても全員が清廉潔白といったような事にするのは難しい。
また、結果がどうあれクリスの家族がリボーで暮らすのは難しくなる可能性もあった。
その辺の事情を考えれば、クリスやその一家を……
「いや、待てよ?」
「アクセル?」
説明している途中でいきなりそう呟いた俺に対し、クリスは不思議そうな視線を向けてくる。
「いや、これを使えば、クリスやその家族だけじゃなくて、アレックスとその関係部品一式も無事に貰える事になる……そんな手札があってな」
「……それは一体どんな手札だ?」
俺とクリスの会話を聞いていたシュタイナーが、疑問の視線を向けてくる。
サイクロプス隊を率いているだけに、MSという存在がどのような意味を持つか……ましてや、直接戦っただけに、アレックスがどれだけの性能を持っているのかを知っているからこそ、俺の言葉に疑問を持ったのだろう。
「簡単に言えば、ソロモンを連邦軍が占拠した時にルナ・ジオン軍も協力していたんだが、その時に俺達が占拠した場所に連邦軍の一部隊がやってきて、そこを明け渡せと命令したんだよ。その件はレビルに対して貸しにしてあるから、その貸しを清算する形でクリスやアレックスを貰えばいい」
まぁ、あそこにあったデータはビグ・ザムとかのデータだったのを思えば、連邦軍の考えも理解出来ない訳じゃないんだけどな。
あの時は、ビームを防ぐバリアの類……Iフィールドというらしいが、それを見たばかりという事もあってか、連邦軍側でも少しでも詳細なデータを欲していたらしいし。
「そのような真似が……本当に出来るのか?」
「出来るかどうかで言えば、出来る可能性が高い。それ以外にも色々と連邦軍には貸しがあったりするし、何よりレビルやゴップなら月と敵対する事の意味を理解出来ているだろうし」
ぶっちゃけた話、貸しの精算といった見返りがなくても無理を通そうとすれば通せると思う。
だが、そんな無理を通すような真似を繰り返せば、ゴップやレビルの能力が疑問視され……最悪、連邦軍のトップが交代する可能性もあった。
そうなれば、次にどんな奴が連邦軍のトップになるかは分からない。
それこそ強硬派の軍人が連邦軍のトップになれば、間違いなく面倒臭い事になるだろう。
そんな風にならない為には、持ちつ持たれつの関係を保つのが最善なのだ。
「なるほど。……なら、ジオン軍の方は?」
「そっちは問題ないだろ。どのみちジオン軍が負けるのは既定路線だ。そうである以上、敗軍が何を言っても効果はない」
シュタイナーもその言葉に頷き、取りあえず俺の話を聞いている全員がそれで問題はないと、そう判断する。
「さて、そうなると次の話だが……何度も繰り返すようだが、リボーに核ミサイルが撃ち込まれるのは明日の昼だ。それまでに何をするべきか」
「まず、俺達のMSの修理だろうな。幸いにして、そこまで大きな被害は受けていないから、少し時間は掛かるが修理は可能だ。問題なのは、部品が足りるかどうかだな」
「部品か。……連邦軍のMSの部品で流用出来るか?」
「は? いやまぁ、流用出来ねえことはないだろうし、もし出来なくても少し弄れば大体何とかなるとは思うが」
「よし。なら、部品の方は俺が何とかする。幸い、グレイファントムがいるからな。MSの部品はあそこに行けば何とかなるだろ」
「ちょっと、スカーレット隊から奪ってくるつもり?」
クリスのその言葉で、どうやらあのグレイファントムを旗艦としている部隊はスカーレット隊という名前らしいというのを理解する。
にしても、スカーレット隊か。……ああいう弱い部隊にそんな名前は大袈裟だと思うけどな。
スカーレットというのは、赤系の色だ。
パイロットとしての技量が未熟なあの連中に、スカーレットという色は似合わない。
元々この世界において、赤というのは特殊な意味を持つ。
赤い彗星、真紅の稲妻……後、月の大魔王という異名に赤系の色は入ってないが機体色が深紅のニーズヘッグを操縦する俺。
それを考えると、やはりスカーレット隊というのは大袈裟だろう。
「そうだな。ジムスナイパーⅡと量産型ガンキャノンの部品であっても、その辺の街中で購入する部品よりは随分とマシだろう。……違うか?」
「それは……実際に見てみないと分からないが……」
「いえ、一応問題はない筈よ。元々連邦軍のMSもジオン軍のMSをベースに開発したのだから、全ての部品ではなくても共用出来る部品もある筈よ」
その言葉は、連邦軍のMS開発に関わってきたクリスだからこそ、言えたのだろう。
「そんな訳らしいぞ。……そうなると、この機会にクリスが乗るジムスナイパーⅡと武器弾薬、推進剤、それとアレックスも奪ってきた方がいいのか?」
「……お前、一体何を言っている?」
俺が何を言ってるのか分からないといった様子のシュタイナー。
影の転移魔法とか見せていないし、空間倉庫についてもほぼ知らないだろうしな。
「そういう魔法があるんだよ。取りあえずその辺は心配するな。とはいえ……ジムスナイパーⅡの方はともかく、アレックスはどうなってる?」
「サイクロプス隊との戦闘では無傷だったけど、新型機だから現在は問題がないか調査をしてるわ。ただ、チョバムアーマーは解除されてるけど」
「それは俺としても助かる」
ぶっちゃけ、重装フルアーマーガンダムのセカンドアーマーのように、追加装甲にスラスターや武装とかが内蔵されてるのならともかく、本当に純粋な意味での装甲ともなれば、俺にとってはあまり嬉しくはない。
それなら、チョバムアーマーがない方が戦いやすいのは間違いなかった。
そんな風に、俺はクリスやサイクロプス隊の面々と打ち合わせを行うのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1190
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1617