ソロモンからやって来たのは、カトンボだった。
まぁ、ムサイやザンジバル、グワジンとかが移動しているのを見れば、ソロモンの方でも混乱するだろうし。
何しろ、それらはジオン軍の艦艇だ。
下手をすれば、敵と認識して――もしくは意図的に間違って――こっちに攻撃を命中させてくるという可能性も、十分にある。
そうならないようにする為には、やはり一目でジオン軍の軍艦ではないカトンボを使うのが一番だったのだろう。
『これが、ルナ・ジオン軍の軍艦?』
「正確にはシャドウミラーの軍艦だな。ルナ・ジオン軍の軍艦は、今のところ基本的にジオン軍の奴だけだから、それを使った場合は問題が起きるし。……それより、カトンボの中に入るぞ。出来るだけ早くソロモンに戻りたいし」
『分かったわ』
クリスの言葉を聞き、俺は先導するようにニーズヘッグでカトンボの格納庫に入る。 正直なところ、カトンボに入る前にニーズヘッグは空間倉庫に入れても構わなかったんだが……まぁ、その辺についてはしょうがない。
クリスも初めてカトンボの格納庫に入るという事で、色々と緊張してるだろうし。
そんな訳で俺が格納庫に入ると、クリスもまた格納庫に入る。
格納庫に中にいるのは、量産型Wとコバッタ……だけかと思いきや、ディアナの技術者の姿もあった。
ジムスナイパーⅡ……いや、これはディアナに既にあるので、恐らくアレックス目当てだろう。
そんな中で、ディアナの技術者達は格納庫に入ってきたのがニーズヘッグだと知ると、狂喜乱舞する。
まぁ、技術者達にしてみればニーズヘッグは別格だと、そう理解しているからだろう。
とはいえ、ニーズヘッグはシャドウミラーの中でも最高機密である以上、当然のようにディアナの技術者達に見せたりといったような真似は出来ない。
そんな訳で、少し離れた場所にジムスナイパーⅡが停止するのを見ながら、俺はニーズヘッグのコックピットから出ると、そのまま空間倉庫に収納する。
『ああああああああ』
揃って嘆きの声を上げるディアナの技術者達。
その様子が少し哀れだったので、俺はアレックス……ではなく、アレックス用のビームライフルを空間倉庫から取り出す。
何故俺がビームライフルを出したのかが分からず、混乱する様子の技術者達。
だが、俺はそんな技術者達に声を掛ける。
「このビームライフルは連邦軍の最新型で、エネルギー切れになってもビームライフルにエネルギーを充電しなくても、後方部分にある場所がEパックという部位で……普通の銃でいえば弾倉に当たる。これにエネルギーを充電することで、また使える訳だ。そしてEパックなら、複数持ち歩く事も出来る」
その言葉に、ディアナの技術者達はざわめく。
当然だろう。現在連邦軍とジオン軍で使われているビームライフルは、一度全てのエネルギーを使い切ってしまうと、充電するシステムのある場所まで戻って再充電しなければ使い物にならない。
それを、銃弾のようにそこだけを変える事でどうにか出来るのなら、それはUC世界のMSにとっては大きな利益だろう。
もっとも、個人的にはズゴックとかの動力炉直結式のメガ粒子砲の方が便利だと思うが。
SEED世界のMSのように。
SEED世界ではNジャマーのせいもあって基本的にMSに核分裂炉は使えない。
NジャマーキャンセラーはMSに使っては駄目って事になってるし。
それもあって、動力炉直結式ではあってもエネルギーが有限なんだよな。
「これは……素晴らしい」
ディアナの技術者の1人が、心の底から感心した様子で、そう言ってくる。
技術者にしてみれば、アレックスのビームライフルはそれだけ衝撃的だったのだろう。
あるいは、似たような事は考えていたかもしれないが、こっちはもう出来上がってるし。
「一応、これを充電出来るようなシステムを構築してくれると助かる」
「分かりました。すぐにでも」
この様子を見ると、アレックスは見せなくてもいいか?
ガンダム7号機を知っていれば、アレックスはそこまで珍しい機体じゃないしな。
リニアシートはそれなりにいい感じかもしれないが。
あ、それと前腕部のガトリング砲か。
何気に威力が強い固定武装で、使い勝手は悪くなかった。
ただ、個人的には実弾じゃなくてメガ粒子砲……それも拡散メガ粒子砲とかにして欲しいところなんだが。……無理か。
「じゃあ、クリス。機体はこの連中に任せればいいから、俺達は行くぞ」
ジムスナイパーⅡから降りてこっちに来ていたクリスにそう声を掛ける。
すると、ディアナの技術者を微妙な視線で見ていたクリスは、俺の方に近寄ってきた。
アレックスを開発するチームの一員だったんだから、クリスもこういう連中にはそれなりに慣れてると思うんだがな。
アレックスの開発チームには、ここまでの連中はいなかったのか?
「行くって、どこに?」
「取りあえず月に連絡を入れる必要がある。じゃないと、ヘルシング艦隊が到着した時に攻撃されるかもしれないし」
月の周囲には、幾つもの機動要塞が存在している。
その機動要塞は、当然のように何の連絡もなくジオン軍の艦隊が近付いてくるのを見れば、敵と判断して攻撃してもおかしくはなかった。
だからこそ、そのような事が起きるよりも前に連絡をしておく必要があったのだ。
クリスも俺の言葉を聞いて、納得の表情を浮かべる。
今この状況で、一体何をするべきなのか……それは十分に理解出来たのだろう。
「そんな訳で、俺は月に連絡するけど……クリスにも来て貰う」
「え? 私も?」
まさか、ここで自分の名前が呼ばれるとは思わなかったのか、驚いたような表情を見せるクリス。
クリスにしてみれば、月のお偉いさんと俺が話す場面に自分がいる必要があるとは、全く思わなかったのだろう。
「ああ。クリスは忘れてるようだが、連邦軍を抜けてきたんだからな? 月の方にもしっかりとその辺の話を通しておかないと、後で面倒な事になる。……連邦軍の方にも話を通しておく必要があるが」
「私が聞いてもいいのかどうかは分からないけど……それで大丈夫なの?」
「多分大丈夫だとは思うけどな。月にとって、クリスの存在は利益の方が大きいんだし」
士官学校首席卒業にして、アレックスという連邦軍の中でも最高機密に近いだろう高性能MSの開発チームの一員にして、テストパイロット。
まさにクリスは才色兼備という言葉が相応しい女だ。
その上、人当たりもいい。
……もっとも、アレックスのテストパイロットをやるには、技量が……いや反応速度が足りなかったようだが。
それでも、ジムスナイパーⅡのパイロットとして考えれば、十分にその能力は高い。
であれば、そんなオールマイティな人材を月が……人材不足に悩むルナ・ジオンの面々が、歓迎しない筈がない。
これでクリスがスパイの可能性でもあれば話は別だったが、俺が連れて来たという事で、その辺の心配もあまりいらないだろうし。
「でも、ここから月に連絡が取れるの? 結構時間が掛かるんじゃない?」
「普通ならそうだろうな」
チェンバロ作戦の影響で、まだソロモンの周辺にはミノフスキー粒子が残っている場所も多い。
そんな状況であれば、ここから月までの通信が出来るかどうかというのは……正直、微妙なところだろう。
だが、それはあくまでもこの世界の通信を使えばの話であって、マクロス世界のフォールド通信をベースとして開発された、ゲートを通して行われる通信装置は全く何の問題もなく使える。
ミノフスキー粒子? 何それ、美味しいの? といったような感じで。
とはいえ、この通信を使える通信機を持っている者は、そう多くはないのだが。
何しろ、ミノフスキー粒子の影響を受けないというだけで、この技術は幾らでも悪用出来る。
また、当然の話だが連邦やジオンといった他勢力に渡していいものではない。
……まぁ、連邦やジオンの技術でシャドウミラーの通信機を分析出来るかと言われれば、正直微妙なところではあるが。
それでも、世の中には天才というのが存在するのだ。
特にUC世界においては、その天才が比較的多いように思う。
そのような者達であれば、もしかしたら通信機の秘密を解き明かしかねない。
最悪……本当に最悪、このUC世界でフォールドが実現される可能性すらあった。
そのような事は、可能な限り避けたい。
そうしてカトンボの一室にクリスと共に入ると、通信機を起動させる。
瞬間、空中に映し出された映像スクリーンに、クリスが驚きの声を漏らす。
「きゃっ! ……アクセル、これは?」
「通信機だよ」
クリスの言葉に俺がそう言うのと、空中に浮かんだ映像スクリーンにセイラが姿を現したのは、ほぼ同時だった。
『アクセル? どうしたの? そちらは……?』
俺に呼び掛けたセイラは、すぐに俺の隣にいるクリスに視線を向け、誰なのかを尋ねてくる。
「サイド6の件で色々とあったんだよ。こっちはクリス。クリスチーナ・マッケンジー。そして向こうは……」
「アルテイシア・ソム・ダイクン……?」
紹介するまでもなく、クリスの口からセイラの名前が出る。
まぁ、無理もないか。
セイラは現在UC世界においては最大級の有名人だ。
時にルナ・ジオンの建国宣言は、多くの者がその映像を見た筈だ。
当然のように、クリスもその映像を見たのだろう。
『ええ、初めまして。クリスチーナ』
月の女王らしい、優雅な笑みを浮かべるセイラ。
そして再度俺の方に視線を向け、尋ねる。
『それで、アクセル。詳しい事情を説明してくれる?』
その言葉に頷き、俺はサイド6のリボーで経験した事を説明する。
この数日間で何気に結構な出来事があっただけに、それを説明するのには10分近く掛かった。
一応、重要な用件だけを伝えたんだが。
『なるほど。いいでしょう。ヘルシング艦隊の方は受け入れの準備をしておきます。また、アクセルが言った対応で迎えます。ただし、コバッタは護衛兼監視としてつけるわよ?』
「ああ、それで構わない。その辺の説明もしてるしな。それと、キリングの方も頼む」
『連邦軍との取引材料としては悪くないわね。ただ……サイド3にいるヘルシング艦隊の家族達に連絡を取るのは、少し時間が掛かると思うわ』
「だろうな」
これが10人や20人程度ならともあれ、ヘルシング艦隊はティベ級を筆頭に、ムサイ級が相応の数あった。
それに乗っている者達の家族や恋人全員ともなれば、それこそ一体どれだけの人数になるのかは、想像するのも難しくはない。
何より、現在サイド3にいるルナ・ジオンのシンパ……もしくは隠れダイクン派の面々は、そこまで数は多くない。
唯一の救いとしては、現在のジオン軍が追い詰められつつあるという事で、下の行動にそこまで関わっているような余裕はないという事か。
だが……逆に、追い詰められつつあるという事で、不満のぶつけ先を探す為にダイクンやルナ・ジオンの協力者を探すといったような真似もしかねないのだが。
「そっちの方は、可能な限りでいい。それはヘルシングも承知している」
ヘルシング艦隊にいる人数を考えれば、それは当然の結果だった。
もっとも、ヘルシングも当然のようにそれは承知していたので、これは約束を破るといった訳ではないのだが。
『そうなると、次は連邦軍の方ね。……クリスチーナの家族は?』
「そっちも頼む。出来れば保護して欲しい」
「お願いします」
俺の言葉を聞いたクリスが、そう言って頭を下げる。
セイラはそんなクリスを見て、安心させるように笑みを浮かべる。
『分かったわ。アクセルが連れてきた人ですもの。こちらでも相応の手は打ちましょう。それで、連邦軍にはこの件は話したの?』
「まだだ。ちょうどソロモンにレビルがいるからな。そっちから話を通そうと思って」
『……そちらにも私から話を通しておくわ。アクセルが話すと色々と問題が起きそうだし』
「あ、分かります」
セイラの言葉に俺が何かを言うよりも前に、クリスが同意する。
そして何故かセイラはそんなクリスに向かって、仲間を見るような視線を向けていた。
『そう、貴方も……アクセルの側にいるのは大変でしょうけど、頑張ってね』
「はい」
何故か……本当に何故か、いきなり息の合った2人。
それに対して、色々と言いたい事もあったのだが……今の状況でそのような真似をしても、それこそ俺に不利になるだけだ。
「ともあれ、レビルに話すのはセイラに任せる。アレックスとジムスナイパーⅡはどうする?」
『レビル将軍が事情を知っていても、連邦軍全てに話すような事は出来ないでしょう。それに、アレックスについて知ってる軍人がどれくらいいるのかも分からないわ』
「つまり、使わない方がいいという事か」
『そっちの方が無難ね。アクセルの場合は、ガンダム7号機もあるでしょう? クリスチーナは……』
「クリスと呼んで下さい」
何故か先程の一瞬で友好的な関係を結んだのか、クリスが自分の事は愛称でいいと言う。
『そう、ありがとう。……クリスには、ヅダの予備機を』
セイラのその言葉に、予想通りの結果になったと俺は頷くのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1205
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1620