ガンダム7号機のコックピットで、俺は数秒唖然とする。
改めて全天周囲モニタの映像モニタで確認するが、やはりそこにはジオン公国の公王たるデギンが乗っていたグレートデギンの姿も、レビルが乗っていたマゼラン級の姿も確認出来ない。
……いや、それだけではない。
レビルの乗っていたマゼラン級は、連邦軍の旗艦だ。
つまり、星一号作戦に参加する軍勢の中央部分にいたのだ。
その部分から前に出た訳で……巨大なビームか何かによってグレートデギンとレビルのマゼラン級が消滅したという事は、当然のようにマゼラン級の後方にあった連邦軍の軍勢も大きな被害を受けた事を意味している。
ルナ・ジオン軍は軍勢の端に移動させられていたので、被害らしい被害はない。
それこそ、連邦軍が大きな被害を受けたのに比べれば、ルナ・ジオン軍が受けたのは……精神的な衝撃くらいか。
特にルナ・ジオン軍で今回の遠征に参加しているのは、異名付きのパイロットも多いが、それ以上に新兵も多い。
そんな新兵達にしてみれば、いきなり連邦軍艦隊の何割かが消滅したのだから、それに精神的な衝撃を受けるなという方が無理だった。
とはいえ、今の状況においては命を失わなかった幸運を喜んだ方がいいと思うが。
「量産型W、今の巨大なビーム砲が次に発射されるのはどれくらいだ? エネルギー反応から予想出来ないか?」
先程、あの巨大なビームが発射される直前に、量産型Wは巨大なエネルギー反応をキャッチしたと言っていた。
であれば、再度先程のビーム砲が発射されるとすれば、そのエネルギー反応でそのタイミングを察知出来るのではないかと、そう思ったのだが……
『エネルギー反応はありますが、それは余剰エネルギーによるものです。恐らくですが、あの兵器は一度攻撃を行ったら数日は次の一撃を発射出来ないのではないかと』
「それは……また……」
量産型Wからの返事に、予想外の驚きを感じる。
だが、考えてみれば今の一撃はこの世界の技術レベルで考えれば、強力極まりない。
それこそ、バルジを始めとして月の周辺に存在する機動要塞の主砲以上の威力を持っている。
いや、あるいは……それらをも上回る、ジェネシスの一撃と同等の威力を持っていたんじゃないか?
それだけに、連邦軍の受けた被害は大きい。
これが罠じゃないかと予想はしていたが、その予想が見事に当たってしまった形だな。
というか……結局あのグレートデギンに乗っていたのは、本物のデギンだったのか?
今の攻撃は、それこそ全く躊躇なく放たれた事を考えると、あるいは俺が予想した通り、デギンの影武者が乗っていたという可能性も決して否定は出来ないのだが。
あるいは、今回の攻撃を行った者……ギレンとキシリアのどちらかは分からないが、そのどちらかにとってデギンが邪魔な存在になったので、これ幸いと消したとか?
「量産型W、ルナ・ジオン軍の艦に連絡しろ。動揺するなとな。ついでに、先程のビーム攻撃が連続して行われないというのを、伝えておけ」
『了解しました』
ルナ・ジオン軍にとって、レビルが死んだというのはそこまで大きな衝撃はないだろう。
だが、デギン諸共だったり……何よりも、あの巨大なビーム兵器に対しては、恐怖を覚えてもおかしくはない。
新人がそれなりの数いるからこそ、ここで妙な暴走をされるのは困る。
新人の暴走によって、本来受けなくてもいい被害を受けるといった事は、絶対に避けたいのだから。
「クリス、ガトー、ノリス、通信を聞いていたな? この状況では、ジオン軍が一体どんな行動をしてくるか分からない。特に連邦軍の混乱は酷い筈だ。いざという時は、俺達が前線に出る必要がある」
あの巨大なビームが放たれるまでは、レビルが死んだ後はその派閥の者だったり、別の派閥の者だったりが主導権を主張して問題になるだろうというのは、予想していた。
だが……あのビームによって受けた被害は、レビルが死んだだけではなく、それ以外にもかなりの被害を受けている。
それを考えれば、主導権争い云々以前に混乱してまともに戦う事が出来ないという可能性は決して否定出来ない。
何しろ、レビルが乗っていたマゼランの後方にいた軍艦もそっくりそのまま消滅してしまったのだから。
正直なところ、これは連邦軍にとって大きなダメージとなる。
真ん中にいたのは、当然のように連邦軍の主力なのだから。
その主力のかなりの数が消滅したと考えれば、連邦軍にとって致命的なのは間違いない。
……とはいえ、今の状況ではまだ混乱していて、そんな事を考えてはいられないだろうが。
『分かったわ』
『了解しました』
『いつでも出撃可能です』
クリス達3人から、それぞれそんな言葉が返ってくる。
ガトーとノリスはともかく、クリスならもっと混乱してもいいと思うんだが。
クリスは士官学校を首席で卒業し、最新鋭機たるアレックスの開発に関わっていた、エリートだ。
そうである以上、現在の連邦軍の中では一番大きな勢力のレビルの派閥の中にも、当然のように知り合いは多かっただろう。
もしくは、士官学校時代の友人とかもいた可能性が高い。
そして……そのような者達の幾らかは、間違いなく先程のビームで消えた軍艦に乗っていてもおかしくはない。
いきなりすぎて、まだその辺についての実感が湧いていないだけなのか、それとも軍人だからという事で、その辺は割り切ってるのか。
ともあれ、クリスが落ち着いているという今の状況は、俺にとっては……そしてルナ・ジオン軍全体で見ても、そう悪い話ではない。
「量産型W、連邦軍の動きはどうなっている?」
『混乱している様子ですが、統制を取り戻している部隊もいます』
「だろうな」
連邦軍の中には、当然のように有能な者も多い。
……微妙に俺が接した相手の中には無能な奴が多かったが、それはあくまでも少数派だ。
基本的に出世するには有能さこそが必須となるのは、当然の事だった。
「ルナ・ジオン軍にも、いつ何があってもすぐに行動出来るようにと、指示しておけ」
『了解しました』
その言葉と共に通信が切れる。
現在の連邦軍の状況を考えれば、今はまず行動するべき時なんだが……ジオン軍はどうなっている?
あの巨大なビームによって、連邦軍では指揮を執っていたレビルが死んだ。
だが、同時にジオン軍でも公王のデギンが死んだのだ。
純粋な被害の度合いで考えれば……ぶっちゃけ、ジオン軍の方が大きいという見方をする事も出来る。
何しろ、レビルは連邦軍のトップではあるが、連邦軍というのは、あくまでも連邦政府の下部組織なのだ。
それに比べると、デギンはジオン軍どころかジオン公国の公王という立場にいる人物であり……失った人員の格で考えれば、実はジオン軍の方が大きい。
とはいえ、デギンは既に公王としての仕事を半ば引退し、ジオン公国の運営に関してはギレンに任せていたので、そういう意味では被害らしい被害はないと言ってもいいのだろうが。
この戦場だけで見れば、やはりレビルを失ったこっちの方が痛いか?
そんな事を考えていると、先程通信を切ったばかりの量産型Wが再びこちらに通信を入れてくる。
『アクセル代表、連邦軍がマゼラン級のルザルを新たな旗艦とし、被害を受けていない第2、第3大隊を使ってア・バオア・クーを攻略するので、ルナ・ジオン軍にも協力して欲しいとの事です』
「なるほど。まぁ、妥当と言えば妥当だな」
レビルの直轄部隊だった第1大隊は、その大半がレビルへの攻撃と共に消滅した。
であれば、残りの部隊でア・バオア・クーを攻略しようと考えるのも当然だろうし、レビル率いる第1大隊の代わりに俺達ルナ・ジオン軍の戦力を当てにするというのも、分からないではない。
とはいえ、こっちも便利に扱える駒といったように認識をされるのは、あまり面白くはない。ないんだが……実際、今の連邦軍にとってルナ・ジオン軍の戦力は、それこそ喉から手が出るくらいに欲しいのは当然だろう。
『どうするの? このまま出撃する?』
俺と量産型Wの通信を聞いていたクリスの言葉に、少し考え……やがて頷く。
「そうだな。俺達は元々連邦軍に協力する為にここまで来たんだ。そうである以上、ここで連邦軍が負けるというのは、絶対に避けたい」
ルナ・ジオン軍が協力していながらも、負ける。
それは、これからのUC世界における月の影響力に多少なりと悪影響となるのは間違いない。
だからこそ、ここでルナ・ジオン軍が連邦軍に協力してそれを陥落させれば、大きな意味を持つ。
ルナ・ジオンを味方にすれば、劣勢であっても勝利出来ると。
……いやまぁ、実際にはレビルと第1大隊の大半が消滅した現在であっても、純粋な数だけなら連邦軍の方が上なのだが。
ただし、強力な指導力で連邦軍を引っ張ってきたレビルが一撃で死んだという、精神的なショックはかなり大きい。
つまり、戦力では勝っているが士気の面では連邦軍の方が劣っている。
このまま継戦を決めた連邦軍の上層部も、戦力的にはまだ連邦軍が勝っていると判断しているからこそ、このまま戦うと決めたのだろう。
『分かったわ。それで、指揮系統は? レビル将軍が死んだとなると、今は誰が指揮を執ってるのか分からない以上、私達を捨て駒に使ってくるかもしれないわよ?』
「……量産型W、具体的に誰が指揮を執ってるのか分かるか?」
『いえ、どうやら誰か1人が指揮を執ってるのではなく、複数人が話し合いで指揮を執ってるらしいです』
「そうか。……厄介だな」
複数人で相談しながら戦いを指揮するということは、当然の話だが意思決定に時間が掛かる。
今のような戦闘の場合、必要なのは巧緻よりも拙速だ。
だが、複数人で相談しながらだと、どうしても行動が遅れてしまう。
それが最悪の結果にならないといいんだが。
とはいえ、レビルの派閥にいる者達には有能な者が多くいるだけに、無意味な指示を出したりはしないだろう。
ただし、それはあくまでも連邦軍に限っての話だ。
レビルの部下とはいえ、ルナ・ジオン軍を嫌っている者は多い。
そのような者にしてみれば、クリスが言う通り俺達を捨て駒に使って美味しいところは自分達が奪っていくといったような真似をしないとも限らない。
とはいえ、何人もで相談をしながら戦いを行うという事は……中には、ルナ・ジオン軍に対してレビルが何故あれ程にまで気を遣っていたのか分かる者も多い筈だ。
であれば、そんな馬鹿な真似はしないと、そう思いたいところだった。
「取りあえず、何があっても対処出来るように……」
『アクセル代表、ア・バオア・クーに動きがあります』
「ちっ、向こうも動揺から立ち直ったか」
ジオン公国の公王たるデギンが死んだというのは、ジオン軍にとっても大きな衝撃だった筈だ。
だが、それでもこうして出て来るというのは、ギレンなりキシリアなりが混乱していたのを落ち着かせたという事だろう。
これは……恐らく、キシリアじゃなくてギレンか?
ギレンは演説を使って民心をコントロールする術に長けている。
IQの高さを存分に利用し、演説で相手の心を掴むのが上手いのだ。
その点においては、キシリアもギレンには遠く及ばない。
「向こうが出撃してきた以上、こっちも出撃するぞ。連邦軍の方でも動いてるらしいから、すぐに戦闘が始まる。今の状況では、少しでも早く対処する必要がある」
そう告げ、メカニック達に出撃の用意をするように外部スピーカーで告げ、続けて量産型Wにも指示を出す。
「ルナ・ジオン軍全部隊に出撃するように伝えろ。それと連邦軍にも、きちんと協力すると念の為に伝えておけ。……ただし、あくまでもこっちは協力者である以上、拒否権があると伝えるのを忘れるな」
ルナ・ジオン軍を捨て駒にしようとした場合、拒否権があると言っておけば、その命令を拒否出来る。
……もっとも、これがレビルなら素直にこちらの言葉に頷くが、レビルの派閥の連中ともなれば、一体どう判断するか分からないが。
最悪、戦力を使って無理にでもこちらに攻撃をしてくるという可能性は否定出来ない。
ルナ・ジオン軍の主力は、あくまでもヅダだ。
運動性という点ではジムを上回っているが、武器の威力となるとビームライフルやビームサーベルを使えるジムが勝っている。
もっとも、ジムの装甲はルナ・チタニウム製ではなくチタン系の合金なので、ヅダの武器でも普通に撃破出来るのだが。
もし戦闘になれば……物量では向こうが上だが、質ではこっちが上。
つまり、連邦軍とジオン軍の関係と同じな訳だ。
ただし……連邦軍とジオン軍はここから移動出来ないのに対して、こっちはいざとなればここから撤退する事が出来るのだが。
そんな考え事をしている間に。出撃準備が整い……
「ガンダム7号機、アクセル・アルマー、出るぞ!」
その言葉と共に、ガンダム7号機はカトンボから出撃するのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1210
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1621