MS3機を撃破したところで、呆気なくキリング一派の抵抗は終わった。
え? と思わないでもなかったが、ヘルシングに従っているMSパイロットからの話を聞けば、納得出来た。
元々この艦隊はあくまでもヘルシングが率いている艦隊で、そのヘルシングは有能で情に厚く下の者から慕われていた。
勿論、艦隊の全員が心の底から慕っていた……といった訳ではなかったが、それでも憎まれているといった訳ではなかった。
そんな中で乗り込んできたのが、キリングとその部下達だ。
ヘルシングよりも階級が低いのに、ザビ家の後ろ盾があるのでやりたい放題。
当然のようにキリングの部下達もかなり横暴な態度で、ヘルシングの部下達からは嫌われていたらしい。
そんな中で起きたのが、リボーを核ミサイルで破壊するという作戦。
それでもジオン軍の軍人だからと従っていたヘルシングだったが、俺の提案やリックドムⅡのパイロットの言葉を聞いて、月に亡命するという選択をしたらしい。
当然のようにキリングはそれを許容出来ず……内部で戦いが起こった。
その結果としてティベの格納庫が内部から破壊されるといったような被害を受けたが、被害らしい被害はそれだけだったらしい。
いや、人的被害という件では他にも怪我人や死人が出たらしいから、それだけという表現は正しくないだろうけど。
ともあれ、俺が当初予想していた程に激しい戦闘にはならなかった。
……ぶっちゃけ、俺がアレックスに乗ってれば、それだけで片付いただろう。
クリスの援護はあったが、それ以外……サイクロプス隊のMSは、無理をして修復する必要はなかった。
戦いが始まる前は、こんな事になるとは思いもしなかったのだから、今更の話だが。
ともあれ、そんな訳で俺とクリスとサイクロプス隊の面々は、現在ティベに着艦して艦長室に向かっている。
話をするのならブリッジでもいいのでは? と思わないでもなかったが、キリングを捕らえる時の騒動で色々とあったらしい。
そんな訳で、話は艦長室でとなった訳だ。
……当然の話だが、俺とクリスは連邦軍のパイロットスーツを着ている関係上、ジオン軍の者達が揃っているティベの中では目立つ。
中には嫌悪や敵意の視線を向けてくる者もいるが、その辺はしょうがないだろう。
そんな訳で、ティベの通路を進み……案内役の少尉が扉の前で止まる。
「艦長、ルナ・ジオンの方々をお連れしました」
『入って貰ってくれ』
扉の向こう側から聞こえてきた声に、少尉が扉を開ける。
艦長室に入ってみると、そこにはヘルシングの姿があった。
ヘルシングは、俺の姿を見ると座っていた倚子から立ち上がり、敬礼してくる。
「ジオン軍のフォン・ヘルシング大佐であります」
フォンって……本来なら名前じゃなくて、貴族に対する名前につくミドルネーム? とか、そんな感じがするんだが。
まぁ、このUC世界も原作のある世界である以上、フォンという名前があってもおかしくはないか。
「アクセル・アルマーだ」
「……アクセル・アルマー? 月の?」
「ああ」
「申し訳ありませんが、それは本名でしょうか? それとも……偽名でしょうか?」
「正真正銘の本名だな。……こうすれば納得出来るか?」
そう言い、軽く指を鳴らして外見を10代半ばから20代の……月の大魔王の異名を持っている姿に変える。
それを見て、驚愕の表情を浮かべるヘルシング。
いや、ヘルシングだけではなく、サイクロプス隊や俺達をここまで案内してきた少尉も同様だ。
唯一驚いていないのは、クリスのみ。
「これで信じて貰えたか?」
「は、はぁ。それは一体……それも魔法なのですか?」
「似たようなものだ」
そう言い、再び指を鳴らして俺は10代の姿に戻る。
再び変わった俺の姿に、見ていた者達の表情にあるのは驚きだけだ。
「さて、取りあえず俺の名前を理解したところで……これからの話だ。この艦隊は月に亡命するという事でいいんだな?」
「はい。……ですが、中には月に亡命したくないと言う者もいますが……」
「取りあえず俺達に敵対しないのなら、それでいい。月に亡命をしたくないのなら、それこそ月に行った後でそこからそいつの希望する場所に送り出してやる」
そう告げると、ヘルシングは安堵の表情を浮かべる。
ヘルシングにしてみれば、このような状況で絶対に月に亡命しなければならないと言われたら、どうするのかと思っていたのだろう。
「ただし……言うまでもなく、お前達はジオン軍からの亡命者だ。月に到着して暫くは、コバッタという無人機が護衛兼案内役兼見張りにつく」
そう言い、コバッタについての情報を話す。
コバッタという無人機の存在に驚いた様子を見せるヘルシングだったが、取りあえず俺の言葉には納得したように頷く。
バッタやコバッタ、メギロートといったような無人機は、それなりに知られていると思ったんだけどな。
もっとも、ヘルシングにしてみれば、それを知ってはいても自分が関わり合うことはないと、そう思っていたのかもしれないが。
「分かりました。それで構いません。……アルテイシア様にお目に掛かる事は可能でしょうか?」
「多分大丈夫だと思う。ただし、あくまでもそれを決めるのは月の上層部だ。……もしかしたら、何らかの理由でそれを却下されるという可能性も十分にある。それは理解してくれ」
お前達もだ。
ヘルシングだけではなく、サイクロプス隊の面々に対してもそう告げる。
とはいえ、その辺りの話については反対する者はいない。
……唯一バーニィだけは、若干不満そうな表情を浮かべていたが。
普通に考えて、自分達の意思で亡命してきたからといって、即座にそれを全面的に信じるような真似は出来ない。
ティベを旗艦とした艦隊だけに、その全員が必ずしも本当に月に亡命する気でいるのかどうかは、微妙なところなのだから。
中には、恐らく月の情報を入手してジオン軍に流そう……などといったことを考えている者もいるだろう。
そういう連中はキリングに従って反乱――微妙に表現が違うが――を起こしてもよさそうなものだったが、色々と急だったからな。
何だかんだと、戸惑っているうちに戦いが起こり、結果としてキリング達があっさり捕まったという可能性は否定出来ない。
「そう言えば、キリングはどうした? リボーに核ミサイルを撃ち込む指揮を執っていたって事で、色々と使い道はありそうなんだが」
「現在独房にいます」
なるほど。どうやら死んだりはしなかったらしい。
「怪我は?」
「いえ、その前に取り押さえる事に成功しましたので」
ヘルシングのその言葉は、ブリッジにいたクルーの多くがヘルシングに協力したからこそ、出来た事だというのは何となく理解出来た。
やはり俺が予想した通り、ヘルシングは下に慕われているのだろう、
ルナ・ジオン軍で足りない人材の1つとして、艦長がある。
勿論、艦長が全くいない訳ではないのだが……それでも艦長が出来る有能な人物ともなれば、幾らいても多すぎるという事はないのだから。
どうしてもMSパイロットに偏ってるんだよな。
……まぁ、最悪の場合は量産型Wを貸し出すという手段もない訳ではないが、ルナ・ジオンの今後を思えば、やはり量産型Wではなくきちんとした人材でどうにかして貰うのが最善なのは間違いなかった。
「そうか。なら、そいつは月に行ってから司法組織に引き渡す事になると思う。……実際には、連邦軍との取引材料の1つとして使われると思うが」
連邦軍にしてみれば、キリングという存在はジオン軍の悪辣さを示す上でこれ以上ない程の材料だ。
何しろ、南極条約違反の核ミサイルを中立のサイド6に所属するリボーに撃とうしたのだから。
……キリングにしてみれば、その中立のサイド6で連邦軍が最新鋭MSを開発していた時点で中立ではないと言いたいだろうが、その辺が表に出るかどうかは微妙なところだ。
それにサイド6の中立云々という話なら、それこそジオン軍だってフラナガン機関の研究所をサイド6で作ってたんだし。
その辺の事情を考えれば、お互い様だろう。
フラナガン機関の研究所の方は、俺達によって壊滅させられたが。
キリングにすれば、同じように中立のサイド6で活動してるのに何でと言うような気もするが、今の状況を思えば……その差は歴然だ。
子供を虐待するようなフラナガン機関の研究所と、最新鋭MSの開発。
どちらを許容出来て、どちらを許容出来ないかと言われれば、その辺りは当然のように理解出来るだろう。
「連邦軍との……分かりました。それで、これは聞いておきたいのですが、私達が月に亡命する事になった場合、サイド3にいる家族はどうなりますか?」
「それはこっちで対応する。もし月に亡命を希望する家族……もしくは恋人とかがいたら、こっちで亡命の手筈を整えてもいい。もっとも、その心配はあまりいらないかもしれないが」
「戦争の終わり……ですか」
「ああ」
ヘルシングの言葉に頷きを返す。
地球から追い出され、ソロモンを失ったジオン軍に現在残っているのは、ア・バオア・クーと本拠地たるサイド3だけだ。
ア・バオア・クーを失ってしまえば、恐らくサイド3は降伏する筈だ。
そしてソロモンを攻略した連邦軍は、現在戦力を整えてア・バオア・クー攻略の準備をしている筈だ。
俺がサイド6に来たのも、その時間を使っての事だし。
「だから、どうしても月に来るのが嫌なら、サイド3にいたままでも問題はない筈だ。ジオン軍……いや、ジオン公国にしても、この艦隊が裏切ったという情報はまだ伝わっていないだろうし。それが伝わる頃には、ジオン公国は敗戦間近だ」
「……だからこそ、危険だとは思いませんか?」
「負けそうになって自暴自棄で攻撃を……か。それは分かるが、その危険を覚悟の上でサイド3に残りたいというのなら、こちらとしても無理強いは出来ないな。個人的には月に移住してきた方がいいと思うが」
ジオンの独立戦争が終わり、ジオン公国は敗戦で終わった時……その人物がどこの勢力に所属しているのかというのは大きい。
サイド3に固執した場合、敗戦国である以上は色々と連邦軍に降伏の条件を突きつけられるだろうし、それはルナ・ジオンも同様だ。
また、敗戦国だからこそ治安が悪化するという可能性もある。
だが……戦争が終わった時に月にいれば、戦争の勝者という事になるだろう。
もっとも、この戦争において主力となったのは間違いなく連邦軍である以上、月が得られる利益そのものはそこまで多くはないんだろうが……それでも勝利した側にいるというのは大きい。
サイド3と月。
打算や利益といったもので考えれば、間違いなく月に来た方が得だろう。
だが……人の心というのは、時には打算や利益といったものを凌駕することもある。
例えどんなに自分に不利なことがあったとしても、それでも自分はサイド3にいたい、と。
その理由が、故郷であるからといったものや、離れたくない友人や恋人がいるから、もしくはそれ以外にも様々な理由があるだろう。
ともあれ、そのような理由によって、自分は絶対にサイド3からは離れないと、そう考える者もいる可能性はあるのだ。
そのような者達の場合、例えこの艦隊に所属している者が親切心から強引に月まで連れて行ったとしても、決してそれを嬉しくは思わない。
それどころか、何故そのような真似をしたと責める者すらいるだろう。
だからこそ、サイド3からヘルシング艦隊に所属する者達を連れていくには、しっかりと事情を説明した上で、納得して貰う必要があった。
ヘルシングも俺の言いたい事は分かっていたのか、苦い表情で頷く。
……ヘルシングも外見から考えて、年齢はそれなりだ。
結婚して、子供がいてもおかしくはない。
それだけに、しみじみと理解しているのだろう。
「分かりました。その辺りはしっかりと把握します。……それで、これから私達はどうすれば?」
「このまま月に向かってくれ。そこで休んで……もしかしたら、ア・バオア・クーか、サイド3の攻略には力を貸して貰うかもしれない」
サイド3の攻略という言葉に、ヘルシングは微かに動揺を見せる。
ア・バオア・クーは軍事要塞である以上、攻撃をするのに躊躇わない……訳ではないだろうが、それでも納得は出来るのだろう。
だが、それがサイド3ともなれば、正真正銘ジオン軍の本拠地であり、故郷だ。
それだけに、色々と思うところがあるのは当然だろう。
だが、月に帰順したという事をきちんと示すという点では、それが一番手っ取り早いのも事実だ。
ア・バオア・クーを失った時点でジオン公国が降伏するという選択をする可能性もあるんだが。
「……了解しました。では、私はこのまま月に向かいます」
「そうしてくれ。月の方にはこっちから連絡を入れておく。それと、サイクロプス隊とクリスもヘルシング艦隊で預かって、一緒に月に行ってくれ」
「ちょっと待って。私はアクセルと一緒に行動するわよ」
俺の言葉に、クリスが不満を表すようにそう告げるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1205
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1620