出発してから少し時間が経過する。
ルナ・ジオン軍の軍艦は陣形を整えながら進み、その少し後ろを連邦軍のサラミスが3隻、追ってくる。
連邦軍とのやり取りは、俺ではなくシーマが行っていた。
ルナ・ジオン軍から派遣されてきたこの艦隊を率いているのはシーマなのだから、当然だろう。
俺がいるのは半ば公然の秘密ではあるが、公然であっても秘密は秘密なのだから。
そしてシーマの様子を見る限り、噂にあったようにその部隊は色々と問題がありそうだった。
……そんな問題のありそうな部隊を背後に置くというのは、正直なところ不安なんだが。
それこそ、いつこっちに向かってサラミスから攻撃をされるか、分からないし。
そうなった場合、基本的にバリアの類が存在しないルナ・ジオン軍の軍艦は、それこそ重力波によるバリアを持っているカトンボ以外は簡単に撃墜されてしまう。
ただ……そうなった場合、連邦軍はジオン公国との戦争が終わったか終わらないかといったところで、月とも戦争になる。
そして月と戦争になれば、当然の話だがシャドウミラーも出て来る訳で……そうなれば連邦軍に勝ち目がないのは、ニーズヘッグでグラナダを占拠したり、ルナツーを占拠した件で、十分に理解している筈だった。
「どう思う?」
「何がでしょう?」
カトンボの中にある一室……現在そこには、このカトンボにいるMSパイロットが全て揃っていた。
とはいえ、俺、クリス、レコア、ガトー、ノリスの合計5人だけだが。
それでも、俺とガトーという2人の異名持ちがいるのを考えれば、カトンボの戦力はかなりのものになるのだろうが。
そんな中で、俺の言葉にそう言ってきたのはガトー。
「俺達の後方にいる3隻のサラミスだよ。評判の悪い部隊だって話だし。俺達が前にいると、場合によっては後ろからいきなり攻撃をしてくる可能性もあると思わないか?」
「さすがにそれはないと思いますが。……もしそのような真似をすれば、連邦軍にとっては致命的でしょうし」
どうやらガトーも俺と同じ結論になったらしい。
まぁ、純粋な戦力という点でもそうだが、ルナ・ジオンは別に南極条約に批准している訳ではない。
つまり、いざとなればコロニー落としなり、小惑星を落とすなりといった真似が出来る。
……もっとも、それは月に対しても連邦軍がコロニー落としとかを出来るという事を意味しているのだが。
ただし、月の場合は周囲に機動要塞が幾つも存在しており、それらの主砲はどれも非常に強力で、月に落下してきたコロニーを破壊するのも、難しい話ではない。
また、地球と違って、月で人間が住んでいる場所は限られている。
ぶっちゃけた話、地球の場合は環境の問題とかあるが、月の場合は……全くないとは言わないが、月面都市のような場所にしか人は住んでいないので、影響はあまりなかったりする。
勿論、その月面都市にコロニーが落ちれば大惨事なのだが。
「俺も一応、そうは思う。だが……それなら、連邦軍としても俺達と行動を共にする部隊は評判の悪い部隊を寄越すなんてことはしないんじゃないか? 評判の悪いというか、考えなしの部隊の場合、それこそ連邦軍にとってもダメージが大きいんだし」
「考えられる可能性としては……今の連邦軍にそこまで余裕がない、といったところですか」
俺とガトーの話を聞いていたノリスが、そう会話に割り込んでくる。
にしても、なるほど。それなら可能性はあるか。
連邦軍にしてみれば、あの巨大なビームによってレビルとその後方にいた艦隊が撃破されたというのは、非常に大きな痛手だろう。
その影響により、戦力が少ない状態で星一号作戦を続けており……こっちに回せるだけの戦力がない、と。
いや、回せる戦力だけならあるかもしれないが、この場合は俺達と一緒に行動する事になるのだから、相応の技量が要求される。
こっちとしても、性格がいいが技量が低いMSパイロットと、性格は悪いが技量の高いMSパイロットのどちらがいいかと言われれば、やはり後者だろう。
「なら、それこそホワイトベースやサラブレッドをこっちに回してくれればいいんだろうが……いや、連邦軍にしてみれば、精鋭中の精鋭だし、他の場所で使いたいか」
「そうなるでしょうね。連邦軍にしてみれば、私達がいなければホワイトベース隊やサラブレッド隊をそちらに使った可能性もあるでしょうが……」
「俺達がいるから、ホワイトベースとサラブレッドは別の戦場に回した、か」
俺の言葉に、ノリスが頷く。
「恐らくは、ですけど。……もしかしたら、それ以上に何か考えることがあり、それが結果としてこのようなことになったという可能性も否定は出来ませんが」
「レビル将軍の派閥には、有能な人物が揃っています。そのような人達が集まって指揮を執っている以上、もしかしたら何か思いもよらぬ作戦を考えているという可能性も否定は出来ません」
元連邦軍のクリスだからこそ、そういう風に言えたのだろう。
だが、レビルの部下がそこまで有能だとは……いや、可能性はあるか。
本人の有能さと、その人物の人間的魅力というのは、必ずしも一致しない。
であれば、レビルの部下にレビルより有能な者がいても、そこまでおかしくはない……んだと、思う。
『アクセル代表、Eフィールドの敵がいる場所に近付きました。戦闘準備を整えるようにと、シーマ・ガラハウから通信が入っています』
部屋の中に流れた量産型Wの言葉に、皆が視線を合わせて、すぐに出撃の準備を行う。
もっとも、パイロットスーツを着なければならない他の面々とは違い、俺はこのままコックピットに乗れるのだが。
パイロットスーツは、基本的に宇宙でMSを操縦する以上、絶対に必要な代物だ。
シャアは、自分が絶対に撃墜されない自信があるので、パイロットスーツを着ないでMSに乗っているという話を聞いた事があるが……普通は、そんな真似は出来ない。
それこそ、パイロットスーツを着ていなければ、いざという時の事が不安でMSの操縦に全力を出せないなんて事も、普通に有り得るだろうし。
ともあれ、そんな訳で他の者達がパイロットスーツに着替えている間に、俺は格納庫に到着する。
「ガンダム7号機の状況はどうなってる?」
「完璧だよ。ビームライフルのエネルギーも、問題はない」
メカニックが俺の言葉に、そう答える。
出発してからここまで、そんなに時間的な余裕があった訳ではないのだが……それでも、こちらにしてみれば、歓迎すべき事だ。
いざって時の為に、急速充電の機能とかは普通にあってもおかしくはないが。
「分かった。なら、後から他の連中も来るから、そっちの対応を頼む」
「ああ。……それより、これから行く戦場には戦闘ポッドがあるんだろ? 何かの役に立つかもしれないし、可能なら幾つか確保しておきたいんだが」
「分かっている。俺もそのつもりだから、心配はするな」
そう告げるも、話に聞いた戦闘ポッドがボールとそう違いはないのなら、資料的な意味で数機あれば十分な筈だ。
何か特殊な……それこそ、俺やディアナの技術者が注目するような機能があれば、また話は別かもしれないが。
「頼む」
そう言葉を交わし、俺はガンダム7号機のコックピットに乗り込み、機体を起動させていく。
ビームライフルを手に取り、出撃準備を整え……
「量産型W、状況はどうなっている?」
『現在、連邦軍がジオン軍と戦っている様子です』
「連邦軍が?」
俺達が来るよりも先に、連邦軍がここにいたのか?
そう考えるも、普通に考えればそれは当然だろう。
星一号作戦においては、別にこのフィールドだけ連邦軍が戦力を向かわせなかったというのは、考えにくいのだから。
だが、それでも俺達にここに行って欲しいという事は……苦戦していると理解していたのか?
いや、そもそも先に部隊を派遣してるのなら、その辺の情報をこちらに渡してもそうおかしくはない。
だとすると、やはり連邦軍は知らなかった?
普通なら考えられない事だが、レビルがいない今の状況では、指揮系統が混乱するというのは十分にあるし、それを利用して自分だけが手柄を立てようと独断専行する奴がいないとも限らない。
だとすれば、やはり今回の一件においては連邦軍は知らなかったとみるべきか。
ともあれ、既に戦闘になっているのなら、こちらとしても早めに移動する必要があった。
連邦軍を助けるという意味もあるが、それよりはやはり戦闘ポッドを確保しておきたいという思いの方が強い。
何だかんだと、連邦軍の主力MSのジムは、ジオン軍のMSと比べて性能が高い。
パイロットの技量という点では、一部の例外を除いてジオン軍の方が上だっただろう。
だが……ビームライフルのトリガーを引くだけであれば、操縦技術というのはそう必要ない。……命中させられるかどうかはまた別の話だったが、それに関しては、それこそ連邦軍の物量を使えばどうとでもフォローは出来る。
つまり、俺が欲しているジオン軍の戦闘ポッドは次々と撃墜されている可能性があった。
『はい。どうしますか?』
「取りあえず、俺だけでも出撃する。そうすれば、連邦軍の方でもし何か企んでいるのなら、何らかの動きがある筈だ」
恐らく心配はないだろう。
そう思いはするが、それでも万が一というのを考えると、こちらとしてはしっかりと用心する必要があるのも事実だった。
『了解しました。では、他の軍艦にもその件をお知らせしておきます』
量産型Wがそう告げ、通信を切る。
さて、ならまだ他の連中は来てないが……取りあえず出撃するか。
連邦軍との摺り合わせに関しては、シーマの方でやってくれる筈だから問題はない筈だ。
「俺が先に出るから、準備をしてくれ」
メカニックに外部スピーカーでそう告げると、すぐに反応がある。
リニアカタパルトに運ばれ……そして、出撃の準備が整う。
「アクセル・アルマー、ガンダム7号機、出るぞ!」
その言葉と共に、カトンボから射出されるガンダム7号機。
UC世界の軍艦のカタパルトデッキは、それこそスタート台のような感じの代物に足を乗せ、それによって射出されるという形が多い。
だが、カトンボの場合はリニア……つまり、磁力での射出だ。
この点だけでも、UC世界の軍艦よりも進んでいるよな。
とはいえ、このくらいの事は発想の転換によってあっさりとUC世界の軍艦で使われてもおかしくはなかったが。
そんな事を考えながら、ガンダム7号機は目的の場所……連邦軍とジオン軍が戦っている戦場を目指して、宇宙空間を飛ぶ。
その最中、ルナ・ジオン軍の軍艦のすぐ横を通ったりもしたが、その軍艦に乗っていた奴は一体何を思ったんだろうな。
出遅れたか、出し抜かれたか……取り合わず、シーマ、ラル、黒い三連星といった面々であれば、間違いなく俺が先に行ってくれて助かったとか、そういう風には思わないだろう。
それはガトーやノリスも同様で、俺が出撃したと知れば、恐らくすぐに後を追ってくる筈だ。
普通ならMS1機で戦闘の中に突っ込むなどといった真似は、しない。
シャアやアムロくらいに腕利きなら、話は別だが。
そんな風に考えつつ……やがて、戦闘の爆発光が次第に近付いてくる。
複数の場所で幾つも爆発しているのを見ると、ジオン軍だけではなく連邦軍の方も大きな被害を受けているのか?
そうなると、ジオン軍の戦闘ポッドが一方的に被害を受けている訳ではなく、連邦軍の方でも被害を受けているという事になる。
連邦軍の方は、MSじゃなくて同じ戦闘ポッドのボールを使っているのか?
いやまぁ、基本的に連邦軍はジムとボールはセットで運用しているので、それを考えるとそこまでおかしな話ではないのかもしれないが。
「ともあれ……実際にどうなっているのかは、自分の目で直接確認する必要があるな」
呟き、スラスターを全開にして戦場に向かう。
そうして見えてきたのは……
「ゲルググ?」
そう、連邦軍が戦っている相手は、ジオン軍が開発したという戦闘ポッド……ではなく、ゲルググ。
それも多数のゲルググの中の1機は、灰色のパーソナルカラーに塗られており、それはつまり、そのゲルググのパイロットはエース級である事を意味していた。
灰色のパーソナルカラーを持つ異名持ちは知らないので、恐らく異名持ち一歩手前といったくらいの技量ではあるのだろう。
実際、ジムを相手に獅子奮迅と呼ぶに相応しい戦い方をしているのを見ると、その実力は間違いなく一級品だ。
まさか、こんなEフィールド……敵のジオン軍も連邦軍も戦力を集中していないような場所に、パーソナルカラーを持つエースを配備しているとは思わなかったな。
この辺りは、ギレンの采配が優れているといったところか。
もしここにいるのが戦闘ポッドだけなら、それこそあっという間にここを抜けられ、ア・バオア・クーに攻め込まれる可能性があったのだから。
……出来れば、確保したいところだが……どうだろうな。
そんな風に思いつつ、俺は牽制の意味も込めてビームライフルのトリガーを引くのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1260
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1631