転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2644話

 カトンボから出撃したガンダム7号機だったが、すぐに敵に向かっていく訳ではない。

 そもそも、ルナ・ジオン軍が配置されていたのは連邦軍の後方だ。

 本来なら、ア・バオア・クーは連邦軍が自分達の力だけで攻略しようとしており、それを俺達に見せつける……と、そのようなつもりだったのだろう。

 だが、それはルナ・ジオン軍にとっては幸運な結果となった。

 デギンとレビルの2人を一緒に消し去った巨大なビームは、こっちに飛んでこなかったのだから。

 そんな事を考えていると、カトンボ以外のルナ・ジオン軍の軍艦から出撃してきたヅダの姿を確認出来る。

 ……カトンボ以外のルナ・ジオン軍の軍艦というのは、つまりはムサイやザンジバルといた軍艦だ。

 当然のように、連邦軍にとってその姿を見るのは面白くないのだろうが……それでも、取りあえずこっちに攻撃をしてくる様子がないのは助かる。

 連邦軍にしてみれば、それこそジオン軍の兵器を使っているというだけで、許容出来ないと思っている者もいるだろうに。

 あるいは、戦闘の中で1発だけの誤射があるかもしれないな。

 

『アクセル、どうする気だい?』

 

 ガンダム7号機に触れたヅダのA型……それを更に改修した機体から通信が送られてくる。

 映像モニタに表示されたのは、セイラとは別の意味で月の象徴となっているシーマの姿だ。

 

「取りあえず、連邦軍に味方してア・バオア・クーを落とす。俺達が味方した状況で連邦軍が負けるというのは、今後色々と面白くないしな」

『まぁ、そうだね。……それに、ア・バオア・クーにいる連中には、色々と思うところもあるし』

 

 この場合の思うところというのは、やはりコロニー落としについてだろう。

 コロニー落としという作戦を考えたギレン、そして催眠ガスだと嘘を吐いてコロニーに毒ガスを使わせたキシリア。

 シーマにしてみれば、ギレンとキシリアに対しては思うところが色々とあって当然だった。

 

「そうか。なら、シーマも思う存分戦え。……ただし、お前にはまだまだやって貰う事がある。この戦いで死んでもいいなんて事は考えるなよ」

『あははは。当然さね。あたしはこれから幸せに生きるんだ。だからこそ、こんな場所で死ぬような真似は出来ないよ』

 

 そう笑うシーマの顔に、悲壮な色はない。

 コロニー落としの件では色々と悩んでいたようだったが、その辺はホワイトスターでレモンによって治療されている。

 勿論、治療されたからといって、コロニー落としの件がシーマの心に残した傷跡は大きいのだが。

 それでも何でもないように振る舞っているのは、シーマの心の強さだろう。

 そんなシーマだからこそ、多くの者に慕われているのだ。

 ……単純に、その美貌と成熟した大人の女らしい色気に夢中になっている者が多いのも、事実だったが。

 

「そうか。なら、それでいい。……シーマは月にとっても大事だからな。こんな場所で死なれたりしたら、困る」

『ふふっ、嬉しい事を言ってくれるじゃないのさ。けど、出来ればそこはアクセルにとって大事な女……といった風に言って欲しかったね』

「あのな……」

『少し、不謹慎ではないですか?』

 

 シーマのからかうような言葉に俺が何かを言うよりも前に、俺に追いついてきたヅダが触れてきて、クリスが接触回線でそう告げる。

 この2人は、何気に親しい。

 ソロモンでクリスがヅダの操縦訓練をしている時に、シーマがそれを手伝ったのか理由だ。

 ……ぶっちゃけ、俺がガンダム7号機に乗ってるんだし、クリスもジムスナイパーⅡに乗ってもいいと思うんだが。

 ただ、ジムスナイパーⅡはスカーレット隊の機体で色々と問題があるので、ヅダに乗っている。

 正直なところ、レビルに話は通したんだからその辺は問題ないと思うんだが……ああ、でもレビルが死んでしまった今となっては、色々と言ってくる奴もいる可能性が高いので、そういう意味でもクリスがヅダに乗ってるのは正解だったかもしれないな。

 ともあれ、シーマはある意味でクリスにとってMSの操縦の師匠と言うべき存在でもあり、年齢がそれなりに離れてはいるが、それでも女同士という事もあって友好的な関係を築いているのは間違いない。

 間違いない、筈なんだが……

 

『おや、何が不謹慎なんだい? 女として、アクセルのような男に自分の女と言って貰うのは嬉しい事だろう?』

『それが不謹慎だと言うんです。そもそも、もうすぐ戦闘になるというのに……いえ、もう前線では戦闘が始まっているのに、そんな事を言うなんて……』

『それは今更の話だろう? 元々、この戦いはあくまでも連邦軍が主役で、ルナ・ジオン軍は援軍といった立場なんだからね。……何だい、もしかして羨ましいのかい?』

『う、う、羨ま……そんな訳、ある筈がないじゃないですか! い、い、い、い、いきなり何を言うんですか!?』

『おや、動揺してるようだね。全く、アクセルを好きなら好きって、しっかり言ったらどうだい?』

『そ、そ、そんな訳ないじゃないですかぁっ!』

 

 キーン、と。

 そんな耳鳴りがしてもおかしくないくらいの声で叫ぶクリス。

 ……どうでもいいけど、そうやって言い争いをするのなら、俺の機体を通してやるんじゃなくて、お互いの機体で接触して話をして欲しいんだが。

 

「あー……取りあえず、シーマもクリスをからかうのはその辺にしておけ。クリスはその手の事にあまり耐性がないんだから」

『ちょっと待ってよ。アクセル、私だってそれなりに男に言い寄られた事はあるんだから、耐性がない訳じゃないわよ』

「……だろうな」

 

 士官学校を首席で卒業し、最新鋭MSの開発に参加するだけの能力を持っていて人当たりもよく、顔立ちも美人という言葉が相応しい。

 体型的にはちょっとボリューム不足だが、それだって人によってはそこが魅力的だと言う者もいるだろう。

 普通に考えて、クリスが男に言い寄られるというのは十分に理解出来る。出来るんだが……同時に、クリスは生真面目な性格をしており、自分の仕事とかに熱中する傾向もあり、男に対して友人以上の付き合いをしようとは思わなかった筈だ。

 もっとも、クリスは高嶺の花と考えて、言い寄ろうという男そのものが少なかった気がするが。

 どの世界で聞いたのかは忘れたが、才色兼備の美人とかだと、高嶺の花で男が言い寄る事が出来ず、結果的にお局様になるとか何とか……

 クリスも連邦軍にいれば、そんな風になっていた可能性は十分にある。

 そうなると……最終的に年下のアルを捕まえて、とかなっていた可能性もあるのか。

 

『アクセル、何その目。妙な事を考えていたんじゃないわよね?』

 

 勘の類ではなく、俺の視線を見て何か妙な事を考えていると、そう判断したのか。

 少し驚きつつ、それはそれで特殊な能力だなと理解しつつ、首を横に振る。

 

「いや、クリスは人当たりもいいし、男達に人気だったのは理解出来ると思ってな」

『ふーん』

 

 俺の言葉をあからさまに疑った様子を見せるクリス。

 まぁ、今まで散々からかってきたのを思えば、無理もないか。

 

「ともあれ、ジオン軍が動いてきてるし、連邦軍の方も動き始めている。それを考えれば、ここでこうしてじゃれているような暇はないぞ。今は少しでも早く戦闘準備を整えた方がいい」

『こっちは何も問題ないよ。それこそ、いつ戦闘が始まっても問題ないさね』

 

 シーマの言葉に頷きを返す。

 シーマの性格を考えれば、こんな場所で意味もなく嘘を吐くといったような真似をする心配は、まずないだろう。

 だからこそ、その言葉を完全に信じる事は出来た。

 ……もっとも、シーマ以外の面々がどうなっているのかは、また別の話だが。

 特に純粋な攻撃力という点では派遣されてきたルナ・ジオン軍の部隊の中でも最強のビグロ隊の方はどうなったのか、少し気になる。

 ケリィが操縦するビグロマイヤーは、新兵器――正確には改修機――だけに、これが初の実戦となるのも、間違いはないし。

 

「ガトー、ノリス、そっちはどうだ?」

『問題ありません、すぐにでも戦闘出来ます』

『同じく』

 

 ガトーとノリスの高機動型ギャンから、それぞれそんな言葉が返ってくる。

 

「そうか。なら……量産型W、俺達もそろそろ前線に出ると連邦軍に連絡をしてくれ」

 

 ここで連邦軍から命令……もしくは要請が来るのを待っているよりは、さっさとこちらから出撃した方がいい。

 レビルがいなくなった今の状況では、連邦軍の指揮を執っている者達が俺達をいいように使おうと考える可能性は十分にあるのだから。

 俺達はそう簡単に使えるような相手ではないと、そう連邦軍に示し……同時に、そのような真似をしても向こうから文句を言われないように力を見せつけておく必要があった。

 ここで上手い具合に連邦軍に対してこちらの実力を見せつければ、当然のように今後……特に戦いが終わった後で色々とこっちが有利になる。

 ジオン軍の遺産とも呼ぶべき代物を、一体どれだけ入手出来るのか……その辺は、それこそこれからの戦いによって決まるようなものだろう。

 

『了解しました』

「よし、……聞いたな? 全機、これから前線に出るぞ。連邦軍にルナ・ジオン軍の力を見せつけてやれ!」

 

 ルナ・ジオン軍の周波数で、味方にそう通信を入れる。

 本来なら、セイラ辺りがこういう通信をした方が、説得力はあるんだろうが……残念ながら、セイラはここにはいないしな。

 

『おおおおおおおおおおおおお!』

 

 そう思っていたのだが、俺にとっては完全に予想外な事に多くの者達が雄叫びのような声を上げる。

 そこまで興奮する程、俺は人気があったか?

 そう思わないでもなかったが、戦いの前に自分に気合いを入れるという意味でも、多くの者が俺の言葉に乗った……というのが、正確なところなのだろう。

 ジオン軍から亡命や移住してきた者達なら、そこまで緊張したりといったような事はしないだろうが、ルナ・ジオン建国後に軍に入隊した者達にしてみれば、ソロモンに続いてこれが2度目の戦いである者も多いだろう。

 ……もっとも、1度目がソロモンでの戦いだと考えれば、それで既に吹っ切れている者が多くても、不思議ではなかったが。

 何だかんだと、あの戦いはかなり……それこそ、ルウム戦役やオデッサ作戦に匹敵するくらいの大規模な戦いだったのだ。

 それが初戦だとすれば、この戦いでそこまで緊張したりといったような事はないと思うんだが。

 ただし、それはあくまでも前回の戦いに参加していた者であればの話だ。

 何らかの理由で前回の戦いに参加していなかった者にしてみれば、今回の戦いが正真正銘の初陣となる。

 とはいえ、援軍としてやって来たのに、戦いに参加出来なかったというのは、そう多くはないと思うが。

 

「よし、全機出撃する。……いいか、この戦いはあくまでも連邦軍とジオン軍の戦いで、俺達は基本的に援軍でしかない。それを忘れるな」

 

 そう告げ、スラスターを全開にして最前線に向かう。

 ルナ・ジオン軍が配置されていたのは最後尾であった以上、当然ながら最前線に行くには前方に布陣している連邦軍を追い越していく必要がある。

 その際には、連邦軍の軍人の視線が明らかにこちらに向けられていた。

 とはいえ、それがしっかり分かる訳ではなく、あくまでも分かるのはこちらを見ているだろう視線を何となく感じたり、ジムの頭部がこっちを見ていたり……ボールがこっちを見ていたりするからだ。

 ただし、ボールには頭部が存在しない。

 こっちを見る為には正面を向く必要があり、ボールの正面となると頭部……頭部という表現で本当にいいのか? ともあれ、頭部に乗っている低反動キャノンの砲口がこちらを向くのが微妙に気になる。

 連邦軍にはジオン軍が気にくわないと思っている者もおり、そのような者達にしてみれば、ルナ・ジオン軍もジオン軍の仲間だろうということで、面白く思っていない者も多い。

 そのような者から、1発だけの誤射を貰うのは可能な限り遠慮したいところだ。

 普通に考えれば、今の連邦軍の状況でそのような事をしているような余裕は存在しない。しないのだが……世の中には感情だけで動く者というのは、どうしてもいる。

 ジオン軍が追い詰められている状況であっても、ギレンとキシリアが手を結ぶような事が出来ず、未だに敵対しているのも、その証拠だろう。

 だからこそ、いつ何が起きてもいいように対処する為に準備をしておくのは必要な事だった。

 

「全機、ジオン軍もそうだが、連邦軍にも気をつけろよ。ヅダはジオン系のMSだから、味方のマーカーを出していても中には間違って……もしくは間違いを装って攻撃してくる可能性は皆無じゃない」

 

 そう告げると、何人かから不満そうな声が返ってくるが……中には、仕掛けてきたら相応の対処をすると言う者もいる。

 実際、それは間違っている訳でもなく……俺もまた、誤射を装った攻撃にはきちんと反撃をするだろうと考えながら、前線に向かうのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1210
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1621

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