転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2680話

 幸いにして、俺達がいたのはア・バオア・クーの中でも月に近いEフィールドだったので、連邦軍がア・バオア・クーを占拠したという報告を受けるとすぐに月に戻る事になった。

 ……ちなみに、月が連邦とジオンの間に入って停戦協議が行われるという事は既に知っていたのか、俺達と会話をした連邦軍の軍人……コーウェンは、微妙な表情を浮かべていたが。

 レビルの派閥の中でも准将として、階級こそそこまで高くはない――あくまでも指揮を執った者達の中で――が、レビルからは実力のある人物として可愛がられていた。

 オデッサだったか……もしくはその前だったか、俺も会った事があるので、今回の件が初顔合わせといった訳ではない。

 俺達とやり取りしたのがコーウェンだったという事は、これからはコーウェンが俺達とのやり取りの担当になるのか?

 まぁ、恐らく本格的に交渉相手になるのは、コーウェンではなくゴップになるんだろうが。

 だが、ゴップはあくまでも後方での補給作業の担当であって、前線に出て来る事はない。

 もっとも、それを言うのならレビルという軍を率いてる立場の者が前線に出て来るという事がおかしいのだが。

 実際、ジオン軍の……いや、ギレンの策略によって、デギン諸共に殺されてしまったし。

 ともあれ、ア・バオア・クーの一件も終わったので、俺を含めて援軍としてやって来ていたルナ・ジオン軍は、月に戻る事になった。

 

「それにしても……まさか、月が調停役になるとは思わなかったわ」

 

 カトンボにある部屋の一室……パイロットが全員揃っているその部屋で、それぞれが寛いでいると、クリスがそう言ってくる。

 少し前まで連邦軍だったからこそ、余計に月が今回の調停に乗り出した事に驚いたのだろう。

 

「そうだな。正直俺もその辺は疑問に思った。ただ、政治的に見て月に利益が出ると思っての判断なのは間違いないだろうな」

 

 ジオン公国が可哀想だから引き受けた……なんて事は、まずない筈だ。

 そうである以上、今回の仲介役を引き受ける上で月にとって大きな利益があったのは間違いない。

 でなければ、連邦軍と一緒にサイド3を占拠した方が、得られる利益は多いのだから。

 とはいえ、ジオン公国にとっては本国であるサイド3だけに、当然相応の戦力はいるだろう。

 基本的に使える戦力はア・バオア・クーまで連れて来た筈だが、それでも首都防衛の為の部隊とかはいてもおかしくない。

 連邦軍にしてみれば、勝利は確実になったのだから、今の状況でこれ以上の被害は受けたくない……といったところだからこそ、月の仲介を受け入れる形になってもおかしくはない。

 

「アクセル代表、とにかくこれで戦争は終わったと思ってもいいんでしょうか?」

 

 クリスの隣で紅茶を飲んでいたレコアが、そう尋ねてくる。

 レコアにとっても、この戦争には色々と思うところがあったのだろう。

 とはいえ、レコアは結局のところこの戦争で最後の方に参加したので、あまり実感がないのかもしれないな。

 

「ああ、連邦軍にとっても、現在の状況で戦争を続けるのは難しい。それだけの余力がある訳じゃないしな」

「だとすれば、これで平和になるという事ですか?」

「どうだろうな」

 

 正直なところ、ジオンと連邦の戦争が終わったからといって、全てがそれで水に流せるかといった事は疑問だろう。

 ジオン軍の中には、実質的な自分達の負けという状況を納得出来ない者もいるだろうし……連邦軍にしても、コロニーを地球に落とされた事を許容出来ない者も多い筈だ。

 その辺の事情を考えたからこそ、終戦ではなく停戦という扱いになっているのかもしれないし。

 とはいえ、学徒兵を大量に戦場に出すようになったジオン軍が、本当に今の状況では限界なのも、間違いのない事実だ。

 

「……ジオン軍の負け、ですか」

 

 ガトーがしみじみと呟く。

 ガトーにとって、ジオン公国というのは既に捨てた場所だ。

 実際、ソロモンでもジオン軍を相手に獅子奮迅の戦いをして、今ではソロモンの悪夢という異名まで持つようになった。

 そんなガトーではあったが、それでもやはりジオン公国は自分の生まれ故郷だけに、それが負けたというのは思うところがあるのだろう。

 幾ら停戦と言いつくろっていても、最終防衛線のア・バオア・クーまで落とされ、残っているのはサイド3だけとなれば、それはやはり敗戦に等しいのだ。

 停戦協定を連邦軍と結ぶにも、それには一体どれだけの条件を突きつけられるのやら。

 一応、月が間に入っている以上、そこまで無理な条件を連邦軍が出すような事はないと思うが、それは逆に言えば無理ではない条件は幾らでも出せるという事になる。

 あくまでも、ジオン公国がどうにか出来る条件ではあるだろうが。

 

「停戦をする条件にしても、恐らくはそこまで酷い条件にはならないと思うから、その辺は安心してもいいだろ。この手の交渉となると、軍政の専門家でもあるゴップが出て来るだろうし」

 

 ある意味では、最も信用出来るが……それでも、ゴップという人物の能力を考えれば、ジオン公国に不可能な条件は出さない筈だ。

 問題なのは、連邦軍の中にいる強硬派と……連邦政府の政治家達か。

 まだ生き残っていた強硬派はともかく、自分達が勝利したからという事で強硬派になる奴も間違いなくいる。

 そして政治家は……正直なところ、UC世界における政治家の質は決して高くはない。

 絶対民主主義と揶揄されているのを見れば分かるように、スペースノイドは基本的に政治に参加する事が出来ないし、地球に住んでいる者にしても、政治家になるにはかなりの選挙資金が必要になる関係上、実質的に決まった家の者達だけが政治家になる。

 そんな政治家達だけに、連邦軍が勝ったとなれば一体どんな要求をするのか分からない。

 

「そうだといいんですが」

「それに、少なくても連邦軍の中でも作戦に参加していた者達は、ルナ・ジオン軍がどれだけ強いのかを知っている。そうである以上、そうそう馬鹿な真似にはならないと思うしな」

 

 以前月に攻めて来た時や、ルナツーを占領された時に連邦軍が受けた被害を考えれば、とてもではないが月を敵に回すといったような真似を連邦軍がするとは思えない。

 

「ともあれ、この後がどうなるかは……成り行きを見守るしかないだろうな」

 

 ここで何だかんだと言っても、結局のところ実際に交渉するのはルナ・ジオンの政治家の面々だ。

 あるいは、セイラが交渉に出るという可能性も否定は出来ないが。

 セイラの場合、ニュータイプ能力があるおかげで、もし交渉をやるとしてもかなり有利に進められるだろう。

 何しろ、相手が真実を言っているのか、それとも嘘を言っているのか……その辺がニュータイプ能力で理解出来るのだから。

 

「そうですな。今は、戦いが終わった事を喜びましょう。私達も、そろそろハワイに戻る必要があるでしょうし」

 

 しみじみといった様子でノリスが呟き……そう言えば、ガトーとノリスはあくまでもハワイの所属だった事を思い出す。

 ソロモンとア・バオア・クーという、この戦争の最後にして最大の戦いに参加したのは、あくまでもガトーがアイナと結婚する為だ。

 サハリン家という、現在の月における名家のアイナと結婚をする為に、ガトーは箔をつける必要があった。

 ソロモンの悪夢という異名は、その箔なのだ。

 そしてその箔をつけた以上、ガトーがいつまでも宇宙にいる必要はない。

 アイナとの結婚は、それこそこの戦争が一段落してからの話ではあるが……その前に色々と準備が必要なのも事実だ。

 特に名家ともなれば、当然の話だが結婚をするにも色々と準備が必要となる。

 

「そうか。ガトーとノリスはハワイに戻るのか。……この戦争が終われば、ハワイでも色々と大きな動きが出て来ると思うけど、大丈夫そうか?」

 

 ハワイは、現在地球上では唯一絶対に安全な場所だ。

 ジオンと連邦の戦争が行われている現在、戦火から逃れる為に、多くの者がハワイに避難してきている。

 これ以上地球にいるよりもっと安全な場所へ……という事で、月に移住した者も多い。

 だが、中にはどうしても地球から離れたくないという思いから、ハワイで暮らしている者もかなりの数になる。

 だからこそ、ジオンと連邦の戦争が終われば、現在ハワイにいる者達が自分の故郷に戻るという可能性は十分にあった。

 そうなれば、当然のように現在のハワイの人口はかなり減る事になる。

 ……もっとも、現在のハワイの人口は過密状態と呼ぶに相応しい状況である以上、その人口が減るというのは、ハワイにとって決して悪い話ではないのだが。

 何しろ、ハワイというのは、ハワイ島を中心とした複数の島から構成されている地名だ。

 そのような島の集まりだけに、当然のようにそこに住める者の数は決まってしまう。

 とはいえ、ハワイがルナ・ジオン軍の領土であるのは変わらない。

 そうである以上、今回の戦いで連邦もジオンも嫌になった……という者にしてみれば、ハワイに永住しようと考えてもおかしくはないが。

 それに、戦後とはいえ戦争をしていたのだから、基本的に多くの場所では治安が悪いが、ハワイの治安は非常にいい。

 コバッタと量産型Wがいるので、それこそ何か悪い事を企んでいる者がいても、あっさりと捕らえる事が出来る。

 そういう場所だけに、後ろ暗いところがある者にしてみれば暮らしにくいだろうが、普通に暮らしている……いわゆる善良的な住人なら、ハワイは非常に暮らしやすい場所なのだ。

 それに、元々ハワイは観光地としても有名な場所なのは間違いないし。

 そういう意味では、移住するには悪くない場所なのだ。

 

「大丈夫です。正確には、サハリン家はハワイの統治を行ってる訳ではないですし」

 

 ノリスの言葉に、それもそうかと頷く。

 ギニアスは現在、ハワイにある研究所で研究を行っている。

 今はどんな研究をやっているのかは、俺にも分からないが。

 アプサラスⅢの後継機たるアプサラスⅣを開発中なのか、それとも動力炉を強化してるのか。

 もしくはそれ以外のMSやMAを開発しているという可能性はある。

 何だかんだと、ギニアスも結局のところは技術者らしい技術者だしな。

 ギニアスを苛んでいた病気も、既にレモンによって回復しているし。

 

「そう言えば、ガトーとアイナの件はともかく、ギニアスはどうなんだ? サハリン家の事を考えるのなら、アイナもそうだが、ギニアスも結婚相手は必要だろ?」

 

 あくまでも、現在のサハリン家の当主はギニアスなのだ。

 そうである以上、ギニアスがいつまでも独身というのは、問題だろう。

 顔立ちも整っているだけに、ギニアスは女に言い寄られてもおかしくないと思うんだが。

 前にも何度かこの手の話題を出した事があったが、結局今のところギニアスにそういう相手が出来たという話は聞いていない。

 ……オルテガのような、強面の男でもマリオンという恋人が出来たってのにな。

 ギニアスのような美形と言ってもいい男なら、それこそ言い寄ってくる女も多いだろうに。

 

「本人にその気がないようですしね。……幸い、ギニアス様は受信機持ちの1人です。その辺を考えれば、そこまで急ぐような事もないかと」

「何だかんだと、受信機持ちも多くなってきたよな。女が受信機を欲するのは分かるけど」

「受信機? アクセル、それは一体何の事?」

 

 クリスが疑問の表情をこちらに向けてくる。

 レコアもまた、興味深そうにこちらに視線を向けていた。

 女が受信機を欲する……というのを聞いて、気になったのだろう。

 この辺り、女の美容意識に対する嗅覚は侮れないものがある。

 

「残念だが、これについては機密だな。まだルナ・ジオンに入ったばかりのお前達に話す事は出来ない。知りたかったら、もっと上に行く必要がある」

 

 実際、この件を知ってるのは上層部だけだ。

 何しろ、受信機を付けるだけで不死ではないものの不老になるのだから、欲しがる者は星の数程いる。

 だが……当然だが、それを好き放題に配る訳にもいかない。

 だからこそ、ルナ・ジオンの中でもしっかりと……言い方は悪いが、シャドウミラーにとって価値のある人物だけが、その対象になる。

 特にセイラとは違った意味で月の象徴的な存在で、メディアに出る機会も多いシーマなんかは20代後半の状態のままで不老となっている以上、今はとにかく数年経過すればおかしいと思う者も出て来るだろうし、そうなれば当然のようにその美貌の秘密を調べる者もいるだろう。

 それ以前に、もっと単純に人の口に戸は立てられぬと言われるように、現在ルナ・ジオンで受信機を持っている者から話が広がるという可能性は決して否定出来ない。

 とはいえ、それをわざわざこっちで言って広める必要もないのだろうが。

 俺の言葉に納得したのかどうか、クリスとレコアはそれ以上受信機について話すような事はなく……どうすれば、ギニアスに恋人を作らせることが出来るかどうかを話し合うのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1637

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