「で? 結局……被害はソロモンの周辺にいた軍艦5隻が爆発した、と」
「どうやらそのようです」
ガトーが俺の言葉にそう返してくる。
それ自体は納得出来る。
軍艦……サラミスやマゼランといった軍艦が、1隻だけならともかく5隻もいきなり爆発したとなれば、ソロモンに警報が鳴るのも当然だろう。
とはいえ、問題なのは一体何故そのようになったかだ。
もしこれが……言ってはなんだが、1隻程度の爆発であれば、何らかの事故という可能性も否定は出来ない。
チェンバロ作戦を終えたばかりなのだから、その時の戦いに参加した軍艦の中には、何らかの被害を被った艦も多かっただろう。
だが、一見するとそこまで緊急に修理が必要だとは思わず……その見立てが実は間違っており、結果として爆発した。
それは十分に考えられる事だったが、それが5隻同時となれば話は変わってくる。
まさか、5隻がほぼ同時と言ってもいいくらに爆発するような故障とは、ちょっと考えにくい。
だとすれば……
「破壊工作員か?」
「その可能性もありますが、ですが、何故軍艦を? いえ、軍艦を攻撃するにしても、それならもっと高性能な……ホワイトベースやサラブレッドといったような軍艦を狙った方が、効果的だと思いますが」
確かに。
今回爆発したのは、マゼラン級が1隻にサラミス級が4隻。
マゼラン級は旗艦として使われる事も多い軍艦だけに、それを1隻とはいえ失ったのは連邦軍にとっても痛いだろう。
だが、それはあくまでも痛い程度であって、致命傷という訳ではない。
つまり、連邦軍にとっては致命的という程ではない。
破壊工作員が……それも今回の件で警戒が厳しくなると考えると、この絶好のチャンスに行うにしては、少しおかしい気がする。
「そうなると、破壊工作員以外……」
そう言い、ふと思い出す。
俺がサラブレッドと行動を共にしていた時に、同じような事があったと。
あの時は、特定の場所で連邦軍が何者かに襲われるといったような事があり、結果としてブラウ・ブロを鹵獲し、シムスとシャリアを確保出来た。
あの時と似ていると考えるのは、俺の気のせいか?
いや、けどブラウ・ブロを新たに出撃させてきたにしても、有線ビーム砲はそこまで射程が広くない。
実際、あの時も少し離れたデブリ帯の中に潜んで身を隠していたのだ。
ソロモンの近くには、あんな大物が隠れられるようなデブリ帯はない。
だとすれば……有線ビーム砲の射程距離が以前よりも遙かに長くなっている?
「有線ビーム砲……とは考えられないか?」
「有線ビーム砲ですか? サラブレッド隊と行動していた時の……なるほど。だが、それでも疑問は残ります」
そう言い、ガトーは俺が思いついたのを同じ事を口にする。
あの戦いではガトーも参加していたので、同じ結論になるのは当然なのだろう。
「だとすると、どういう理由だと思う?」
「考えられるとすれば、時間を合わせて時限爆弾を仕掛けたとかでしょうが……それも、わざわざそのような真似をするのなら、もっと高性能な軍艦を狙った方が適切でしょうし」
「サラブレッドやホワイトベースは、高性能艦だからこそ狙いにくいというのもあるのかもしれないな」
特にホワイトベースの場合、民間人出身の軍属が多く、一種独特な雰囲気を持っている。
そのような場所に見知らぬ誰かが来れば、当然のように目立つ。
サラブレッドの方は、ホワイトベースよりは軍人然として雰囲気の者が多いので、中に入り込むのは出来るかもしれないが。
「そうなると、やっぱり、ブラウ・ブロの進化形……進化形?」
そこまで呟き、ふと気が付く。
ブラウ・ブロと戦った時に厄介だったのは、有線ビーム砲だった。
だが……それよりも進化した攻撃方法があったらどうなる?
具体的には、有線ではなく無線の……シャドウミラーで使われているファントムやソードブレイカーのような代物であった場合。
とはいえ、このUC世界においてはミノフスキー粒子がある以上、簡単にそんな真似は出来ない。
普通に考えれば、無線通信の類を使って操縦したりするのだろうが、それを邪魔するのがミノフスキー粒子なのだ。
ソードブレイカーの場合は、ソードブレイカーの方に高性能AIが含まれており、自己判断が可能となっている。
これはレモンや技術班によって強化されており、以前にも増して強い威力を誇り、賢くなっている。
また、ファントムはT-LINKシステムを使った念動力によって動かしているので、ミノフスキー粒子の影響は受けない。
このUC世界において考えられるとすれば、やはりソードブレイカーのようにAIを搭載するといった方法が必要なのだろうが、UC世界の技術でそのような真似は不可能……と言わないが、かなり難しいのは間違いない。
なら、T-LINKシステムか? と思ったが、それはAI技術以上に無理だろう。
そもそも、このUC世界においてはニュータイプ能力者はいても、念動力者は……待て。今、俺は何を思った?
ニュータイプ能力と念動力。
念動力の持ち主たる俺がT-LINKシステムでファントムを使えるのなら、ニュータイプ能力者も何らかの方法でファントムのような外部攻撃端末とでも呼ぶべき物をコントロール出来るのではないか?
ましてや、ニーズヘッグがグラナダを攻略する際の映像は世界に流れたのだから。
それを参考にして、フラナガン機関が全く新しい――あくまでもジオン軍にとってだが――兵器を開発したという可能性は否定出来ない。
とはいえ……シャリアやシムスから聞いた話によると、ブラウ・ブロですらニュータイプ用MAとしては未完成で最終調整中だったと聞く。
有線ビーム砲ですらそんな状況だったのに、無線式のビーム砲を開発出来るものか?
あるいは、開発したとしてもそれを実用化出来るのかという問題もある。
……もしかして、ブラウ・ブロの件そのものがブラフだった、という可能性もあるのか?
「ちょっと待ってろ」
そうガトーに言うと、シャドウミラー用の通信機を使って月に連絡する。
ミノフスキー粒子があろうとなかろうと、全く問題なくリアルタイム通信が出来るこの通信機は、ぶっちゃけ今のUC世界においてはオーパーツに等しい。
そんな通信機により、空中に映像スクリーンが浮かび上がる。
そして少しして……
『アクセル? どうかして?』
そこには、セイラの姿が映し出された。
ガトーもこの通信機の存在は知ってるので、特に驚いた様子もなくその場に佇んでいる。
「ああ、ちょっと聞きたい事があってな。実は、つい先程ソロモンの周辺に待機していた連邦軍の軍艦が数隻撃沈された」
『……それは本当なの?』
「残念ながらな。ただし、問題なのは連邦軍の軍艦が撃沈したのもそうだが、一体どうやってそれを行ったのかという事だ」
『アクセルがそう言うということは、MSやMAといった攻撃方法ではないのね?』
「そうだ。ソロモンのレーダーでも、敵の姿は全く確認出来なかったらしい」
『おかしいわね』
「ミノフスキー粒子があっても、そこまで派手に攻撃されているのに気が付かないのはおかしいな。それで最初はブラウ・ブロのように有線ビーム砲の持ち主がどこか遠くからビーム砲を伸ばして攻撃したのかとも思ったが、ソロモンの周辺にそんな便利な場所はない。あるいはあっても、当然のように連邦軍が調べている筈だ」
『でしょうね』
セイラもそれには同意見だったのか、あっさりと頷く。
「で、俺は考えた訳だ。有線で無理だったら無線なら……ってな。普通に考えれば、有線ビーム砲を使ったブラウ・ブロも完成していなかったのに、無線のビーム砲をどうにか出来るのかとも思ったが、ジオン軍は時々妙に技術的なビッグバンを起こしたりするしな。……そんな訳で、ニュータイプ研究所にいるシムスにこの通信を繋いで貰えないか?」
現在月にいる中で、ジオン公国のニュータイプ研究に対して一番詳しいのはシムスだ。
勿論、ルナ・ジオンに組み込まれる前に知ってる情報については全て話してはいるのだろうが、自分でも気が付いていないが実は知っていた……といったような事もある。
『そうね、分かったわ。少し待ってちょうだい』
そう言い、セイラが映像スクリーンの向こう側で作業を始めた。
「アクセル代表、その……今回の一件はやはりニュータイプの仕業だと考えてもいいのですか?」
ガトーのその言葉には、若干の戸惑いがある。
ニュータイプのセイラがルナ・ジオンの頂点にいて、ニュータイプ部隊――人数は3人だが――を要している月だけに、ニュータイプを使えるのは自分達だけだと、そう思っていたのだろう。
実際、ニュータイプを実戦で試したのは、多分月が先だ。
だが……ニュータイプ研究という点で考えれば、フラナガン機関を要するジオン公国の方が1歩先を進んでいるというのも、また事実なのだ。
何しろ、ジオン公国においては人体実験が普通に行われている。
非人道的であるのは間違いないが、その分だけ……言葉は悪いが、効率的に研究を進めているのも事実だ。
正直、それについては色々と思うところがあるのは間違いない。
実際にフラナガン機関の研究所を襲撃した身としては、心の底から理解出来た。
「考えられる可能性としては、やっぱりニュータイプだろうな。もしくはジオン軍が全くこっちが思いも寄らない別の兵器……MSでもMAでもない種類の戦闘兵器を開発したか」
「それは、難しいのでは?」
「そうだな。そういうのはそう簡単に開発出来るものではない」
実際、俺が聞いた話だとMSを開発するのにもかなりの時間が掛かっている。
それこそ、黒い三連星やラルといった面々は、その歴史の生き証人と言ってもいい。
だからこそ、全く新しい種類の兵器とニュータイプ用の無線攻撃兵器のどちらが可能性が高いのかと言えば……やはり後者なのだろう。
『お待たせしました、アクセル代表。私に何か用でしょうか?』
映像スクリーンにシムスが姿を現し、そう尋ねてくる。
若干緊張している様子なのは……多分、月で働く事になって俺の正体を知ったからだろう。
いや、別に正体を隠していた訳じゃないんだけどな。
「よく来てくれた。早速だが用件に入らせて貰う。シムスが乗っていたブラウ・ブロは有線式のビーム砲だったが、無線式のビーム砲を使うMA……いや、MSでもいいが、そういうのはフラナガン機関で開発されていたか?」
『えーと……私はブラウ・ブロの専属でしたので、確実な事は言えませんが、そういう噂があったのは知っています』
「噂だけか?」
『ええ。その……私は研究一筋だったので、知り合いは……その……』
「あー、うん。何となく分かった。それ以上は言わなくてもいいぞ」
研究に熱心だったあまり、友人を作ったりといった事にはあまり熱心ではなかったのだろう。
そういう仕事人間はそれなりに知ってるので、それについて責めるつもりはない。
……出来れば、もう少し情報には詳しくなっていて欲しかったが。
「ともあれ、シムスの耳にも入るくらいに無線用のビーム砲を持つ兵器の類は開発されていたんだな?」
『はい。……そのような話をするという事は、もしかして……』
「ああ、恐らくはその噂されていた兵器が実戦投入されたんだろうな」
そう告げると、シムスは悔しそうな表情を浮かべた。
当然か。シムスが必死になって開発していたブラウ・ブロに対して、今回使われた敵の兵器は無線のMA。
有線と無線のどちらの方が難易度が高いかと言われれば、当然それは無線だ。
考えようによっては、ブラウ・ブロは無線を使う新兵器の隠れ蓑か何かにされたように思えてもおかしくはない。
『そう、ですか。……それで、聞きたかったのはそれだけですか?』
「そうなる。何かその新兵器についての情報を持っていれば、こっちとしても助かったが……それについては知らないんだろう?」
『はい。……あ、いえ。その新兵器の名前ですが、エルメスという名前だと耳にした事があったような……』
「エルメス……エルメスか、分かった。それだけでも知る事が出来て助かったよ」
正直なところ、名前だけを知ってもそれでどうする? という思いがない訳でもない。
だが、多少なりとも何らかの手助けになるのであれば、何の手掛かりもないよりはいいだろう。
……ジオン軍の連中に鎌を掛ける際にも、その辺りは使えるかもしれないし。
『では、仕事がありますのでこれで失礼します』
敬礼し、映像スクリーンにはシムスの代わりにセイラの姿が映し出された。
「どうやら、俺の勘は当たったらしいな」
『そのようね。……けど、どうするの? 正直なところそれが分かったからといって、それでどうにか出来るとは限らなくてよ?』
「取りあえず、ホワイトベースにでも知らせておくよ」
アムロがこの世界の主人公だとしたら、このエルメスという一件にも原作で関わっていてもおかしくはない。
とはいえ、アレックスの件もそうだが、アムロが関わるのが物理的に不可能なところで色々と話が動いてるのは、色々と気になるんだよな。
そんな疑問を抱きながら、俺はセイラと暫くの間、会話をするのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1205
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1620