ソロモンを出発してから2日……結局途中で数度の襲撃があった程度で、本格的な戦いは起こらなかった。
運がいい……というよりは、ジオン軍が最初の襲撃で受けた被害の大きさから、戦力を無駄に消耗する必要はないと判断したのだろう。
それでも戦闘が何度か起きたのは、ジオン軍の上層部……具体的にはギレンとキシリアの間で指揮系統を争っているのか、それともジオン軍の中でも攻撃をするなと命じられたのが許容出来ずに、自分達の判断で攻撃してきたのか。
ともあれ、そうした攻撃でどうにか出来る筈もなく……それこそ、ルナ・ジオン軍の出番もないまま、奇襲をしてきたジオン軍は連邦軍によって撃破されていった。
とはいえ、その奇襲が全く無意味だった訳ではない。
ソロモンからア・バオア・クーまでは、本来なら移動距離は1日程度だ。
だが、その奇襲によって自然と周囲の警戒をする必要が出て来るようになり、移動速度は遅くなり……結局、ア・バオア・クーに到着するのに2日も掛かってしまったのだから。
現在はア・バオア・クーを攻略する為の星一号作戦の本領を発揮するまで待つ為に……こうして、連邦軍の隊列を整えているところだった。
当然のように、星一号作戦における主役は、ルナ・ジオン軍ではなく連邦軍だ。
艦列を整えている中で、ルナ・ジオン軍の軍艦は後方の、それも端の方に配置されている。
あからさまな態度だが……まぁ、その辺に関しては仕方がないと考えた方がいい。
レビルも連邦軍の指揮を執っているのは間違いないが、だからといって完全に自分の思い通りに出来る訳ではない。
場合によっては、下からの要望を聞く必要もあるのだろう。
それに、俺ももう手柄を焦っている訳ではないので、この配置でも問題はない。
そもそも、今回俺が戦いに参加した理由は、ガトーに異名を付けるというのが大きな理由だった。
それ以外にもガンダム7号機の実戦テストだったりもあったんだが、そちらは双方共にチェンバロ作戦で終わっている。
ルナ・ジオン軍の実力を知らしめるという意味でも、シーマ率いる部隊がしっかりと行っていた。
敢えてまだやるべき事をとなると、ルナ・ジオン軍の兵士、それも新米達に実戦をより多く経験させるという事だが……まぁ、それは別に後方からでもある程度は対処出来る筈だ。
乱戦になってしまえば、こっちも自由に行動出来るだろうし。
それに、ジオン軍にとってもここは最後の砦である以上、腕の立つMSパイロットは多数存在しているし、ビグ・ザムのようなMAの類も存在していてもおかしくはない。
いや、おかしくはないどころか、間違いなくそのような奥の手がある筈だろう。
「アクセル、そろそろこっちも準備した方がいいんじゃない?」
クリスのその言葉に、少し考えてから頷く。
この配列を見れば、すぐに俺達の出番となるようなことはないだろう。
だが、それでもジオン軍の奥の手の事を考えれば、いつ何が起きてもおかしくはないのだ。
その結果として、カトンボが破壊される……という可能性も否定は出来ない。
俺の場合は、生身で宇宙空間にいても何の問題もなく行動する事が出来る。
だが、それはあくまでも俺が混沌精霊だからであり、クリス、ガトー、ノリスの3人はパイロットスーツを着ていなければ、そのような真似は出来ない。
パイロットスーツを着ていても、カトンボが撃破されてしまえば、その衝撃で死ぬ事になるのだろうが。
であれば、MSに乗っていた方が生き延びる可能性が高いのは事実だ。
「じゃあ、全員MSに搭乗しておくか。……正直、いつ戦闘になるか分からないし」
そう言うと、ガトーとノリスの2人も特に不満はなかったのか、素直に俺の言葉に頷く。
そうして格納庫に向かい……メカニックによって万全の状況になっているMSに乗り込む。
MSが4機だけしか存在しないというのもあるが、やはりそれよりも大きいのはコバッタが大量にいる事だよな。
それなりに専門的な作業も、コバッタは容易に行う事が出来る。
ぶっちゃけ、弾薬の補給とかエネルギーの充電とか、そういうのはコバッタでも十分に出来るし、部品が摩耗していないかといったのを確認するのも出来る。
ただし、職人の勘とでも呼ぶべきものが必要になるような行為だったり、新しく何かを思いつくといったような真似は、コバッタには出来ないのだが。
そんな訳で、アレックスのビームライフルの解析をしながらでも、MS4機程度の補給や整備といった事は、そう難しくはなかった。
「出撃するぞ。……ア・バオア・クーでは何があるか分からないから、メカニック達もその辺を注意しておけ」
一応、そう声を掛けておく。
そんな声が聞こえたのか、メカニック達も自分の仕事やアレックスのビームライフルの研究だけではなく、いざという時の行動を取り始める。
具体的には、パイロットスーツを着たりとかだ。
……いや、メカニックだから、パイロットスーツとは言わないのか?
そんな風に思いつつ、ガンダム7号機のコックピットに乗り込む。
『アクセル代表、ア・バオア・クーの方で動きがあったようです』
コックピットに座るや否や、カトンボのブリッジにいる量産型Wからの通信が入る。
一体、何があった?
「映像を回せ」
『了解しました』
その言葉と共に、映像が表示される。
そこに映し出されているのは、俺にとっても少し……いや、かなり予想外の光景だった。
ア・バオア・クーの方から、グワジン級が1隻、やって来るのだ。
グワジン級は、ジオン軍の中でも最高性能の軍艦と言ってもいい。
MSの搭載数では機動要塞と呼んでもおかしくはないドロスには劣るが、軍艦としてそれ以外の性能ではドロスにすら勝っている。
そんなグワジン級が、護衛もつけずに1隻だけで連邦軍の方に向かってくるのだ。
一体、何を考えている?
「何があったのか、分かるか?」
『通信を傍受したところ、どうやらジオン公国のデギン公王がレビル将軍と和平交渉を行うとの事です』
「……は? なら、あのグワジン級にはデギンが乗ってるのか?」
俺の口調が信じられないといったようなものになったのも、当然だろう。
デギン公王。……デギン・ソド・ザビ。
その公王という言葉が示している通り、考えるまでもなくジオン公国を牛耳るザビ家の頂点に立つ男だ。
……実際には、半ば隠居状態でジオン公国の運営は息子のギレンに一任しているが、それでも公式上では未だにジオン公国の最高位に位置するのは、デギンなのだ。
そのデギンが……それこそ、護衛の1人も連れずにここに来ているのか?
いやまぁ、グワジン級自体がそれこそ現在のUC世界においては最高峰の性能を誇る軍艦である以上、グワジン級だけで十分な戦力を持っているのは間違いない。間違いないが……それでも、普通に考えればとてもではないがデギンという人物が取る行動だとは思えない。
そもそも、レビルが交渉を行わずに攻撃をしたりしたらどうなる?
それこそ、デギンが死んでしまうのは確実だった。
だとすれば……
「影武者か? 量産型W、グワジン級に乗っているのが本物のデギンであるという証拠は何かあるか?」
『分かりかねます。実際に映像モニタに表示されれば、多少は分かるかと思うのですが』
だろうな。
あのグワジン級……もし本当にデギンが乗っているのだとすれば、グレートデギンという名前のグワジン級だと思うが、ともあれこっちに流れてきた情報はあくまでも連邦軍がデギンの姿を確認したというものだけだ。
そうである以上、敵の……ジオン公国の頂点に立つ人物の姿を確認した訳ではない。
だとすれば、今回の一件で本当にデギンが出て来てるのかどうかというのは微妙なところだ。
連邦軍の方でも、デギンが影武者の類ではなく、本物かどうかというのは確認してるんだろうが……本当に本物であるかは、それこそ俺からは分からない。
「なら、連邦軍は……レビルはどう反応するか分かるか?」
『連邦軍の旗艦が動き始めているのを見ると、和平交渉に参加するようです』
レビルが和平交渉に……だとすれば、レビルはデギンが本物だと判断したのか?
誰から聞いたのかはちょっと忘れたが、以前レビルはサイド3に連邦軍の軍人として駐留していた筈だ。
その時のレビルの階級までは分からないが、それでも現在レビルは連邦軍のトップにいる以上、当時も相応の階級だったのは恐らく間違いない。
であれば、サイド3にいた時にレビルとデギンが会っていても不思議はない。
また、独立戦争が始まった当初……ルウム戦役において、レビルは黒い三連星に捕虜になっている。
その時に顔を会わせているという可能性も、否定は出来ない。
こう考えると、レビルとデギンの接点はかなり多いんだな。
『アクセル、話は聞いた?』
ヅダに乗っているクリスからの通信。
その通信を聞き、同時に通信をガトーとノリスにも繋ぐ。
「ああ、デギンがレビルと和平交渉をするらしいな。……正直、この段階でそんな真似をするとなると、罠のような気がするんだが」
その言葉にはクリスも異論がないのか、同意するように頷く。
『普通に考えればそうでしょうね。でも……連邦軍の総大将のレビル将軍を倒しても……混乱は少しの間だけで、すぐに他の人が指揮を引き継ぐわよ?』
「だろうな」
レビルの派閥で、レビルの次に強い影響力を持っているのが誰かと言えば、それは当然のようにゴップだ。
だが、そのゴップは後方支援の専門家で、現在はジャブローにいる。
そうなると、別の人員となるが……何気に、レビルの派閥って人材が豊富なんだよな。
問題なのは、人材は豊富だがレビルのように飛び抜けた人材がいない事だろう。
つまり、もし万が一レビルに何かあったら、誰が主導権を握るかで揉める可能性がある。
ましてや、この星一号作戦はレビルの派閥だけではなく、他の派閥の者達も当然のように参加している。
だからこそ、場合によってはレビルがいなくなれば連邦軍は揉める。
……それが目的か?
ア・バオア・クーというジオン軍の最終防衛線を前に、連邦軍が身内同士で争うかどうかはともかくとして、何らかの問題が起きればそれによって最悪、連邦軍は軍勢という軍の集団ではなく、別個の軍の集まりとなる。
ジオン軍にしてみれば、それこそ現在のこの状況からどうにかするなら、それが最善の手段となるだろう。
あるいは、誰かが上手くリーダーシップを取る可能性もあるが……
「量産型W、連邦軍に連絡を入れろ。これは敵の罠の可能性が高いと」
『了解しました』
そう返事をする量産型Wだが、連邦軍だって間抜けばかりが揃っている訳ではない。
相応に優秀な者達が揃っている以上、これが罠であるという可能性は十分に承知している筈だった。
とはいえ、外部協力者たるルナ・ジオン軍からもその辺の忠告を受けたとなると、相応に対処する……筈。
あくまでも筈であって、実際にどうなるのかは俺にも分からないが。
『やっぱり罠だと思う? でも……もし罠だとすれば、騙し討ちでレビル将軍を倒しても、その報復でデギン公王も死んでしまうんじゃない?』
「戦艦……グレードデギンに乗ってるのが、デギンの影武者じゃなければの話だがな」
『影武者……なるほど。その場合、どうするの?』
「どうすると言われてもな。ルナ・ジオンとしては連邦軍に負けて貰う訳にはいかないから、出来るだけ早く立ち直って欲しいところだ。……個人的に、レビルには生きていて欲しいという思いもあるし」
ルナ・ジオンという存在の危険性を一番理解しているのはゴップだが、それに次いで理解しているのが誰なのかと言われれば、それはやはりレビルだ。
そのレビルを失ってしまうというのは、ルナ・ジオンの立場に取っても痛いし……個人的にこちらと友好的に接してこようとする相手が死ぬというのも、面白くはない。
勿論、レビルは連邦軍を仕切っている立場である以上、こちらと友好的に接しているとはいえ、それはあくまでも連邦軍の利益を第一に考えてのものだ。
それでもこちらに敵対的な態度で接してくるよりは、あのような友好的な存在の方が、こちらとしてはやりやすい。
『レビル将軍、下からの信頼も厚いものね』
元連邦軍のクリスだけに、その言葉には強い説得力があった。
いや、だからといってここでどうこう言っても意味はないのだが。
それでも、レビルがどれだけ下から慕われているのかという事の証明にはなるだろう。
それに対して、何か言おうとしたその時……
『アクセル代表、ア・バオア・クー方面に強力なエネルギー反応を確認』
「何!?」
量産型Wのその言葉に、慌てて映像モニタに視線を向けると……次の瞬間、眩い光が映像モニタを埋め尽くし……そして光が消えた瞬間、そこにはレビルの乗っていたマゼラン級は勿論、デギンが乗っていたグレードデギンの姿も消滅していたのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1210
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1621