転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2677話

 今、シャアの口から出た言葉は、俺の動きを止めるのに十分な内容だった。

 キシリアがギレンを殺した。

 正直なところ、そう言われて納得出来る面があるのは事実だ。

 そもそも、ギレンとキシリアは政治的に対立していた。

 それを思えば、機会があればどちらかがどちらを殺しても、おかしくはない。

 ……それは事実だが、だからといって今この時に暗殺するなんて真似をするか?

 現在のジオン軍は、それこそもう後がない状態での戦いだ。

 今のところは何とか互角……いや、最初に放たれた巨大なビームの影響もあってか、連邦軍の艦隊がかなり被害を受けたし、連邦軍を指揮していたレビルまでもが死んでしまった。

 一応レビルの派閥の者達が合議制で指揮を執っているが、それは必ずしも上手くいっていないのは、Eフィールドで俺達に攻撃してきた連邦軍の部隊の件を考えれば明らかだろう。

 総合的に見て、ジオン軍がやや有利……といったような感じだと思う。

 そんな状況でわざわざギレンを暗殺するなんて事をした場合、ジオン軍は指揮系統が混乱して総崩れになってもおかしくはない。

 キシリアは、自分ならそんな混乱した状態であってもどうにか出来ると思ったのか?

 だが……正直、それは悪手だと思う。

 確かにキシリアは有能だ。それは間違いない。

 MSの有用性をドズルよりも先に理解し、マ・クベの統合整備計画も採用し、突撃機動軍では多数の特殊部隊を編成し、それを自由に操って大きな戦果を挙げたのだから。

 また俗にキシリア機関と言われる諜報部も独自に編成し、そちらでも大きな成果を挙げている。

 他にもまだ海のものとも山のものともつかぬ、ニュータイプの研究を重視している点でも先見の明があると言ってもいいだろう。

 そういう意味では、キシリアは間違いなく有能だ。

 だが、それはあくまでも参謀として……あるいは人に使われる立場としての有能さであって、その有能さはジオン公国という国を動かすという意味での有能さではない。

 キシリアは自分ならそのくらいのことは出来ると、そう思ったからこそギレンの暗殺に踏み切ったのだろうが……俺から見れば、その行動はジオン公国にとって自殺行為のようにしか思えない。

 とはいえ……もしこの戦いで連邦軍を撃退する事に成功した場合、ギレンの政治的な地位は確固たるものになる。

 そうなると、もうキシリアがギレンに勝つといった事は出来なくなると考えれば、この行動も納得するしかないのか?

 そう考えつつ、ある意味でこれはチャンスでもあると理解出来た。

 何しろ、ガルマの件を見れば分かる通り、シャアにとってザビ家の人間というのは復讐の対象だ。

 そんなシャアにとって、ギレンが殺されたというのは、非常に大きな意味を持つ筈だ。

 実際、シャアは通信回線が繋がっているのも聞こえているのかどうか分からないくらいに、怒りながら混乱している。

 ……ギレンは、ザビ家の実質的な長だ。

 そんなギレンが殺されたというのは、最大の復讐の対象を奪われたという事を意味している。

 その上、その復讐の対象を奪ったのは同じザビ家のキシリアなのだから。

 また、ギレンがデギンを殺したというのも、この場合は影響しているだろう。

 本来なら、自分が復讐するべき対象のザビ家なのに、そのザビ家がザビ家自身の手で、次々と殺されている。

 ドズルは俺が横取りした形となったが。

 

「どうする? このままでは、キシリアまでもがお前ではなく、他の者の手で殺される事になるぞ?」

『っ!?』

 

 接触回線で、シャアが鋭く息を呑む音が聞こえてくる。

 恐らくギレンがキシリアに殺されたという報告を聞いた時、シャアはこちらと接触回線で繋がっていた事すら忘れていたのだろう。

 普段のシャアなら、そんな真似は絶対にしない。

 だが……やはり、復讐の対象たるギレンがキシリアに殺されたというのは、それだけ大きな衝撃をシャアに与えたのだろう。

 そのおかげで、シャアの思考を誘導する事が可能になったのは、どうかと思うが。

 こちらも普段通りのシャアなら効果はなかっただろう。

 だが、今のシャアの状況を考えると、それだけギレンの死というのは、精神的な衝撃が大きかったのだろう。

 ……ドズルの件もあって、ガルマには少し説明するのが難しいが。

 

「そこで提案だ。このジオング。これを俺に譲渡するのなら、ここでお前を見逃してもいい。赤い彗星のシャアなら、コックピットから出てもすぐに味方が救いにくるだろうしな」

 

 ここがEフィールドなら、ジオン軍も連邦軍も数が少ない以上、パイロットスーツで宇宙に……いや、待て。俺がジオン公国に潜入していた時に聞いた話によると、シャアは絶対に自分が撃墜されない自信があるから、パイロットスーツを着ていないとか何とか、そういう話を聞いた事があるぞ?

 

「おい、一応聞くが……パイロットスーツは着ているな?」

『着ている』

 

 俺の言葉に、端的にそう返してくるシャア。

 どうやら、パイロットスーツは着ているらしい。

 ……まぁ、ホワイトベースと関わってから、俺やアムロによって結構ピンチになってるしな。

 それを思えば、シャアも自分が撃墜されないからといって、パイロットスーツを着ないといった事は出来なかったのだろう。

 

「そうか。それで、どうする? 今のままならお前は自分の本望を達成出来る可能性もある」

『それは……』

『アクセルさん、一体何をしてるんですか!』

 

 シャアが何かを言うよりも前に、アムロからの通信が入った。

 まぁ、ジオングに接触して1分近く黙っていたのだから、アムロにしてみれば撃破出来た筈だと、そう思うのは当然だろう。

 とはいえ、アムロの言葉に素直に頷く事は出来ない。

 

「少し待て。シャアと交渉中だ」

 

 それだけを告げ、アムロとの通信を切る。

 後でアムロに何か言われる可能性もあるが、まさか本当にここでシャアを殺す訳にはいかない。

 ……これでアムロから恨まれる可能性もあるが、現時点でアムロとシャアのどちらを重要視するかと言えば、やはりシャアなんだよな。

 アムロはこの世界の主人公という立場ではあるが、シャアはルナ・ジオンを率いるセイラの兄なのだから。

 どちらとも友好的な関係を築きたいと思うが、今の時点では、やっぱりシャアを優先する必要があった。

 

「それで、どうする? ジオングをこちらに譲渡するのなら、逃がしてもいいが」

『……それで、お前が私を捕らえないという保証はあるのか?』

 

 なるほど。シャアが有能だとはいえ、それはあくまでもMSパイロットとしてだ。

 であれば、MSから出た後に捕らえれば安全にシャアを確保出来るのか。

 それは考えてはいなかったな。

 セイラの事を考えると、そうした方がいいのか?

 そう思ったが、ここで騙し討ちのような真似をするとセイラとシャアの関係がどうなるか疑問だ。

 それに、現在表向きには唯一生き残っているザビ家の人間がキシリアだ。

 ……いや、ドズルに娘がいたとかいう話を聞いたが、そっちは現在行方不明だしな。

 幾ら何でも、シャアも子供……いや、赤ん坊を殺すような真似はしないだろう。

 それなら、キシリアを殺したところで確保した方がいい。

 もっとも、この場合の問題はガルマの件をどうするかだな。

 ガルマは表向きは死んだ事になっているが、この戦争が終わった後はジオン公国を治めて貰おうと、そう思っていた。

 実際、その為にソロモンでマツナガを確保したようなものだし。

 その件は正直後でどうにかするしかない。

 少なくても、今はキシリアをどうにかすれば、シャアも満足するだろうし。

 そして満足した後なら、自分から月にやって来る可能性は十分にあった。

 復讐を成し遂げると虚しくなるといったようなことは、よく聞くし。

 

「取りあえず今はその気はないと言っておく。現在俺が確保したいのは、お前の身柄じゃなくて、ジオングだからな。だが……これだけは覚えておけ。セイラはお前が復讐するのを決して望んでいないし、お前が馬鹿な真似をするよりも前に、月に来てくれる事を希望しているぞ」

 

 もしシャアが月に来れば、それこそセイラは月のトップの座をシャアに譲ってもおかしくはない。

 もっとも、シャアが月のトップに立って妙な真似――それこそセイラが恐れているように地球に小惑星を落としたり――をしないように、見張ったりはするだろうが。

 

『覚えておこう。取りあえず、アクセルの提案には乗らせて貰う』

 

 そう告げ、コックピットから出るシャア。

 ……少し驚いたのは、コックピットが頭部にあったという事だろう。

 UC世界におけるMSのコックピットは、基本的に胴体にある。

 実際、ペイルライダーの一件で入手したニュータイプ用のザク……ジオングの技術立証試験機だろうあの機体も、コックピットは胴体にあったのだから。

 それを考えれば、ジオングのコックピットも胴体にあると考えるのはおかしな話ではない。

 ともあれ、そんな驚きもすぐに消え……俺は頭部のコックピットから出て来たシャアをガンダム7号機の掌の上に乗せ、ア・バオア・クーの方に向けて押し出してやる。

 取りあえず、これで宇宙で遭難するといったような事にはならないだろう。

 周囲で行われている戦いに巻き込まれる可能性は、否定出来なかったが。

 さて、アムロからの通信は……一体、どうなってるんだろうな。

 微妙に……いや、かなり嫌な予感をしながらも、ジオングから脱出したシャアを狙うといったような真似をすることを、アムロはしなかった。

 それを考えると、もしかしたらシャアを狙うといったような真似をするつもりはなくなったのでは? そんな思いを抱きつつ、通信を繋げる。

 

『アクセルさん! 一体何を考えてるんですか!』

 

 予想外……いや、ある意味で予想通りに、アムロの怒鳴り声がコックピットの中に響く。

 アムロにしてみれば、シャアを倒す絶好のチャンスを見逃したのだから、色々と思うところがあるのも当然だろう。

 

「そう言ってもな。取りあえずジオング……シャアが乗っていたニュータイプ用のMSは奪ったんだから、向こうの戦力ダウンになったのは間違いないだろ?」

『ここで倒していれば、そもそもそんな事を心配する必要もなかったでしょう!』

 

 どうやら、こっちの言葉に騙されてはくれなかったらしい。

 ……いやまぁ、そう言いたい気持ちも分からないではないんだが。

 それでも、今の状況を考えると……今回の結果は俺としては最善に近い結果だったのは、間違いのない事実だ。

 だからといって、それをアムロが許容するかどうかと言えば、また別の話だったが。

 

「俺がアムロの援軍に来たのは事実だが、同時に確実にシャアを殺さなければならないって訳でもないのも事実だ。そして今の状況では、これがルナ・ジオンにとって最良の選択だと判断した」

『……分かりましたよ! けど、それなら僕がア・バオア・クーに向かっても文句は言わせませんよ!』

 

 そう叫んで乱暴に通信が切れると、G-3ガンダムはア・バオア・クーに向かって移動を開始する。

 シャアがコックピットから出た時には、攻撃をする様子がなかったアムロだったから、今から移動して、もしジオン軍のMSが宇宙空間を移動しているシャアを助けるよりも前に見つけても、それを攻撃するといったような真似は……どうだろうな。

 そんな疑問を抱いていると、離れている場所からこちらの援護をしていた不死身の第四小隊がやってくる。

 

『何故、赤い彗星を逃がすような真似を?』

 

 映像モニタに表示されたバニングが、そう尋ねてくる。

 アムロと違って表情には出していないが、それでも不満に思っているのは、その声音から容易に想像出来た。

 

「連邦軍としてはここで倒すなり、捕虜にするなりした方がよかったんだろうが、ルナ・ジオン軍としては、連邦軍と必ずしも同じ結果にはならないんだよ。それに、俺が欲しかった物は入手出来たしな」

 

 そう告げ、ガンダム7号機の手で触れていたジオングの装甲を軽く叩く。

 結果として、ジオングが破損もない状態で入手出来たのだから、俺としてはこの上ない成果だ。

 シャアも確保出来れば、より最善の結果だったんだろうが……シャア本人の問題もあるし、何よりもシャアの乗っていたMSならともかく、シャア本人を捕らえたとなれば、連邦軍の方でも黙ってはいない。

 一応別組織ではあるのだが、今回の戦いの主役はあくまでも連邦軍だ。

 それだけに、連邦軍はシャアを寄越すように言ってくるだろう。

 そうなると、間違いなく面倒な事になる筈だった。

 とはいえ、この星一号作戦が終われば連邦軍の勝利は決定づけられ……ジオンの独立戦争も終わるだろう。

 そして戦争が終われば、次に連邦軍が目を付けてくるのは月になる可能性が高い。

 そういう意味では、ここで目を付けられるというのは、結局のところ早いが遅いかの違いでしかないのだろう。

 それに連邦軍も、ジオン軍に勝利しつつあるとはいえ、この戦争で失った物は大きい。

 すぐに月に対してちょっかいを掛けてくるといったような真似は、まず無理な筈だった。

 そんな思いを表には出さず、バニング達を適当に言いくるめるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1637

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